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BDについてもっと知りたい!コミュの『L’Ascension du Haut Mal (大発作)』

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 既にネットを通じてご存知の方もいるかもしれませんが、David B.(ダヴィッド・B)によるオルタナティヴ系BDの記念碑的作品『L’Ascension du Haut Mal』(L’Association[ラソシアシオン]、全6巻、1996〜2002年刊)が『大発作』(フレデリック・ボワレ監修/関澄かおる訳)というタイトルで7月31日に明石書店から出版されます! 日本のマンガと比較すると値段は少々張りますが、B5版全1巻と日本人にも馴染みやすいサイズになっているようです。そもそも全巻揃えることを考えたら、日本語版の方がはるかに安い。これは買わねばなりますまい! 明石書店のホームページはこちら↓

http://www.akashi.co.jp/home.htm

 2006年2月刊のギィ・ドゥリール『マンガ 平壌―あるアニメーターの北朝鮮出張記』(桧垣嗣子訳)に始まって、11月のマルジャン・サトラピ『刺繍 イラン女性が語る恋愛と結婚』(山岸智子監訳/大野朗子訳→http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=8642888&comm_id=424387)、そして今回のダヴィッド・B『大発作』と、何気にラソシアシオンの作品を3発連続… 明石書店、頑張ってますねー。とりわけ今回出版される『大発作』は雑誌『本とコンピュータ』の別冊『マンガホンコ フランス語圏のマンガ(BD)たち』などで紹介されて以来、長らく翻訳が待たれていた作品であるだけに、これを快挙と呼ばずして何と呼びましょう! 2005年にフアン・ディアス・カナレス&フアーノ・ガルニドの『ブラックサッド』(大西愛子訳、早川書房)、マルジャン・サトラピの『ペルセポリス』(園田恵子訳、バジリコ)が出て以来、地味に続いているBDの翻訳出版がこれを機に爆発することを願ってやみません(笑)。これで、『大発作』と『ペルセポリス』というオルタナ系の重要な作品が日本語で読めることになったわけだから、こうなったらもうついでに他の作品も、ねえ…(笑)?
 作品の内容は上掲のホームページにおける紹介を読めば一目瞭然ですが、多くあるBDの中でも傑作の呼び声高い作品だけに、敢えて屋上屋を重ねてみましょう。とは言え、僕はまだ1巻だけしか読んでないので、1巻までの紹介ということで(笑)。これからすぐ翻訳が出るわけですし、それくらいがちょうどいいですよね。ということで、梗概は以下のとおり。

 物語は語り手の Pierre-François(ピエール=フランソワ)が両親の家で、兄 Jean-Christophe(ジャン=クリストフ)と久々に顔を合わせるところから始まる。久しぶりに会った兄は薬と運動不足のせいでめいっぱい太り、後頭部は禿げ上がり、前歯はほとんど欠けてしまっているという見る影もない姿でピエール=フランソワの前に現われる。病が彼をこんな姿に変えてしまったのだ… かつて、兄が7歳、ピエール=フランソワが5歳、妹の Florence(フロランス)が4歳だった頃、3人はどこにでもいる普通の子どもと変わらなかった。腕白で、好奇心旺盛で、ちょっぴり残酷で、夢見がちな子どもたち… 美術の先生をしている両親のもと、3人は幸せに暮らしている。ところが、ある日、ジャン=クリストフは、突然、癲癇の発作に見舞われてしまう。その日から家族の生活は一変してしまった。ジャン=クリストフの発作の突発を恐れつつ進められる食事… 両親は彼の治療法を見出すべく名医を求めて奔走する。最良の遊び相手を失ったピエール=フランソワは、絵画や読書を通じて、徐々に自己の世界へと沈潜して行くことになる。藁にもすがる気持ちで encéphalographies gazeuses(気脳写法?)なる最新の治療法などを試してはみるものの、なかなか成果があがらない… そんなある日、家族は macrobiotisme(長寿食餌療法)なる東洋の治療法に出会う… 

