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KAI'S─PARTYコミュのD&Dキャンペーン「レストの廃墟」外伝──竜魔将サルーヴィスの失墜

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<レストの廃墟 探索1日目 昼>

「くそっ!リヴァイジャクスどこに行っている!?」
 奇襲を知らせる笛の音を聞いて,見張り台から駆け下りた竜魔将サルーヴィスはゴブリンにしては大きいが,ホブゴブリンに比べると小さな体を怒りに震わせた。
 一瞬,履いているブーツの魔力を使って公会堂へ向かおうとも考えるが,途中で魔力が切れ,湖の中を泳ぐ羽目になることを考え,思いとどまる。
 万が一水中で,繁殖中のドラゴンもどきと戦う羽目になったところを想像したためだ。
 リヴァイジャクスが先程怒りにまかせて殺したリザードフォークを,いつものように食べ頃になるまで置いておくため,レスト湖のお気に入りの場所に埋めにいったと判断し,悪態をついて怒りを紛れさせたところで,桟橋を叩いてリヴァイジャクスを呼ぶ。
 しばらく待ったところで,水中が大きく盛り上がり水しぶきが上がった。
 リヴァイジャクスだ。
 避けようのない桟橋でリヴァイジャクスのおふざけの水しぶきを浴びたサルーヴィスは,長い黒髪をかきあげながらリヴァイジャクスをねめつけた。
「ドウシタ」とリヴァイジャクスが問う。
「襲撃だ。冒険者らしい。なにやら魔法の力を使ったみたいだ。よく分からんが船じゃなく馬で来たらしい」
 グルゥ
 うなりながらリヴァイジャクスが桟橋に寄ってくる。「水面に入ったまま近づこう。冒険者どもが公会堂から出てきたところで襲撃する。たとえ一撃で倒せなくても,この深さだ。水に落ちればイチコロだ」
 その背に飛び乗りながらサルーヴィスが言う。
「オボレマイトばたばたシテイル冒険者ニクライツクノモタノシイゾ」
 リヴァイジャクスは楽しそうにそう言うと静かに,だが猛烈な速度で公会堂へ向かった。
「よし出て来たぞ」
 公会堂に突入した冒険者どもに気づかれないようロングボウの射程ぎりぎりの所に浮かんでいるリヴァイジャクスの背に伏せたサルーヴィスは,公会堂の屋上に出てきた冒険者らしき人影を見て上体を起こした。
 いつでも矢を放てるよう弦に矢をつがえ,ぎりぎりと弓を引き絞る。
 冒険者どもが湖に出たところで矢を放ち,自分たちの存在を知らせて恐怖を味あわせた上,射落とす。その様子を考え,自然に笑みが浮かぶ。
「イクゾ」
 リヴァイジャクスが翼を羽ばたくと同時に後ろ足で水面を蹴って宙に舞い上がった。
「なにっ!」
 水面から20フィートほどの高さから公会堂の方を見たサルーヴィスが,その光景を見て驚きの声を上げ,リヴァイジャクスが言葉を失う。
 先ほどまで,公会堂近くにいたはずの冒険者たちの姿が馬らしきものに乗って150フィートばかり彼方に見える。気づかれないよう射程ぎりぎりにいたのが裏目に出て既に射程の外だ。信じがたいことだが,リヴァイジャクスが全速で飛ぶよりも速い速度で移動していく――
――これでは矢を射るどころか,追いつけない 
 ギリィッ
 サルーヴィスが歯を噛みしめる。
 グルワァァアアアアア!!
 リヴァイジャクスが怒りの咆哮を上げた――


