[mixi]ニューギニア戦 - 戦史研究室

[96] mixiユーザー 01月20日 14:07

８月２７日、遅れて到着した歩兵第１４４連隊第３大隊が正面攻撃に加わったが、状況は変わらず、２８日、敵陣左翼に回り込んだ第３大隊と正面からの第１大隊の攻撃が続いた。

２９日、早朝から８時間にわたっての正面攻撃。敵陣左翼の一角を奪い取ったが抵抗はやまず、日本軍の損害は増えていく。迂回隊となって東側に大きく回り込んでいった第２大隊との連絡も途絶えたままだった。

３０日朝、状況変わらず。司令部に詰めて事態を憂慮していた歩兵第４１連隊小岩井光夫大隊長は、支隊長以下参謀の顔色にも焦りの色が見えていると書いている。
そこに、敵陣左翼にまわった歩兵第１４４連隊第３大隊の連絡兵がやってきた。連絡兵は苦戦の状況をこう報告した。
「自分の中隊は、道路の下の一軒家で付近攻撃中でありますが、敵は非常に頑強であります。中隊長殿も負傷され、自分の分隊もほとんどやられました。弾薬はもういくらもありません。弾薬を補給していただきたいのと、患者を後送していただきたいために連絡に参りました」（「ニューギニア戦記」）

その日午後２時すぎ、待機中であった歩兵第４１連隊に出動命令が下された。敵陣左翼を求めて攻撃せよとの命令であった。小岩井大隊は東側に大きく迂回していった歩兵第１４４連隊第２大隊とは逆のコースをとり、西側から回り込んだ。
そして夕方、敵陣地のかわりに予期しなかった道に出た。ポートモレスビーに通じる道である。

８月３１日早朝。小岩井大隊は夜を明かした地点から南方約８００メートル、通称「三軒屋」を攻撃目標と定め、斥候を出した。そこはもぬけの殻となっていたが、それがイスラバであった。小岩井大隊は一発の弾も撃つことなくイスラバの占領に成功したのである。
イスラバには、多量の弾薬とともに乾パン、缶詰などの食料も残されていた。大量の食料は小岩井大隊だけでなく南海支隊の全員にも分配された。

こうして１週間にわたる頑強な抵抗の後、イスラバの陣地は陥落した。そこは高地脈の頂上ではあったが、最初の１つにすぎなかった。行く手にはさたに峻険な峰が、折り重なるように横たわっていた。
しかも、ほとんど無傷でイスラバに達した小岩井大隊にくらべ、正面攻撃を敢行した歩兵第１４４連隊の損害は甚大であった。戦死傷と下痢、マラリアなどの疾病によって、１個中隊の人員１７０～１８０名が平均して５０～６０名に減少していたのである。実に６０パーセントを超える損害であった。

[97] mixiユーザー 02月11日 17:24

スタンレー山系は、その横断に約５日を要するほどの深い山系であって、横山先遣隊配属の歩兵大隊がデネギを占領した時、横山先遣隊長はスタンレー山系の頂上を占領したと報告して、ラバウルにあった南海支隊長および第１７軍司令部を喜ばせたことがあったが、イスラバの占領によって、南海支隊はようやくその最初の高地脈の頂上を制し得たにすぎなかった。
日本軍は当初、スタンレー山系の頂上を占領すれば、その後は南方斜面を降りることによって、ポートモレスビーに進出することが出来ると考えていた。これは山を越える者が多くの場合陥る錯覚であったが、特にスタンレー山系の山容は、まったく山また山の連続であった。

すでに南海支隊長は、その前進を控制する第１７軍命令を受領していた。しかし、その命令は、「スタンレー山系南側付近の要線に進出せば、爾後の前進を控制すべし」とする趣旨のものであって、南海支隊はまだ最初の高地脈を突破したに過ぎなかった。たとえ軍命令がスタンレー山系の山容を理解しないで下令されたものであっても、ポートモレスビー攻略の基本任務を有する南海支隊としては、山系最南端の高地脈を占領確保することが必要であると考えるのは、当然の帰結であった。
また、南海支隊は運搬困難なため無線機をココダに残置し、支隊司令部とココダ間の通信は、伝令または軽量の歩兵連隊用無線によっていた。したがって軍司令部からの前進控制命令が遅達し、支隊長はポートモレスビーに向かう突進を依然、考えていた可能性もある。

南海支隊長は８月３１日夜、歩兵第４１連隊主力を当面の敵に追撃させ、歩兵第１４４連隊をこれに続行するよう部署した。追撃隊は小岩井大隊（第７中隊欠）を前衛として、９月１日払暁、イスラバを出発して追撃を開始した。オーストラリア軍は逐次の抵抗によって日本軍の前進を阻止しようとした。
最初の抵抗はギャップで行われた。追撃隊は１日夜、夜襲によってこれを突破し、翌２日、さらにギャップ南方の敵を攻撃した。夜に入るとともにオーストラリア軍は撤退した。

この２回の戦闘で日本軍は戦死４０名、負傷者５３名を出した。このころから少数編隊の連合軍機が、谷間や散在する日本軍密集部隊に対して銃爆撃を加え始めたが、被害はなかった。

[98] mixiユーザー 02月12日 23:30

９月３日、イオラを通過した。ギャップおよびイオラにオーストラリア軍の倉庫があったが、今度はなんの獲物もなかった。
尖兵が谷川に沿う山腹道を登って、夕刻小川の渡河点に接近すると、口笛を吹きながら飯盒を洗っている５～６名のオーストラリア兵を発見した。距離はわずかに５０～６０メートルであった。敵の衣服も靴もあまり汚れてなく、前夜に退却した兵隊とは思われなかった。日本軍は機関銃の急襲射を加えたが一人残らず前岸の密林内に逃げ込んで、前岸から機関銃の応射があった。その地点はスタンレー山系第２の高地脈で、しかも最高峰の峠にさしかかっていたのである。

追撃隊は翌４日、当面の敵陣地を西方に避けて稜線沿いに迂回したが、夕刻鞍部に集結中の敵と不意に交戦した。折から暗夜で、激しいスコールが始まり、両軍対峙のまま、寒さに耐えながら雨の止むのを待った。
ところがオーストラリア軍はいつの間にか退却していて、９月５日の払暁をむかえると、そこはまさしくスタンレー山系最高峰の峠であった。標高２０００メートルを下らず、樹木にはみな苔が生えていた。将兵は期せずして万歳を唱和した。しかし、峠を越えればあとは一気に目指すポートモレスビーへ駆け下りるだけという期待に反し、前方には今越えてきたのと同じような峰々が折り重なっていた。
堀井南海支隊長はここで、歩兵第１４４連隊を第一線に出して追撃隊とし、歩兵第４１連隊をこれに続行させた。歩兵第１４４連隊長楠瀬正雄大佐は病気のため、担架の横たわっての前進であったが、担送されているのは連隊長だけではなかった。
この頃、各部隊には下痢とマラリア患者がいよいよ増え、負傷者とともに担架に乗せられて前進していたのである。入院を要する患者も後送せず、ポートモレスビーの近くに開設する予定の野戦病院に入院させよ、との指示が出されていたためであった。これが将兵の体力消耗に拍車をかけた。後方からの補給は依然として途絶えたままであった。

９月８日、エフォギの敵陣地を抜き、１１日夕方にはマワイに到着した。この間、７日には敵機の猛烈な銃爆撃を受けた。堀井支隊長は今後もこうした攻撃が予想されるものとして、第１７軍司令部に対して、航空隊の掩護を要請する電報を打った。この電報は１０日に第２５航空戦隊司令部も傍受したが、南海支隊の将兵たちが日の丸を翼につけた飛行機を頭上に見る日はついにやってこなかった。

[99] mixiユーザー 02月15日 21:41

マワイから南方の通路はオーストラリア軍によって補修されていて行軍が容易であった。９月１２日、追撃隊はイオリバイワの敵陣地に触接した。
堀井支隊長は歩兵第１４４連隊で当面の敵陣地を攻撃させ、歩兵第４１連隊主力をナロー河右岸地区に集結待機させた。支隊長はココダ出発当時から、マワイに進出したならば、両連隊を並立して、ポートモレスビーに突進する腹案を持っていた。
９月１４日、先にバサブァに上陸した第４１連隊第１大隊が、同連隊主力の集結地に到着した。

第１７軍司令官は南海支隊長に対して９月８日、ソロモン方面の戦況悪化に備えて、歩兵第４１連隊を、まずココダ付近に集結待機させるよう命令を発し、さらに１４日、ブナ付近に対する敵の上陸に備えて、歩兵１個大隊をブナ付近に集結して警戒を厳にするよう命令した。
しかし、これらの命令はまだ南海支隊長に到達されていなかったか、あるいは無視された。
このころ支隊司令部から発信した電報がラバウルに届くのに３日かかった。またラバウルからの電報が支隊司令部に到達するための所要日数は明らかでないが、少なくとも３日を要したと思われる。

歩兵第４１連隊第１大隊の尋問した捕虜の将校は、日本軍の追撃が急でオーストラリア軍は本道を退却できず、山中に離散していると述べた。
支隊将兵は節食のため体力が日一日と消耗していたが、士気なお盛んであって、一刻も早くポートモレスビーを攻略して、敵の食糧にありつきたいと望んでいた。イオリバイワからポートモレスビーまでは約６０キロ。もう一つ低い峰を越えれば目指すポートモレスビーが眼下にあった。

[100] mixiユーザー 02月16日 20:05

いうまでもないが、ポートモレスビーに近づくほど敵の守りは堅くなっていく。イオリバイワには第２１オーストラリア旅団長ポーター准将率いる約５コ大隊が守備につき、さらにその背後には続々と増援兵力が到着しつつあった。この頃、ポートモレスビーの連合軍兵力は合計で２万８千名にも膨れ上がっていた。
この堅陣の攻撃は、歩兵第１４４連隊に命じられた。堀井支隊長はポートモレスビー攻撃に備えて、歩兵第４１連隊の温存を図ったのである。

歩兵第１４４連隊は９月１３日からイオリバイワの陣地に対する力攻を開始し、１６日夕刻までに遂にイオリバイワ東西の高地戦を占領した。この戦闘で１４４連隊は戦死３６名、戦傷１０６名を出し、オーストラリア軍の遺棄死体約１２０と報告した。
９月１６日夕方、攻め登った峰の頂上からは、樹々の間を通してポートモレスビーの灯が見えた。この時の様子を従軍した朝日新聞特派員は、こう報じている。
「遂に攻め登った主峰の頂から我々ははるかにパプア湾を望んだ。
『海が見えるぞ、モレスビーの海だ』
血みどろになった将兵は岩角の上で抱きあい、泣きながら指さしている。おお、この山の前方にはもはや、これまでのようにわれわれの視界を立ち塞いでいた分厚い山は何もなかった。
鬱蒼たる樹海は波状の起伏をなして次第に低くなり、真っすぐ南の方角にあたって木の間越しに、山霧の切れ目と切れ目の間に、キラキラ光るものがある。まさしく海が。パプア湾だ。
・・さらにこの夜、山頂からわれわれはポートモレスビーの灯を見た。同市北郊外にあるセブンマイルズ飛行場のサーチライトがちらちらと見えるではないか」

