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Pの『THE つだん部屋』コミュの視線

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【コピペ】



1限目の講義が終わる。
教室に人は少ない。
朝早くから真面目に勉強するなんて信じられない、とは美加の言。
1,2年生のうちに単位は稼いでおいた方が良いのにな、と思う。
なんとかなるわよ、とも美加は言っていた。
そうだろう。
きっと彼女はなんとかする。
不器用な私と違って。
少しの劣等感。
軽くため息をついた私に、教室に入ってきた男の人が話しかけてきた。

「鮎川さん、神尾さん来てない?」

やや長髪の男性。
名前は何といったかな?

「美加は・・・今日は3限からだと思います」

「あぁ、やっぱそうか。こんな早くに居るわけないよな。電話したんだけどさー出ないんだよねー。まだ寝てるのかなぁ」

時刻は10:40過ぎ。十中八九、寝ているだろう。
目は覚ましているかもしれないが・・・まぁ、寝惚けているだろうなと思う。

「何か用事があるなら、伝えておきましょうか?」

「いや、いいよ。また電話してみる。しかしあれだねぇ・・・鮎川さん、1限から頑張ってるねぇ。単位、結構いってるんじゃない?」

と、言いながら男は無遠慮な視線を私に向けてくる。
髪、顔・・・でしばらく止まり、胸、腰、脚・・・と上から下に視線を感じる。
9月のまだ陽気な季節、やや薄着なのがいけないのかな・・・いや、自意識過剰だな。
気をつけなくちゃ。
嫌な女になりそう。

「今のうちに取れるものは取っておこうと思って。それじゃ、次の講義があるから・・・」

席を立って、次の教室へと向かう。
男は講義を受けに来た様子でもなく、どこかに去っていった。
何と思われたか?簡単に分かる。
つまらない女、だろう。
別に構わない。
私は私だ。


2限も終わり、昼食を食べようと構内のラウンジに向かっていると、前から美加がやってきた。

「おはよーう、くぉのふぁー」

古乃羽(このは)。
私の名前だ。
砕けた発音で呼びながら、美加が手を振ってこちらに駆けてくる。
周りの人が何事かと、こちらを見ている。

「おはよう、美加・・・恥ずかしいからそんなに手、振らないで」

抱きついてきそうな勢いだったが、なんとか押し止める。
周りの視線が痛い。

「古乃羽、これからお昼でしょ?ボクと一緒に食べない?」

「もちろんいいけど・・・何、そのボクって」

「どうかな、ボクっ子。なしかな?」

「20歳でボクっ子は無いんじゃない?」

「年のこと言うなよー。まだ10代だからって・・・」

12月生まれの私はまだ19歳。
5月生まれの美加は一足先に20歳になっていた。
美加とは小さい頃からいつも一緒だった。
内気でイジメられがちな私を庇ってくれたりもした。
明るい性格。
物怖じしない性格。
誰とでも打ち解けられる、そんな性格。
私は美加が大好きだ。
憧れるところもある。
本人には恥ずかしくて言えないけど。


