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あいだーぬんリレー小説コミュのFlower☆Gardenにようこそ!

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「お帰りなさいませ、ご主人様ぁ☆」
真っ黒なフリフリのミニワンピースの上に純白のフリフリのエプロン。栗毛のふわふわの頭にはフリフリのカチューシャ。まさしくな服装に身を包んだ女の子が突如目の前に現れた。
「えっ…?」
 秋葉原を拠点とし、最近では各地を魑魅魍魎のように跋扈し始めているメイドが…なんで、東口ならともかくこんな所に?
 ☆ ☆ ☆
 
 俺は今しがた得意先との商談を終え、新宿の某高層ビルから出て来たばかりだ。立ち並ぶビル達が地上の人間を圧迫するように見下ろしている仕事の世界だ。その世界に、場違いな程に浮いているメイド。人形のように長い睫毛に縁取られたクリクリしたドングリ眼、ぷっくりしたピンクの唇は笑みの形を未だに崩さない。
普通に可愛い。メイド服なんて着ないでもっと違う服装をしていれば良いのだが・・・かわいいけど、今俺に向かって「ご主人様」って言ったよな?
「さぁご主人様、出発のお時間ですよ。」
 場違いなメイドは俺の行く手を遮るようにデンと立ちはだかった。
 俺は勿論くるりと背を向け早歩きで立ち去る。どういう客引きなのかは解らないが、日中堂々サラリーマンを店に案内しようとするなよ。 俺は半ば呆れながら、腕時計を見遣る。
14時40分か……。
次の打ち合わせは16時30分に吉祥寺の寿オフィスだ。新規開拓でなんとか挨拶までこぎつけた会社だ。遅刻は絶対できないが・・・微妙な時間だな。会社に帰るまでもないし、仕方ない。どっかの喫茶店でたまってる見積あげとくか…とか考えていた所・・・・。
 背後から刺し殺されるんじゃないかってほどの視線を感じた。まさかね、性懲りもなく付いてきたり…してないよな?
 そーっと後ろを振り向く…………………………………….

 ……いた。
 射殺すような視線は三歩を後ろ程を見た目だけは貞淑な妻のようにテクテク歩いおり、俺と目があうと射殺すような視線では無く天使のような微笑みを浮かべた。
無論、俺は全力疾走。新宿駅の雑踏に駆け込んで仕舞えば見つかる事はない。ぎりぎりの電車に駆け込み乗車。葉っぱを隠すなら森の中だぜ。

☆ ☆ ☆

そして俺は今やっと、あの怪しげなメイドをまいて吉祥寺のこじんまりしたお気に入りの喫茶店で美味いコーヒーと、電卓をペシペシ叩きながら資料を見ていた。
 この見積りは今日中に送らないと煩いんだよなぁ…。
「ねぇご主人様、もう心の準備はできました??」
「!!」
俺は危なく口に含んだコーヒーを吹き出すところだった…。し、神出鬼没とまさに之いかに。
 新宿にいたあのメイドは…いつの間にか、目の前の席に腰掛けていた。何処に行ってもご主人様の事は解るんですからねーとか言いながらいつ注文したのかも解らないメロンソーダをすすっていた。
 ……逃げるか、話を聞くか、シカトか、どうする俺?!ライフカード!?
とりあえず、さっき逃げたから話をしてみよう!がんばれ俺!
「あ、あのさ、君、悪いんだけど…名前は?もしかして以前会ったりしているのかな?」
出来る限り会話とかは避けたかったんだが、スーツ姿とメイドが一緒ってこれまた場違いで頬がほてってくる。
 ドングリ眼をぱちくりとするとメイドは…。
「それは新手のナンパですか??私はみての通りのメイドですよ!」
と、小さな胸をはった。質問に答えてねぇ。メイドが名前なのか?ツッコミたいのも山々だが、俺は極力優しく聞く。
「えーと……じゃぁ君、何処からきたの?」
「『お花畑』ですよぉ☆」
…眩暈がしてきた……なんだ?病気か?花畑牧場のカントリー娘再結成か何かなのか?それとも何処かの施設から脱走してきたのか?
「あ、英語でいうとFlower☆Gardenですよぉ」
「……あ、あ、そう。あーそうなんだ。じゃぁさ、君なんで僕の後をついてくるのかなぁ?」
 精一杯の乾いた笑顔で尋ねる。
「あら、ご主人様を連れて帰る為に決まってるじゃないですかぁ。」
さも当然とまたペッタンコな胸をはっていう。
「えっと…『お花畑』に?」
「そうです、ご主人様。『Flower☆Garden』ですわ。時間があまりないのでお早めに移動したいのですが・・・。」
 酷くシツコイ客引きなのか?彼女のいう『Flower☆Garden』に行かない限りついてくるのか…。なんで俺なんだよ。
「えーとねぇ、俺はこれから仕事なんだよね。仕事終わったらその『Flower☆Garden』だっけ?行ってあげるからさ、ここで待っててくれないかな?」
俺のゆっくりした怒気を含めた口調によって理解したのか解らないが彼女は、眉を少しひそめて口を開いた。
「もぅ仕方ないですねぇ。特別ですよ。私はご主人様を『Flower☆Garden』までご案内するのが役目ですし、そのご主人様のお仕事が終わるまでお待ちしておりますわ。」
ラッキー。頭悪いのか素直なのか逃げられる!てか商談先までついて来られたらこの不景気に会社すらクビになっちまう。
 俺はすかさず資料を鞄にいれ、席をたった。その俺をみて、くりんとカールした睫毛に縁取られた目が悲しげに瞬いた。
「お時間がないのですよ。本当に最後までお仕事でよろしいのですか?」
 と眉を寄せ少し悲しそうな、呆れたような表情を浮かべた。
「自分のことよりお仕事なんですね。」
 一瞬、あどけない少女なのに、自分よりも大人な女のような表情と雰囲気をかもし出し、ため息をついた。
「? 社会人だから仕事してくるんたよ。君だって仕事なんだろう?」
「そうですね。最後なのに、よろしいんですね?」
「…え?」
「では、早めに迎えに来てくださいね☆人生やり直しは出来ませんからね、悔いのないようにお仕事頑張ってください。」
 あどけない少女の表情にもどり、彼女は笑顔を浮かべた。 
店を出るときにもう一度だけ彼女を振り返ったが、ふわふわの茶色い髪を耳にかけ、ちゅるちゅると幸せそうにメロンソーダをすすってた。
 今の悲しそうな、大人びた表情と、「最後」ってて言葉はなんだったんだろう。あの子は昔何かあったのかな・・・それとも店が今日、潰れるのかなぁ?

