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枋迫篤昌コミュの『支援ではなくビジネスとして成功すれば普及する』 NBonline より

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バングラデシュのグラミン銀行とその創設者、ムハマド・ユヌス氏のノーベル平和賞受賞で注目を集める少額の金融サービス(マイクロファイナンス)。実はこの分野で日本人が活躍している。旧東京銀行(三菱東京UFJ銀行)勤務の枋迫篤昌(とちさこ・あつまさ)さん、53歳だ。

3年前に米ワシントンDCで「マイクロファイナンス・インターナショナル・コーポレーション」を設立、社長を務める。顧客は米国で働くラテンアメリカ系移民と本国にいる彼らの家族だ。枋迫さんに起業の動機と事業内容を聞いた。

『ラテンアメリカ系移民へのサービス』

−−ラテンアメリカ系移民をサービス対象にした理由を教えてください。

大学卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行しました。銀行員時代、12年間にわたりラテンアメリカ4カ国(メキシコ、エクアドル、ペルー、パナマ)に駐在しました。1980年代のことで、これらの国々は貧困やゲリラと政府軍の闘争などで悲惨な状況にありました。

私の原点と言えるのが、26歳の頃、メキシコで語学研修を受けていた時の出来事です。辞書を片手にスペイン語の勉強をしながら街を歩いていたら、道端でタペストリーを売る人と仲良くなり、自宅に招いていただきました。家は山の中にあり土とわらでできていて家具は全くありません。夕食に出されたのは薄いスープと3枚のトルティーヤ、2かけの唐辛子と豆を煮たものでした。

食事をいただき楽しく話して帰ろうとした時、その家の2〜3歳の息子さんに「お兄ちゃん、今度はいつ来るの」と尋ねられました。「お兄ちゃんが来てくれたから、半年ぶりに肉を食べられた」と言うんです。確かにスープに何か葉っぱのような薄いものが浮かんでいました。それがこの家族が食べる半年ぶりの肉だったと知り、言葉を失いました。

毎日一生懸命に働いている人々がこんなに貧しいままでいるのは間違っている。彼らにとって必要なのは経済的な苦境を脱するチャンスです。将来は必ず金融のプロになって、この人たちに役に立つサービスを提供しようと決心しました。40歳になる前に、米ワシントンDCで貧困層の支援に役立つ企業をつくろうと考え準備を始めました。グリーンカードを取得し、勤務先の頭取や副頭取にも自分の考えを伝えていました。

2003年6月にマイクロファイナンス・インターナショナル・コーポレーション(MFIC)を設立しました。主要顧客は米国で働くラテンアメリカ系移民をはじめとする低所得者層で、彼らの年収は約2万ドル(約240万円)です。

−−事業の柱は“送金”ですね。

はい。巨大なニーズがあるのに、サービスの供給が極端に少ない分野です。米国からラテンアメリカ諸国向けの送金は530億ドル(約6兆3600億円)に達しました。これはラテンアメリカ各国のGDP(国内総生産)の10%を占め、もはや無視できない。ところが銀行はこの大市場にアクセスできません。出稼ぎ移民の人々は銀行口座を持っていないためです。米国内に5000万人いるラテンアメリカ系移民のうち、3000万人が“unbanked”と呼ばれる銀行口座を持たない人々です。

銀行が使っている送金システムは、口座間送金にはとても便利ですが口座を持たない人は全く利用できません。本人はもちろん、祖国で送金を受け取る家族は過疎の山奥に住んでいますから銀行口座を持っていません。

こうした中、移民向けの送金を手がける大手数社は95%のシェアを握っています。寡占状態なのでサービス料金は高止まりしており、手数料は送金額の10%に上ります。一方、MFICが展開する店舗Alante(スペイン語で“太陽”の意味)では、送金手数料を3%にまで下げました。

手数料が下がれば祖国にいる家族に少しでも多く送ることができます。送金から5分以内に本国にいる家族は現地の提携金融機関からお金を引き出すことができます。サービス開始から2年で年間送金取扱額は2億ドル、顧客数は米国内で5万人に達しました。

『初めて人間らしい扱いを受けた』

−−ワシントンDCにあるAlanteの店舗にうかがったところ、色鮮やかなインテリアで明るい印象を持ちました。

私は移民のお客さんたちに本当のサービスを提供したいと思っています。時々店舗を訪れて、そこにいるお客さんに「ご不満はありませんか」と尋ねています。「十数年アメリカに住んでいるが、初めて人間らしい扱いを受けた」と言ってくださるお客さんもいます。こういう声を聞くと本当にうれしいです。また、低賃金で働き米国の経済活動を支えている移民の人々が、普段いかに冷遇されているか改めて分かります。

ラテンアメリカ諸国の提携先金融機関には送金の受取人である家族にきちんとしたサービスをするようにと伝えています。現地にいる奥さんが、米国で働く夫に「少し遠くてもAlanteから送金するように」と言ってくださると聞き、とてもうれしく思いました。おかげさまでリピーターが多くお客さんは口コミで増えています。

これまで、移民の人々が必要とするサービスをAlanteの店舗一つで済ませられるようにしようと考えてきました。例えば週に200ドル(約2万4000円)の給料を小切手で受け取る人の場合。これまではまず小切手の換金に3〜5%の手数料がかかりました。送金手数料に20ドル、家族が現地通貨に換える時にもさらに手数料がかかります。こんなふうにして汗水流して働いて得た200ドルが、家族の手元に届く時には130ドルまでに減ってしまうのです。Alanteでは、こうした業務をワンストップで済ませられるようにしました。すると客単価が上がるので、ひとつずつのサービス手数料を下げることができます。