2人で昼食を食べながら、ふと思い出す。

「そういえば朝、美加のこと探している男の人がいたよ」

「ん?誰?」

「ちょっと長髪の・・・名前が思い出せないのよね。ピアスと指輪してた」

「んーー・・・誰だろう。長髪ピアス、指輪セットの人なんて居たっけな・・・?」

「あ、美加に電話したって言ってた」

「電話?」

携帯を確かめる美加。

美加「着信は・・・昨日の夜の古乃羽が最後。それから1件もないよ?」

「じゃ、番号間違えていたのかな」

「・・・ははーん、分かったゾ?」

美加がニヤッと笑った。

「その人、どうだった?古乃羽の好みだったりしない?」

「私の好み?」

「多分ねー、その人、古乃羽に気があるんじゃないかなー。で、話しかける口実に私を使ったわけ」

「えー・・・」

「ほら、どうなの?イイ男だった?背は高い?どんな格好してた?お金持ってそうだった?」

「お金って、別に・・・うーん格好は・・・」

姿かたちを思い出してみる。
が、思い出すのはあの嫌な視線だけ。

「ダメかな・・・無い、と思う。何か気持ち悪かったし・・・」

「うひゃー、気持ち悪い、か。それは可哀想に。哀れ、謎の男」

「美加の知り合いじゃないの?私、どこかで見たような気がするんだけど」

「私の知り合いには居ないよー、そういう人。どこかって、構内のどこかで見ただけでしょ?」

「そうなのかなぁ・・・」

「よし、私が探してやろう。顔や体の特長を言いたまえ、古乃羽くん」

特長。
もう一度思い出してみる。
顔の特長。

「目が2つ、鼻が1つ、口が1つ・・・」

「うんうん・・・ってォィー。あぁ、古乃羽がそんな冗談言うなんて・・・ショック」

「んー・・・半分冗談。なんか思い出せないの。特長、特長・・・」

思い出す・・・ダメだ。
何でだろう、ほんの2時間くらい前なのに。
ピアスと指輪をしていた・・・していたっけ?そんなところ見たかな。
長髪。
それだけは確かだ。
でも長さは?肩くらい?背中まであった・・・?

「おーい。古乃羽さまー。勉強しすぎじゃないのー」

「うーん、忘れちゃった。思い出したら言うね」

「ほい。ま、どうでもいいんだけどね」

その後、食事を終えた美加はイヤイヤ講義に向かった。
私はその時間は空いているので、また後でねと言って、静かな所を求めて図書室へと向かった。


図書室でレポート用紙を広げ、さっきのことを考えてみる。
ここは静かで、しかも涼しい。
物思いに耽るには最適だろう。
特長。
なんでもいい。
思い出したことをメモしてみようと思う。
何故こんなに気になるのか?
思い出さなければならないような気がしてならない。
別に好みとかではないのは確かだ。
なにしろ、嫌悪感すら感じたのだから。
・・・嫌悪感?そんなに不快だったかな。
ジロジロと視線を送ってくる人は、たまにいる。
普段はそんなに気にはならない。
でもあの目は・・・嫌だった。
まるでこちらの全てを見透かすような目。

【特長:嫌な目】

とレポート用紙に書く。
他にはなんだろう。
目の色は?話をしたのだから、一瞬でも目を見ているはず。
えーっと、目は・・・あれ?
なぜかサングラスが浮かぶ。
サングラス・・・してたっけ?
あ、でも口には・・・マスクもしていたような?
・・・帽子もかぶっていたかな?
そもそも、男?本当に男だった・・・?
声はどんな声?口調は?
おかしい、なにこれ。
イメージが勝手に崩れていく。
気持ち悪い・・・頭を抱えて机に伏す。
考えれば考えるほど、気持ち悪くなってくる。
頭の中がぐにゃぐにゃと歪んでいく。
思い描いていた顔の、目が、鼻が、口が、歪んでいく。
そしてイメージは崩れに崩れ、ついにそれは異形のものとなった。
オカルト本で見た挿絵の悪魔の顔。
それをサングラス、マスク、帽子で隠している。
しかしそれでも隠し切れない、尖った耳。
大きく裂けた口。
鉤鼻。
真っ黒なサングラスの奥で、怪しく光る目。
いけない。
そっち系の本とか読みすぎかな。
中学のときオカルトにハマッて以来、そんな本ばかり読んでいる。
この趣味に美加が付き合ってくれたおかげで、更に拍車が掛かった。
顔を上げ、眼鏡を外して机に置く。
度の強い、お世辞にも可愛いとは言えない眼鏡。
美加はコンタクトレンズを勧めるが、あれは怖くてダメだ。
気分転換にと、窓から外に目をやる。
眼鏡が無いと視界がぼんやりして、よく見えない。
見ないで済めばよかったな、と思う。
そうすればこんなに思い悩むこともなかっただろう。
大学の校舎、3階にある図書室からは、キャンパス内が一望できる。
眼鏡のレンズを拭き、掛け直し、また外を見つめる。
講義が行われている時間なので、歩いている人は少ない。
大学で知っている人と言えば、美加の他には同じ学科の女の子数名。
それと、この前肝試しに・・・美加に強引に連れて行かれた肝試しに、一緒に行った男の子2人。
あれは何だか怖かった。
足音や笑い声を聞いた気もするけど、結局全部気のせい、で片付けてしまった。
それより、場合はどうであれ、あの時、初めて男の人と手をつないだ。
手を引いてくれた彼、雨月君、といったっけな。
ドキッとした。
力強くて、恐怖心がなくなったのを覚えている。
彼はもっと別のものを見ていたようだけど、何を見たのだろう。
機会があったら聞いてみたい気もする。