☆ ☆ ☆

 腕時計をみると未だ14時40分…?なんだ時計止まってるのか…。運が悪い時はとことん悪いな。
ケータイを開くとケータイの表示も「14:40」だ。おかしいな。時計はともかくケータイまで同じ時刻で止まっているのか?
 試しに充電池を外したりしてみたが時計の表示は「14:40」のまま。仕方ない、会社にかけてみるか。
1コールで事務のミサちゃんが出た。
「ごめん、俺だけどさ、ケータイ壊れちゃったみたいなんだ。連絡…」
 ほっとしたのもつかの間で。
「もしもーし? あれー?もしもし??内木商事ですが?」
 向こう側のミサちゃんにはどうやら俺の声が届いてないみたいだ。完璧に壊れてる。試しに二回掛けてみたが俺の声は拾ってないな。
 あーついてない。メイドに絡まれて、時計の電池は切れるわ、ケータイこわれるなんて本末転倒だよ。ちなみに今何時だよ。
 近くのコンビニによって時間を確かめ16時ちょい前って所だな。寿ビルまでここから徒歩10分もないし、とっとと、向かうか。新規の顧客だから丁重にいかないとな。
 最近売上が悪いから上司も煩いし、今のご時世じゃ新規開拓も一苦労だよ。
FAXで流れて来た名刺のコピーと地図をもう一度みて名前を確認する。
「よし、このビルの7Fか。」
スーツの襟元を直し、軽く髪を撫で付ける。

☆ ☆ ☆

 エレベーターを出るとそこに広がるのは伽藍の空間。窓は何かで塞がれたのか闇のように暗い。
……え?
 誰もいない?店舗が入ってないのか?間違えたのか?!ヤバイ迷子か!
慌ててエレベーターに戻ろうとした時、よく響く女の声がした。
「…ご主人様、残念ながらお時間ですわ。」
 俺がエレベーターに向かおうとした一瞬の内に彼女は真後ろに立っていた。驚くを通りこして何が何だか解らないまま動悸が激しくなった。この小さな少女が何故か急に酷く恐くなった。戦慄とか恐怖とかいう様々な感情がミキサーでグルグルと泡立てられ、真っ黒なメレンゲになって俺の動きを封じているようだった。そんな俺を尻目に彼女は近づいてくる。
「もうお待ちすることはできません。」
 にっこりと微笑むと、彼女は手を差し出した。
恐怖で口の中がカラカラになって、なんども乾いた喉に唾液を流し込む。
 ようやく上擦った声が出せ、俺はびくびくしてるのを必死に隠そうとしながら高圧的に叫ぶ。
「…な、なにをいっ、てるんだぁっ」
 逆に上擦って裏返った情けない俺の声が伽藍の空に反響する。
「あら、ご主人様。まだ、お気付きにならないんですの?」
「なっな、なにがだよ!!」
 殆ど絶叫に近いような俺の声は妙に高くて俺の声じゃないみたいだった。
メイドはクスっと笑うと闇に溶けた。