横山先遣隊の上陸から２ヶ月近く、飢えと疲労、未知の自然や病気と戦いながらジャングルの道とはいえない道を踏破し、とうとう目指すポートモレスビーの灯をその目で見るところまで辿り着いたのである。当初、陸路攻略作戦にきわめて消極的であった堀井支隊長も、８月１８日ひとたびニューギニアに上陸すると、別人のように所命完遂に邁進したが、この間、南海支隊はすでに１０００名にのぼる戦病死傷者を数え、自らの足で立つ将兵もまた、飢えと疲労の極に達していた。
携行していた食料は２０日分。正確にいえば定量の２週間分にすぎない。その後にわずかばかりの補給は届き、イスラバにおける敵の食料奪取という幸運に恵まれたとはいえ、ジャングルを分け、戦いながらイオリバイワまで辿り着いた将兵たちの空腹は、いかばかりであっただろうか。歩兵第４１連隊では、９月１４日夕方、初めての行き倒れ陣没者を出している。
それでもポートモレスビーの灯を望みながら、南海支隊の将兵たちは闘志を奮い起こしていた。

[101] mixiユーザー 02月17日 13:03

ここで、９月上・中旬におけるスタンレー山系の戦闘状況をオーストラリア軍側からみてみる。

９２で記述したように、連合軍側の増援部隊であるオーストラリア第２１旅団の先頭大隊が、イスラバ周辺の防禦に参加した。同大隊はココダ付近からの戦闘で消耗していたオーストラリア第３９大隊と第一線を交代した。さらに１コ大隊が増加されたが、日本軍の突進を防止することは出来なかった。
連合軍は、イスラバからアロラ、エオラ、ミオラと逐次の抵抗を行いながら、ココダーポートモレスビー道に沿って後退行動を続けた。９月５日、エフォギ付近で１コ大隊が増援され、エフォギ南側に阻止陣地を占領した。そこで９月７、８日の戦闘が起こった（９８）。
オーストラリア軍は日本軍の迂回作戦によって退路を遮断され、各部隊主力は、本道南側の密林地帯の難路をメナリに向かって後退するの止むなきに至った。
メナリ、ナウロと後退が続いた９月１０日午前には、ナウロとイオリバイワの中間の山系に辿り着いた。

当時、イオリバイワへ後退した２コ大隊は、合わせて３０７名しかいなかったので、１コの混成大隊に改編された。その日、第２１旅団長が交代した。新旅団長ポーター准将の任務は、「ウベリより前方の全部隊を指揮して、日本軍を阻止し、状況を安定させるとともに、なし得る限りの地域を確保すべし」というものであった。
ポーター准将は、エフォギ南側の戦闘の経験からみて、前線の２コ大隊の背後が危険であること、イオリバイワの地形が戦術的にオーストラリア軍に有利であることの２つの理由から、イオリバイワの稜線への後退を決意した。
一方、「ポートモレスビーの前方で可能な限り遠く、攻勢により敵の前進を阻止し、ココダ奪回の目的で、イスラバ、デネギ地区を経てココダ道を開放すべき任務」をもった新鋭の第２５旅団は、逐次ポートモレスビーに到着した部隊を北上させた。旅団長イーザー准将は、９月１１日ウベリに到着、３コ大隊をイオリバイワの第２１旅団の両翼および後方に増援することにした。

かくて、イオリバイワ正面に、空腹と疲労に堪えて突進してきた南海支隊と、新鋭３コ大隊を含むオーストラリア軍約５コ大隊が対戦することとなったのである。
結果は、既述のとおり、３日間の力攻の末、９月１６日夕方までにイオリバイワ東西の高地線を日本軍が占領した。

[102] mixiユーザー 02月17日 13:04

ニューギニア部隊指揮官ロウエル将軍は、最高司令部あて９月２０日の書翰で、以下のことを述べている。

一　オーエンスタンレー山系の突破とポートモレスビーに向かう進撃を見た日本軍の軍事的成功の主な理由は次のとおりである。
　１　決定的な時機と場所における兵力の優勢。
　２　日本軍兵士の簡単な補給上の要求と、特に偽装という見地からする彼らの被服、装備。
　３　（オーストラリア軍が）イスラバ、エフォギにおける日本軍が得た主導権を奪回するための増援兵力の不足。
　４　ジャングル戦における日本軍の高度の訓練水準、（この点）わが軍は混乱し、いまだに日本軍に主導の地位に立たれているといえる。

二　（しかしながら）情勢は今や、敵は補給が困難になる一方、（わが方は）戦場に有力な増援部隊が到着しつつあるので、もう小さな斥候程度以上の突破は許さないと予想し得るに至った。現時点における問題は、ポートモレスビー地域にいるニューギニア部隊の次の任務をどうするか、ということである。

三　これについての私の基本的使命は、航空基地としてのポートモレスビーを確保することである。

四、五　（略・・ポートモレスビー防衛問題について）

六　ココダ道を開放する作戦は戦闘部隊のためにも、補給上からも価値あるものである。私はなし得る限り北方に遠く、本道路上に強圧を加えて、その側方の間道から戦果を拡大し、後方連絡線を遮断し、後退の止む得ないようにするのが最良の道と確信する。

七　この考え方の限界となる要素は常に補給である。輸送用梱包の欠乏と、使用し得る土人運搬人の継続的な減少は、使用する翼側部隊の大きさに制限を与えることとなろう。しかしながら道路の整備の進捗と、梱包輸送中隊の到着は、このような機動の成功の可能性を増大しつつある。

八　（略・・攻勢部隊の編成）

九　以上の見解につき特に強調すべき要素は２つある。
　１　人員
　　山地密林戦における人員の消耗・・戦闘消耗および疾病による消耗はきわめて高率である。（編成定員を増加することは）歩兵部隊においては、精神上からも、補充交代のための予備隊の保持とともに、必要な条件である。
　２　訓練
　　戦闘に適合した型の訓練・・オーストラリア本土における訓練は、ジャングル戦とは無関係のものであった。部隊は本物のジャングルを使って、ジャングル内の戦術、機動、統制のむつかしさを修得するよう訓練することが、一番大切である。

十　（略・・編制の細部、人員補充について）

日本軍にイオリバイワまでも突破された現実を通じて得た上記のような教訓が、連合軍の作戦にどのように生かされるか、また、この地域の最高指揮官マッカーサー将軍は、そのように判断していたか、それは以後の連合軍の戦い振りで判明するだろう。

[103] mixiユーザー 02月27日 23:59

南海支隊がココダからポートモレスビーに向かって、いよいよスタンレー山系突破作戦を開始した８月下旬頃、ソロモン方面では一木支隊第２梯団が第２次ソロモン海戦の真っ只中、まさにガダルカナル島に上陸しようとしていた。そしてさらに、日本の第３の攻略部隊が、ニューギニア南端ミルン湾岸のラビに向かっていた。
ここで、南海支隊の動きから目を転じて、同時期に行われた海軍陸戦隊によるラビ攻略作戦の様子を追っていく。

現地陸海軍の７月３１日の協定で、第８艦隊（外南洋部隊）は珊瑚海への回廊チャイナ水道を制するサマライ島を攻略して、水上基地を設定する計画が採択された。
ところが、その直後の８月４日、第２５航空戦隊（第５空襲部隊）が、サマライ島の北西約３０カイリのミルン湾北岸のラビ西側に、敵が使用中の新飛行場の存在を確認した。それは南海支隊に策応する海上進撃作戦への直接の脅威であるだけでなく、ラバウルを核とする南太平洋方面の日本軍の戦略態勢に対して、ポートモレスビーおよびガダルカナルに勝るとも劣らぬ重大脅威であった。
さらに、ニューギニア、ソロモン、ギルバートを連ねる日本の戦略要線の一角に打ち込まれた連合軍反攻の楔でもあった。

これらの情勢から、サマライを攻略し、ポートモレスビーへの海上進撃路啓開の任務をもっていた第８艦隊としては、まずラビを攻略する必要に迫られた。しかし、ニューギニア本土は陸軍の担当であり、したがってラビは陸軍の攻略範囲であった。８月１２日発令の外南洋部隊兵力部署にもラビ攻略は含まれていなかった。
第８艦隊司令部はラビ攻略に関し、第１７軍と協議したところ、第１７軍はすでにポートモレスビー陸路攻略作戦を発動しており、兵力に余裕がないから海軍で攻略されたい旨の要望であった。そこで第８艦隊司令部は、ラビは基地設営後の日が浅く、敵兵力はまだ大きくないものと判断し、かつラビ攻略の遷延が作戦全局の進展を阻害することを懸念し、連合艦隊司令部の了解を得て、サマライ攻略に先立って護衛部隊で攻略する方針を決定した。
攻略時期としては、ポートモレスビー陸路攻略作戦との関連上、なるべく早く実施する必要があり、基地航空部隊の一部がブナに進出した後に８月２５日ころを予定していた。

[104] mixiユーザー 03月01日 00:12

ラビ攻略準備は、第８艦隊司令部が重巡「鳥海」に乗艦して一木支隊第２梯団のガダルカナル島進出支援に当たっていたため、第７根拠地隊（司令官藤田類太郎少将）のもとで準備がすすめられた。７根はポートモレスビーに進出するために７月１４日新編、即日第８艦隊に編入され、ラバウルで進出準備を進めていた。
ソロモン諸島東方海面にあって、第２梯団のガダルカナル島進出支援にあたっていた第８艦隊司令長官三川軍一中将は、一木先遣隊のガダルカナル島上陸成功によって同方面の情勢もおおむね好転するものと判断し、８月２１日、ラビおよびサマライ方面の作戦開始を発令した。

第８艦隊司令部はその前日の２０日、敵機動部隊の出現と敵機のガダルカナル島進出の報に接していたが、一木先遣隊の敗北に関する報告はまだ入手していなかった。当時、同司令部は、すでに南下を開始した連合艦隊主力がソロモン諸島東方洋上に進出して敵を吸収する態勢となっていたので、ラビ方面の敵の反撃は大きくなく、かつラビ占領の遅延によってポートモレスビー攻略作戦に塁をおよぼす懸念をも一掃しうるものと判断していた。

ラビ飛行場は、８月４日に第２５航空戦隊の陸偵１機、零戦４機が偵察攻撃したが、その後、ガダルカナル島への敵の来攻、ラビ方面の天候不良のため、８月１１日に零戦６機が出撃したに過ぎなかった。
この偵察および攻撃によって得た情報は、ラビは海岸に沿って家屋２０～３０戸があり、桟橋３カ所、係留岸壁１カ所がある、飛行場はラビ西方１～２キロにあり、滑走路は東西１２００～１５００メートル、幅６０メートル、西端の椰子林に引き込み線がある、地上および空中にＰ４０約５０機が認められ、相当強力な対空防禦砲火が設置されている、というほか、付近の敵情についてはまったくの不明であった。

[105] mixiユーザー 05月19日 20:56

ラビ攻略部隊指揮官は第１８戦隊司令・海軍少将松山光治であった。
すでにサマライ攻略の準備をすすめていた松山少将は、ラビ攻略の命を受け、それまでの第２５航空戦隊（第５空襲部隊）の偵察報告、偵察写真、軍令部刊行の調査資料などを収集し、攻略作戦の研究を進め、８月１６日にラビ飛行場を奇襲占領する命令を出した。