<レストの廃墟探索2日目 日暮れ前>
 明けた翌日の夕暮れ時,リヴァイジャクスの背に乗ったサルーヴィスは,公会堂の方を振り返ると不安げな表情を浮かべた。
「ドウシタ?ナニカフアンナコトデモアルノカ!?」
 それを見てリヴァイジャクスが口を開く。
「いや,あの冒険者どもがまた来るんじゃないかと思ってな――」
「クカカ。シンパイショウダナ。ワレノスミカマデハイリコンデ,イナガラ,マホウカンチモセズ,ワレノタカラニモキヅカズニ,ニゲダシタヨウナヤカラダ。ジツリョクモトモナワヌ冒険者ドモがキタニスギヌ。オオカタ,ワレノソンザイニキヅキ,オビエテニゲダシタノデアロウ。
 ソレニキノウノキョウダ。スグニクルホドオロカデハアルマイ」
「確かにな――」サルーヴィスが頷く。
「ヌスマレタ,ハクセイノザイリョウモホシイノダロウ?」揶揄するように嗤う。「ソレニワレハハラガヘッタ」
 気にはなるが,リヴァイジャクスが言うことももっともだ。わざわざ黒竜のねぐらに入り込んで,運よく黒竜がいなかったのにも関わらず,何も盗まずに逃げ出したような間抜けな冒険者どもが,1日も開けずに再度襲撃してくるとは思えない。
 また,万が一に備えてリザードフォークどもや<赤き手>の者どもには策を指示済みだ。
「よし,行こう。」漠然とした不安を飲み込んで,サルーヴィスはリヴァイジャクスに声をかけた。「どこに行く」
 リヴァイジャクスが獲物をいたぶる人間のようなに嗤う。
「レストノハズレダ。マエニナンドカ,エルフガアウルベアヲツレテイルノヲミタ」
「いいな,それで行こう。」
 サルーヴィスが頷くと,リヴァイジャクスは羽ばたいた。


<レストの廃墟探索2日 日暮れ後>
 レストのはずれに行き,アウルベアの死体を発見したサルーヴィスとリヴァイジャクスは,死体の状況からブラックスパイダーに殺されたものと判断し,とりあえずリヴァイジャクスの食事を済ませてから,仮の宿にして<赤き手>の戦力の一つとして育てているグリーンスポーンレイザースポーンが待つ公会堂へ向かった。
 公会堂に近づいたところで,レイザーフィーンドの繁殖場の崩れた天井の穴から上に向かって明かりが伸びているのが見える。上空を旋回すると陽光棒のものであるのがわかった。
「オノレ!」リヴァイジャクスが唸り,
「今度は逃がさん」サルーヴィスが怨嗟の声を上げる。
 一人と一匹は,前日の轍を踏まぬため,公会堂近くへ移動すると,静かに身を潜めた――


<レストの廃墟探索2日目 戦闘直後>
 ゴオルゥァアアアアアア!!
 リヴァイジャクスが吼えた。
 怒りと痛みで咆哮を上げる。
――おのれ冒険者ども!よくも我に傷を!これほどまでの傷をつけてくれたな!!
酸で!我が吐息で!汚泥に変えてくれる!!
 ガァアアアアア!!

 リヴァイジャクスの背中の上から眼下を見ると公会堂の上にはまだ先ほどの冒険者たちの姿が見えた。桟橋には馬らしき姿もある。
 たぶんあの馬に乗って岸からあそこまでやってきたのだろう。
 魔法のことはよくわからないが,そうでなければ,そこに馬らしきものがいることに説明がつかない。
「リヴァイジャクス」
 サルーヴィスが声をかけた。
「ナンダ」
 縦に割れた虹彩しかない爬虫類の瞳を怒りの赤色に染めながら,リヴァイジャクスがサルーヴィスの方に振り返る。
「あそこだ」サルーヴィスが廃墟の一角を指差す。「あそこで,仕掛ける。まだ,やつらを仕留めるチャンスはある。」
「ショウチ」
 リヴァイジャクスが,サルーヴィスが指示した方へ急降下して行く。
――さあ,仕切りなおしだ。次は仕留める
 サルーヴィスは,罠にはまりおびえる冒険者の姿を想像し笑みを浮かべた。

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