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BDについてもっと知りたい!コミュのインターネット会議:フランソワ・シュイッテン&谷口ジロー 「日本のマンガとフランス、ベルギーのB.D」報告

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1月26日(土)東京日仏学院エスパス・イマージュで行われたインターネット会議に行ってまいりました。

インターネット会議
フランソワ・シュイッテン/谷口ジロー
「日本のマンガとフランス、ベルギーのB.D.」
2008年1月26日(土)
東京日仏学院エスパス・イマージュ

フランスで開催されているアングレーム国際バンド・デシネ・フェスティヴァルの会場と東京の会場を繋いでの会議でした。
フランス側の出席者がフランソワ・スキュイテン(カタカナ表記をどうするかですが、ご自身がスキュイテンとおっしゃってるので、スキュイテンにします)、アングレーム・フェスティヴァルの芸術監督ブノワ・ムシャール、「マンガ・ビルディング」コーディネーター、アングレームフェスティヴァル展示コミッショナーのジュリアン・バスティード。
日本側の出席者は谷口ジローとこのイベントを実現させたYori-eyeのヴィクトール・ウオロノフ。

会議は同時通訳つきで、フランス語→日本語がヘッドホン越しに聞こえるというふうになっていました。日本語→フランス語はコリンヌ・カンタンさんが務められてました。

会議の進行役はブノワ・ムシャール

順不同でだいたいのことを書いていきます
フランソワ・スキュイテンとまず最初に両者の紹介をかねて、ふたりの関係が語られました。
2003年のBDフェスティヴァルのとき、ちょうど、フランソワ・スキュイテンが審査委員長をしていたのですが、その年からフェスティヴァルが正式に「国際化」したらしいです。そしてその年の最優秀シナリオ賞に谷口さんの「遥かな町へ」が選ばれました。当時谷口さんはいつかフランスに住んでマンガを描きたいとおっしゃっていたそうなのですが、その計画はどうなっていますか、とスキュイテン。
谷口さんの答え。今はとても忙しいのでなかなか実現しないのだが、いずれパリを舞台にしたものを描きたいと思っている。そのときはパリに住んで描きたい。
また、自分が初めてBDに出会ったとき、日本のマンガにはない世界観に驚き、このようなものまでを表現できるということに衝撃を受けた。自分はフランス語ができないので、そこに描かれている物語を読むことはできないが、絵だけでも充分に楽しむことができたし、理解することができた。

司会者からスキュイテンと谷口の共通点は両者とも町を描くことだという指摘がありました。しかしスキュイテンが架空の町を描くのに対し、谷口は現実にある町を描いている。そのことについて
スキュイテンは確かに現実にない世界を描いてはいるが、もともとは写真とか実際にある街がベースにある。そこから離れて、そしてまた現実に近い形にどこか戻っている。というのも、フランスの出版社でBDを出す場合、風景があまりベルギー的でないことが求められたから。たとえば瓦の屋根とか描かないとか。よりフランス的、というかコスモポリタン、グローバル的な町を描くことが求められていた。それでも描くうちに細かいところでローカルなディテールを入れるようにしている。ベルギーのファンにはこういうローカルなネタを見つけることで喜んでもらえている。しかし、写真と絵はおなじではない。BDは必ずしも写真が表現することを模倣するものではないと思っている。
谷口は風景を描くとき、必ず現地に出向いて取材するようにしている。場合によっては写真に頼ることもあるが、自分には想像で描くことはとても難しい。
また、BDとマンガの違いについて言えば、BDがストーリー、物語を語るのに対し、マンガはより心情を描いているような気がする。

会場からの質問(フランス)
谷口ジローへの質問
以前、「イカル」というメビウストのコラボ作品があった。続きが出てないようだがどうなっているのか。「イカル」について
谷口ジローの答え
「イカル」の企画は残念ながら出版社の都合でつぶれた
今続きを出すために自分が出版してくれるところを探しているが、まだ決まっておらず、いつ続編が出せるがわからないが、自分としてもぜひこの作品を完成させたい

ほかのBD作家とのコラボは考えているのか?
現在、モルヴァンとのコラボが始まっている。

スキュイテンから谷口への質問
○谷口さんはアシスタントを使って仕事をしていると思うが、どういう形で分業しているのか。また、最初からアシスタントを使っていたのか。
谷口ジローの答え
作品を作るとき、自分はストーリーを考え、コマ割りとか、構図などを考え書いていく。アシスタントにはその上で資料(写真など)をわたし背景などを描いてもらう。
最終的には自分が実際に描くのは人物ぐらいだ。
最初はもちろんひとりでぜんぶやっていて、どうしても急ぎのときだけアルバイトのアシスタントを使っていた。