攻略計画の骨子は、呉鎮守府第５特別陸戦隊（林中佐以下６１２名）および佐世保鎮守府第５特別陸戦隊の一部（藤川大尉以下２２８名）、第１０設営隊の一部（新島技師以下３６２名）、計１２０２名のラビ派遣隊を船団輸送で第１８戦隊隷下の艦艇の支援のもとにラビ東方海岸に上陸させる。ラビを占領し、航空基地の設置が終われば、派遣隊の大分はサマライ攻略のため転進する、というものだった。
しかし、敵陸上防備兵力がまったくわからなかったので、松山少将はラビ攻略作戦を有利にするため、ブナにいた佐世保鎮守府第５特別陸戦隊本隊（司令・月岡中佐以下３５３名）のラビ投入を決定し、８月２０日、その旨を月岡部隊に通知した。
月岡部隊は、ブナから舟艇機動によってグッドイナフ島経由タウポタに上陸、ラビ派遣隊の上陸に策応してラビの背後から突入させ、その占領確保を確実にしようと企図したのである。タウポタからラビまでは駄馬が移動できる小道があることがわかっていた。
ただ、月岡部隊の増援に一抹の不安があった。ブナからタウポタまでの約１６０カイリ、舟艇機動だと３日間を要し、その間の通信連絡の手段がなかったのである。

この間、松山少将は奇襲攻撃の決行日を８月２５日と決定し、２５日午後１０時にラビ派遣隊が上陸する旨を月岡部隊に通知し、２２日午前７時３５分に進撃を開始するよう電令した。しかし、通信の錯誤により、この電報が不達だったため、８月２３日午後４時に再度、進撃を下令した。
その一方、松山少将は第２５航空戦隊と協議し、作戦実施の前提条件である敵地の写真偵察、陸戦隊指揮官または同副官の現地飛行偵察および攻撃前の敵航空兵力の撃滅を企図した。
しかし、天候不良に加え、第２５航空戦隊に敵基地に対する進行を実施する余力がなく、敵情に関しては極めて曖昧不確実なまま作戦を実施せざるを得なかった。

それでも第２５航空戦隊司令・山田定義少将は、８月２２日に在ラエ零戦隊全力をもって翌２３日のラビ攻撃を下令した。第２５航空戦隊の第１部隊（台南空）は８月１８日に零戦隊６機を初めてブナに進出させたが、この命にもとづき、零戦１６機が２２日、ブナに進出した。

[106] mixiユーザー 06月24日 22:09

８月２３日午前８時１０分、ブナ基地を発進した零戦１６機は午前９時１５分にラビ上空に達した。約５０機いると思われたP４０を撃破し、制空権を確保することが目的だったが、期待した敵戦闘機はなく、上空にP４０を１機認めただけで、他に離陸する敵機を認めなかった。港には６０００トン級の商船１隻が荷役中で他に砲艦らしきもの１隻、飛行艇１機が認められた。
基地航空部隊指揮官・塚原中将は翌２４日のラビ進攻のため、ブナ零戦隊の支援のもとに陸攻隊の攻撃を企図し、特に第２６航空戦隊の在カビエン陸攻隊（木更津空）を第２５航空戦隊司令官の指揮下に入れた。

８月２４日、第２５航空戦隊の陸攻隊全力７機とカビエンを発進した陸攻７機の合わせて１４機が、午前８時、ラバウル上空で合流し、さらに零戦隊と合同するためブナに向かった。
しかし、天候不良のため陸攻隊は引き返した。そこで第２５航空戦隊司令・山田少将は零戦隊に単独の攻撃を命じた。命令を受けた零戦隊１５機はブナからラビに進出し、午後２時１５分から約３０分間ラビ上空で空戦。P３９を９機、P４０を１機の１０機撃墜（うち不確実６機）、地上にあった大型機２機の撃破を報じて全機ブナに帰還した。
この日、ソロモン諸島では第２次ソロモン海戦が起きて、一木支隊第２梯団の上陸日が変更になった。また、陸路ポートモレスビー攻略を目指して南海支隊主力がココダに到着したのも同じ８月２４日だった。

ラビ攻略部隊を乗せた南海丸、畿内丸は２４日午前７時ラバウルを出撃。第１８戦隊、第１７駆逐隊（「磯風」欠）が護衛につき、同日午前７時２５分から午後２時まで第２５航空戦隊の零戦のべ８機、艦爆２機が攻略部隊の対空対潜警戒に当たった。一方、月岡部隊（約３５０名）は大発７隻に分乗し、２４日午前５時ブナ発。グッドイナフ島経由でタウポタに向かった。
２４日は敵機に遭遇することがなかったが、翌２５日午前７時３０分以降、ほとんど終始、敵機の触接を受けた。午後２時４５分、ラビ東北東約７０カイリで敵戦縛１０数機の銃爆撃を受け、陸戦隊員に戦死傷者２０名を出した。南海丸に搭載した大発にも若干の被害を出したが、予定どおり航進を続けた。
第２５航空戦隊は、２５日早朝から在ブナ戦闘機隊の全力で午前８時３０分から船団の上空警戒を実施する予定だった。ところが、２５日午前７時１０分、P３９四機、続いて午前１０時２０分にはP３９一機が降雨の中をブナに来襲して銃撃を加え、零戦４機、輸送機１機が炎上。使用可能機はたちまち零戦６機に減少した。午後２時１５分、ようやく６機がブナ基地を発進したが、密雲のため船団を発見できず、午後４時３０分に引き返した。
山田第２５航空戦隊司令は、翌日のために、在ブナ戦闘機隊で早朝からラビ上陸点の上空警戒を実施するとともに、在ラバウル艦爆隊（第２航空隊）の大部を、零戦５機の援護のもとに、ラビの陸戦協力に任ずるよう部署した。

[107] mixiユーザー 06月26日 10:01

敵機の空襲を受けたものの、ラビ攻略部隊はその後、予定通り進航を続けてミルン湾内の突入、８月２５日午後１０時３０分、上陸に成功した。陸上に数箇所の不動光があり、ラビと推定される方向に自動車の往復と思われる灯火の動きがあったが、敵の攻撃はまったくなかった。
上陸した夜は雲が多く視界不良で、陸標不明確で漂白位置が４～５カイリ東方に偏位した。そのため、上陸点も予定地点だったラウラウ島から東方約５キロのミルン湾北岸ワガワガ付近だった。第１８戦隊司令部が上陸地点の誤りを知ったのは、翌２６日午前５時２０分ころであった。当時、護衛部隊が使用していたミルン湾の海図は、ニューギニア東部全般からルイジアード諸島方面を含む大尺度のものであり、しかもきわめて不正確なものであった。上陸した部隊も陸上の地図は持っていなかった。

日本軍が上陸したミルン湾北岸は、約１３００メートルの山々が海岸から屹立している。山と海との間は狭い回廊をなしており、その大部分は深い湿地帯で、ほとんど入り込めない密林であった。同湾一帯は、年間降雨量５０００ミリを超える多雨地帯だった。そのうえ数日前に雨季に入り、連日のように豪雨が続いたために、道路は泥濘と化し、橋は流出していた。

上陸直後、佐世保鎮守府第５特別陸戦隊（佐５特）の一部（藤川隊）は、敵監視艇２隻が接近してくるのを発見して大発で追跡し、１隻を海岸に追い詰め乗員と捕虜とした。
上陸成功の報を受けた輸送船は約７００メートルまで陸岸に接近し、物資資材の揚陸を開始し、藤川隊は上陸点に荷役桟橋を急設した。以後、藤川隊は設営隊とともに、揚陸物資の整理および上陸点付近の基地設営にあたった。
呉鎮守府第５特別陸戦隊（呉５特）司令・林中佐は、揚陸を終えると直ちに部隊を集結させた。現地人を調査したところ、上陸地点は予定地点ではなくラビ東方であり、上陸点を取っている道路を西行すれば飛行場に到達できることがわかった。
道路は幅４～５メートルでトラックが通れる道だったが泥濘だった。敵情はまったく不明だったが、その夜のうちに飛行場を占領するのが呉５特の任務だった。

[108] mixiユーザー 06月26日 20:57

林中佐率いる呉五特は上陸後間もなく斥候隊を先頭に、道路を西に向け進んだ。道路両側は密林で、夜間の通過はほとんど不可能だった。午前０時３０分、斥候隊はヒルナ東方約６００メートル付近で、機銃を有する１０数名の敵から攻撃を受けたが、交戦約３０分でこれを撃退した。
その後、さらに約２キロ西進して、午前１時４５分頃、ラビ東方約３キロ付近の敵第一線陣地に到着した。呉五特は直ちに展開してこれに対抗した。敵兵力は５０～６０名と推定された。

午前２時３０分頃、海上の護衛部隊が援護射撃を開始したが、海上からは陸上の交戦位置が判明せず、無線通信連絡もうまくいかなかった。所望地点の砲撃が困難だったために、第１８戦隊はラビを、第１７駆逐隊はキリギリを砲撃したが、その効果は不明だった。
このころ林司令は松山護衛部隊指揮官に対し、次のとおり情況を報告した。
１　現在位置はラビ東方なり
２　敵兵力は約６００名、数十の陣地を構築頑強に抵抗中
３　飛行場はギリギリにある如くも確認しあらず
４　天明までに飛行場の占領は困難
５　道路は幅充分なるも泥濘にて車両の通行困難

呉五特は、前後３回にわたる突撃により敵を突破し、午前４時ころまでに約１キロ進出したが、すでに時刻は夜明け直前で、飛行場に対する夜襲は不可能となっていた。林司令は松山護衛部隊指揮官に対し、「予定通り攻撃出来ず申し訳なし。第３回の突撃により約１０００メートル前進、敵と対峙中」と報告した。
日本軍が夜明け前までに飛行場占領を企図したのは、敵機の跳梁を防ぐためであった。しかし、その思惑は失敗し、午前６時すぎから敵機が来襲し始め、道路周辺の密林に避退するの止む無きに至った。

[109] mixiユーザー 06月27日 13:29

ミルン湾北岸で陸戦隊を降ろした輸送船は、藤川隊や設営隊とともに物資の荷揚げ作業を続けていた。呉５特の天明までの飛行場占領を前提に、午前９時３０分頃までに荷揚げを完了させる予定だった。
しかし、計画通り飛行場占領の見込みがなくなったので、翌朝の敵空襲を考慮して荷役作業を打ち切り、午前４時３０分頃から避退した。援護射撃を行った護衛部隊も同時刻、砲撃を中止して東方に避退した。このときまでに全搭載量のほぼ４分の３を揚陸していた。

藤川隊は輸送船避退後、揚陸物資の整理、兵器弾薬および大発などの隠蔽を開始したが、午前６時５分、恐れていた敵機が来襲し、執拗に銃爆撃を繰り返した。
荷揚げ未済のまま桟橋付近にあった大発２隻に搭載の２５０キロ爆弾が誘爆したのを始め、海浜に集積してあった航空燃料のドラム缶に引火し、付近一帯は火の海となりｍ残りの大発１０隻もあいついで炎上または沈没した。弾薬糧食は揚陸点付近の陸上に隠蔽集積されていたが、敵機に発見され、集中銃火を受けて焼失した。
避退中の海上部隊も午前５時３０分から６時２３分の間に敵大型機８機の攻撃を受けたが、被害はなかった。

