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人と自然コミュのもう一つの「坂の上の雲」

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もう一つの「坂の上の雲」

 司馬遼太郎の代表作のひとつが長編「坂の上の雲」である。愛媛県の秋山好古、秋山真之兄弟と俳人・正岡子規がその作品の最初の方に出てくるのだが、あとはほとんどが日露戦争の記述である。
 この中で、映画にもなった二〇三高地の攻防、旅順港陥落までの顛末、さらには、バルチック艦隊と日本の連合艦隊との日本海海戦の攻防などは、なかなか読ませる内容である。
 なかなか旅順港を落とせないばかりか、数万人の犠牲を出してしまったのが乃木希典で、愚将と上の作品では繰り返し書かれている。
 これに対しては、これまでは多少の反論はあったが、なにしろ国民作家司馬の作品の影響力は大きく、乃木は「古今東西の戦史上、これほど愚かな、救いがたいばかりの頑迷な作戦頭脳が存在しえたであろうか」と司馬に書かれていて、小説とは言え、かなりこの記述が信じられているようだ。

 毎日新聞日曜版に連載されている、 古川薫「斜陽に立つ」

は、すでに六〇回を越え、あと一〇回程度で連載終了とされるが、この作品は「坂の上の雲」のイメージとは反する乃木そして児玉源太郎の実像を書こうとしている。日露戦争の、その二〇三高地、旅順攻撃の様子である。大した砲弾も送らず、結果的に大被害を出した肉弾攻撃ばかりを要求した参謀本部。このあたりは司馬作品には書かれていない。
 乃木希典の名誉回復というよりも実像を古川氏は当然、考えてのことだ。決して誉れ高い軍人のようには書かれてはいない。このあとの一〇回の連載ではどうなるのか。

 さて、五〇代よりも若い人たちは「坂の上の雲」など読む必要がないとは思う。読むのはもう少し年輩になってからでいい。その時は、まもなく単行本になる古川薫「斜陽に立つ」も合わせ読むことをお勧めしたい。司馬の小説も面白いが、古川の記述の方が史実に近いのではないか。

 (「斜陽に立つ」連載六一回の時点での感想です)

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