○いつからマンガを描いていたのか?
ストーリマンガを描くようになったのは中学生のころ。
最初は手塚治虫の作品などのまねから始まった。

○「歩くひと」についてききたい。企画としてまず提案するのにどう説明していいかわからないような作品だと思うが、どのような経緯で生まれたのか?
この企画はもともと自分から出たものではない。モーニングの編集者から散歩する人を主人公にした作品を描いてほしいといわれた。最初にこの話を聞いたとき、どうしたらいいのかとまどったが、その編集者が言うには映画の小津安二郎の作品のような世界観がほしいとのことだった。いろいろ考えたり、自分でも散歩したりして、あの作品ができた。

ここでフランス側から 。フランスでは作家が提案して、出版社が実現させる(L’auteur propose, l’éditeur dispose)のだが、日本では逆のようですね。
谷口ジロー。外から見ていると、BDの作家さんがヨーロッパではとても自由に自分の好きな作品を自由な形で発表しているように見受けられ、それがとてもうらやましい。それに対してスキュイテンが、アルバムを作るときに時には48ページで描くといった制限がないわけではない。たしかに、たとえば自分の新作(La Théorie du grain de sable)を完成させるまで3年かかった。ただ、話がとても長くなったので出版社の意見で2巻本になった。そうしないと、本の値段が高すぎ、売れなくなる。読者が物語の全体を一気に読めないという不都合はあるものの、本が売れなくてはしょうがないので、これは出版社の意見として受け入れた。こういうことは出版社主導でおこなわれるが、必ずしも悪いことではないと思う。


○(フランスの会場からの質問)どのような手順で仕事をしているのか
シナリオがある場合は、シナリオをもとに考えていく。
オリジナルの場合はシナリオを書かずに絵コンテのようなものを作成してそこからじかに絵を描いていく。

○ (フランスの会場からの質問)フランスなどの場合、かつての人気漫画家たちも年とってきて、才能が枯渇してきているように思うが、日本の漫画家はそういう問題はないのか。(これがオリジナルの質問でしたが、同時通訳が間に入ったためか、若い世代との関係というように受け取ったようです)
若いアシスタントたちが多く、彼らの描く背景などから刺激を受けることもある。
ここでカンタンさんが間に入り、仕事のノウハウなど、次世代にどのようにして引き継いでいこうと思うか。また、そうすることが必要と思うか。
若い人たちに教えたいことはたくさんあるが、自分の仕事ぶりはゆっくり時間をかけてするので、なかなか自分に聞きに来る人たちがいない。
スキュイテンがひきとって、この問題について語りました。年をとるということ才能の枯渇というのは大きな問題だ。BD作家という仕事は相当なエネルギーを必要とするし、またどこか童心が残っていないとできないものだ。たとえばフランカン(スピルーやガストンなどの作家)などは、晩年その童心のようなものが消えつつあることを感じていた。そして彼は自分に嘘がつけないひとだった。それで自分からきっぱりと描くのをやめたのだ。わたしはこの点でもフランカンをとても尊敬している。
またヨーロッパでの養成事情についても言及しました。最近では専門の学校もでき、みんなそのあたりから始める。大御所のアトリエに出入りして直接習うことは少なくなってきている。

○ (フランスの会場からの質問)谷口さんは作品のアニメ化についてどういう考えを持っているか。
今のところ自分の作品のアニメ化についてのオファーはない。自分は作品のアニメ化について反対ではないし、話があればうれしいが、もちろん出来上がった作品のよしあしによると思う。今のところ自分の作品については実写版の映画化があるだけだ。

○ (フランスの会場からの質問)自分は海賊版の翻訳で谷口さんの作品を読んだことがあるが(司会者注、おそらく合法的に訳された英語版からの翻訳と思われる)、それは「遥かな町へ」や「歩くひと」と違い相当暴力的な作品だった。どちらもあなたの作品なのですがその違いにびっくりしている。そのことについて考えを聞かせてもらいたい。
人間誰しも二面性を持っていて、わたしも自分の中にさまざまな面を持っている。静かな作品を書き続けているとストレスがたまってくるので、その後違ったタイプの作品を描いてバランスをとっている。