ブナの海軍航空基地ではこの日、ラビ上空警戒のため出撃準備をしていたが、午前６時１５分前後、P３９七機の襲撃を受けた。離陸途中だった零戦６機は態勢の不利いかんともし難く、３機の自爆、１機の不時着大破という被害を受けた。
これとは別にラバウルから零戦６機、艦爆８機がラビ陸戦隊協力のため午前６時、ラバウルを出撃し、ブナ経由ラビに向かったが、天候不良のため進入できず、午後３時３０分、ブナに帰着した。
こうして２６日は友軍機が１機もラビ上空に飛来せず、上陸部隊の上空は敵機の跳梁に任せるしかなかった。２６日にタウポタに上陸予定の月岡部隊との連絡もとれなかった。

呉５特司令は、午後４時５０分、揚陸物資が全部失われたことを知った。やむなく陸戦隊は昼間ジャングル内に待機して、その夜の夜間攻撃によって一挙に飛行場を攻略しようとした。夜襲決行の時刻を午後６時と予定した。

[110] mixiユーザー 06月27日 16:16

このときまで呉５特司令・林中佐が現地人から得た情報によれば、飛行場はギリギリ北方に一ヶ所、ラビ北西方に一ヶ所（未完成）あり、現在位置から飛行場までの距離は８マイルであった。夜襲を決意した呉５特は夜陰を待って道路上を進撃したが、途中から現地人を道案内として密林内の進撃に変更した。しかし、この命令が第２中隊の一部に徹底せず、当該部隊のみ道路上を進んだ。
本隊は密林内を約６時間進んだが飛行場に到着できず、進撃開始点から約１キロ西方の道路上に出たにすぎず、遂に当夜の夜襲を断念せざるを得なかった。道路上を進んだ第２中隊の一部はラビ東端の川（ガマ川）の線で、約１００名の敵を受けて前進できず、そのうえ主隊と分離し消息も不明だったので、撤退して主隊に合同した。

洋上に退避していた海上部隊は、２６日夜半に揚陸未済物資の再揚陸を実施することを企図し、２６日午後１時にラビに向かった。しかし、午後５時４分、上陸部隊から揚陸物資全部焼失、大発全部使用不能との報告を受けた。船団は湾内に進入しても物資揚陸の手段がなくなった。
護衛部隊指揮官（第１８戦隊司令）・松山少将は輸送隊の進出中止を決定し、「龍田」「浦風」護衛のもとにラバウルへの帰投を命じた。そして、第１８戦隊（「龍田」欠）、第１７駆逐隊第１小隊が陸戦の援護および通信連絡のため、２６日午後８時に湾内に進入、飛行場および敵陣地と思われる地点を砲撃した。その時、後方の日本軍揚陸点はまだ大火災中だった。

砲撃時、「天龍」は後方にあった藤川隊の一部、付属隊および２空基地先遣隊員の集結している者との連絡に成功し、糧食を補給するとともに、負傷者、２空基地員等を収容し、２７日午前１時６分避退した。
一方、呉５特本隊との無線連絡に努めたが、これは成功しなかった。

２６日午後４時、基地航空部隊指揮官（第１１航空艦隊司令長官）塚原中将は、第２５航空戦隊に対して、ポートモレスビー飛行場の夜間攻撃を命令した。陸攻４機が２７日午前０時４２分から２時５分にわたって、５回の波状攻撃を実施したが、目標を雲が覆っていて効果は不明であった。
２６日、南海支隊の臨時輜重隊等を搭載した３隻の船団はブナに向かい航行中だったが、上記のような情勢によって第２５航空戦隊はラビに対する航空撃滅戦および陸戦協力に忙殺されて、船団上空警戒の余力がなく、船団はついに反転帰投のやむなきに至った。

[111] mixiユーザー 10月13日 22:35

８月２５、２６日両日の攻撃に失敗した呉五特は、８月２７日朝、各３名ずつの斥候隊３組を飛行場捜索のため派遣したが、夕刻になっても誰も戻ってこなかった。日中の敵機の銃爆撃は依然として執拗で、部隊も上陸以来、泥濘の中の強行軍により疲労も大きくなっていた。
飛行場の位置は不明であったが、林司令は再び夜襲を決意し、２７日午前７時３０分、護衛部隊指揮官松山少将に対し、前夜の戦闘の経過とともに今後の作戦に関し、以下のように報告した。
１　今夜陸戦隊主力を以て海岸道路より攻撃、飛行場を攻略せんとす。
２　今夜不成功ならば揚陸点付近に部隊を集結せんとす。
３　糧食なし、弾薬携行弾薬のみ。

この日の午前７時４０分、ブナ基地から零戦７機、艦爆８機がラビを攻撃。艦爆隊は敵の高角砲陣地および機銃陣地を爆撃した。しかし、零戦５機、艦爆１機を喪失した。
その少し前の午前６時１０分には、米軍攻撃隊がブナ基地を空襲。零戦１機喪失、１機被弾の損害を受けた。
ブナは８月２５日以来、連日激しい敵機の空襲を受け、零戦も減少していたため、第２５航空戦隊はブナ進出中の零戦および艦爆を、２８日朝ラバウルに帰投させることとした。このため同隊のラビ上空制圧、陸戦協力は一層困難となっていく。

一方、ミルン湾から避退した護衛部隊は、その後陸戦隊との連絡が途絶し、陸上の状況が不明だったため、松山少将は駆逐艦「浜風」に、今夜ラビ付近に到り陸戦隊との連絡に努め、必要であれば掩護するよう下令した。
ところが午後２時１５分、陸戦隊との連絡が通じて、前述、呉五特司令からの電報によって、２６日夜の飛行場攻撃の失敗とともに、糧食弾薬の欠乏を知った。そこで松山少将は浜風をラビに回航させて、陸戦隊との連絡、弾薬、糧食の補給に任ずるよう措置した。
浜風は同日夜、豪雨を冒してミルン湾に進入し、極力陸岸に接近して信号連絡に努めたが視界不良のため成功せず、２８日午前２時１３分、連絡を断念して帰投することになった。なお、浜風と分離した天龍、谷風はラバウルに向かった。

[112] mixiユーザー 11月01日 01:49

ソロモン北方海上にあって一木支隊第二梯団の船団輸送を支援していた「鳥海」は、８月２６日午後３時ラバウルに帰投した。第８艦隊司令部は直ちに将旗を陸上に移した。同司令部はラビ攻略部隊の陸戦隊は、上陸当夜（８月２５日）に飛行場に突入して翌２６日払暁までに飛行場の占領を完了することを期待していた。
呉五特からの通信を受けた護衛部隊指揮官松山少将は、現状のままでは目的達成は困難と判断し、２７日午前３時５分、ラビ攻略の前後策について、第８艦隊司令部あて意見具申を行った。護衛部隊からの連絡とは別に、呉五特からの報告によって第８艦隊司令部は、２７日午後にようやく陸戦隊の実情を知った。

第８艦隊司令長官三川軍一中将は増援隊を急派することを決心し、２７日午後８時４７分、呉鎮守府第３特別陸戦隊（司令　矢野中佐以下５６７名）および横須賀鎮守府第５特別陸戦隊の一部（吉岡特務中尉以下２００名）をラビ作戦に参加させるよう発令した。
呉３特は、昭和１７年３月２６日ラバウル着、その一部はアドミラルティ諸島、ニューブリテン島西部の掃討戦に従事し、一部はツラギに派遣され、主力はカビエンにあって、ニューアイルランド島周辺諸島の掃討に当たるとともに訓練中であった。護衛部隊に編入された矢野中佐以下の本隊は、第３８号、第３９号哨戒艇に分乗して２７日午後２時３０分カビエン発、翌２８日午前５時２０分ラバウルに進出した。
横５特は金龍丸に乗船し、一木第二梯団とともに、ガダルカナル島に向かったが、８月２５日に金龍丸が被爆沈没し、駆逐艦および駆潜艇に移乗し、２７日午前３時にラバウルに帰着していた。護衛部隊に編入されたのは、このうちの吉岡特務中尉の中隊だった。

三川第８艦隊司令長官は８月２８日午後０時４８分、外南洋部隊兵力部署の変更を発令、第１８戦隊を基幹としてラビ攻略部隊を編成し、ラビ攻略に専念させることとした。そしてラビ攻略部隊指揮官には、２８日午前２時１０分ラバウルに帰着した護衛部隊指揮官松山光治少将が任命された。

こうして呉３特および横５特・吉岡中隊は、嵐、叢雲、弥生、第３６、第３８、第３９号哨戒艇に分乗し、第１８戦隊（「龍田」欠）、第１７駆逐隊（「磯風、浜風」欠）の護衛のもとに２８日午後２時ラバウルを出撃、ラビに急行した。

[113] mixiユーザー 09月01日 13:24

【８月２９日　～ラビ攻略作戦　増援部隊の上陸～】

　松山少将率いる増援部隊は途中、敵機の触接爆撃を受けるも被害はなく、８月２９日１８：０５、予定漂泊地点に到着。２０：００頃、陸上の呉五特との無線通信が通じた。２０：４０、呉３特および横５特・吉岡中隊は上陸を開始し、２３：３０頃に終了した。
　この揚陸作業中、呉五特副官および佐五特の藤川大尉が連絡将校として「天龍」に来艦。陸上戦闘の経過を報告し、第１８戦隊司令部でもようやく状況が判明した。

　呉三特司令の矢野中佐は、上陸するや直ちに呉五特司令の林中佐と会見した。林中佐は矢野中佐より先任指揮官であった。

　呉五特は８月２５日から２７日までの戦闘で人員・兵器とも大きな損害を受けていた。そのため、林中佐は部隊に一両日の休養を与え、傷者を処置し、兵力を再編成した後でなければ進撃は困難と考えていたが、攻略部隊指揮官の松山少将は２１：０５に呉五特司令に対し、「今夜増援部隊は飛行場に突入す、準備をなし置け」と命令を発していた。
　林中佐は矢野中佐と打合せの結果、直ちに進撃することとした。しかし、すでに深夜であるし、飛行場まで約８マイル（約１３キロ）の距離があったこともあり、同夜は極力西進して、翌３０日夜を期して突入することとし、２２：４０、攻略部隊指揮官にその旨を報告するとともに、翌日の航空攻撃の手配を要請した。

　揚陸を終えた第１８戦隊以下の海上部隊は３０日０１：００頃、泊地を出発して帰途についた。第１７駆逐隊および「叢雲」はショートランドに直航し、その他はラバウルに帰投した。松山少将は泊地から出発するに際して、２９日２３：５０、第８艦隊司令部に対し、以下、電報した。
「増援隊揚陸開始呉鎮第五特陸と合同せるも　揚陸点飛行場の東方７カイリに在りて明朝迄の攻撃望みなきを以て　今夜極力前進し昼間敵機の攻撃を避け　同夜一挙飛行場突入に決したる所　万難を排し３０日の航空攻撃実施方取計われ度」

