群馬県みどり市に生まれ、横須賀で育った写真家石内都(いしうち・みやこ)は、1970年代後半より活動をはじめ、国内外の展覧会出品や写真集の刊行など、30年のキャリアを持つ現代日本を代表する作家のひとりです。 本書は1980年代末から現在までの石内の真骨頂である「身体」をテーマにしたアンソロジーです。 40歳を期に、風景や建物から人間へと目を向けた彼女は、同年生まれの女性の手足を撮影した《1・9・4・7》。以後、舞踏家大野一雄の膚を撮った《1906 to the Skin》、男姓の身体の末端を探求した《爪》、傷跡を接写した《SCARS》、《INNOCENCE》、トランスジェンダー(性別越境)をテーマとする《A to A》などのシリーズを通して、皺や傷跡といった、身体に刻まれる生の軌跡を写真にとらえてきました。 そして2000年の母の死により遺された品物を撮影した《Mother’s》、それを引き継ぐように広島の被爆者の遺品を撮影した《ひろしま》において、遺された服飾品から不在の身体をなぞり、故人が生きた日常に思いを馳せます。 限りある生の時間を終えたあと、身体は何処へ向かうのか ?本書は、写された像のむこうに、終わりのない時間を刻む無限の世界-Infinity-を探るかのような、石内都の研ぎ澄まされた眼差しをたどります。