日本の会場からの質問
○ (日本の会場からの質問)日本の作品が多くフランスに翻訳されているが、BDの日本語訳についてはどういうかが絵をお持ちですか。ご自身の作品が日本語に訳されることについて(だいぶはしょりましたが、これはわれらがショードヴァルさんからの質問でしたw)
確かに日本とフランスのマンガの交流という点でアンバランスに現象があることは否めない。10年ぐらい前に翻訳の話もあったのだが(モーニングでの企画のことだと思われます)なかなか難しいようだ。
ここで司会者のムシャールが自嘲的に
確かにアステリックスやタンタンが訳されたという話はきいたが、タンタンについて言えば、タンタンの翻訳の歴史の中でも語り草になるほどの失敗だったようだ。

○ (日本の会場からの質問)最近ではコンピューターで作品を描く作家が増えているがそのことについてどう思われますか
スキュイテン。自分は手書きだが、カラーについてはずいぶんコンピューターを使うひとが多い。問題は結局作品のできだと思う。

○ (日本の会場からの質問)日本語にはひらがな、カタカナ、感じ、あるいはローマ字とさまざまな字を使う文化があるが、ヨーロッパの場合、ローマ字だけなので、その違いについてはどう思うか。
スキュイテン。字は作品の一部であって、けっして絵に付け加えられている説明などではない。絵と文字が一体になって作品ができる。だからわたしは字も手書きで書く。
谷口ジロー。日本の場合もかつては台詞を手書きでしたこともあったが、おそらく読みやすさを考慮して、今では印字である。しかしそのことによって擬音での表現の仕方が発達して、今ではさまざまな形の擬音が絵のなかに描かれている。

○ (フランスの会場からの質問)ヨーロッパの作家とコラボレーションをするとき、どのようにコミュニケーションをとっているのか。難しいことはないのか。
谷口ジロー。たしかに企画の段階では編集者を交えて話が進むので、いろいろ意見を出し合い、とても刺激的で面白い話ができる。しかしいざ実現となると、細かい点でのつめとか、いろいろと大変なことがある。

だいたいこんなところでした。ほかにもtakatakataさんも質問なさいましたが、わたしのメモにそのことについて記してないので、takatakataさん、ご自分でよろしくお願いします(おそらく流暢なフランス語で直接スキュイテンさんと話されたので、あまりの自然さに目も取るのを忘れてしまったのだと思います)
現場にいらっしゃったほかのかた、突っ込み、訂正、フォロー等、よろしくお願いします。


ここからは雑感です。
今回の会議はフランス側主導で行われてました。欧米の人たちはディベートなど、公の場で自分の意見を言ったり、質問したりするのに慣れていますが、日本人はいまだになかなかという感じで、今回もそういう点が垣間見れました。こういった場所で、日本では一般的にはさくらを入れたり、想定問答などを作って、事前の根回しなどをするものだと思うのですが、フランスにはそういう文化がないので、フランス側がリラックスしていろいろ話しているのに対して、谷口さんは質問が自分にされているものなのかどうかもわからない場面もあったりで、ちょっとちぐはぐしてしまうこともありました。
あと、これも文化の違いなのでしょうが、日本では問題になっている箇所についてはっきりと答えることをしないですね。谷口さんのキャラもあるのかもしれませんが。たとえば、コラボレーションのときのコミュニケーションについてなど、大変だったとかはおっしゃいましたが、どのように大変だったのか、具体的に何が大変だったのか、そういうことはいっさいおっしゃいませんでした。おそらく同じような質問がされてもヨーロッパ側なら、もっと具体的に例などを明けで言うと思うんですよね。あと、実際に進められている企画などについては「いってはいけない」ことがたくさんあるような印象を受けました。
結局、意図したことではなかったのですが、BD研究会から多くの参加者がいたので、「さくら」ではないけれど、「関係者」的なひとたちがいたからなんとか形になったのかなとは思いました。
想定問答の事前準備など、機会があったら話をしてみたいなとは思うものの、こういう点も含めて「文化交流」なのかもしれないです。