[114] mixiユーザー 09月01日 13:26

【８月３０-３１日　～ラビ攻略作戦　飛行場再攻撃～】

　呉五特と呉三特の海軍陸戦隊は８月３０日未明まで西進した。恐れていた敵機は午前襲来せず、午後に上陸点付近を数回銃爆撃した程度で、おおむね不活発であった。前夜に日本軍増援部隊がミルン湾に進入したとき、艦砲射撃などを警戒して、ラビからポートモレスビー方面に飛行機が避退したためと推定される。
　同日日没後、陸戦隊は西へ向け進撃を開始した。２０：００ラビに、次いでゴガチに到着したが敵影を認めなかった。
　８月３１日０２：００、飛行場に近づいた陸戦隊は攻撃部署を定め、飛行場への再攻撃に挑むこととなった。すでに天明に近く、攻撃時期は切迫していたが、泥濘の悪路を急進してきたために、陸戦隊の隊列は著しく伸びて自隊の統制すら難しく、呉三特の一部はすでに連絡を失していた。そのため、呉五特の林司令は各隊間の協同攻撃を期待することができなかった。
　０３：００、密林を出て草原に出た。そこは２７日夜攻撃した地点であった。呉五特が第一線となり、飛行場入り口と思われる地点に展開した。このころまで、予期した敵の反撃もなく、突入は成功するかに思えた。

　しかし、展開を終えるころ、赤色信号弾を合図に前面および左右側面から、機銃２０数門、迫撃砲数門の集中砲火を受けた。呉三特第１中隊および速射砲もただちに進出して展開したが、速射砲は射撃開始後まもなく破壊された。
　敵の銃砲火はますます激しくなり、味方各隊間、各隊内の連絡は中断した。突入の好機をうかがっていた林呉五特司令は戦死、次いで同副官も戦死した。
　呉五特第２中隊は林司令の命令により、敵の右翼に迂回しようとしたが、敵の火力優勢でかつ夜間であったために指揮連絡が思うに任せず、かえって敵に包囲される態勢となり迂回を断念した。このころ第２中隊長は司令、副官戦死の報を受け、時刻はすでに天明を過ぎていた。同中隊長は３１日０４：３０後退を開始した。

　一方、矢野呉三特司令は、敵前の道路をはさんで左第一線を呉五特が担当することとなっていたので、呉五特本部の右に呉三特第１中隊、その後方に本部、吉岡中隊は右翼第一線として右に通じる道路を進撃するよう部署した。
　なお、呉三特にはこのほかに第２、３中隊があったが、両隊とも３０日夜の進撃開始後まもなく連絡を失っていた。矢野呉三特司令は第２、３中隊が到着したら右翼の吉岡中隊に続行させる予定だったが、このころ両隊があったのはラビ東方約１キロの地点であった。
　吉岡中隊は所在の敵を撃破しつつ右に進み、斥候を派遣して飛行場を捜索したが、その方向さえ判明せず、そのうえ友隊とも連絡を失したので、０４：３０ころ後退を開始した。
　矢野呉三特司令は攻撃正面が膠着状態となったことを知ったが、予備兵力も手元になく、戦局打開の方策はなかった。林呉五特司令、同副官の戦死の報を受けたが、第一線兵力の配備状況も明確でなく、飛行場も確認できていなかった。次いで負傷者にまじって部隊後退の兆しがあった。矢野呉三特司令は兵力を再整理して後図を期するほかなしと判断し、後退を開始するとともに、攻略部隊指揮官の松山少将に報告した。
　本部と連絡を失し、ラビ東方約１キロで集結中だった呉三特第２、第３中隊は、０２：４５銃声を聞いて行進を起こし進出したが、矢野呉三特司令はすでに撤退を決意した後で、予備隊に対しても進出中止を下令した。

　必成を期した３０日の夜襲も成功せず、司令、副官（副官は副指揮官であった）を失った呉五特は、２５日以来の連日の行軍と戦闘などにより、ほとんど交戦力を失い、夕刻までにヒルナ付近に後退集結した。
　呉三特は第２中隊（２コ小隊）を負傷者収容の掩護隊としてゴガチ付近に残し、夕刻までにヒルナ西方約５００メートル付近まで後退、敵の追及に備えて陣地を構築した。なお、ゴガチに残った第２中隊は３１日０９：００ころ追及してきた敵と交戦、中隊長以下ほとんど全滅した。
　吉岡中隊は後退に際し、敵機の銃爆撃を避けるために密林内をしばしば移動するうちに隊内の連絡を失し、夕刻までにその一部がヒルナ付近に到着しただけで、残りは翌９月１日２０：００ころようやく呉三特の警戒線に到達した。

[115] mixiユーザー 09月01日 13:28

【８月３１-９月１日　～ラビ攻略作戦　攻略失敗後の作戦指導～】

　８月３０日の夜襲が実施される前、第８艦隊司令部は第１７軍に陸軍兵力のラビ派遣を要望した。第１７軍は海軍の要望に応えるべく、８月３１日にラバウル到着予定の青葉支隊・第１次輸送隊（歩兵１コ大隊、砲兵１コ中隊基幹）をラビに派遣するつもりだった。
　しかし、この頃、ガダルカナル島方面の情勢が緊迫したために、この部隊はラビ方面の情勢にかかわらず、ガダルカナル方面に転用されることになった。

　８月３０日の夜襲失敗の報を受けた第８艦隊司令部は、第１７軍司令部と協議の結果、ラビ方面の陸戦隊に持久作戦をとらせ、９月１１日ころラバウル到着予定の青葉支隊主力を投入して、飛行場を一挙に攻略するのが有利と判断した。
　外南洋部隊指揮官の三川軍一中将は、陸戦隊の持久作戦をより有利にするため、８月３１日に安田義達大佐の指揮する横須賀第五特別陸戦隊（以下、安田部隊と呼称）をラビ攻略部隊に編入した。兵力の増援と同時に、陸上戦闘の指揮統制を強化する目的があった。

　一方、ラビ攻略指揮官の松山光治少将はこれまでの報告から、二度の夜襲失敗はいずれも天明近く敵陣地に到達したこと、敵機が跳梁して天明後から今一押しが不可能になったこと、予備隊の未着から味方砲火の集中ができなかったことによるもので、艦艇および航空機の協力があれば成功の算ありと判断した。そして、基地航空部隊に協力を依頼するとともに、「龍田」「浜風」に９月１日夜に掩護射撃を実施するよう下令し、矢野呉三特司令に対しては、８月３１日１３：１５、以下のように下令した。
１　占領地点を確保せよ
２　明早朝の航空攻撃は手配中、明日夜艦艇を以て掩護射撃を実施す　攻撃地点表示をなせ
３　通信連絡を確保せよ

　次いで松山少将は９月１日０６：３０、安田部隊のラビ派遣を下令した。安田部隊のラビ到着は９月２日夜と予定した。また、ラビ到着後、安田部隊は所在の陸戦隊と設営隊を指揮して、敵飛行場付近の占領確保、飛行場の急速設営するよう命じていた。松山少将は、昼間の航空攻撃と夜間の掩護射撃で、在ラビ陸戦隊による９月１日の夜襲が成功すると期待していた。しかし、その期待は間もなく打ち砕かれる。
　０８：００ころ、ラビからの報告により、呉三特は幹部の戦死傷者が多数にのぼっており、戦闘に従事しうる者は約２６０名、吉岡部隊はほとんど戦闘に耐えないなど、陸戦隊の損耗疲労が予想外に大きく、９月１日の夜襲は見込みがないことがわかった。そのうえ、１日の第５空襲部隊（第２５航空戦隊）のラビ空襲は天候不良のため中止となった。
　松山少将は１２：００、矢野呉三特司令に対し、１日の夜襲取り止めを発令するとともに、１１日ころ陸軍部隊が到着する旨を伝えた。同時に、「龍田」「浜風」に対しては掩護射撃を取り止め、ラバウルへの帰投を命じた。
　しかし、安田部隊は予定通り増援することとした。ラビでの持久戦のためである。安田部隊約２００名は２隻の哨戒艇に分乗し、「嵐」護衛のもと、９月１日１６：００にラバウルを出撃した。その後、ラバウルに向け帰投中の「浜風」もこの護衛に加わった。

[116] mixiユーザー 09月01日 13:29

【９月２日　～ラビ攻略作戦　陸戦隊の危機～】

　呉三特ほかの陸戦隊は９月１日夜襲決行の命を受け、兵力の再編成に努めたが、全員、「足痛」と疲労のため歩行困難であった。ここで言う「足痛」とは、泥濘の中を連日雨に濡れたまま行軍したためか、水虫によるものか、その他の細菌などによるものか原因不明であるが、足が腫れ、化膿して歩行困難になる症状のことである。
　１日午後からは敵機の空襲が激しくなり、本部の確保も困難な状況であった。また敵は迫撃砲を前線に推進してきて死傷者も増加し始めた。

　９月２日早朝、敵飛行機の銃爆撃、迫撃砲による砲撃はますます激しくなった。０８：００ころから、敵狙撃兵が味方第一線を突破して後方攪乱を企図し、哨戒線内の戦闘が始まった。１０：２５、矢野呉三特司令は、敵輸送船１隻が巡洋艦１隻の護衛のもとにミルン湾に入港したことを報じた。敵が増援隊を揚陸させるものと判断された。
　ラビに向かっていた第４駆逐隊司令はこれを撃滅するため、安田部隊が乗船していた哨戒艇２隻を避退させ、「嵐」「浜風」を率いてミルン湾に急行した。第１８戦隊もミルン湾に向け１３：００ラバウルを出撃した。
　また、第５空襲部隊の零戦９機、９９艦爆３機が１２：２５ラバウルを発進、次いで大艇１機、陸攻５機も発進したが、いずれも密雲のためラビに到達できず、艦爆は３機とも行方不明となった。なお、ラバウルとラエ間の距離は８００キロ以上あり、ラバウル-ガダルカナル間の約１０００キロとほぼ同じ距離であった。

　結局、日本軍水上部隊と航空部隊はこの敵艦船を捕捉することができなかった。１４：４５、現地からミルン湾の敵艦船がラビを出港したとの報告が入った。
　松山ラビ攻略部隊指揮官は１７：００、第１８戦隊にラバウル帰投を、第４駆逐隊司令には、なしうる限り２日夜に安田部隊の揚陸を決行するよう下令した。しかし、哨戒艇はすでに避退していたために２日夜の上陸は間に合わず、３日夜実施に延期された。
　ところが２日夜、第８艦隊司令部と第１８戦隊司令部は呉三特司令発信の電報を受信、それには、「最悪の場合に陥り一同従容として陣地を死守す。皇国の大捷と閣下各位の御武運長久を祈る」とあった。
　このころ、ラビ沖に進出していた「嵐」「浜風」が陸上の戦闘を望見した。２２：００、第４駆逐隊司令が戦闘の状況を以下、報告した。
「陸上方面戦闘は、『レクニラ』付近より飛行場付近に亙り各所に行われ　２９日夜より照明弾迫撃砲の閃光多し　敵の猛攻を思わしむ　味方部隊は各所に分散死守し居るものの如し　前回の上陸点西方に於ても戦闘行われ明日の上陸は敵前上陸となる公算多しと認む」

