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人物研究部コミュの伊丹十三

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ご無沙汰しております。


ちょうど10年前、PostPetをやっていた私は、猫キャラ(いわゆる「フロ」)に「コバン」と名付けて、溺愛していた。コバンという名は伊丹十三氏の飼い猫の「コガネ」(正しくは「黄金丸」)に因む。

「ねえ、私とコガネ、どっちが可愛い?」
そう訊く女はその時点でコガネより可愛くないのである。

「女たちよ!」に書かれていたのは、たしかそんな文章だったと思う。
何作か読んだが、エッセイはなかなかおもしろかった。
「マルサの女2」は私が最も好きな日本映画のうちの一つで、最後の取調べのシーンなど、暗唱できるくらいだ。
そして「黒い十人の女」や、「もう頬づえはつかない」などの映画にも、俳優としてチラリと姿を見せる。

私が勝手にそんな愛着を持つ、伊丹氏が投身自殺を図ったのは1997年の12月だった。
死因は遺書から自殺と判断されたが、誰も納得しなかった。
あれほど粋なことにこだわった人が、普段着のまま、裸足で、路地裏の駐車場に飛び降り?
女性スキャンダル?いまさら?

世間は、医療廃棄物問題を取材していたときに脅された、裏社会の人が背中に銃を突きつけて飛び降りさせた、などいろいろ推測した。
しかし未だに事の真相は不明である。
当然ながら公表されてないことも多くあると思う。
私もずっと気になっていた。
2005年に出た「伊丹十三の本」は真相が明らかになってから読もうと手に取らなかった。

しかし、真相などどうでもよくなってしまった。
彼はたぶん、長い間死にたかったのだ。

月刊「創」1998年3月号に、元「話の特集」の編集長の矢崎泰久氏の手記を見つけた。伊丹氏とは30年にわたる付き合いがあったという。

矢崎氏によると伊丹氏は
「熱心な作業とは裏腹に、どこかでいつもさめているようなところがあって、多くの卓抜なエッセイを次々に発表しながら、不満そうだった」、
「恥辱を恐れるという潔癖症のような性癖もあった」、
「始終髪の毛をひっぱっていた。人前でもやる。禿を防ぐためであった」。

満を持して創刊した「モノンクル」のあっけない廃刊、息子に対する
「伊丹式教育」の失敗、海外進出の失敗など、マルチにいろいろ挑戦するわりには、失敗もけっこうなマルチっぷりのようである。

義弟・大江健三郎へ複雑な思いを抱き、エッセイは評価されたが小説には手を出さなかった。表の顔と裏の顔のギャップのほか、晩年は特に、老いに恐怖を抱いていたという。

ほかにもきっと、人に言えない秘密をたくさん持っていたと思う。それが他の人にとっては気にならないことでも、そこにこだわることこそが、彼の美学だった。こだわり続けることによって発生した自己矛盾がそこかしこに内包された、思うようにいかない退屈な日常を生き急ぐしかなかったのだろう。
矢崎氏は自殺はいわば大往生だったとも考えられる、と締めくくっている。

今度「伊丹十三の本」を読んでみようと思う。
伊丹氏はおそらく、完璧なイメージを貫き通して生きて死ぬことを願っていたと思う。それを期待していた人たちがいたことも事実だろう。
しかし私はそんなイメージでもって彼と彼の作品を愛しているわけではない。そうお伝えしたいが、それはおそらくきっと彼の本意ではないだろうことが、ただただ残念ではある。

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