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∞コワバナ∞コミュの[052]危険な好奇心part4

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それから5年……俺・慎・淳はそれぞれ違う高校に進んでいた。

俺達はすっかり会うことも無くなり、それぞれ別の人生を歩んでいた。
もちろん「中年女」事件は忘れることが出来ずにいたが、「恐怖心」はかなり薄れていた。

そんな高1の冬休み、懐かしい奴「淳」から電話が掛かってきた。

「おう! ひさしぶり!」

そんな挨拶も程ほどに、淳は

「実は単車で事故ってさぁ、足と腰骨折って入院してんだよ」

「え?! だっせーな! どこの病院よ? 寂しいから見舞いに来いってか?」

「まぁ、それもあるんだけどさぁ。お前、”中年女”の事って覚えてる? 事件の事じゃなくってさぁ。顔、覚えてる?」

「……何で? 何だよ急に!」

「毎晩、面会時間終わってから……変なババァが俺の事を覗きに来るんだよ、ニヤつきながら」

淳の発した言葉を聞いた途端、「中年女」の顔を鮮明に思い出した。

始めて出会ったあの夜の「歯を食いしばった顔」、下校時に出会った「いやらしいニヤついた顔」、自宅玄関で見た「狂ったような叫び顔」。
あれから忘れる努力をしていたが、決して忘れることの出来ない「トラウマ」だった。

俺は淳に「何言ってんだよ?! もう忘れろ! ほんっとオメーって気が小せぇーなぁ?!」と答えた。自分自身にも言い聞かせるように。
淳は「そーだよな……いや、こーゆーことって妙に気が小さくなるんだよ!」と。
俺は「そーゆーとこ、変わってねーな!」と余裕を見せた。俺自身もあの日のまま成長していないが。

そして入院している病院を聞き、「近いうちにエロ本持って見舞いに行くよ!」と言い電話を切った。
電話を切った瞬間、何故か胸騒ぎがした。

「中年女」

淳の言葉が妙に気に掛かりだした。

電話を切った後、しばらく考えた。
まさか、今更「中年女」が現れるはずが無い。
それにあいつは捕まったはず……いや、釈放されたのか?

というか、今思えば俺達3人は「中年女」に何をしたわけでも無い。
ただ「中年女」の呪いの儀式を見てしまっただけなのに、こちらの払った代償はあまりにも大きい。
偶然、夜の山で出会い、いきなり襲われた。俺達は何一つ「中年女」から奪っていない。それどころか、傷付けてもいない。

「中年女」は俺達からハッピーとタッチを奪い、秘密基地を壊し、何より俺達3人に「恐怖」を植え付けた。
「中年女」がいくら執念深いといっても、さすがにもう俺達に関わってくるとは思えない。
こんなことを思うのも何だが、怨むなら「写真の少女」にベクトルが向くはず!
俺は強引に「俺自身」を納得させた。

2日後、俺はバイトを休み、本屋でエロ本を3冊買ってから淳の入院している病院に向かった。
久しぶりに淳に会うという「ドキドキ感」と、淳が電話で言っていた事に対する「ドキドキ感」で複雑な心境だった。

病院に着いたのは昼過ぎだった。
淳の病室は3階。俺は淳のネームプレートを探し出した。
303号室・6人部屋に淳の名前があった。一番奥、窓側の向かって左手に淳の姿が見えた。

「よう! 淳、久しぶり!」

「おう! まぢひさしぶりやなぁ!」

思ったより全然元気な淳を見て少し安心した。
約束のエロ本を渡すと、淳は新しい玩具を与えられた子供の如く喜んだ。そして他愛も無い話を色々した。
淳といると小学生の頃に戻ったようでとても楽しかった。無邪気に笑えた。

あっという間に時間は経ち、面会終了時間が近づいてきた。

「んぢゃ、もうそろそろ帰……」

「実はさぁ、電話でも言ったんだけど」

と、淳が真顔で何かを言いかけた。
何かを、いや「中年女の事だろ?」と俺は言った。すると淳は

「気のせいだとは思うんだけど……いつもこの時間に来るオバさんがいてさぁ、何かこう、引っ掛かるっつーか」

俺は「だから、気のせいだって! ビクビクすんなよ!」と強気な発言をした。
すると淳は少しカチンと来たのか、「だから、勘違いかもしんねーっつってんぢゃん! ビビりで悪かったな!」空気が重くなった。
俺は空気を読み、淳に謝ろうとした。その時

ガラガラガラ

廊下に台車のタイヤ音が響いた。
淳が「来た……」とつぶやく。俺は視線を部屋の入口に向けた。

ガラガラガラ

台車は扉の前に止まったようだ。そして、扉が開いた。
そこには上下紺色の作業着を着たオバさんが居た。
俺は、

「何だよ! 脅かすなよ! ゴミ回収のオバさんじゃねーか」

と、少し胸を撫で降ろした。

そのオバさんは患者個人個人のごみ箱のゴミを回収しだし、最後に淳のベットに近づいてきた。
淳が小声で「見てくれよ!」。俺はそのオバさんの顔をチラッと見た。

(……!)