 基本的な筋はこんな感じでしょうか。全6巻の内の1巻ですから、まだそんな大きな事件は起きていません。単純に物語の核となる事件が次々と起きていくというタイプのBDでは全くなく、事件の端々に主人公たちの子ども時代の回想や祖父から聞いた戦争の話などが差し挟まれ、物語に厚みを加えています。子ども時代のエピソードとして兄弟の工場探検やアラブ人の青年との付き合いが語られたり、祖父の第1次世界対戦の体験から始まって、語り手(=著者)に多大な精神的影響を与えているらしい種々の戦争について意見が述べられたり、macrobiotisme(長寿食餌療法)の教義が説明されたりする。戦争の話にはかなり多くのページが割かれており、それが著者にとってかなり大きな関心を占めていることがうかがわれます。そういえば、以前読んだ同著者の『Le Cheval Blême(蒼い馬)』(http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=13123791&comm_id=424387)にも戦争に関連した夢の話が出てきましたが、それについて本書でちらりと触れられていたりもします。それから、おそらくはこれから巻を重ねるごとに深みを増していくであろう神秘主義的な思想に対する嗜好も読んでいて楽しく、その漫画による表現が非常に魅力的です。父親が『Planète(プラネット)』というオカルト寄りの雑誌を読んでいて、その影響でピエール=フランソワもその雑誌を読むようになるんですが、これが Louis Pauwels(ルイ・ポーウェル)と Jacques Bergier(ジャック・ベルジエ)が刊行している雑誌で、オカルト本好きには、おおー! とならざるをえません(笑)。兄の病を契機として、語り手は、戦争や夢やオカルティズムに関心を抱きます。これらは一見、人生の負の部分のようですが、その実、日常を相対化し、語り手により包括的な視野を与えてくれるものなのではないか(などと眉唾的なことを言ってみたり…笑)? まだ1巻しか読んでないのでわかりませんが、この本は家族の闘病記であると同時に、1人の作家のイニシエーションの記録でもあるようです。1巻を読む限りでは割とハッピーな方向に向かっている一家におそらくは過酷な運命が待っており、先の巻では感動必死ということなので、サクサク読める日本語版を楽しみにしないわけにはいきません。9月にはぜひBD研究会で取り上げたいですね!

* タイトル画像は日本語版です。真ん中と右はフランス語版。真ん中〜癲癇の発作に陥るジャン=クリストフ。右〜『四角テング』にも出てきたお米礼賛。

コメント(16)

『大発作』、今朝買ってきましたー。マンガ売場か文芸書売場にあるものとばかり思ってたんですが、なんと紀伊國屋書店新宿本店では医学書売場に… これは全く予想外でした(笑)。まあ、たしかにそういう売り方もありだよなあ… 一応話題の本を集めたコーナーに平積みにされてはいたんだけど… 他の本屋ではどんな感じなんでしょう? 医学書売場に並べるにしても、マンガ売場にも並べりゃいいじゃんって思ったりするんですが、そういうもんじゃないんだろうか…(笑)? 今日から読み始めるんで、読み終えたらまた感想書きます。
お買いあげ、ありがとうございます(笑)
自分の組版・装幀した本が、それを望む方の手に渡っていると直接わかると、本当にありがたい気持ちになります。まして組版中も、「うちでまんがやるのは難しい(売れない)」という雰囲気の社内で「これはいい作品ですよー」「絶対おもしろいですよー」と言い続けていた本ですのでな、おさらです。

紀伊国屋の新宿本店さんは、まんがの売場が別棟に別れていましたよね…? そちらにはあったのかも…確かに初めの頃は「精神医学」「心理学」のジャンルで売るか…という話がありました。うちの本はその分野の本も多いので。というか、そもそもそういう分野の本として翻訳出版のお話を受けたのだろうと思われます。社会学系のうちが、一体まんがをどう売ればいいの?というところで、現在も営業は試行錯誤です。ご面倒をおかけしますが、書店がおっくうでない方は探してやってくださいませ。もしお近くの書店で見つからなければ、どうぞ明石書店に直接ご注文ください(ちゃっかり宣伝)。

