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ワライアル★自己紹介よろコミュのKS4−8 キング→けんたろ→あす→aki

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★キング★

「うぅ…寒い…」

部屋の中だというのに、吐き出す息が白くなるほど…まあ、これは部屋がぼろいせいもあるんだろうけど…

唸りながらも、俺は温もりの残る布団を抜け出した。

これが平日であればいつまでも未練たらしく布団の誘惑にしがみついているところだが、今日は日曜だ。寒いのは苦手だが…それよりも大切な用事があるのさ。

俺はこたつに潜りこみながら、テレビのチャンネルをつけた。

華々しい音楽と共に、オープニングテーマが流れだす。時間ぴったり。

「…ああ、やっぱいいよなぁ〜……ヒーローって」

俺は、ふと部屋に視線を巡らせた。

棚に並んだ、沢山のフィギュア…それは、仮面ライダーや、ウルトラマンや、ゴレンジャーや…全てヒーローと呼ばれるものたちだった。

そう、俺は、ヒーローが好きだ。貯まりに貯まったこれらのグッズは、コレクター仲間の中でも滅多にないくらいの質と量だ。


「はぁあ〜……俺も……ヒーローみたいに生きられたら…な」

番組が終わり、バカバカしいニュースに切り替わったところで俺はテレビに対する興味をなくし、寝転がった。

現実は、つまらない。

思えば、高校を卒業してから今の工場に就職し、4年間。ただただ同じ作業の繰り返しだった。

元々、酒は飲めないしタバコもやらない。給料は全て飯とネット…あとはグッズに消えていった。



「なりてぇよなぁ…」

俺はまた一人、呟いてみた。

もう十分暖まった部屋に、吐息が白くはならなかった。だが、吐き出す虚しさだけは消せなかった。



★けんたろ★

彼がヒーローに憧れる理由は全部で3つある。



まず1つ目は、現実の自分と対極の人生を送っていることである。

工場で勤勉に働けど給料は少なく、彼はいわば日陰暮らしである。
それに対しヒーローは正義の味方として敵と戦い、皆に感謝される、華やかな存在である。
彼は自分はドクダミ、ヒーローはヒマワリであると思いこんでいる。




2つ目の理由はヒーローのチームには必ず女の子がいることである。

ディスプレイやDSを介してしか女の子と話す機会が無い彼にとって、これは重大な要素である。別に変な意味はない。




3つ目の理由は、ヒーローは自分とかけ離れた極めて遠い存在であるが、似ている部分もあり親近感が沸くというものである。

それはヒーロー、HEROをという文字をよく見れば見えてくる。
HEROを区切って読むと、H ERO。彼となんら変わりないのである。
彼はここにドクダミがヒマワリに昇華できる可能性を見出そうとしている。種は彼にもあるのだから。



★あす★

俺は手を伸ばし、一つのフィギュアを手に取った。

すぐ手に取れる位置には、幼稚園のころ、まだ下心なしでヒーローものを見ていたころに恋をしていたモモレンジャーがそこにはいた。

「なんだ。俺はあの頃と何もかわっちゃいないな」

自分の変化のなさに笑いがこみ上げてくる。


「俺の『エルメス』はいつくるんだよ」

モモレンジャーに尋ねてみても答えてはくれない。
ただ俺の手の中で決めポーズをしているだけだ。


モモレンジャーを丁寧に定位置に戻し、今度は本棚から一冊の本を取り出す。


数年前に流行った俺のバイブル「電車男」は何度も読んだせいですっかり色あせている。


「こいつ、勇気出して痴漢から守ったんだよな」

その本はほぼ暗記知るほど読んでいた。


俺には到底痴漢から守るなんて出来ないと思って数年。

ヒーローになれない俺は、いつまでドクダミなんだ?

太陽に背を向け、世間から目を逸らし、いてもいなくても分からないような存在感で仕事をしているこの日々はいつまで続くんだ?

自問自答する。


しかし頭で考えていても答えなどでない。

今まで出なかったんだ。
この先もきっと出ない。


今日は日曜日。
まだ朝だ。


俺は母親が買ってきた服に手を通し、外に出ることにした。



★aki★

一方その頃・・・。

勇治は悪の組織との戦いが終わり、戦後のシャワーを浴びていた。

普段はしがないサラリーマンだが、実は国の平和を守るヒーローとしての顔を持つ彼は、握力が尋常では無かった。

戦いの後はアドレナリンの分泌が凄まじく、力の加減を忘れる。
シャワーの先が曲がってはいけない方向に曲がり、止めどなく水が溢れた。
『ぅはぁ!ちぃべたぁ〜い』
普段の勇治は甘えん坊のロリコンだった。

今度は勇治の先っちょがとんでもない握力によって左に曲がった。
『ぃひぃ〜、出るぅ〜ん!』

こんな男が国の平和を守っているもんだから、治安は決して落ち着く事がない。

『小さな女の子が危険』

これが彼のやる気のバロメーター。
女の子が絡んでいないと、例え猟奇殺人が起こっても知らんぷりを決め込む程のこだわり様。
さらに戦う時はヒートテックのパンツに上半身は裸という出で立ちだから、誰がヒーローなのかよく分からない。