俺は息を飲んだ。
似ている! いや、「中年女」なのか?
俺は目が点になり、しばらくその人を眺めていると、そのオバさんはこちらを向き、ペコリと頭を下げて部屋を出て行った。

淳が「どう? やっぱ違うか? 俺ってビビりすぎ?」と聞いてきた。
俺は「全然ちげーよ! ただの掃除オバさんぢゃん!」と答えた。
いや、しかし似ていた。他人の空似なのか……?

「んぢゃそろそろ帰るわ! あんま変な事考えてねーで、さっさと退院しろよ!」

と俺が言うと、淳は

「そだな、あの女が病院にいるわけねーよな。お前が違うって言うの聞いて安心したよ。また来てくれよ! 暇だし!」

と元気よく言った。
俺は病室を出ると、足早に階段を駆け降りた。

頭の中からさっきの「オバさん」の顔が離れない。
「中年女」の顔は鮮明に覚えている。しかし「中年女」の一番の特徴といえば「イッちゃってる感」だ。
さっきのオバさんは穏やかな表情だった。
もしさっきの「オバさん」=「中年女」なら、俺の顔を見た瞬間にでも奇声をあげ、襲い掛かって来てもおかしくない。
そうだ。やっぱり他人の空似なんだ。
と考えつつ、なぜが病院にいるのが怖く、早々に家路についた。

家に帰ってからも「中年女」=「清掃おばさん」の考えは払拭しきれなかった。
やはり気になる……その日は眠りに落ちるまでその事ばかり考えていた。

次の日、「清掃おばさん」の事が気になり、俺はバイトを早めに切り上げ病院に行くことにした。

俺のバイト先からチャリで30分。
病院に着いた時には20時を回っていて、面会時間も過ぎていた。
もう「清掃おばさん」も帰っている事は明白だったが、臨時入口から病院に入り、とりあえず淳の病室に向かった。

こっそり淳の病室に入ると、淳のベッドはカーテンを閉めきってあった。
「寝たのか?」と思い、そーっとカーテンを開けて隙間から中を覗いた。

「うわっ!」

淳が慌てて飛び起き、「ビックリさせんなよ!」と言いながら、何かを枕の下に隠した。淳はエロ本を熟読していたようだ。
俺はあえてエロ本の事には触れずに、「暇だろーと思って来てやったんだよ!」と淳の肩を叩いた。
淳は少し気まずそうに

「おぅ! この時間暇なんだよ! ロビーでも行って茶でもしよか?」

と言った。

俺は車椅子をベッドの横に持って来て、淳の両脇を抱え、淳を車椅子に乗せてやった。
淳が「ロビー1階だからナースに見つからんよーに行かんとな!」と小声で言った。
俺達はコソコソと、まるで泥棒の様に1階ロビーに向かった。

途中、何人かのナースに見つかりそうになる度、気配を消し、物陰に隠れ、やっとの思いでロビーに着いた。
昼間と違いロビーは真っ暗で、明かりといえば自販機と非常灯の明かりしかなく、淳が

「何か暗闇の中をお前とコソコソするの、あの夜を思い出すよなぁ」

と言った。

「そだな。何であの時、アイツの事を尾行しちまったんだろーな」

と俺が言うと、淳は黙り込んだ。
俺は今日病院に来た理由、すなわち「清掃おばさん」の事について淳に言おうと思ったが、躊躇していた。
淳はこの先1ヵ月近く此処に入院するのに、そのような事を言うのは……と。
またあの時のように「原因不明のジンマシン」が出るかもしれない。

すると淳が

「お前、あのおばさんの事できたんじゃないのか?」

と。俺はとっさに「え? 何が?」ととぼけたが、淳は

「そーなんだろ? やっぱり似てる……いや、”中年女”かもしれないんだろ?」

と真顔で詰め寄って来た。

俺はその淳の迫力に押され、「確かに似てた……。雰囲気は全然違うけど、似てる」と言った。
淳はうつむき、「やっぱり。前にも電話で言ったけど……」と、少し声のトーンを下げて語り始めた。