窓の外をぼーっと眺め、なんとなく誰かを探す。
・・・と、向かいの校舎の隅に人影を見つける。
外壁に寄りかかっている。
もしかして・・・目を凝らしてみる。
あの顔。
あの男だ。
悪魔・・・じゃない、あの長髪の男だ。
顔ははっきり見えた訳じゃないけど、分かった。
黒いジャケットを着ている。
そうだ。
さっきも着ていた。
こちらを見ているような気がする。
行ってみよう。
はっきりさせたい。
美加のこともあるし、学校に来ていると教えてあげよう。
レポート用紙を鞄に入れる。

【特長:嫌な目】

とだけ書いたメモ。
そうだ、あの目。
気を付けないと。
余り気にしないようにしないと。


校舎の外に出る。
向かいの校舎の隅、さっき見たところを見てみると、ジャケットの後ろ姿が見えて、校舎の裏に消えていった。
私は小走りで、その後を追った。
校舎の裏には、色々なサークルの部室が並ぶ、プレハブ小屋があった。
ジャケット姿を探す。
いた。
部室の1つに入っていくのが見えた。
何のサークルだろう。
ここまで来るのは初めてだ。
入口まで行ってみるものの、何の部屋なのか分からない。
他の部屋には『○○愛好会』とか『××同好会』とかあるのに、ここには何も書いてない。
それと、この雰囲気。
入口から感じる、この冷たいような、しかし熱いような風と、圧迫感。
それでいて中に誘われるような感覚・・・
この前と同じだ。
廃校で感じたものと。
これって霊感なのかな・・・
嬉しいような怖いような、複雑な気持ちになる。
オカルトの世界を見ているうちに、自分にも霊感があったら、なんて考えたこともあったが、実際そうなると困ることになる。
だって・・・怖いもの。
どうしよう。
明らかに誘われている。
当然、一人で入ってはいけない気がする。
誰かを呼んでくる?誰を?
美加は講義中だ。
終わるまで待つ?
なぜか彼の・・・雨月君の顔が一瞬浮かぶ。
まさか。
連絡先も知らない。
少し迷った末・・・一人で入ることに決めた。
そうだ。
私はもうすぐ20になる。
いつまでも美加に頼っていちゃダメだ。
きっとこの決断は間違っているのだろう。
でもここで引き返したら、私はきっと、ずっと弱いままだ。
自分を変えないと。
はっきりさせるんだ。
意を決し、私は部屋に入ることにした。



※コメントに続きます

コメント(3)

※続き



部屋の扉をノックする。
思った通り返事はない。
確実に中に居るはずなのに。
扉に手を掛けて、開けてみる。
扉は、これも思った通り、開く。
中に明かりは点いていない。
これも思った通り・・・
罠に掛かったウサギ。
それが今の私だろう。
中には狼が居て、私はきっと・・・
いや、考えちゃいけない。
それも思った通りになりそうだから。
今は別のことを考えよう。
見ない。
見ないようにする。
目を見ない。
部屋の中に入る。
扉は閉めるべきだろうか。
常識で言えば、閉めるべきだろう。
明かりが無いといっても、昼間だ。
部屋の中は真っ暗な訳じゃない。
窓から光が差し込んでいる。
私は少し迷ってから扉を閉めた。
これもきっと間違った選択なのかな、と客観的に考えてしまう。
中に入ったものの、部屋の正面は見ないようにした。
なぜかは、単純明快。
正面にあの男が居るのが分かったからだ。
胸の前で鞄を抱くようにして、手元をじっと見つめていることにした。

「あの・・・」

問いかける私にかぶせるように、前から声がした。

「やぁ、鮎川さん。何か用?」

普通の人の声だ。
朝聞いたのと同じ声。

「あ、すいません。勝手に入って。あの・・・美加が、神尾さんが、来ました」

しどろもどろに私は告げる。

「へぇ・・・それを言いにわざわざ?」

ニヤニヤしたような声が聞こえる。

私「はい、えっと・・・それだけです。探している人がいる、って伝えておきました」

「あ、そう・・・」

男が近寄ってくるような気配がした。

「じゃあ、私、これで・・・」

「ちょっと待ってよ」

きた。
どうする?
走って逃げるか?
ダメだ。
それじゃ入ってきた意味がない。
このモヤモヤする感じを、なんとかしたい。
この男が何者なのか、はっきりさせたい。

「あのさ・・・もう、分かってるでしょ?鮎川さん」

「・・・なんでしょう」

男が目の前まで来た。
私は手元を見続ける。

「・・・何を、だろうね。どこまで分かっているのかな?この子は・・・」

まただ。
ジロジロとこちらを見ている。
この視線が嫌だ。

「こっち、見ないね。分かっているからだよね」

「だから・・・なんでしょう」

少し語気を強めて言ってみる。

「俺はさ。神尾なんて奴知らないし、あんたと会うのも今日が初めてだよ」

美加のことを知らない。
予想通りだ。
でも、私と会うのも初めて?

「あんたは知っているんだろ?俺のことをさ」

知っている・・・気はした。
でもなんだろう。
いつ会った?覚えていない。

「俺の顔、分かる?どう見えている?」

何のことだろう。
顔は思い出せないのに。
想像した、悪魔の顔のことを言っている?
でも違う。
あれはオカルト本の挿絵がイメージと重なっただけだ。
それとは別に、顔があるの?

「ちっ・・・何も言わないんだな」

不機嫌そうだ。
イライラしている。
いけない、何か言わないと・・・

「あの・・・」

「ん?」

「顔とか・・・分からない、です。よく・・・思い出せなくて」

「じゃあ、顔をあげて見てみろよ。それともこっちから覗き込んでやろうか?」

だんだんと乱暴な口調になっている。
私は怖いのを必死で我慢した。

「いえ・・・いい、です。もう、その・・・」

「もう、見るんじゃねえぞ?」

「え?」

見ろ、とか、見るな、とか何を言っているの?どっちなの?

「俺のこと、霊視するなって言ってるんだよ。分かってるんだろ?」

・・・?
咄嗟のことで、私は顔を上げそうになり、慌てて押し止まる。
霊視?何のこと?そんなことした覚えもなければ、出来るわけもない。

「俺は、邪魔するやつは許さないぜ・・・?」

そう言って、ますます視線は強くなる。
まるで、目だけが私に迫ってくるような、そんな感じがする。

「へぇ・・・意外と可愛い顔してるじゃない」

耐え難い、不快な視線・・・なんだろう。
よくある好奇の目じゃない。
まるでこちらの全てを射抜くような視線。



※続きます
※続き



「とにかく、だ」

男は少し離れる。
それと同時に視線も離れた。
私はホッとする。

「二度と、俺を見るな。いいな?分かったか?」

何を分かれと言うのか。
さっぱり分からない。

「分かったか、って言ってるんだよ!はい、か、いいえ、だろ!?」

急に怒鳴るような声で私を問い詰めてくる。

「・・・は、はい」

意味は分からないが、消え入りそうな声で答える。

「よし・・・それじゃ、帰りな。こんなところにいたら、危ないぜ?」

不気味に優しい口調になる。
しかし暗に感じる嘲笑。
きっと笑っているのだろう。
私を。
しかし私にはそれ以上何も出来ず、後ろ手で扉を開け、何も言わず外へ出た。
出る瞬間はっきりと、勝ち誇ったような、あざ笑うような声が聞こえた。


外に出た私は、校舎の方へフラフラと歩いていく。
涙が溢れてきた。
怖かったからではない。
悔しかったからだ。
部屋に入る前の決意。
正体をはっきりさせてやる、と思った決意は、簡単に崩れ去った。
そして意味の分からないことを約束させられ、笑われ、部屋を追い出された。
いや、追い出されたのではない。
逃げたのだ、私は。
それが悔しい。
無力で、臆病で・・・言いなりになってしまう自分。
昔からずっと変わらない・・・変わりたいのに。
校舎の陰に着いた私は、しゃがみ込んでしまった。
もう立つのも嫌だ。
私は泣き続けた。


・・・どれくらい時間が経ったか。
チャイムの音が聞こえる。
涙は止まっていた。
しゃがみ込んだままの私は、何を見るでもなく、泣き腫らした目で構内を見渡す。
向かいの、図書室のある校舎。
講義が終わったので、何人かの人がぞろぞろと出てくるのが見える。
その中に、あの人がいた。
雨月君だ。
駆けていって声を掛け、話を聞いてもらおうかと思ったが・・・やめておいた。
こんな状態で話なんてできないし、何より泣いて腫れぼったくなっている、こんな顔を見られたくない。
彼の姿を目で追う。
そして、ふと思う・・・彼は、私を変えてくれるだろうか、と。
変えてくれる。
そんな気がする。
いや、変わるのはもちろん自分だ。
彼はきっと、そのきっかけを与えてくれる。
そう思える。
そんな、ビジョンが見える。
すると不意に、不思議な感覚に襲われた。
私は彼を目で追っていただけだが、いつの間にか、そこに別のものを見ていた。
イメージが頭に浮かんでくる。
彼の姿。
そしてその後ろにあるもの。
光り輝く、暖かい存在。
力強いその鼓動・・・
私は思い出す。
あの男の言っていたこと。
私は霊視をしている、と言っていた。
あれは、こういうことなの?
だとしたら・・・だとしたら、そうだ。
これは私の力ではないか。
心の奥に火が灯る。
あいつはミスを犯したんだ。
私は知らなかった。
あいつが教えてくれたんだ。
気付かせてくれたんだ。
私は何かを見ることができる、ということを。
ならば、私はこれを信じよう。
私の目に見えたものを、信じよう。
鞄から携帯を取り出し、美加に電話する。

「はーい。どうしたの?」

明るい声。
その声を聞くだけで癒される。
美加はいつも、私に元気をくれる。

「あー・・・えーっとさ、ちょっとお願いがあるの」

「何々?古乃羽お嬢様のお願いなら、何でも聞いてあげるわよ?」

さて、どう言うか・・・確実に誤解されるだろうな。

「えっとさ、この前の肝試しのときの男の子、雨月君のことだけどさ。あの人、どんな人なのかな」

「どんなって・・・こ・・・古乃羽!ついに・・・ハートを射止められちゃったの!?」

「なんか古い表現だね・・・いやあの、好きとか嫌いとか、そういう訳じゃないんだけど、ちょっと気になって・・・」

あぁ、ダメだ、余計誤解されそう。

「なるほど、なるほどねぇ・・・古乃羽はああいうのが好みかぁ・・・よし、分かった。美加お姉さんに任せなさい。古乃羽なら絶対大丈夫!うまくいくよ!」

・・・まぁいいか。
詳しく説明できないし。
それに彼なら別に・・・誤解されて嫌な気もしないかな。

「ごめんね。私から話しかければ済むことなんだけど・・・」

「まさか。古乃羽にそんな真似させないって。ばっちりセッティングしてあげるから、楽しみにしてなさい」

セッティング。
また会わせてくれるってことか。
気が早いなぁ・・・
それにしても、美加の中で、私は相当なお嬢様のようだ。
でもそうやってくれるのには、甘えてしまう。

「うん。ありがとう」

「はいはーい。んじゃ、また夜、メールか電話するねー」

電話を切り、携帯を鞄に仕舞う。
目を閉じて考える。
私は大丈夫?大丈夫だ。
もう、負けない。
逃げたりしない。
私は立ち上がり、陰から出て、光の下へと向かった。



※終わり

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