『今後ともどぅぞよろすく!』

彼は毎度この決め言葉を使うが、イントネーションがチグハグで、危ない顔で言うものだから、毎回子供は逃げていく。


シャワーを浴びるのは汗をかくからではなく、流れる涙を隠すためだった。



『ヒーローなんてやめてぇなぁ』

そうひとりごちった彼は顔をあげるとヤクルトを4カップ飲み干した。



★キング★

実は、ヒーローの力は譲渡可能だ。

歴代ヒーローをみていただいてもわかるように、ある日突然力を託されたりもする。

勇治の力もまたそうであった。

だから、勇治の願いは本来ならば叶えられる願いなのだ。誰かに、力を譲ってしまえば良いのだから。

しかし…勇治はそれができないでいた。

怖い、のだ。

力を失ってしまうことが、ではない。

いや、確かに力を失うことへの不安はあるが、彼が怖れているのは、力を託した相手のその後、だ。

ヒーローは、憧れだけでは勤まらない。戦い、苦しみ、そして…場合によっては、命を絶たなければならないこともある。

彼自身、その手で命を握り潰したこともある。

その苦しみを人に投げ出してしまうことが…怖いのだ。

その意味では、彼にはヒーローの資格はあったのかもしれない。例え、変態であったとしても。


しかし、彼の精神もまた限界であった。

「…そうだ」

勇治は思いつき、パソコンを立ち上げた。

せめて見ず知らずの人であれば、その呵責も多少はマシかも知れぬ。

彼は某巨大掲示板に書き込みをした。



『ヒーローの力、譲ります』

これで反応がなければ、諦めよう。このまま、ヒーローを続けよう。

だが、反応があれば、その時は…



彼は運を天に任すことにし、そっと電源を落とした−



★けんたろ★

が、PCの電源が落ちない……!!



何度シャットダウンを押しても応答しない……!!!



カチ…カチ…


勇治は懸命にマウスをクリックし続けた…



が…ダメ…!!


PCは一向に応答しない…!!



風のようなスピード感でカチカチ…
林のような冷静さを装いカチカチ…
火のような熱意を持ってカチカチ…




が…!PCは動かざること山の如し…!!


まさに万事休すかと思われたその時…

勇治に差し込む一筋の光…!!




「電源ボタン長押し…」


圧倒的閃き……!!単純且つ至高の発想……!!


「これで電源を落とせる…!」



電源ボタンに指を伸ばしたその時…

勇治に電流走る……!!!!





そこに貼ってあったのはヒーローのステッカーであった…!!



★あす★

時同じくして、某巨大掲示板を見ている男がいた。
ヒーローに憧れる彼だった。


「ヒーローの力譲ります???」


しばらく考えてから、彼はこう書き込みをした。

『変身ベルトを譲っていただけるのですか?』



一方勇治はステッカーを見つめ続けていた。


「これがヒーローだよなぁ」

ステッカーには優雅にバイクにまたがる仮面ライダーがいた。

ヒーローになりたての頃、ライダーになりたくてバイクの免許を取りに行った。

仮免に2回落ちたが苦じゃなかった。
人の何倍も時間がかかったが、免許がとれた時、勇治は気がついた。


バイク持ってないじゃん。
と。


ライダーが乗るバイクを買うために仕事をこなしてはいたが、現実は厳しく、7年ヒーローをしていてもまだバイクは買えてはいなかった。


勇治はスッテカーからパソコンに目を戻した。

パソコンの電源はまだ落ちてはいなかった。

電源ボタンをおしてきろうとしたとき、掲示板に返信があることに気づいた。

コメントを見る勇治。

たった一言を丁寧に何度も読み、勇治は天井をみあげてつぶやいた。


「ベルトなんてないし」



★aki★

勇治の持っている変身アイテムはヒートテックだった。ベルトでは、、、無い。

発動条件は上裸になること。効果は、握力が不必要な程に上昇する。その効果はパンツを脱いでもしばらくは持続する。アドレナリンがどうのこうのと書いてあった。取扱説明書に。
また、握力の異常と引き換えに、うっすら前頭部が禿げるという罰ゲームさながらの変身だ。



3秒くらい考えた後、返事を書き込んだ。

『ベルトは無いですが、ベルトのようなものはあります』


勇治は顔をあげ、ヤクルトを5パック飲み干した。




〜数日後〜

彼の元に変身アイテムが届いた。佐川急便で。

逸る気持ちを抑えながら包みを開く。

中にはヒートテックのパンツが一本と、一通の手紙が添えられていた。


手紙には、パンツの使い方と、効果が書かれていた。

早速穿いてみた。

何かが変わったようには思えない。

騙されたのか?


そう思いながら手紙を読んでみた。

上裸にならないと効果が出ないと書いてあった。

なってみたが、やはり外見上の変化は無い。


苛立ちと焦りを覚えながら、心を鎮めるべくモモレンジャーを手に取、、、



ったとたんモモレンジャーは音をたてて弾けとんだ。

『エルメェース!!』


あらんかぎりの声をあげたが、
何が起こったのか理解できず放心した。



数分たった後、鏡に映った自分の前頭部を見て愕然とし、一言呟いた。


『かっぺムカつく!』



気づけば彼は美しき三点倒立を完成させていた。



新たなヒーロー誕生の瞬間だった。



〜fin〜

コメント(6)

江頭がヒーローなのか。ヒーローが江頭なのか。
にやにやしながら、一息で読んじゃった!好物!美味!一票!!
流れがきれいで自然!!!
面白かったです!一票です!
江頭さんを見る目が変わりました。

一票です!

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