テーマや絵柄は影の濃い作品ですが、冷静な思索に満ち、乾いたユーモアと穏やかな愛情が感じられます。マニア向けとわかっていても(笑)できるだけ多くの人に読んでいただきたいと思う本です。
>田代さん
コメントありがとうございます! そして『大発作』の出版、ありがとうございました! 明石書店さん、いい仕事してますね(笑)。日本において唯一BDの翻訳出版を継続的になさっている出版社だけに、BDファンとしてはその一挙手一投足に注目しております。ぜひ今後もBDを翻訳出版してください(笑)!
 
さて、紀伊国屋の新宿本店には「Forest」というコミックやゲーム関連書籍を専門に売る別棟があるんですが、僕が見た限りでは、そこには置いてありませんでした… で、本店の検索端末で調べたら医学書コーナーにあるということだったので、本店で買った次第です。高島屋の方の店舗なら、もしかしたらマンガ・コーナーに置いてあるかもしれませんね。素人考えでは、どうせ一般書籍と一緒に売るなら、幻想文学とか神秘主義の本と一緒にすればいいのにとか思ったりするんですが、書店側にもいろんな思惑があるんでしょうね。

で、とりあえず通読しました。かなりびっしりと描き込まれた絵でB5版378ページということで、相当読みでがあります(笑)。フランス語版だと何日かかるかわからないものをサラッと読めるというのがありがたい(笑)。語り手とは一見真逆の人生を歩む癲癇を患った兄の生涯と、その兄を鬱陶しいと思いつつも、兄との間に親近性を感じずにはいられない語り手自身の自伝を縦軸に、家族の歴史と同時代の精神史を織り込んだ非常に豊穣な作品だと思います。精神的な双生児である語り手と兄の話はもちろん面白いんですが、両親や両親から伝聞した祖父母の逸話が所々に挿まれていて、魅力に溢れたそれらの話が作品に厚みを与えているような気がします。オカルトに関する薀蓄は若干マニアックですが(笑)、それはあくまで漫画にしてはということであって、難解さもありませんし、逆にヨーロッパ文化の底流を流れる神秘主義の伝統を、コミカルな形ではあれ、我々にごく近い時代に垣間見れるという意味で興味深いはずです。神秘主義に対する嗜好こそ共有していませんが、アマルジャン・サトラピの『ペルセポリス』はこの作品に多くを負ってるんじゃないでしょうか。日本のマンガ好きがこの作品をどう評価するのか非常に気になりますね。
何と、御大が書評を!
ショードヴァルくん、感涙の一文では!?

http://booklog.kinokuniya.co.jp/takayama/
カズキさん、ありがとうございます! 見落としてましたー。大感謝です! しかし、これほんと感涙ものですねー。あの高山宏がBDを論じてくれているなんて! 今、新刊の『超人 高山宏のつくりかた』(NTT出版)を読んでるところで、感激もひとしおです。BD→DB(ダヴィッド・ベー)という気の効いた言葉遊びがいかにも高山先生ですね。こんなこと考えたこともなかった(笑)。兄の癲癇が蛇のような龍のような怪物として比喩的に表現されるんですが、あれって黙示録のドラゴンだったんだー。山登りの比喩といい、見落としていたところが結構あって、勉強になります。原題への言及もありがたいし。さすがの書評です。
昨日発売の「STUDIOVOICE」10月号に、北小路隆志さんがお書きくださった書評が丸1ページ(!)掲載されました。
反応が早くて嬉しい限りです。

「テリトリー」という着眼点に、なるほどと唸りました。
確かにその通りです。
「テリトリー」=「アイデンティティー」と考えれば、この作品は己の「アイデンティティー」を死守するために闘った語り手=作者の軌跡が描かれている訳ですから、すとんと腑に落ちるというものです。
よろしかったらぜひご覧になってくださいまし。