このほかに、祖国の家が災害に遭った時に使えるローン、夫が米国で働いて送金する間、妻が現地で家を建てるため現地の提携金融機関でローンを受けられる仕組み、出稼ぎ中に米国内で亡くなった場合に亡骸を祖国に送り2年間にわたり月額の送金額相当を支払う保険などを提供しています。これらは移民の人々が必要としているサービスです。

−−巨大なマーケットなのに、なぜ銀行が参入しなかったのでしょう。

一般的に言って銀行で働く人々はエリートですから、汗臭くて訳の分からない言葉を話す人々を相手にしないのでしょう。金融マンの基本は、まず相手を人間として判断することだと思いますが、残念なことに多くの人は数字だけを見ているようです。米国の金融機関はクレジットレポート(債務状況などが記載されている個人の信用調査報告書)がないとお金を貸しません。

結局、銀行は融資を受けたことがない人にはお金を貸さないのです。銀行からお金を借りられない移民に唯一貸してくれるのが高利貸。年率1000%もの利子を取ります。移民の人々は高利貸が嫌なら現金生活をするしかありません。

この問題への解決策として、MFICがクレジットレポートを作ることにしました。例えばAlanteから2カ月、3カ月と続けて祖国に仕送りしているお客さんには無担保で500ドル融資する。何度か続けるうちに彼らにクレジットヒストリーができます。すると他の金融機関でクレジットカードを作ったり、中古車ローンや住宅ローンを組めるようになるのです。

『援助ではなくビジネスとして成功させれば普及する』

−−どのようにして、このビジネスモデルを思いついたのですか。

銀行勤務時代、ワシントンに駐在していた時のことです。貧困問題について論じる国際会議に何度か出席するうちに「このままでは解決しないな」と思いました。3つの重要なテーマが別々に論じられていたからです。1つめは移民の問題、2つめは移民が利用する送金サービスの手数料が高すぎること、3つめはマイクロファイナンスを世界に広めるということです。

特にマイクロファイナンスの普及に関してはこの10年来、進展が見られませんでした。国際機関や非営利団体の人々が調査をして会議で報告はするものの、具体的な解決策がないのです。ある会議を聞きながら「3つの問題の根っこは同じ。移民の送金を開発資金に回すことができれば問題解決できる。それを援助ではなくビジネスとして成功させれば拡大普及していける」とノートの裏に書いていました。この内容が、今のMFICの事業になっています。

ラテンアメリカ諸国には、小さなマイクロファイナンス機関がたくさんあります。こうした機関は政府や財団からの助成金に頼ってきましたが、これでは持続可能でない上、助成金を得るには面倒な手続きが必要です。結果としてマイクロファイナンスの発達は滞ってきました。

MFICはこの問題を解決するため、移民送金の決済システムに滞留する資金を提携しているラテンアメリカのマイクロファイナンス機関に融資しています。マイクロファイナス機関はこの資金を、現地の人々に融資するのです。


移民送金とマイクロファイナスをつなぐ資金の流れを作ることで、ラテンアメリカで個人起業家を育成し現地の経済発展を促すことができます。

−−この事業を手がけるに当たり、銀行マンとしての経験はどのように生きていますか。

東京銀行時代は為替のディーラー、コンピューターシステム、シンジケートローンなど様々な業務を経験しました。ラテンアメリカ諸国での駐在後は東京に戻り、ある企業の再建を担当しました。色々な経験を積んだ後に外からひとつの業界を眺めると、全体像を把握することができます。移民と送金、マイクロファイナンスをつなぐビジネスに思い至ったのも、銀行マンとして様々な業務に携わったおかげです。

金融ビジネスを手がける際は、マネーロンダリング規制など各種の規制に対応しなくてはなりません。これまでに米財務省、米連邦準備理事会、米連邦預金保険公社の担当者も、多少のお世辞もあるかもしれませんが「この市場での最優良事例だ」と言ってくださっています。

今は初期投資が終わった段階です。次の課題は小口ローンを積み上げていくこと。小口ローンが500万ドル(約6億円)に達すれば、来年中に黒字になります。マーケットのニーズが異常に大きいのに供給があまりに小さい。将来有望な市場だと思っています。

『株主のほとんどが日本人』

−−株主のほとんどが日本人だと聞きました。

80人の株主のうち70人が日本人です。お1人ずつに会って事業の内容や私が何を目指しているかについてお話ししました。中南米諸国は日本とは遠く離れているが、困っている人を助けるビジネスですと。あるご夫妻は初対面にもかかわらず「困っている人のために何かをしたいと思っていましたが、具体的な解決策があると分かりました」と言って3億円もの出資をしてくださいました。

一方で失望した経験もあります。ワシントンで起業したので、最初は色々な国の方に出資をお願いしようとしました。まずは中南米の富裕層に話をしました。「あなた方の同胞を助けるビジネスです」と話すと「俺も苦労してここまできたんだから、あいつらも苦労すればいいんだ」という答えが返ってきて驚きました。

米国の個人投資家は「リターンは?」と聞くばかりで思考が短期的でした。公益目的を持つ財団も訪ねてみましたが「あなたの組織は503Cですか」と聞くだけ。税の控除対象となる非営利団体かどうか、という意味です。「いえ、株式会社です。緊張感を持って運営したいので、営利団体にしました」と答えると「それなら対象外だ」という。この人たちは本気で社会貢献を考えているのか、それとも節税のためなのかと疑問に思いました。

こんな中、日本の篤志家の方々は遠い国に住む見ず知らずの人を助けるビジネスのために出資してくださいました。本当に感謝していますし、まさにAngel Investors だと思っています。


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