このイベントに先立ち、会場ではスキュイテンがかかわった映画2本が上映されました。

1本目はTaxandria
1994年の作品で、
監督、ラウル・セルヴェ
物語はある国の王子(少年)が試験勉強をするために訪れた島で、燈台守の老人にタクサンドリアという国に案内してもらうという話です(たぶん)。
タクサンドリアというのは幻想的な世界の国で、そこでは時間の概念がなく、また時をとどめることに繋がるものはいっさい禁止されています(絵を描くこととか写真を撮るとか)
現実の世界は実写で、タクサンドリアの風景はスキュイテンの描く絵で表現されてました。タクサンドリアでのシーンはスキュイテンの絵の中を実写の人間が動きます。
実はこの映画英語版で字幕さえもなかったので、わたしにはほとんど理解できなかったのが残念でした。家に帰ってチラシを見たら脚本スタッフの中にアラン・ロブ・グリエの名前がありました。ヌーヴォー・ロマンの担い手で、彼自身も作品の中で時間という要素を排除したような作品を描いているわけで、もっとちゃんと理解できてればもつと楽しめたのかな、と。


もう1本はQuarxsという短編です
スキュイテンのアニメ
架空の生命体、見えないけれどそこにいるというカルクスを紹介するもので、5、6種類紹介されてました。以前椿屋さんから見せていただいたDVDには1種の紹介がありましたが、Youtubeに別の映像を見つけたので貼っておきます。
この映像を見ると、奇想天外ながら、スキュイテンが楽しんで描いたのではないかと思えて仕方がありません

コメント(2)

Kigalisoupe さん、ご報告ありがとうございます! 若干の行き違いはありましたが、全体的には非常に面白いイベントでしたね。あんな感じで日本にいながら、フランスの作家や研究者、漫画好きの人たちと交流できるのは素晴らしいことだと思います。谷口さんは30年ほど前、アシスタント時代に洋書屋でスキュイテンの本を見つけて、それ以来ファンだって仰ってましたね。パリ、あるいはフランスの地方都市でもいいですが、そこを舞台にした谷口作品ってのはちょっと読んでみたい気がします(笑)。Kigalisoupe さんが上で触れている2人の町の描き方の違いについて、スキュイテンは谷口さんの町の描き方をとても幸せなものだって言ってましたね。『闇の都市』シリーズの大半の町が人間を圧倒するような巨大な建造物であったり、あるいは廃墟的なものであったりすることを考えると、谷口さんの、あのかつて人がそこに生活を刻み、今も人がそこに住んでいる町をそのように評するのもよく理解できます。ただ、スキュイテンの都市にもそういう幸せな都市というのはあって、僕的には『L’Ombre d’Un Homme(ある男の影)』なんて、そういう作品なんじゃないかと思うんですが、どうなんだろう…? こういう質問をしとけばよかったですね(笑)。スキュイテン、いつかBD研究会に来てくれないですかねー(笑)。takatakata さんの質問はスキュイテンが日本人の原作者とコラボレートする可能性についてって感じでしたよね。

『Quarxs(カルクス)』の動画もありがとうございます! 映像の最初の部分でいろんなカルクスがいることがほのめかされていますが、これはエピソード3「Le Spiro Thermophage」って奴みたいですね。日本語にそのまま訳すと「螺旋状熱食い」(笑)? 「ねじれ熱食い」ぐらいか…(笑) 『タクサンドリア』、僕は未見なんですよねー。いつか見たい。

ちなみにフランス側の会場から質問があがった『イカル』は、

■メビウス(原作)、谷口ジロー(作画)、ジャン・アネスティ(脚本協力)『異卡力‐イカル』長谷川たかこ訳、美術出版社、2000年

という形で出版されています。元々は講談社の『モーニング』に1997年の第31号から同年43号まで計12話掲載され、第1部「南島編」が完結したところで中断されています。単行本版には各話の副題がありませんが、雑誌連載時は第6話まで Dylan Thomas(ディラン・トマス)の詩の引用が副題として付されていて、お、なんかかっちょいいという感じでした(笑)。話にあったように諸般の都合から講談社ではなく、美術出版社で出版することになったんでしょうね。『error』vol.00(美術出版社、2001年)にこの作品についての谷口さんへのインタヴューが載せられていて、それによると連載の続きが『error』で行なわれることになっていたようですが、頓挫しちゃったみたいですね。
ショードヴァルさん

補足等、ありがとうございます

かなりメモとって思い出しながら書いたつもりなんですが、やはり書き忘れ、ありますね。
ショードヴァルさんのコメント拝見して、そうそうそんな話あったって感じでした。

それから「イカル」については背景をまったく知らずに聞いたままを書いたので、自分でも「なんのこっちゃ」状態だったんです

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