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人と自然コミュのアメリカに広がる貧困の現実

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アメリカの下層はどうなっているのか、を知りたいと思い、読んだのがこれらです。


林壮一「アメリカ下層教育現場」光文社新書 ¥740 2008年1月刊・4月で三刷

 著者はスポーツを中心としたルポライター。アメリカの底辺ハイスクールの講師の経験、さらに、小学校のカウンセラー(Big Brothers & Big Sisters)の経験を記述したもの。アメリカでは、アフリカン(黒人)、メキシカン、ヒスパニック(南米からの移民)が四割近くに達していて、これらが底辺層となる。家庭が貧しく、十分な教育機会を得られないために、ずっと低給の職にしかつけず、子供たちは成長後も貧困から抜け出すことができない。せめてハイスクールくらいは卒業させないと、と著者の思いだが、それさえも困難。学習へのモティベーションが弱いために、それを持たせることから始まるが、有色人種への差別も根強くあり、貧困(の循環)からの脱出は非常に困難だとわかる。著者の熱意に共感する。


堤 未果「ルポ貧困大国アメリカ」岩波新書 ¥700+税 2008年1月刊・11月で19刷

 こちらは教育現場でなくて、アメリカに広がる貧困層と、それをさらに食い物にする社会システムと民営化という災害復帰・福祉・教育・病気(保険)の国家予算削減による切り捨ての現状をルポする。これが世界の大国に起こっていることであるなら、日本はアメリカのやり方を真似してはいけない。新自由主義は国民でなく、大企業を潤すだけで、国民は下層に追いやられる。すでに派遣労働に、そのひずみが現れている。小さな政府というのも、民営化してはいけない分野がきっとある。今なら、まだ日本は間に合うのではないだろうか。保険料負担もきびしいが、虫垂炎くらいで200万円も払わなければならないのでは、それだけでパンクしてしまう。

 ハリケーン「カトリーナ」の被災地、ルイジアナ州、堤防の補強の予算が削られていたために被害が大きくなった。襲来の予報や避難勧告があっても、逃げ出す手段の車を持たないのでとどまらざるを得なかった貧民も多かった。その後の救済も進んでいない。
 サブプライムローンは、貧困層にも(払い続けることができそうにない)住宅ローンを組ませて住宅を取り上げた。多重債務を背負ってサラ金さえ相手にしないような人にローンを組ませるなど、日本ではまだそこまでは行っていない。
 これらの貧困層をターゲットにしているのが、海外派兵の米軍の勧誘(志願兵制度)と、民間の派遣会社による戦地での米軍の下請け業務である。当然、厳しい仕事。民間委託の場合は、米軍の死者数とはカウントされない。そのルポも詳しい。
 上位5%の富裕層が80%の富を独占している国だ。貧困が日本ほど政治問題とされないのは、自己責任と片づけられているからだが、しかし、製造業を無くして中間層技術職を下層に追いやってしまい、金融投資業はITのわずかの労働人口で済んでいるために、仕事の機会は減少、ファストフード店の低給仕事しかありつけない。これが金融資本主義。
 日本でも官から民へ、派遣労働拡大という流れを推進した小泉・竹中路線の付けが今、そしてこれから現実のものになっていく。もうアメリカの後追いをやめて、他山の石としたい。
 (日本エッセイスト・クラブ賞受賞)

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