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『声の在処』コミュの最終話の一話後「新しい全てを」

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「…早苗さんって、ずっと悟美の事、見てたのか?」
「うん。入院してから、ずっと私の担当だったから。
お休みの日じゃなければ毎日会ってたから…私にとってはもう家族かな。
三ヶ月と三週間だったけど、私にとっては何年も一緒だったように思えるよ」
入院してる間はお母さんより会ってたからね。
「ふぅん…凄いもんだな」
「退院はしたけど、連絡先は教えてもらったからこれからもお世話になる…予定だよ?」
一応、また会う約束はしたし。
「あー…俺は俺で世話になったからお礼しないとなぁ…」
「そうだったね」
許可書の時もそうだったし、来てくれた時もそうだったし。
「さっきの人か?」
お父さんが、話に乗ってきた。
「ああ。悟美の担当だった人だよ」
「島田早苗さんです。芳樹さんも色々とお世話になったりしてました」
と言うと、お父さんはあごに手を当てて。
「…うむむ…芳樹も世話になったとなれば、話は変わるな。
よし、何か有ったら言えよ。手を貸してやる」
「あ、ああ…有り難う…」
…正義感、って言うのかな。芳樹さんはお父さんに似てる気がする。
「さて、まだ詳しい説明をしてなかったな。
我が家に来るに当たり、幾つか説明しておこう。
実はだな、我が家には芳樹の他に、二人の子供が居る。両方とも下だがな」
…えっ…?
「…弟と妹が一人ずつ。それぞれ恵助と美則って言うんだ」
…初耳なんだけど。
「母さんが手を欲しがってたから、きっと酷使されるぞ?」
「…母さん…そんな事言ってたのか…」
…ちょっと不安になってきたなぁ…

「さ、着いたぞ」
芳樹さんの家。普通の家。うん、普通の家。私の家より大きいけど。
「さて、荷物は下ろす時に下ろすとして、まずは恵に会ってきな。会いたがってたからな」
どんな人かなぁ…
「恵助と美則はまだ学校だよな?」
「むしろお前は何で休んだ?」
「あ、いや…」
…そう、言えば…今日は木曜…
「…芳樹さん?」
ちょっと強めに出ると。
「えあっ…そ、その…」
…すごくうろたえちゃって。
芳樹さんがあまりにも答えに悩んでいるのを気遣ってか。
「…まあ今日だけは不問にしてやる」
「…ご、ごめんなさい…」

「あら、貴女が悟美ちゃんね。初めまして。母の恵よ。
あと二人の子が居るけど、まあ帰って来るまで待ってね」
「おや、随分と好印象じゃないか?」
普段はもうちょっと厳しい人なのかな。
「可愛い子じゃない。素直そうだし。まだ十五だったっけ?」
「本当なら高一です」
高校には行ってないけど。
「そっか、人の多いところには居られないんだったね。今は平気なの?」
「はい。今は切り替えられるので大丈夫です」
便利になったよね、前に比べて。
「…うーん…」
「…な、何ですか?」
恵さんはあまり良い顔をしていない。
…機嫌そこねちゃった?
「…家族なんだから、普通に話してよ」
「あ、でも…その…」
…そっか、それも…そうだけど…まだ初対面…
「そうだぞ?もう『家族』なんだ。敬語なんて使うもんじゃない!」
…家族。
そっか。家族なんだ。
「…うん。分かった」
じゃあ、これで良いんだ。
「よしよし。じゃ、恵助達が帰って来るまで、色々聞かせて貰おうかしら。芳樹」
「何だい?」
「荷物下ろしてあげて。私と芳則は話聞くから」
「…俺一人で?」
「大した量でもないでしょ?」
結構たくさん有るんだけど…
「いや…そんな…」
「ない、でしょ?」
「…はい」
…母は強し。

「ただいまー!」
「ただいまー!」
「あ、帰って来たわ」
ばたばたと走る音が聞こえる。
「あ、おねえちゃんがあたらしいおねえちゃん!?」
「ねえねえ、お姉ちゃんってどうしてうちに来たの!?」
「あ、えっと…その…」
いきなり二人から…
「こら!ちゃんと手を洗ってうがいしなさい!それからよ!」
「はーい」
「はーい」
…母は強し。
「全く…いつでもあんな調子よ?きっと沢山手を借りると思うから、覚悟しておきなさいよ?」
恵さんはすごく楽しそうに言う。
「…覚悟…」
…覚悟、か。
「うん、しておく」
「よしよし。じゃあ皆の分のおやつでも用意して、第二幕といこうかしら」
…第二幕、か。
私の人生も、第二幕になるかな。
「悟美」
芳樹さんが、後ろからこそっと。
「うん?」
「ちょっと、来てくれるか?」
「うん」
芳樹さんに呼ばれて、席を外す。

私の部屋、と言われた部屋に来た。
今はまだダンボールだらけ。後で整理しないと。
「どうだ?」
家族の事、だろうね。
「うん。大丈夫。仲良くなれそう」
やっぱりテストされたけど、大丈夫。信じてくれる。
あの親有って芳樹さん有り、かな。
「そうか、良かった」
「…これからは…」
…私と、芳樹さんは。
「ん?」
「ずっと、一緒なんだよね?」
ずっと、一緒にいられるよね。
「ああ。ずっと一緒だ。でもまあ、二人だけじゃないけどな」
「うん。芳樹さんだけじゃなくて、皆も、一緒だね」
にぎやかに、なりそうだね。
「…でも」
「でも?」
「…『娘』は父さん達にやる。『姉』は弟達にやる。でも『悟美』は…」
芳樹さんが寄って来て。
「…『悟美』は、俺が貰うぜ」



「…じゃあ…『息子』はお父さんたち、『兄』は弟さんたち。『芳樹』は…」
私はちょっと背伸びして。
「…『芳樹』は、私がもらうね」



「…えへへ…」
ちょっと、照れるな。
「…ははは…」
「おーい!芳樹!悟美!来なさい!話の続きだー!」
あっと。
「呼ばれたな。行くか」
「うん」
出ようとしても、芳樹さんが動かない。
「…芳樹さん?」
「…悟美」
いきなり私を抱きしめて。
「…大好きだ」
…あっ…
「…芳樹さん」
「…うん」
「…大好き」



…私は、新しい家で、幸せになれる。
…皆の分も、幸せになるよ。
…いつか、皆に返してあげるよ。

…芳樹さんだけじゃない。

…早苗さん…お母さん…

…お姉ちゃん…

…私、幸せになるよ。きっと。

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