　三川外南洋部隊指揮官は、少数の陸戦隊の増援では戦況を有利に進展させることが困難と認め、安田部隊の増援は一時これを中止し、９月９日予定の陸軍部隊・青葉支隊の来着を待ってラビ攻撃を再興する方針を決めた。そして２２：４２、参謀長名をもって松山ラビ攻略部隊指揮官に対し、「嵐」「浜風」をもって呉三特の救援に当たらせるよう要望し、次いで２３：１５、安田部隊の上陸を一時見合わせる意向を通知した。
　松山ラビ攻略部隊指揮官は９月３日００：１０、安田部隊の進出を中止し、同隊乗船中の哨戒艇２隻は「龍田」護衛のもとにラバウルに帰投するよう下令した。
　「嵐」「浜風」は陸戦隊との連絡に努めたが、視界不良で連絡できず、内火艇を派出して発光信号を行ったところ、敵から攻撃を受け、連絡をとれないまま引き返した。

[117] mixiユーザー 09月01日 13:32

【９月３日　～ラビ攻略作戦　呉三特司令の戦線離脱～】

　９月２日夜半ころからやや下火になっていた敵の砲火は、翌９月３日天明前から再び激しくなった。呉三特本部も砲撃を受け、死傷者が続出した。
　陸戦隊は３日０５：２０、携帯暗号書ほか、暗号書を全部処分したことを報じた。０９：００ころには矢野呉三特司令が敵迫撃砲弾の弾片により重傷を負った。

　松山ラビ攻略部隊指揮官は０７：１５、「嵐」「浜風」に対し、３日夜ラビに再び進出して陸戦隊との連絡および傷者収容に任じ、不可能な場合は敵陣地を砲撃するよう下令した。
　また、同指揮官は１６：４０、呉三特司令に対し、「山中『ジャングル』等の安全なる地点に集結、陣地を作り防禦し通信連絡確保に努め、位置決定せば報告せよ　１２日大部隊の来着」と伝えた。それとともに、「天龍」および哨戒艇２隻を指揮してラバウルを出撃し、４日夜ラビ沖に進出して陸戦隊の傷者だけを収容しようとした。しかしこれは航海計画に余裕がないため、１日延期して実行は５日夜とすることとした。
　
　３日夜、「嵐」「浜風」は陸戦隊との連絡に成功した。第４駆逐隊司令は来艦した呉三特副官から聴取した陸戦隊の状況を２３：３０、以下のように報告した。
１　現在「ヒルナ」東方１キロの線に対抗しつつあり
２　人員（全部集結しあり）呉鎮五特司令戦死　呉鎮三特司令重傷　戦闘し得る先任者呉鎮三特副官（軽傷）　准士官以降の健在者三分の一　下士官兵の現員（戦闘し得る者）約５６０（約２００）　藤川隊（設営隊を含む）全部健在
３　「レクニラ」東方約半キロの川の線まで後退せば２、３日間同線を確保可能
４　安全なる位置に集結　陣地を構築するは全員疲労且傷者多く仲々実施困難にして之を実施する為には安田部隊の来着を熱望す

　矢野呉三特司令は、副官が連絡のため「嵐」に行ったことを確認しないまま、自らも陸上の実情を詳報して前後策に資するため、また、戦傷の苦痛が激しく応急治療の希望もあって「嵐」に赴いた。
　そしてほぼ副官と同様な説明を行ったのち、そのまま同艦に留まりラバウルに帰投してしまった。

　「嵐」「浜風」は糧食、医薬品などを陸上に渡し、ラビ方面を砲撃したのち、９月４日０１：５０帰途についた。傷者収容の準備をしていなかったので、矢野呉三特司令以外は収容しなかった。（※一部の傷者を収容した説もある）

　ラビ方面の最高指揮官となった呉三特副官は、第４駆逐隊司令から持久戦に移行すべき旨の勧告を受け、安田部隊と共に陸軍増援部隊来着までの持久を決意し、ラビ東方約６マイル（約９.６ｋｍ）の川の線に陣地を急増して、第一線部隊の収容に備えることとした。

[118] mixiユーザー 09月01日 13:34

【９月４日　～ラビ攻略作戦　呉三特副官の戦線離脱～】

　外南洋部隊司令部は９月２日夜の呉三特司令から陸戦隊の最後と思われる電報に接し、増援部隊の進出を一時中止した。このころ司令部内ではラビ作戦部隊全部の撤退意見もあったが、第１７軍司令部からラビ方面の一角を依然確保するよう要請されていた。
　そうした中、９月３日夜、第４駆逐隊司令からの報告が入り、持久戦が必ずしも不可能ではないと判断された。外南洋部隊指揮官は安田部隊を再派遣するとともに、ラバウル方面所在艦船の一部乗員をもって傷者収容隊を編成し、ラビ攻略部隊指揮官の指揮下、負傷者の収容に当たらせる方針を決めた。そして９月４日２０：０８、ラビ方面陸戦隊指揮官（呉三特副官）あて、次のとおり下令した。
「安田司令以下増援隊２００名５日上陸、陸軍１ヶ大隊１０日夜上陸す　兵力を結集し陣地に依り抵抗戦に努むべし」

　この命令にもとづき、安田部隊乗船の２隻の哨戒艇と「天龍」、哨戒艇１隻が４日１６：００、ラビに向けラバウルを出撃した。傷者収容隊も乗船しており、９月５日夜上陸の予定であった。
　これとは別に、別動隊の月岡部隊を捜索中だった「弥生」（第３０駆逐隊司令乗船）をラビ方面に派遣し、陸戦隊と連絡させることとした。
　この日、第５空襲部隊の零戦１機、陸攻７機が１０：０５ラバウルを発進、ラビに向かったが天候不良のため引き返した。

　ラビ方面の陸戦隊は９月４日も激しい敵機の銃爆撃や砲撃を受けた。陸戦隊は逐次後退し、１８：００ころにはラビ東方約６マイル（約９.６ｋｍ）の最後の陣地についた。
　陸戦隊内では前日ころから、傷者は近く収容されるはず、あるいは全員収容されるかもしれない、との噂が広がっていた。総員持久対峙の決意も知らず知らずの間に鈍化し、准士官以上においてさえも割り切れない感を抱く者が生じた。
　遂に陸戦隊指揮官であった呉三特副官も強く全員収容を希望するに至った。次席指揮官である藤川大尉もここに至っては持久対峙の見込みなしと判断し、傷者および設営隊員の急速後退を下令した。

　４日夜、「弥生」は予定通りミルン湾に進入し、第３０駆逐隊司令は呉三特副官と直接連絡のうえ、２２：３０、陸戦隊の状況を詳細報告したのち、「陸戦隊はすでに収拾すべからざる状態に陥りたるを以て安田部隊の増援も効なしと認む」と所見を報告した。
　「弥生」は陸上に糧食を渡したのち、重傷者全員を含む２２４名を収容して９月５日０１：００、帰途についた。
　収容者の中には陸戦隊指揮官である呉三特副官も含まれていた。そのため、ラビ方面陸戦隊指揮官は佐五特の藤川大尉となった。

[119] mixiユーザー 09月01日 13:36

【９月５日　～ラビ攻略作戦　撤収～】

　呉三特の状況報告を受けた松山ラビ攻略部隊指揮官は、安田部隊を増援しても戦局の挽回は不可能と判断、全面撤収を決意して９月５日０８：１０、外南洋部隊指揮官に対し、「横五特増援隊の揚陸を中止す、今夜『ラビ』上陸部隊全員を収容せんとす」と報告した。
　これに対し、第８艦隊司令部も同日１０：３１、参謀長名をもって撤収に同意する旨を回答した。この回答は南東方面部隊指揮官の承認を得て行われた。第１７軍司令部にも撤退の決定は通知された。当時、第１７軍司令部はガダルカナル島奪回を期して、ラビ増援予定であった青葉支隊をガダルカナルに投入するよう計画の変更を検討中であって、ラビを敵にとられることはやむを得ないという考えに傾いていた。

　ラビ攻略部隊指揮官は１１：００、藤川大尉に対し同日夜全員収容の準備をしておくよう下令するとともに、敵出現に備えて「龍田」「嵐」を６日朝イワ島西方に進出させるよう措置した。
　この日の朝、陸戦隊は傷者および設営隊を避退集結させたのち、各隊を統合して陣地の防衛に当たったが、午後に至り敵がさらに猛攻してきたために後退した。その後、総員収容の令に接した藤川大尉は、一部を収容配備につけて「陸戦隊集合」を下令し、撤退要領を指示した。

　ラビ攻略部隊指揮官は、「天龍」および哨戒艇２隻を率いて９月５日１９：００泊地に到着した。まず安田部隊の掩護隊および傷者収容隊を上陸させ、傷者、設営隊、陸戦隊の順に収容し、６日０２：００作業を終了、ただちにラバウルに向け出港した。
　収容人員はすでに収容した者を含めて１、３１８名（うち戦傷者３１１名）であった。当時、戦死を確認された者３１１名を含めて６１２名が帰還しなかった。健康者のほとんどは足傷のため歩行不自由で、戦闘に耐えうる者は１００名に満たなかった。

　連合艦隊参謀長の宇垣纒少将は当日の日誌に、作戦失敗の原因を以下のように記している。
「呉三特司令は下腿部盲貫銃創にて帰艦、丈夫なる大隊副官も引き揚ぐると云う有様、部下を残して帰るとは何事ぞ。大体此の失敗は
１　敵の防禦ある飛行場を陸戦隊にて奪取す得るとなせる事
２　がダル問題に持余しある処、軽率に手をつけモレスビーと共に三方面に凡ての兵力を分散せしめたる事
３　陸戦隊の素養優良ならず３０歳-３５歳の応召兵多く、忍耐力攻撃精神薄弱たりし事。其戦闘行動も適切ならず、南北呼応を果たさず。
４　降雨多く渋滞水虫に災され、又天候不良の為飛行機の利用思うに任せざりし事」

　「陸上部隊全員収容帰途につく」旨の報告を受けた第８艦隊司令部は、ラビに未収容者が残っているかもしれないと憂慮した。そのため、６日０７：０４、参謀長名をもってラビ攻略部隊に対し、「今夜適宜の兵力を再派遣して、人員の捜索収容に当たらせるとともに、入泊することあるべき敵艦船を攻撃」させるよう要望した。
　ラビ攻略部隊は９月６日と７日のそれぞれの夜、ミルン湾に進入し、敵輸送船などを攻撃、また飛行場および付近を砲撃したが、陸戦隊を発見することはできず、ラビ方面陸上の捜索は打ち切られた。

　戦後の調査によれば、９月６日朝に前進した連合軍の部隊は、散発的な攻撃を受け、組織的抵抗がなくなったのは７日朝からであった。第８艦隊司令部の懸念通り、陸上に未収容者が残っていたのだ。
　少人数による抵抗はその後、数週間継続し、若干名がオーストラリア軍の捕虜となった。

[120] mixiユーザー 09月01日 13:36

【９月６日-１０月２６日　～ラビ攻略作戦　月岡部隊の救出～】

　ラビ全面撤退にあたり第８艦隊司令部が最も苦慮したのは、佐世保鎮守府第五特別陸戦隊（佐五特）司令以下の月岡部隊の行方とその収容であった。
ラビ攻略作戦開始時、ブナにあった月岡部隊は、大発でミルン湾と反対側の北部海岸のタウポタまで移動、そこから半島を陸路縦断して背後からラビを攻撃する予定となっていた。（※当トピック１０５参照）
　しかし、月岡部隊は８月２３日２０：２５、「今夜準備出来次第出港２６日早朝『タウポタ』に揚陸する如く努め、揚陸迄通信連絡を行わず」と電報して以来、消息を断っていた。