「俺が入院して2日目の夜、足と腰が痛くて痛くてなかなか眠れなかったんだ。寝返りもうてないし、消灯時間だったし、仕方がないから目をつむって寝る努力をしていたんだ。そして少し睡魔が襲ってきてウトウトし始めた時、”視線”を感じたんだ……。見回りの看護婦だろうと思って無視してたんだけど、なんか、ハァハァって息遣いが聞こえてきて、何だろう? 隣の患者の寝息かなぁ? って思って薄目を開けてみたんだよ。そしたら俺のベッドのカーテンが3センチ程開いてて、その隙間から誰かが俺を見ていたんだ。その目は明らかに俺を見てニヤついてる目だったんだ……。俺、恐くて恐くて、寝たふりしてたんだけど。そして、そのまま寝てたらしく、気付いたら朝だったんだ。後から考えたんだ。”あのニヤついた目”どこかで見覚えが……。そーなんだよ、”清掃おばさん”の目にそっくりだったんだよ!」

”ニヤついた目”

俺はその目を知っている!
「中年女」にそのニヤついた目付きで見つめられた事のある俺には、すぐに淳の言う光景が浮かんだ。
更に淳は話を続けた。

「それにあの清掃おばさん、ゴミ回収に来た時、ふと見ると、何かやたら目が合うんだ。俺がパッと見ると、俺の事をやたら見ているんだ。半ニヤけで……」

それを聞き、俺が抱いていた疑問、「中年女=清掃おばさん」は確信に変わった。
やっぱりそうなんだ。社会復帰していたんだ!

缶コーヒーを握る手が少し震えた。決して寒いからでは無い。体が反応しているんだ。「あの恐怖」を体が覚えているんだ。

その時、俺の後方から突如、光が照らされた。

「コラ!」

振り向くと、そこには見回りをしている看護婦が立っていた。

「ちょっと淳君! どこにもいないと思ったらこんなとこに! 消灯時間過ぎてから勝手に出歩いちゃダメって言ってるでしょ! それに、お友達も面会時間はとっくに過ぎてるでしょ!」

と、かなり怒っていた。

淳は「はいはい。んぢゃまた近いうちに来てくれよな!」と、看護婦に車椅子を押され病室に戻って行った。
俺は「おぅ! とりあえず、気つけろよ!」と言った。
俺もとりあえず帰るかと思い、入って来た急患用出入口に向かった。

それにしても、夜の病院は気味が悪い。
さっきまで「あの女」の話をしていたからか? と思って歩いていると。
ん? 廊下の先に誰かがいる。

(あれは……清掃おばさん? いや、「中年女」か?)

「中年女」らしき女が何かしている。
間違いない! 「中年女」だ! この先の出入口付近で何かしている!

俺はとっさに身を隠し、「中年女」の様子を伺った。
どうやら俺には気付かず、何かをしているようだ。
中腰の態勢で何かをしている。俺は目を凝らし、しばらく観察を続けた。

何か大きな袋をゴソゴソし、もう一方に小分けしている?
尚も「中年女」はこちらに気付く様子も無く、必死で何かしている。

(……?)

ひょっとして、病院内の収拾したゴミの分別をしているのか(俺達の地元はゴミの分別がルールとなっている)。

その時、後ろから

「ちょっと、まだいたの? 私も遊びじゃないんだからいい加減にして!」

と、さっきの看護婦が。
俺はドキッとし、

「あ、いや、帰ります! どーも」

と言い、出入口に目をやると、「中年女」はこちらに気付き、ジィーっとこちらを見ていた。

「全く!」と看護婦はそう吐き捨て、再び見回りに行った。
いや、それどころでは無い! 「中年女」に見つかってしまった!
どうすればいい? 逃げるべきか? 先程の看護婦に助けを求めるべきか?

俺の頭はグルグル回転し始め、心臓は勢いを増しながら鼓動した。

俺は「中年女」から目を離せずにいると、「中年女」は俺から視線を外し、何事も無かったように再びゴミの分別作業をし始めた。

(え!?)

俺は躊躇した、その想定外の行動に。
俺の頭には「襲い掛かってくる」、「俺を見続ける」、「俺を見、ニヤける」と、相手が俺に関わる動向を見せると思っていたからである。

俺はしばらく突っ立ったまま「中年女」を見ていたが、黙々とゴミの分別をしていて、俺のことなど気にしていないようだった。
「何かの作戦か?」と疑ったが、俺の脳裏にもう1つの思考が浮かんだ。

”中年女≠清掃おばさん”

やはり、似ているだけで別人?!
俺と淳が疑心暗鬼になりすぎていたのか?! やはり「中年女」とは赤の他人の別人なのか?
そう1人で俺が考えている間も、「その女」は黙々と仕事をしている。

俺は意を決して出入口に歩き出した。すなわち「その女」の近くに。
少しずつ近づいてくるが、相手は一向にこちらを見る気配が無い。
しかし俺は「その女」から目を離さず歩いた。

あっという間に何事も無く、俺は「その女」の背後まで到達した。
女は一生懸命ゴミの分別をしている。手にはゴム手袋をハメて大量のゴミを「燃える」「燃えない」「ペットボトル」に分けていた。

その姿を見て、俺は「やはり別人か」と思っていると、「その女」はバッ! っとこちらを見て、

「大きくなったねぇ〜」

と俺に話し掛けてきた。俺は頭が真っ白になった。

大きくなったねぇ? オオキクナッタネェ?
この人は俺の過去を知っている? この人、誰?
この人、「中年女」?
こいつ、やっぱり

「中年女」!!

