ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

SS倉庫コミュの【オリジナル】魔都の歩きかたA child of Pinocchio〜捜査ファイル6『ブラッドチェイン』(6)

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜新歴99年、5月1日、午後13時30分、東京・皇居〜〜


「切!?」
「貴様、いつの間に!?」

誰にも気付かれぬ事なくこの場に現れた天野切に騒然となりかけたが…

「『黙れ』」

切の、たったその一言にその場に居た誰もが物理的に動けなくされた。

「切……あんた……」

場を黙らせたその正体に気付きアルは呻く。
切は生体に作用する電流を生み出すベーシックプログラム『ライフ』を振動操作する『ウェイブ』に乗せ声と共に放射したのだ。
何が起きたのか分からず騒然となる周囲を気に止めず、切は感情の見えない声で御簾の先へと宣う。

「痛みを受け入れる覚悟があるなら……自分で実践出来るだろ?」

ゆっくりと手を持ち上げ、その先に視覚化され高熱を孕む磁場の塊を生み出す。

「止めなさい切!! 彼を手に掛けたってクゥは帰ってこないわよ!!」

呂律の不確かな声で必死に留めるアルの言葉に切は静かに言う。

「だから、それが?」
「なん……ですって……?」

透き通り濁りきった闇を目の奥に湛え切は言う。

「こいつを殺したってクゥは帰ってこない。
だけど、クゥが命を狙われた根本的な原因は排除される。
連れ戻すのは、その後でも遅くない」
「そんなことをしたら、全てが敵に回るのよ?
『イザナミ』も、『女王』も、私やクラウスだって敵になるしかないのよ!?
人類を…いえ、地上全てを敵に回してクゥを守れるなんて本気で…」
「やるさ」

唇を歪め、嗤う切。

「クゥとただ静かに、少しだけ楽しく居たいっていう誰にも迷惑をかける理由が無い俺の望みを邪魔するってなら、クゥ以外が皆殺しになったって構わないし必要ならやってやる」

狂気、いや、『恐気』に呑まれた切はそう嗤う。

「…!?」

誰もが切の手に携えられたギロチンの刃をただ眺めるしか出来ない中、御簾の奥が動く気配と共に御簾の前に座した男が苦渋を舐めるようにその意を代弁する。

「『私の身一つで全てを終わりになるというならそうしてください』」
「……」

その言葉に切は僅かに驚きを見せた後、「無理だな」と言った。

「いくらお前が誠意を見せようと、命を掛けて献身を捧げようと、それを人は裏切る。
俺はその裏切りを何度も繰り返された。信じた末に何度も裏切られた。
だから、俺はもう人を信用しない」

そう言うと、火球を握り潰し御簾に背を向ける。

「放っておいても数ヶ月で死ぬような死にたがりに構うのは時間の無駄だ。
だから後回しにしてやる。
全部片付けたら改めて殺しに来る」

そう言うと竹の間を立ち去ろうとする切。
同時に拘束も解かれ『皇』を手に掛けようとした切をこの場で始末しようと動きが生まれるが、

「俺の気を変えさせて、今すぐ皆殺しになりたければ抜け」

静かな、それでいて絶対の死を知らしめるようなそのたった一言に誰もが背骨を塩の柱に差し替えられたような恐怖に煽られ、切が間を出ていくのを黙って見送る。

「……甘っちょろい。こんなんでクゥを守るだなんてよくも言えたもんだ」

皆殺しにするつもりが、結局は誰ひとり手に掛けなかった自分を詰り切は磁力を足に溜める。

「だが、お前だけは確実に殺してやる。薙」

新たなバッテリーをスロットに捩込み、切は【P1】を殺すため地を蹴った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜新歴99年、4月1日、午後16時00分、東京・丸ノ内〜〜


『やあ0。前置きはいらないだろうから本題から始めようか』

輸送ヘリの中にデータを復元されたホログラム映写機が再生する薙の声が響く。

『君の大事なものを壊すよ。
少し順番が狂っちゃったけど理由は分かってるだろうから言う必要はないよね。
もし、僕を殺したいんだったら早く来なよ? あんまり遅いと君の大事なモノが全部壊れ』

