南紀の旅コミュの賢島

　英虞(ｱｺﾞ)湾に浮かぶ面積約0.6814㎢・周囲約7.3㎞・人口217人の小島。島内からは讃岐岩製の石鏃(ｾｷｿﾞｸ)が発見されており、既に縄文時代に人間が居住していた事が知られ、古代の製塩跡も発見されている。
　江戸時代には無人島となり、指出帳には「かしこ山」と表記されている。これは干潮の時、本州から徒歩、即ち「かち」で島に渡れたため「かちこえ島」と呼ばれたものが、訛って「かしこ島」「かしこ山」となったとされ、当時も島内に水田があって本州側から農民が日帰りで耕作に出向いていた。
　昭和４(1929)年に志摩電気鉄道が開通して本土と直結され、この時から「賢島」の表記が成されるようになった。昭和21(1946)年の伊勢志摩国立公園指定、昭和26(1951)年の志摩観光ホテルの開業を期に、近鉄資本を中心として観光地化が進展した。志摩観光ホテルは昭和天皇が五回も宿泊されたため、賢島の名を高める事となった。
　賢島駅南口近くの円山公園には真珠供養塔がある。養殖真珠は人間がアコヤ貝に核を挿入し、貝が分泌する真珠層がこの核を取り巻く事で形成されるが、その真珠が取り出される時に母貝は殺戮されてしまうため、貝の供養のために建てられた物で、毎年10月22日にはアコヤ母貝の供養と真珠養殖界の振興を祈願する「真珠祭」が行われる。
　円山公園には真円真珠発明者頌徳(ｼｮｳﾄｸ)碑も建つ。西川藤吉(1874～1909)・御木本幸吉(1858～1954)・見瀬辰平(1880～1924)の業績を讃える碑で、本来は旧阿児(ｱｺﾞ)町の長澤公園にあったが、平成20(2008)年に真円真珠発明100周年を記念してここに移設された。
　円山公園は小高い丘になっているため、英虞湾の眺望を楽しむ事が出来る。
　志摩と本土を結ぶ橋としては、近鉄鉄橋と並行する賢島橋の外、島の北部と本土を結ぶ県道17号線の賢島大橋がある。賢島大橋は昭和45(1970)年に完成した長さ153ｍのアーチ橋で、海水面からの高さが17.855ｍあるため、絶好の英虞湾眺望スポットになっており、ここからの眺望は「日本の夕陽100選」にも選ばれている。
　島北部には志摩マリンランドがある。昭和45(1970)年に開館した水族館で、親会社である近畿日本鉄道が同年、大阪万博の開催に合わせて大阪難波－賢島間の特急直通運転を開始するにあたり観光客誘致のために設置された施設であり、貴重な生物の飼育に熱心なため、魚類研究者でもある今上天皇が来館された事もある。施設は水族館本館と古代水族館・マンボウ館から成る。平成21(2009)年にここで飼育されているフンボルトペンギンの「志摩ちゃん」が賢島駅の特別駅長に就任した。
　マリンランド入口には賢島(ｶｼｺｲｼﾏ)神社がある。祭神は八意思兼神(ﾔｺﾞｺﾛｵﾓｲｶﾈﾉｶﾐ)・塩椎神(ｼｵﾂﾁﾉｶﾐ)・弥都波能売神(ﾐｽﾞﾊﾉﾒﾉｶﾐ)だが、御神体は社殿の中に水槽にいる24匹のアオギハゼとオオウミウマである。頭を上にして泳ぐ魚なので「学力が上向きになるように」との意味合いが込められている。