その女は作業を中断し、ゴム手袋を外しながら俺に近寄ってくる。
その表情はニコニコしていた。
俺はどんな表情をすればいい? きっと、とてつもなく恐怖に引きつった顔をしていただろう。

女は俺の目前まで歩み寄って来て、

「立派になって。もう幾つになった? 高校生か?」

と尋ねてきた。

俺は「この女」の発言の意味が判らなかった。
何なんだ? 俺をコケにしているのか? 恐怖に引きつる俺を馬鹿にしているのか?
何なんだ? 俺の反応を楽しんでいるのか?

俺が黙っていると、

「お友達も大きくなったねぇ、淳くん。可哀相に骨折してるけど、お兄ちゃんも気付けなあかんよ!」

と言ってきた。
もう、意味が全く解らなかった。
数年前、俺達に何をしたのか忘れているのか? 俺達に「恐怖のトラウマ」を植え付けた本人の言葉とは思えない。

「中年女」は尚もニヤニヤしながら、

「もう1人いた……あの子、元気か? 色黒の子いたやん?」

慎の事だ!
何なんだコイツは! まるで久しぶりに出会った旧友のように。
普通じゃない。
わざとなのか? 何か目的があってこんな態度を取っているのか?

俺は「中年女」から目を逸らさず、その動向に注意を払った。
こいつ、何言ってるのか解ってるのか?

「あの時はごめんね……許してくれる?」

と中年女は言いながら俺に近づいてくる。
俺は返す言葉が見つからず、ただ無言で少し後退りした。

「ほんまやったら、もっと早くあやまらなあかんかってんけど……」

俺は耳を疑った。
こいつ、本気で謝罪しているのか? それとも何か企んでいるのか?

ついに「中年女」は手を伸ばせば届く範囲にまで近づいてきた。

「3人にキチンと謝るつもりやったんやで……ほんまやで」

と言いながら、ますます近づいてくる!
もう息がかかる程の距離にまで近づいていた。

「あの時」とは違い、俺の方が身長は20センチ程高く、体格的にも勿論勝っている。
俺は「中年女」に指一本でも触れられたら、ブッ飛ばしてやる! と考えていた。

「中年女」は俺を見上げるような形で、俺の目を凝視してくる。
しかし、その目からは「怨み」「憎しみ」「怒り」などは感じられない。
真っ直ぐに俺の目だけを見てくる。

「あの時はどうかしててねぇ、酷い事したねぇー」

と、「中年女」は謝罪の言葉を並べる。

俺はもう、 その場の「緊張感」に耐えれず、ついに走りだし、その場を去った。
走ってる途中、「もし追い掛けられたら……」と後ろを振り向いたが、「中年女」の姿は無く、ある意味拍子抜けた。

走るのを止め、立ち止まり、考えた。
さっきのは本当に本心から謝っていたのか?
俺は中年女を信じることが出来なかった。疑う事しか出来なかった。まぁ、「あの事件」の事があるから当たり前だが。

俺は小走りで先程の場所近くに戻ってみた。
そこには再びゴム手袋をはめ、大量のゴミの分別をする「中年女」の姿があった。

こいつ、本当に改心したのか?
必死に作業をする姿を見ると、昔の「中年女」とは思えない。
とりあえず、その日はそのまま帰宅した。

俺は自室のベッドに横になり、1人考えた。
人間はあそこまで変わることが出来るのか? 昔、鬼の形相でハッピー・タッチを殺し、俺を、慎を、淳を追い詰め、放火までしようとした奴が。
「ごめんね」などと、心から償いの言葉を発することが出来るのか。

いや、ひょっとして「あの事件」をきっかけに俺が変わってしまったのか?
疑心暗鬼になり、他人を信じる事が出来ない「冷たい人間」になってしまったのか?
「中年女」の謝罪の言葉を信じることで、「あの事件」の精神的な呪縛から解放されるのか?

もう一度「中年女」に会い、直接話すべきだ。
俺は「中年女」にもう一度会う事、今度は逃げない事! と決意を固め、その日は就寝した。

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