1か月後に来日する予定の作者へのインタビューも、聞くところによるといくつかすでに取材が決まっているとのことで、楽しみにしているところです。
>仙の道さん
ご紹介ありがとうございます。早速読みました。ミッシェル・ウェルベックの『素粒子』に言及してましたが、マクロビオティックのコミュニティに参加する件を読んで僕もこの本を思い出したので、なんとなく共感を覚えました(笑)。というか、フランスのカウンター・カルチャーに触れた本ってなかなか目にすることがないので、日本語で読む限り必然的にこの本に行きつくのかもしれませんね。それはそれとして、健常者でも身体障害者でもない中間的なテリトリーというようなことを言っていて、なかなか興味深かったです。戦争というテーマについてもテリトリーという視点から捉えてましたね。紙幅の関係上仕方がなかったんでしょうけど、語り手のピエール=フランソワにとって中間的なテリトリーというスタンスを取ることがどういう意味を持つのかもうちょっと詳しく説明してもらえるとうれしかったなあ… そして、その中間的なテリトリーという立場との関係で、戦争というテーマがどのような意味を与えられているのか論じてほしかった。ザーッと読んだだけなので、読み落としてる可能性もありますが…(笑) ぜひどこかでもっと長い『大発作』論を展開してほしいですね。まあ、何はともあれ、BDが話題になるのはうれしいです。高山宏や夏目房之介といった有名な評論家が触れてくれていることだし、一般的な関心の高まりも期待したいところです。インタビューも楽しみですね。発表誌がわかったらぜひ教えてください。
藤本由香里です。
 来週、朝日新聞で「大発作」をとりあげます。
 水曜の夕刊です。よかったら読んでください。原稿はまだこれからですけど(笑)。大作なのでたいへん。
>ハニーさん
おお、それは楽しみです! 来週の水曜日の夕刊ですね? 普段新聞など買わない僕ですが、これは買わねば! 『大発作』を論じる記事が増えてきてうれしい限りです。
すいません。旅行行くんで前倒しにしてあげたので、掲載は再来週、26日の夕刊でした。
なるほど、26日(水)の朝日新聞夕刊ですね? 楽しみにしてます。
読みましたー。本日9月26日(水)の朝日新聞夕刊、「週刊コミック☆ジャック」というコーナーで、藤本由香里さんが「家族の『戦争』」という見出しで『大発作』の書評をなさっています。
わたしも読みました。その2ページほど前のイベントなどを紹介する欄にもダヴィッド・ベーの原画展の紹介がありました。日仏学院のイベントってけっこういいものやっていてもなかなか宣伝しないのですが、今回は別のスポンサーとかいるのですかね。けっこうアナウンスしてるみたい。
ちょっとお知らせが遅くなっちゃいましたが、高山宏氏が東京大学出版会のPR誌『UP(ユーピー)』11月号で、『大発作』を論じておられます。題して「アポカリプスな顔」。『大発作』そのものというよりは、作品の最後に出てくる兄弟の同一化の問題を、観相学→漫画という流れの中で、論じたもので、紙幅も限られているんですが、おおよそ余人には持ちえない視点で漫画を語っています。
>ショードヴァルさん
「UP」の記事、入手しました。さすがとしか言いようがない視点でした。

ところで12月5日発売「このマンガがすごい! 2008年度版」にて、「大発作」が18位にエントリーされたという情報を耳にしました。こちらも早く入手したいです。
>仙の道さん
「このマンガがすごい! 2008年度版」、ちらりと立ち読みしました。総合ランキングがついてるのかどうかわかりませんでしたが、夏目房之介さんや小野耕世さんなど、何人かの方がベスト5に選んでいらっしゃいました。名前は忘れちゃいましたが、1位に選んでいた方もいらっしゃいましたよ。うれしい限りですね。

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