■しかし、こうして全音源を聴いたうえで、逆に気になる点もないわけではない。仮にも永きにわたってスタジオ・ミュージシャンと誤解されていたほどの彼らの演奏、及び曲作りのセンスは、どうしてもただの素人だとは思い難い。ダン・ヒックス的にスウィングする8曲目「WATER MY DOING HERE?」、11曲目「HAPPYTIME SPRINGFACE AND FLOWERS」などは特に、リーダーのロジャー・ケリーがブックレット内でも言っている"全員ド素人"発言を疑いたくなるほどの実力を感じさせるのだが・・・。
■ではここで、本来シングルA面となるはずだった1曲目、「My Mother Was a Big Fat Pig」の内容(意訳)を掲載したい。
♪母さんはでっかい太ったブタ(big fat pig)/自分で掘った穴に暮らしてた(hole she done dig)/父さんはでっかい年寄りのヒキガエル(big old toad)/道の真ん中の穴に暮らしてた(hole road middle there of)/妹はしわくちゃの魔女(crummy witch)/汚い溝にある木の中で暮らしてたんだ(dirty ditch)/弟は弱っちいカエル(slimy frog)/腐った丸太の中の沼地に暮らしてたんだ(rotten log)/おばあちゃんはくねくねのヘビ(wiggle snake)/よどんだ湖の丘の上に暮らしてたんだ(stagnant lake)/ おじいちゃんは緑色の・・・(colour green)/象の脾臓の上のイボに暮らしてたんだ(elephant spleen)/おばさんは心臓病の静脈(cardiac vein)/ゼーゼーいってるクレーンの心臓に暮らしてた(whooping crane)/おじさんは変な病気(strange disease)/ 忘れられたそよ風の中のあおり風に暮らしてた (forgotten breeze)/ブタ!ヒキガエル!魔女にカエル!/穴!道!溝に丸太!/ヘビ!緑色の・・・!静脈に病気!/湖!脾臓!クレーンにそよ風!/いとこはカンガルーだったよ/そして俺たちゃ「スクエア・ルート・オブ・ツゥ(√2)」さ♪《ブックレットによると歌詞の最後に出てくる"THE SQUARE ROOT OF TWO(√2)"とは、ドライヴィング・スチューピッドの前身バンドのことらしい。この曲は子供向けノベルティ・ソングをちょっぴりホラー仕立てにした感じなんだと思う。タチの悪いセサミ・ストリートってところだろうか。幼心にガチャピン、ムックに対して恐れをいだいたあの頃のトラウマを思い出させるような・・・。終盤、倍速ビートに乗って、畳み掛けるように歌詞のキャラクターが全員集合してしまうあたりは、全く悪夢そのものな光景だ。》
■そして、シングルB面曲として予定されていながら、16曲目と差し替えられてしまったため(KRはチェス傘下のレーベルだったから、よりブルージーな曲を選択するようグループに要求したのか?)36年間、陽の目を見なかった、ある意味最も哀れな曲だと言える6曲目「Green Things Have Entered My Skin.Gladys.」の大意を。♪ミドリの物体が入った!/皮膚に入った!!/ミドリの物体はすごく小さくて、真ミドリ!「グラディス、どういうこと!こいつらどっから来たの? なにする気なの??どうして君じゃなくって僕なの」/ドアを入るなりグラディスの絶叫/「床のミドリの物体はどうしたの!!!」/ショック状態の彼女に言ったんだ/「ミドリの物体が入った!皮膚に入った!!」/ミドリの物体が入った!皮膚に入った!!/かわいいベイビーを海岸に連れ出せ!/ドアの前まで来てる!/見上げれば・・・そこに・・・(ギャー!!)/ミドリの物体が入った!/皮膚に入った!!/どっから来たの?なにする気なの??/どうして君じゃなくって僕なの?!?♪《サイファイ・ホラー・ソング(??)。ドライヴィング・スチューピッドはとにかく緑色にこだわる。以後もしつこく、キーワードとして緑色なサムシングが登場する。この曲で歌われるミドリの物体とは・・・??》
■では、次は前述の曲に代わって正式リリースされ、リイシューに於いては後のガレージ・マニアに最初に認識されることとなった16曲目「The Reality Of (Air) Fried Borsk」を。
■12曲目「Greensleeves(The Twa Corbies)」〜この曲は16世紀の古くから伝わる(欠伸)おなじみのイギリス民謡「グリーンスリーヴス(結局また緑かい!!)」をやってるのだが、その歌詞があまりに女々しい(さんざん貢いだ不倫相手→宮廷の女に振られた挙句、なお彼女の幸福と繁栄を祈るよ..涙涙云々・・・とかだいたいそんな感じ)ためか、それじゃつまらん、とさらに関係ないスコットランド・トラッド・ソング「TWA CORBIES(2羽のカラス)」の詩をそのメロディーに強引に乗せてしまった、レイジもビックリ究極のミクスチャー・ソング・・・ではないと思う。