職場、現場で体験した不思議な話コミュの百物語三十六話

呪いの面を見て思い出した。

呪いの道具箱。

記憶が多少曖昧だが、十代後半位の話。

場所は新大久保のとある居酒屋でのお話。

その頃はまだバブルの後半、自身は築地でマグロの仲買人。

知人繋がりでその居酒屋の社長と知り合い意気投合。

仕事とは別に遊びに行ったり、悪さしたりしていた。

当時ヤクザや中国マフィア、東南アジアのマフィアなど普通にゴロゴロしていた。
中には店内で拳銃を見たりした事もあったが、日常茶飯事だった。

近所に事務所の有るヤクザと以前喧嘩になり、大暴れした事がきっかけで仲良くなり、ヤバい所に付き合わされたりしていた。

とある工務店が倒産し、荷物の運び出しに付き合わされた。

会社は馬場、そこそこの規模の会社だ。

他の若い衆も数人おり、俺が態度が大きい為何処かの偉いさんと勘違いされ、二人で面白がってそのまま演技してた。

若い衆。

兄貴〜これどうしましょうか

あ〜それは車(トラック)だな…

これは〜

だんだん飽きてきたらしく、自分で考えてやれと言い、二人で事務所の奥に…

事務所の中は大体の物は無くなっていた。

神棚のしたの押し入れみたいなスペースに少し錆付いた道具箱。

後から来た知人みたいな人が、これ貰っていいかなと…

おおいいよ〜と…

その人も建築関係だそうだ。

その会社の倒産理由を聞いたら。

奥さんが、宗教に嵌まり金を散々持ち出し、家族で口論になり奥さんが社長の腕を工具で殴ったのが原因で使えなくなったのと、元請けからの入金が伸び伸びになったのが原因らしい。

数ヶ月して居酒屋にてヤクザと再開。

会話のネタが尽きた時。

お〜そう言えばこの前来た社長覚えてるか

まあ一応…事務所から工具箱持って帰った人ですよね

そうそう、その社長。

どうかしたんですか

あの社長、現場で転んだ時に近くにあった工具箱に顔ぶつけて失明したそうだぞ。

大変ですね〜

更には数ヶ月後、そこの経理の横領と息子の使い込みで倒産。

知人の工務店が全て引き取ったと聞いた。

その後、知人の工務店の二代目にバイトに誘われ大久保の現場へ。

片付けのバイト。

作業終了近辺の休憩中、トラックの荷台にどことなく見覚えの有る工具箱が…

社長に何気なく工具箱の事を聞いたら、他の職人さんの持ち物だと判る。

三日目位の昼飯時…

その人は先程の引き取った会社の社長の息子で、独立したのだと聞いた。

で、独立理由は、親父さんの会社が倒産して、自殺したのだと。

余計な話はしない様にと知人の二代目に言われた。

三年位経った頃、久しぶりに二代目に合った。

調度、バブルの終焉を迎える頃だ。

昔話をしていた時、以前独立した息子の話になった。

二代目の会社の下請けをやっていたが、足場から落ち、右腕が鉄筋に刺さり切断したそうだ。

普通なら切断までいかない怪我なのに、菌が入ったのか、腐り切断するに至ったそうだ。
細かい話は判らないが。

道具類を預かったままになっていて、最近、自殺してしまい、捨てる訳にはいかず邪魔だと…

更に二年後…

その二代目の葬式に行った。

二代目も昔は中々の不良だったので、始めに書いたヤクザの知人。
そこからの情報で亡くなった事を知ったのだ。

葬式の日。

事務所兼自宅に行くと沢山の人が。

知らない人ばかりで人混みを遠回りしながら避け玄関へ。

焼香しいざ帰ろうとした時、ヤクザとばったり。

一緒に帰ろうかとまた人混みを避け進むと作業所の入口付近まで来ると雨が降って来た。

濡れるのが嫌だったので二人で作業所の中でタバコを吸って居ると、ガシャと突然音が…

振り返ると、神棚が…

その前に作業台…その上には見覚えの有る工具箱…

あの工具箱…

あの時に見て以来、倒産や社長が亡くなった会社で見るんですよね〜と…

んな工具箱なんか何処にでもあんだろ訳わかんね〜事言ってんなよと一笑された。

でも、間違い無い。

箱の脇に、最初の会社のお札形のステッカーが貼ってあるもん…

一時期流行ったステッカーが…

何故気になったのか未だに判らないけど、不幸が起こる会社には必ず有る。

自身が勝手に呪いとしてるが、間違い無いと思う。

道具箱は職人の命だから。


二代目の死因は、従業員とのトラブルで工具で頭を殴られた事による殺人事件だった。