ぐしゃりと映写機が握り潰され再生が中断される。

「せっかく直したのに勿体ない」

気の無いリシルの言葉に「そのほうが経済活動に役立つでしょう」とどうでもいい答えを返すクラウス。
その目には明確な怒りが灯っていた。

「それにしても、人間嫌いの【P1】がよくもまあこんな茶番に付き合う気になったものですね」
「制限無しで僕たちと戦える機会だからじゃないかな?
あいつ、前に本気で戦ったら1番強いのは誰かを試そうとした事があったしね」

軽い口調のリシルだが、額にはしわが寄り確かに彼も怒りを抱えていることが見て取れる。

「”最強”……そんなものに何の意味があるというのか」

失うことに怯え、自分が”最強”であればと力を求め成れの果て(EXIS)と化した【P8】が居るからこそ、自分達は彼女を戦わせまいと別の方向を目指し”最強”ではなく”最適化”を選んだ。

「皮肉な話ですよ。今必要なのは、そのEXISを破壊できるだけの”最強”なのですから」

なにかを求めれば求めただけ間違え、過ちに身も心も摩耗していく。

−−似姿とした人間のように

「とにもかくにも、まずはクゥちゃんが先決だね。
人間の某はどうでもいいけど、彼女の中には”アレ”が眠っている。起こすと『白翼』との事を始める前に人類史が終わっちゃうからね」
「……切も面倒な真似をしてくれましたね」

切はクゥの”生存”のみに目的を絞り、外法をクゥに施した。
クゥの生命が脅かされ本人の力ではどうにもならなくなった時に発動するその外法は、発動すればスペックシート上は『リ・ディアルの民』最強の”規格外(クルール)”に匹敵し、なにより見境いが無い。

「まあ、人間ならそこまでやった奴もいた「リシル!!」っ!?」

おどけようとしたリシルの声を遮るクラウスの警告の直後、凄まじい速度を纏う巨大な『鉄柱』がヘリを貫いた。
鉄柱はヘリの装甲を叩き潰し、燃料の爆発がヘリをめちゃくちゃに破壊し空を染める。

「今のはまさか…」
「考えるのは後だクラウス!!」

爆発から逃れた二人が落下しながら鉄柱が飛んで来た地点を望遠モードに切り替え確認すると、そこは『地獄』と化していた。

「…まさか」
「今回ばかりは冗談であってほしいね…」

驚愕に言葉を失うクラウスと口調こそ変わらないがその声に余裕のかけらもないリシル。

元は邸宅か高級ホテルが建っていたらしき場所は破壊の限りを尽くされ戦場と化していた。

そして、その中心では両腕をもぎ取られた16メートル近い巨体が擱座しているのが見えた。

「EXISが……破壊されたですって……」

我が目で見たことを信じられないと呻くクラウス。

「ぼうっとするのは後だよクラウス!!」
「っ、解っています!!」

EXISを破壊できるもの、その答えにたどり着いている二人はジェネレーターに起動を命じる。

「『ゼウス』最大出力稼動開始!!」
「『インドラ』最大出力稼動開始!!」

その指示に互いのジェネレーターが急激に電力を生み出し生じた余波が着地をサポートする。
危なげなく着地した二人は既に戦闘領域内だと判じそれぞれの『相棒』を起動する。

「『オルトリンデ』、モード『賢者の石』起動」
『Yes,Master』

クラウスがバイザーを装着しバイザーのモニター部に応答が走り起動の完了を告げる。

「『ヴァルトラウテ』、モード『カンギテン』起動」
『畏まりました御主人様』

リシルが腕を振ってちりんと細い三つの腕輪を鳴らすと、腕輪が銀から翡翠へと色を変え女性の声が流麗に傅きを示す。

互いに全力を行使可能な状態へと移行したのを確認し、通信を介さずアイコンタクトだけで役割を確認し地を蹴った。


コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

SS倉庫 更新情報

SS倉庫のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング