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BDについてもっと知りたい!コミュの【インタヴュー】マルジャン・サトラピ その2

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現在、自作のBDを基にした初監督アニメーション映画『ペルセポリス』(Vincent Paronnaud〔ヴァンサン・パロノー〕と共作)が公開されているマルジャン・サトラピのインタヴューをご紹介します。「Cuverville(キュヴェルヴィル)」というサイトに載せられた2005年4月2日付けのインタヴューです。
http://www.cuverville.org/article43192.html
彼女の最新のBD『Poulet aux prunes(鶏のプラム煮)』を出版し、映画版『ペルセポリス』に取りかかっていた時期のもので、『鶏のプラム煮』が話題の中心になっています。Iconophage(イコノファージュ)という映画やBDを語るラジオ番組主催で行なわれたインタヴューのようですね。例によって、Kigalisoupe さんに訳文をチェックしてもらいました。Kigalisoupe さん、ありがとうございました。
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イランにはいったいいくつ火山があるのだろう? 少なくとも1つはある。それもフランスに… Marjane Satrapi(マルジャン・サトラピ)こそその人に他ならない。マルジャンが『Poulet aux prunes(鶏のプラム煮)』のこと、芸術家たちの神経症気質のこと、無礼な批評家たちのこと、ヨーロッパ人の自民族中心主義、そして、とても意地悪な祖母のことを語ってくれた(ジャーナリストたちの馬鹿さ加減についての件は省いてある)。
ヒューマニズム溢れるインタヴュー。

Iconophage(イコノファージュ〔以下I〕):あなたの作品では、白黒の色彩とコントラストが非常に重要な役割を果たしていますね。その点についてお話しいただけますか?
Marjane Satrapi(マルジャン・サトラピ〔以下S〕):バンド・デシネ(漫画)ってイラストレーションと違って、絵が文体の一部になっているの。既にできあがっている文章に絵が付随するんじゃなくて、文章と絵の2つが同時に機能するのね。私の知る限り、こんな風な働きをする媒体ってバンド・デシネ(漫画)だけよ。もしここに色や背景やなんやかやを付け加えると、それが補足的なコードになって、読書のリズムを変えてしまうわ。つまり、それが私が白黒を選ぶ理由のひとつね。というのも、私が書く物語ってしばしばとても饒舌で、これで絵まで饒舌だと、やり過ぎになっちゃうのよ。私はね、ハーモニーを作り出そうとしてるの。表現することに賭けてるし、その他のこと、2次的なものについてはうっちゃっておいた方がいいわ。
それに、私、映画でも写真でも、あらゆるジャンルで白黒の美しさが大好きなの。私にとって世界最高傑作ってFélix Vallotton(フェリックス・ヴァロットン)の木版画よ。彼と同じことができてるなんて言うつもりはないけど、私が目指すべき理想みたいなものね。
結局、白黒の絵ならはったりをかますことなんてできないでしょ? 私、新聞や雑誌のためにたくさんの絵を描いてきたんだけど、あ、フランスじゃなくて他のところでね、で、白黒だと時としてひどく不恰好な絵が、カラーのおかげでよく見えるってことがあるのよね。全てのカラー作品がごまかしだなんて言うつもりはないのよ。そんな考えは全然私の頭の中にないんだけど、でもね、白黒だと問題が別の形で顕わになると思うのよね。作品をよく見せるのに色に頼るなんてだめよ。これってちょっと難しい挑戦でしょ? でも、だからこそ、気に入ってるのよね。

I:あなたの最新作『Poulet aux prunes(鶏のプラム煮)』はアングレームで賞を授かりました。この受賞で読者のあなたの作品を見る目は変わりましたか? あなたご自身、読者が増えたとか、ファンが増えたとか、そういうことをお感じになっていますか?
S:わかんないわ… って言うのもね、別に謙遜するわけじゃないけど、率直に言って、私自身についてのニュースってほとんど関心ないの。同じように時間を使うんだったら、仕事に費やしたいわ。昔はそういうことにもう少し関心があったのよ。デビューしたてだった頃はね… でも、一方でね、今回の賞が『Persepolis(ペルセポリス)』じゃなくて『鶏のプラム煮』に与えられたことには満足してるわ。フランスでは、成功するってすごく疑わしいことよ。成功した本が必ずしも最良の本じゃないってことはしばしば事実よね。でも、だからと言って、私の本が悪い本かって言うと、そんなことは全然ない。だって、それなら出版なんてするはずないもの。ね、全然謙遜なんてしてないでしょ? とにかく、私は他のみんなより前にこの本がいい本だって確信していたわけ。『ペルセポリス』がヒットしたのは作者のわたしが女だからとか、第3世界の人間だからとか、そんなことを言う人もいたわ。つまり異民族現象として片付けたかったのね。ちょうどワールド・ミュージックと同じよ。それを知って、私、いらついたし、腹も立ったわ。私の本を批評して、それが気に入らないってのはわかるわよ。それはそれでいいじゃない。私は描いている時に私自身を晒しているのであって、誰もが私の本を気に入ってくれるはずだなんて思ってないわ。だから、私の本を批評するなら、批評すべきところを批評すればいいのよ。私のことを異民族現象と見なすなんて、由々しき問題だし、低俗よ。私が女だから成功したなんて考えるのはさらに低俗ね。私は女である以前に、人間で芸術家なのよ。私なら他の人を評価する時、その人の性別とか関係なく、人間として評価するわ。
『鶏のプラム煮』は愛の物語よ。舞台はイランだけど、そんなのどうだっていいわ。他の場所で起こる可能性だって十分ある。これならもう異民族現象だなんて言えっこないでしょ。この点で受賞には大満足なの。

I:『鶏のプラム煮』が不在をめぐる書物だという意見には賛成ですか? まず、音楽の不在があり、愛の不在が描かれ、そして食物の不在… 主人公は自ら食べることをやめてしまうわけですが…
S:私にとっては、むしろ芸術家の肖像かしら… この人物は私の家族の一員で、私がよく知ってる人の物語を描くことが好きってこともあるけれど。みんな芸術家について勝手な想像をしてるでしょ? でもね、芸術家って、まず第一に、自分が世界の中心だと思い込んでる自己中なナルシストなのよ。自分が素晴らしいものを書いているって確信しているだけじゃなくて、みんなが彼を褒めるためにお金を払うべきだ、彼を崇め、拍手すべきだって信じ込んでいるの。私たち芸術家ってみんなそうなのよ。概して言えば、それは私たちの神経症の表われだって言えそうね。もしあなたが満足していたら、すごい詩なんて書けっこないわ。どこかメランコリーな雰囲気に浸ってなきゃだめなのよ。私がこの本の中で示したかったのはそういうこと。だって、私自身がそういうの全部よくわかるもの。私自身、自己中でナルシストで… ほら、やっぱりそういうもんなのよ。

I:すると、この作品は承認され(reconnu)ずに死んだ芸術家の個別症例なんですね? 作品の冒頭では、かつて愛した女性に文字通り覚えていてもらえず(reconnu)、近親者たちからも認められ(reconnu)ない。とりわけ彼の妻は、楽器を壊すことで、彼を去勢してしまう。ところが、芸術家にとって真の承認(reconnaissance)とは近親者によるものではないのでしょうか?
S:そうね。人が何かを書く時って、きっと誰か、1人か2人の特定の人物に向けて書くはずよ。私はいつも誰に向けて書いているか意識してるわ。いつだって誰か特定の人にすごいって思わせたいのよ。

I:あなたのご本には不穏な人物が登場しますね。物語の最後にこっそりと姿を見せている。つまり、それは死の天使であるわけですが… この登場人物について語っていただけますか?
S:私の祖母は、人の感情につけこんで脅しをする名人だったんだけど、彼女、何度も死の天使を見たんですって。その度に、ああ、私の命も今日までだわって言ったもんよ。最後に電話で話した時も、もう1週間の命だわって言うもんだから、私、言ったのね。「やめてちょうだい。おばあちゃんが死ぬの、いったいこれで何回目よ?」って。そしたら、彼女、こう言ったわ。「今度は誓ってほんとだよ」って。5日後、彼女、ほんとに死んじゃったわ。祖母はほんとにそれを見たか、あるいは見たと言い張ってるわけよね。つまり、どっちにしろそれは私の育った文化に固有なものなの。フランスとは逆ね。ここでは、老いとか死は完璧に無視されてしまっている。私の文化では、死は常にすぐ近くに感じられる要素なのよ。定期的に墓地を訪れ、そこでピクニックをし、死者と話をする… 墓地はいつも訪問客でいっぱいよ。イランに帰って、翌日、一番最初にしたことと言えば、墓地を訪れ、祖父や祖母、おば、家族全員の墓にお参りすることだったわ。全く違った関係のあり方よね。

I:あなたの作品の成功は、もちろんあなたの才能によるところが大きいわけですが、同時に L’Association(ラソシアシオン)の編集戦略に負う部分もありますよね?
S:もちろん。彼らはいつも変わらずにいてくれるわ。そのことを忘れちゃだめね。突然本が売れるようになったから関係が変わるとか、そういうことじゃないのよ。いつも同じなの。作家と出版社の関係ってとっても緊密よ。本作りって、その両者が一緒になってする仕事なのね。私がラソシアシオンとずっと変わらない関係を続けて、ここから本を出すのは、『ペルセポリス』の第1巻を出したとき、Jean-Christophe Menu(ジャン=クリストフ・ムニュ)がほんとに支えてくれたからなの。彼はこの時から4つの異なる時期をテーマにした4巻を全部出すといってくれてたのよ。第1巻が300部しか売れなかったらどうするって聞いた時、彼、こう言ってくれたわ。「いいかい、僕は今まで金もうけのために本を作ってきたわけじゃないんだ。だから、たとえ100部しか売れなかったとしても、この本は存在すべきだと思うね」って。こういうことって、現代の社会では稀になってしまったわよね。
私が仕事をする上で、ラソシアシオンを信用しているのは、たしかに今はよく本が売れてるからいいけど、もし仮にある日、突然、売り上げが減少してしまっても、おそらく何も変わらないって点ね。私がベストセラー作家だから好意的な取り扱いを受けてるってことはないし、仮にベストセラー作家でなくなったからってぞんざいに扱われることもないはずだわ。そういうの私、大好きよ。出版社同士の買収とか販売戦略とかなんだか胡散臭いじゃない? 物を売る人がみんな根本的に悪人であるとか、悪意を持ってるってわけじゃないけど、商人って既に売れているものに基づいて、これから売れそうなものは何かって考えなきゃいけないのよね。でも、だとしたら、どこに革新の契機があるのかしら? その点から考えると、私は独立系の出版社を大いに信用してるわ。そして、独立系の出版社にとどまって他から何も出さなくても、お金持ちにも有名にもなれるという、私がその生きた証拠ね。

I:今後の予定をお聞かせいただけますか?
S:今は Winshluss(ヴィンシュルス)と『ペルセポリス』に基づいたアニメーションを作っているところよ。シナリオを思い浮かべるのがすごく難しかったわ。語り方が全然違うのね。バンド・デシネ(漫画)は絵コンテじゃないの。だから、書いたのは全くの別物よ。あくまでアダプテーション(翻案)であって、そのまま移し変えるわけじゃない。映画の結果が良かろうと悪かろうと、そんなのどうだっていいわ。どっちにしたって最善を尽くすつもり。2年間も新しい仕事を学べるわけだから、時間の無駄にはならないでしょ? そう考えれば、仕事のストレスなんて吹っ飛んじゃうわ。
それ以外では、私の次の作品『La onzième lauréate(11人目の合格者)』の原作を書いているところ。今度は父方の祖母の話よ。カスピ海に面したロシア国境にある小さな村で、バカロレア(大学入学資格)を取得した11人目の人物なの。本当に型破りな人で、父親の家から逃げ出すんだけど、その時に男に変装したりして、すごいんだから! 祖母の父親は実の兄弟を殺し、その奥さんと一緒になったの。その地域の文化はロシアの文化に似てるわね。あらゆるものがいつも、なんて言うか…、過剰なの! 私が思うに、これってこの地域の空気のせいなのよ。あるいは、食べ物のせいかもね。私にはよくわからないけど、いずれにせよ興味深い人たちであることは事実ね。65歳の時にね、祖母は突然改心したの。というのも、彼女は自分の死が近いと思っていたし、死んで地獄の劫火に焼かれたくはなかったからなのね。彼女はメッカに行って、過去を完全に否定したわ。なかったことにしたの。でも、時々なかったはずの過去の話をぽろっとだしてしまって、話のつじつまが合わなくなったりしたものだから、よくいらいらしてた。祖母は世界中で一番意地悪な人間だったわ。ほんとにひどかったんだから! でも、私が作品を通じてしようとしてるのは、世の中って単純じゃないってことを示すことなの。絶対的な悪もなければ、絶対的な善も存在しない… 祖母は嫌な人だったけど、なぜこの人が常に私を感動させてやまないのかを知りたいのよ。祖母には6人の息子がいたから、孫は18人もいたわ。その中で私だけが彼女とふざけたり、冗談を言ったりすることが許されていた。それはね、私がいつも彼女に反論していたからなの。もし誰かが彼女の前でみじめな姿をさらしたら、敬意はなくなってしまって、それでおしまい。私はと言えば、いつも抵抗していたから、相互に敬意が生まれたの。だから、冗談を言い合えるようになったのね。物語が始まるのは第2次世界大戦中よ。このテーマについて言えば、ヨーロッパ人たちはアメリカ人たちと同様に自分たちが世界の中心だと考えているから、前世紀最大の事件はこの第2次世界大戦だと思ってるわね。でもね、私の国では、第2次世界大戦なんて存在してないのよ。大戦のせいで、2次的な影響が生じた、それだけよ… イランにも Nazi(ナチ)って言葉があるけど、それは Grace(優美さ)を意味する女の子の名前よ。私もあやうくナチって名前になるところだったんだから。地球は丸くて、どの1点を取っても、地球の中心だって言えるわよね? それって、視点の問題なのよ。

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