第８艦隊司令部は作戦中および撤収後も、艦艇や航空機をたびたび派遣して月岡部隊の捜索に努めたが手掛かりを得ることはできなかった。
　ところが９月９日、ブナに残留していた月岡部隊副官から、月岡部隊がグッドイナフ島ワッツ岬東方海岸にあり、救出を待っている旨の報告が入った。この報告は、９月２日現地からカヌーによって派遣された３名の伝令が、途中で敵現地人軍と交戦しながら９日ブナに到着して伝えたものであった。

　月岡部隊は８月２４日０５：００、大発７隻に分乗（司令以下３５３名）してブナを出撃した。同日夕方、ネルソン岬北方のアナサリ湾に仮泊したのち、２５日１０：３０、グッドイナフ島ワッツ岬東側海岸に達した。タウポタまで４２浬（約１００キロ）の地点であった。
　この日、０９：３０ころから敵偵察機の触接を受けていたが、１２：３０から１時間余にわたり仮泊地において敵戦闘機１０機の銃爆撃を受けた。大発はすべて使用不能となり、死傷者１４名を出した。月岡部隊は以後の機動を中断せざるを得ず、ラビ攻略にも策応できなくなった。そのうえ携帯電信機も破損し、連絡不能に陥った。
　以後、グッドイナフ島の現地人部落に居を定め、味方飛行機の捜索を待ったが飛来しないので、９月２日以後、二組の伝令をカヌーでブナに派遣し、その一組が到着したというわけであった。

　第１８戦隊司令部は直ちに月岡部隊救出にあたったが、敵機の爆撃で「弥生」が沈没、「磯風」が損傷し、救出は中止された。その後、敵機の活動がますます活発になる中、救出は続けられた。
　１０月３日、伊１潜による救出が成功、陸戦隊７１名を収容した。この時、大発の引き渡しに成功したほか、電信機を送ったため、ブナ経由ラバウルとの無線通信が可能となった。島に残った隊員は、月岡司令以下幹部８名、下士官兵２７６名で、そのうち９５パーセントがマラリアに罹っていた。
　１０月２３日、オーストラリア軍と思われる約２００名の敵軍がグッドイナフ島に上陸。月岡部隊は中隊長１名、小隊長２名戦死、その他１０数名の死傷者を出し、対峙戦に入った。第１８戦隊司令部は同日１１：００にその報告を受けた。同司令部は基地航空部隊に敵の制圧を要望したが、ガダルカナル島方面の戦況、天候および味方航空部隊の実情からしてその実施は困難であった。

　１０月２４日０５：２０、月岡部隊長は、今夜日没を期して全員収容し、ファガッソン島経由ウェレ島東岸、ファガッソン島南岸を捜索されたい旨を伝えた。月岡部隊は敵に感知されることなく、同日２１：００、大発によるグッドイナフ島離脱に成功した。そして、２５日０５：３０ファガッソン島アプラプロに上陸し、同日２３：００出港して、翌２６日早朝ウェレ島北東部海岸に達する旨を報告した。
　この報告を受けた第１８戦隊司令の松山少将は即日救出することに決意し、「天龍」「鴻」を率い２６日０７：００ラバウルを出港した。「天龍」は同日２１：３０、ウェレ島沖に到着、現地付近海上に到着していた月岡部隊を収容した。収容人員は月岡司令以下２６Ⅰ名であった。
　月岡部隊が消息を断ってから２ヶ月後のことであった。

[121] mixiユーザー 09月01日 13:50

昭和17年1月～昭和17年9月16日までの関連年表を記載します。

[122] mixiユーザー 09月01日 13:53

昭和１７年（１９４２）

１月２９日
　第一段作戦終了後の次期作戦として、大本営陸海軍部は英領「ニューギニア」及「ソロモン」群島作戦に関する陸海軍中央協定を締結。南海支隊と連合艦隊に英領ニューギニア東部の要地およびソロモン群島の要地（ラエ、サラモア、ポートモレスビー、ツラギなど）の攻略を指示する。

３月８日
　日本軍はポートモレスビー攻略に必要な飛行場確保のため、東部ニューギニアのラエとサラモアへそれぞれ海軍陸戦隊と南海支隊を上陸させ、同地を占領した。

４月１０日
　連合艦隊は麾下艦隊・部隊に対し、第二段作戦第一期兵力部署への転換を命令。ポートモレスビー攻略作戦であるMO作戦が動き出す。（第４艦隊を基幹とする南洋部隊が編制）

４月１６-１７日
　南洋部隊がトラック泊地の旗艦「鹿島」でMO作戦の図上演習を実施。南海支隊の参謀も参加した。

４月２３日
　南洋部隊は基地航空隊及び南海支隊と「MO作戦に関する陸海軍協定」を締結。
同日、麾下部隊にポートモレスビー及びツラギ攻略の作戦命令を発令した。

４月２５-２６日
　ラバウルの海軍第８根拠地隊司令部で陸海軍現地協定が締結。（５月３日細部補足）

４月２９日
　南海支隊がポートモレスビー攻略の部署を発令。

５月３日
　海軍陸戦隊がソロモン諸島のツラギを占領。

５月４日
　南海支隊がポートモレスビーに向けてラバウル出港。

５月７-８日
　珊瑚海海戦。

５月８日
　南洋部隊がMO作戦の延期を発令。

５月１０日
　連合艦隊がMO作戦の延期を発令。

５月１８日
　FS作戦（フィジー・サモア方面攻略）担当軍として第１７軍の戦闘序列が下令。

５月２０日
　第１７軍の編成が完結。同日、南海支隊は第１７軍の隷下に入る。

６月５日
　ミッドウェー海戦。

６月８日
　参謀総長と軍令部総長は作戦の変更に伴う爾後の処置について列立奏上。

６月１１日
　大本営海軍部は連合艦隊に、FS作戦の延期とポートモレスビー陸路攻略の調査研究を指示。

６月１４日
　トラック諸島に向けて移動中の第１７軍司令部と竹田宮大本営陸軍参謀がマニラで会見。竹田宮参謀はＦＳ作戦の延期とポートモレスビーへの陸路攻略の参謀総長指示（６月１２日付：大陸指第１０７９号）を第１７軍司令部に伝達。そこには、第１７軍は現地海軍と協同で陸路ポートモレスビー攻略の研究を行うべきこと。この研究を「リ号研究」と称することが記されていた。

６月２２日
　第１７軍司令部主力がダバオに到着。ここを軍司令部所在地とする。

６月３０日
　南海支隊長がダバオ到着。陸路進攻の能否について意見を求めた第１７軍司令部に対し、ほとんど不可能なりとの結論に基づく消極的意見を述べる。

７月１日
第１７軍司令官はリ号研究の実施を南海支隊に命令。

７月４日
　第１７軍と第４艦隊はトラックでリ号研究に関する陸海軍現地協定を締結。

７月７日
　大本営海軍部は陸軍部にFS作戦の中止を申し入れる一方、ポートモレスビー攻略とそれに引き続くニューギニア占領の必要性を強調。

７月１１日
　大本営陸海軍部はFS作戦の実施の中止を正式に決定。

７月１４日
南海支隊長は横山先遣隊に東部ニューギニア派遣に関する支隊命令を下達。

７月１４日
海軍の戦時編制が改正。空母機動部隊としての第３艦隊、ソロモン諸島などの南東方面警備を担当する第８艦隊が新設された。

７月１５日
　大本営陸軍部参謀辻政信中佐が第１７軍司令部に到着し、ポートモレスビー攻略決定の趣旨を告げる。

７月１８日
第１７軍司令官がポートモレスビー攻略に関する軍命令を下達。

７月１９日
辻参謀が大本営宛に「沖部隊（注：第１７軍）は中央の意図に基づき、『リ』号実施（研究にあらず）に関し、既に軍命令を下達せらる」と報告。

７月２０日
堀井支隊長は横山先遣隊に陸路攻略命令を伝達。
同日、横山先遣隊はラバウルを出港。

７月２１日
横山先遣隊がゴナに上陸。（２２日に先遣隊主力が上陸）
同日、海軍陸戦隊がブナ北西５キロ付近のギルワに上陸。（２２日にブナ占領）

７月２２日
　第１７軍司令官は幕僚とともにダバオを出発して、空路パラオ、トラックを経てラバウルに向かった。辻参謀も同行。

７月２４日
第１７軍がラバウル到着。
同日、南海支隊長が軍参謀長を訪問。

７月２５日
第１７軍は大本営陸軍部作戦課長服部卓四郎大佐から、「第１７軍の研究結果を待っている」との電報を受け、大本営に対し指示を請う旨を電報する。
同日、辻参謀が駆逐艦でブナに向かった。

[123] mixiユーザー 09月01日 13:53

昭和１７年（１９４２）

７月２７日
　辻参謀がブナ沿岸で爆撃を受け頭部に負傷。（２８日ラバウルに帰還）

７月２８日
　大本営陸海軍部は「東部ニューギニア作戦に関する陸海軍中央協定」を発令。南東方面の作戦目的は「ポートモレスビー等の要地を攻略確保するとともに、東部ニューギニア一帯の敵を掃滅し、ソロモン諸島の利用とあいまって珊瑚海を制圧するにあり」とされた。

７月２９日
　横山先遣隊はココダ及び同地飛行場を占領。

７月３１日
　第１７軍・第８艦隊・第１１航空艦隊で陸海軍現地協定が締結。

８月４日
　海軍の偵察機がラビで連合軍の飛行場を発見。

８月６日
　米軍、ガダルカナル島上陸。
　同日、第１７軍司令部では軍参謀長統裁の下に、南海支隊幹部に対してポートモレスビー攻略作戦の図演を実施する予定だった。第１７軍司令部は南海支隊にポートモレスビー攻略を担当させること、パラオにいる第３５旅団（川口支隊）にガダルカナル島方面救援を担当させることを第８艦隊に回答。

８月１２日
　第８根拠地隊参謀がガ島を飛行偵察。
　同日、大本営陸海軍部は南東方面作戦指導要領を策定。既定方針に従ってポートモレスビー攻略を実施することと、ガダルカナル島の敵を撃滅して同島の要地、特に飛行場の奪回が記された。

８月１３日
大本営陸海軍部は第１７軍と連合艦隊にソロモン群島奪回（カ号作戦）を発令。
陸軍部から第１７軍への命令には「東部ニューギニア方面における作戦を遂行するとともに海軍と協同してソロモン諸島の要地を奪回すべし」とあった。

８月１５日
　横山先遣隊の一部がデネギ陣地を占領。

８月１８日
　南海支隊主力がバサヴァに上陸。

８月２１日
　第８艦隊がラビおよびサマライ方面の作戦開始を発令。

８月２３-２４日
　南海支隊主力がココダに到着。同地で南海支隊長と横山先遣隊長が会見。

８月２４日
第２次ソロモン海戦

８月２５日
　海軍陸戦隊（呉五特および佐五特の一部）がラビ上陸。
　２６-２７日まで飛行場攻撃を行うが失敗。

８月２６日
　南海支隊がイスラバの敵軍陣地への攻撃を開始。（８月３１日占領）

８月２７日
　第８艦隊司令長官はラビ攻略増援部隊（呉三特および横五特の一部）の派遣を命令。
（８月２８日ラビ上陸）

８月２８日
　第１７軍司令官は南海支隊長に対して「スタンレー山系の敵を撃破し、同山系南側付近の要線に進出せば、一部をもって該線を確保し、主力を同山系以北に集結し、爾後の作戦を準備すべし」という命令を出した。