 すると、代わりにあの独特の雑音の中に俺はいた。
蛍光灯の白々しい作り物の光の下、電話の鳴り響く音が響き、紙の擦れる音、キーボードを叩く音、FAXの排出音。
「…ここ…は?」
近くの事務員がまるで俺の問いに答えるかのように電話をとった。
「ハイ、お電話ありがとうございます。株式会社イマイでございます。」
 イマイって今日の新規開拓の会社!!
はっと目が覚めたように、先ほどかいた冷や汗を拭いながら、電話の終わった事務員に話しかける。
「あの、すみません、私…」
 誰も目を合わさない。誰も俺の声が聞こえない?!
まさか、俺が見えてないのか?!
よろめいて近くのデスクに寄りかかろうとしたら通り抜け、尻餅をついた。

☆ ☆ ☆

「お分かりになりましたか? ご主人様?」
 彼女の声が響いた瞬間再び伽藍の空間に戻された。しかし俺は尻餅をつた状態でさらにパニックに陥っていた。
「お、俺は…どうなっているんだ?」
「今は魂だけの存在ですわ。」
「・・・それは、つまり、俺はもう・・・?」
「理解頂けたようで嬉しいですわ。」
 世にも艶やかで、現実的ではない笑顔をみた。
「今まで見ていたのは貴方の記憶ですわ。こちらの会社は今日が初めてだったんでしょう?記憶に無いものは見れませんのよ。」
 クスクスと笑う少女の姿からは確実に違う女の表情で俺をみている。
「嫌だ!!俺はまだ、本当はしたい事もあったんだよ!!最後に…最後に仕事してただなんて!」
 涙が溢れて女の姿が歪む。なんで、俺っまだ先の事だと思って…。
「なんで言ってくれなかったんだよ!!」
「言ったじゃないですか。お花畑に行くんですよって☆」
 そ、そんな、店の名前とかじゃないのかよ!まだまだ行きたい場所も、逢いたい人もいるのに!そん…夢だろ?朝起きたらいつもと同じ生活が…あるんだ!!これは夢、これは夢、醒めろ、さめろ!さめろさめろさめろさめろさめろさめろさめろさめろさめ・・・
「ご主人様、そうやって、現実のカケラにしがみついていると戻れなくなりますよ。」
 凛と響く彼女の声に思考が急停止される。
さぁ、といって俺の腕を取る。
彼女の一見華奢な腕のどこにそんな力があるのか解らないが、俺はずるずると引きずられる。
 なんなんだ。俺の人生は…全てが中途半端じゃないか…。もう俺は死んでいたっていうのか?
死んでまで、幽霊にまでなって、好きでもない会社の為に仕事をしていただなんて、本当馬鹿だ。
 涙なのかなんなのか解らないまま視界がぼやける。なんて馬鹿なんだろぅ。俺は本当は・・・
ドンッと突き飛ばされたと思ったらクスクスと笑う彼女の声。
「さぁ、お花畑に帰りましょうね。川を渡れば愛しの我が家に帰れますわよ。ご主人様☆」
一瞬だけ視界が真っ白になって俺は意識を手放した。

☆ ☆ ☆

クスクスと笑う彼女の声。
「さぁ、お花畑に帰りましょうね。川を渡れば愛しの我が家に帰れますわよ。ご主人様☆」




目が醒めると、そこは…。





<終わり>





















「冥土だからって何もメイドの服装しなくても良いんじゃない?」
 栗毛の髪をふわふわとなびかせながら彼女は傍らにいるのは脱衣婆に話かける。
「でも楽しかったでしょう?いつものような格好で出てきたら恐くて逃げられちゃうって愚痴ってたじゃないの。」
 脱衣婆は笑いながら薄暗い空を見上げた。
「きっとあの人はもっと自分のしたい事や何が大切なのか解ったんでしょうね。」
 彼女も倣って薄暗い空を見上げた。
「また、いつか会えるわ☆出来ればもっとおじいちゃんになってから来て欲しいわね。」

 ざぁっ、と一面にたなびく草花はどれも形を保てていない。霞んだ空に二人の姿は呑み込まれていくかのように消えていった。

コメント(6)

すげぇー
何か世にも奇妙な…的テイスト感じた!
前半との落差があって俺は好きだな手(チョキ)
ありがとうございますハート鳩にはノーコメントって言われて凹んでましたww
昔からよく言われている古典的な駄洒落をお話にしてみようと思って書いてみましたあっかんべー
> しんさん
どうもです♪また遊びましょーね
> マダ子先輩
まさにライトとみせかて……みたいな感じを狙ってます

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