８月３０日-３１日
　ラビの海軍陸戦隊による飛行場再攻撃が失敗。

９月３日
　南海支隊はイオラを通過。

９月５日
　南海支隊はスタンレー山系最高峰の峠に到達。

９月５日
　海軍陸戦隊がラビから撤退。

９月１１日
　南海支隊はマワイに到達。

９月１３日
　南海支隊はイオリバイワの敵陣地への攻撃を開始。

９月１６日
　南海支隊はイオリバイワの敵陣地を占領。

[124] mixiユーザー 09月04日 22:02

ここまで、ニューギニア戦第１期とします。

ニューギニア戦第2期は、「ガダルカナル攻防戦」第2期（昭和17年9月下旬）の記述を終えてからの書き込み予定です。

[125] mixiユーザー 10月09日 12:04

書き込みを再開します。
[102] からの続きになります。

今後は「ガダルカナル攻防戦」トピックと並行して進めたいと思います。

[126] mixiユーザー 10月09日 12:06

【ブナ地区に対する敵反攻の脅威　１】

東部ニューギニア方面では、９月上旬になるとブナ方面の連合軍機の行動は次第に活発になり、毎月2～3回戦爆連合の10数機で日本側を攻撃する状況になった。

このため、南海支隊に対する軍需品輸送船の出港は、海軍航空部隊の掩護が確実となるまで一時延期された。当時、連日の連合軍機の来襲に対して、ブナおよびギルワ付近の防空に任じていた野戦高射砲第４７大隊はよく奮闘して、９月２７日までに約１４機を撃墜し、一時敵機の来襲が絶えたほどであった。

しかしながら、これらの連合軍機の活動、その他の状況からブナ地区に対する連合軍の攻勢的企図が濃厚であると判断された。ブナ、ギルワおよびバサブア等の後方基地に連合軍がもし上陸することとなれば、今まさにスタンレー山系を突破して、モレスビー平野を眼下にした南海支隊にとっては、致命的な問題であった。

[127] mixiユーザー 10月17日 18:01

【ブナ地区に対する敵反攻の脅威　２】

そんな時にラバウルでは海軍ブナ航空基地指揮官から、「敵襲の虞あり　配員を撤す」という電報を受け取った。９月１２日１８：１０のことである。続いて１８：３０分には次のように入電した。

一　敵の当地攻撃を予想せらるる現状に鑑み当地守備兵力手薄なるに付対空見張所を撤去す
二　目下厳重警戒中

そして翌９月１３日２０：００に次のように打電してきた。

　陸軍よりの報告に依れば敵軍（兵力不明）バサブアに上陸せるものの如し　明朝未明より当地およびバサブアに落下傘部隊降下の算極めて大なり　上空警戒方依頼す　当飛行場使用不可能

２０分後にはに次のように打電してきた。

　陸軍富田部隊長（※注　南海支隊司令部附富田義信中佐　歩兵第４１連隊第３大隊主力を指揮下に置いていた）よりの情報に依れば敵はバサブアに上陸せるものの如し　兵力不明

この電報を受領した南東方面艦隊司令部および第１７軍司令部の衝撃は、時機が時機だけに非常なものであった。

[129] mixiユーザー 10月19日 13:18

【ブナ地区に対する敵反攻の脅威　３】

この連合軍バサブア上陸の報告は、９月１５日になって「事実無根」と確認されたが、結果的には横須賀鎮守府第５特別陸戦隊（横５特）がブナに進出することになり、同１５日、同隊司令・安田義達海軍大佐がブナ方面海軍部隊の指揮を執ることになった。

当時におけるブナ地区の海軍守備隊兵力の概数は次のとおりである。

隊別　　　　　　　　　　　　人数
横須賀鎮守府第５特別陸戦隊　２９０
佐世保鎮守府第５特別陸戦隊　１１０
第１４設営隊　　　　　　　　軍人３０　　工員２００
第１５設営隊　　　　　　　　軍人５０　　工員２００
合計　　　　　　　　　　　　軍人４８０　工員４００
兵器
　８センチ高角砲　　　２門
　３連装２５ミリ機銃　１挺
　速射砲　　　　　　　３門
　１３ミリ機銃　　　　３挺

このころ、ラエ方面の海軍航空部隊は、ガダルカナル島方面の戦況激化のため転進し、一時ニューギニア方面の航空兵力が皆無の状態となった。このため連合軍機は益々跳梁し、部隊は連日銃爆下で守備に任じていた。

百武晴吉第１７軍司令官はこのような状況に即応して、９月１４日、堀井富太郎南海支隊長に対して、歩兵約１コ大隊をブナ付近に集結して同地付近の警戒を厳とするよう命令した。

※（左）横須賀鎮守府第５特別陸戦隊司令　安田　義達海軍大佐
　（中）第１７軍司令官　　　　　　　　　百武　晴吉陸軍中将
　（右）南海支隊長　　　　　　　　　　　堀井富太郎陸軍少将

[130] mixiユーザー 10月24日 14:27

【支隊長の攻撃中止の決心　１】

既述のとおり南海支隊は８月１８日、ニューギニア上陸以来、連合軍の逐次の抵抗を排除して、スタンレー山系を突破した。

９月１２日、ポートモレスビーの陥落が近いという情報を聞いて、ココダから支隊司令部に連絡に来た海軍のココダ通信基地の小屋海軍大尉に、ソロモン方面の戦況を聞き、堀井支隊長は、「ソロモン、二ューギニア方面で敵を圧倒しているのは、わが南海支隊だけである」と意気盛んなものがあった。

９月１４日、支隊司令部はイオリバイワの第一線のすぐ後方の谷の底に位置していた。当時、歩兵第１４４連隊は全力で、イオリバイワの敵陣地を攻撃中であった。この夜、攻撃を中止してスタンレー山系以北に集結するという決定がなされた。この日はガダルカナル島で川口支隊が攻撃に失敗して、撤退を決心した日と奇しくも同じ日だった。

[131] mixiユーザー 10月26日 18:31

【支隊長の攻撃中止の決心　2】

９月上旬から糧秣もすでに残り少なく、１日定量を１合として極力その使用を節減したので、兵は相当疲労していた。

「今日は前に陣地をとれば倉庫の食料が手に入るかも知れない」、「後方からの糧秣が今日こそは届くだろう」この２つのはかない期待で一日一日が過ぎた。しかしその２つとも実現しなかった。

もうこれ以上進出すれば、それだけ自殺行為を早めることになる、というところまでいった。それに加えて、ブナ方面に敵が上陸するかも知れないという判断が強くなってきたのである。

堀井支隊長は涙をのんで攻撃中止の決心をとった。以下のとおり今後の行動方針が決定された。

一　現在攻撃中の陣地がとれたならば、第一線は直ちに防禦のため陣地占領をなすこと

二　一部をマワイ付近に派し、周辺の土人部落から食べられる物はなんでも徴発させること

三　でき得れば第一線の兵力を最小限にして、残余は後方の糧秣担送に派遣すること

[132] mixiユーザー 10月31日 18:17

【第一線の状況】

しかし、第一線の歩兵第１４４連隊の各部隊は依然イオリバイワ台上周辺の陣地を力攻していた。９月１５日中に第一線陣地を、１６日は第二線陣地を攻撃した。台上の最後の陣地を奪取したのは９月１６日の夕刻であった。その日の１８：００ころ、「連隊はイオリバイワ附近を確保し爾後の攻撃を準備す」という命令が第一線の歩兵大隊に伝達された。

一方、歩兵第４１連隊主力は、同じ９月１６日、支隊命令によって後方のココダに向かい後退を開始した。当時、エホギ付近まで追及中であった同連隊第３大隊は、ギルワに向かい反転を命ぜられていた。同連隊第２大隊（第６、第８中隊、機関銃１小隊欠）は南海支隊長の直轄となり、マワイ付近に集結を命ぜられた。

オーストラリア軍と接触中の歩兵第１４４連隊主力は、イオリバイワ台地の陣地線を、９月１８日一部の配備変更をして強化した。オーストラリア軍の斥候が陣前に出没して小戦が繰り返されたが、陣地は確保していた。

９月１９日、第１７軍司令官は、南海支隊イオリバイワ占領の報告に接し、直ちにその第一線をマウイ以北に占拠すべき厳命を発した。

[133] mixiユーザー 12月08日 23:18

【第１７軍の作戦指導　１】

９月２２日、ニューカレドニア付近の通信状況が、ガダルカナル島上陸前の状況に近似してきたので、連合軍が新たに東部ニューギニア、あるいはソロモン諸島方面に上陸を企図しているのではないかと判断された。そこで第１７軍司令官は９月２３日、次の命令を下達した。

一　通信諜報に依れば敵は新たに東部ニューギニア、ソロモン群島方面に対し上陸を企図しあるものの如し

二　軍は依然ガ島方面に対する攻撃準備を続行すると共に南海支隊方面の戦線を整理しブナ附近の防衛を強化せんとす

三　南海支隊長は主力をイスラバ、ココダ附近に集結し爾後の攻勢の拠点を確保すると共にブナ附近の防衛を強化すべし
　之がため取敢えず歩兵第４１連隊を基幹とする部隊をブナ附近に急派し敵の上陸企図を破摧すると共に特に飛行場附近を確保すべし
　爾今富田部隊を配属す

[134] mixiユーザー 12月29日 16:44

【第１７軍の作戦指導　２】

続いて９月３０日、第１７軍司令官はモレスビーの作戦準備とブナ地区の防衛という２つの目的に応ずる、南海支隊の行動の準拠を発令した。

この命令により、南海支隊は、爾後各一部をもってイスラバ付近の攻勢拠点およびブナ、ギルワ付近の防禦拠点を確保し、主力をもって１０月末ころまでに、ギルワ-ココダ道を自動車道に、ココダ-イスラバ道を駄馬道に改修、引続きスタンレー山系南側の地歩を確保することになった。

９月下旬になっても、ブナ飛行場に対する連合軍機の攻撃は執拗に実施された。９月２５日の来襲状況を一例としてあげると、０６：４０から１１：２５の間に、B―１７五回１６機、B―２６一回２機の来襲があった。滑走路はそのため使用不能になっていた。

[135] mixiユーザー 01月25日 18:05

【イオリバイワの第一線の撤退　１】

一方、撤退が決定したイオリバイワの第一線では、歩兵第１４４連隊第３大隊長桑田中佐が、９月２５日正午、次の命令を下達した。

一　楠作命第１４５号に基き大隊は連隊の後衛となり２６日薄暮以後左の如く第一線を徹しカギ東方高地に向い転進でんとす

左記
１　２５日１８００　大隊砲、担送患者（川田軍曹）
２　２６日１９００　第７中隊、機関銃中隊、第８中隊、大隊本部
３　２６日２３００　第９中隊（機関銃１分隊属）

二　第９中隊（機関銃１分隊属）は後衛尖兵となり本隊の後方５００を前進すべし

三　各隊は陣地撤収に当り厳に企図の秘匿に勉むべし

四　余は依然現在地に在りて２６日１９００本部と共にカギに向い前進す

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