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SS倉庫コミュの【オリジナル】魔都の歩きかたA child of Pinocchio〜捜査ファイル6『ブラッドチェイン』(4)

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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜新歴99年、4月1日、午後15時30分、東京・丸ノ内〜〜


華美な内装が施された部屋で薙はとある人物と向かい合っていた。
その人物は一目で高価だと解るスーツを纏い、苛だたしげに薙を睨んでいた。

「…どういうつもりだ?」
「おや? なにがだい?」
「惚けるな!?」

飄々とした態度が気に食わないと、テーブルを叩き薙に怒鳴る。

「私は、あの忌ま忌ましい雑種を殺せと命じたんだ。
連れて来いなどと命じた覚えは無い!!」
「……ああ、なるほどね」

薙は、とある経緯からこの人物に従い、「クゥを殺せ」と命じられたが、実際には薙は通恋を破壊した後クゥを殺さずここに連れて来たのだ。

「ふむ。 どうやら気付いていないようだね」
「……なにがだ?」

苛立たしげに問い返され、したり顔で薙は言う。

「『魔女戦争』すらお遊びだと思えるような戦争がもうすぐ始まるんだよ。
それを回避するために『イザナミ』は【OP】達に指令を出しているけどね」
「……それで?」

わざと丁寧に、相手の神経を逆撫でするように薙は言う。

「あの娘はその【OP】の一体が保護しているんだよ。
当然奪回に来るだろうね」
「それと、雑種を生かしておく理由のどこに関係があるというのだと聞いているんだよ!!」

自分は敬われて当然だとこの男は考えていた。
『皇』として相応しくなるために幼い頃からその全てを『皇』となるために尽くし、そうあろうとしてきた。
だが、薙は敬うどころか馬鹿にした態度を崩そうともしない。
それが彼が培って来た全てを否定しているようで更に苛ついていた。

「…まったく。
ここまで言って解らないなんて、これだから人間ってのは…」

呆れたようにそう薙が愚痴った直後、乾いた音が鳴った。

男が怒りに任せ、薙の顔を叩いたのだ。

「いい加減にしろ!!
私は、誇り高き『皇』となるべく定められた存在なのだ!!
貴様のような下賎な人形ごときにいいように言われっ!?」

自ら築いた全てを捨てて喚き散らす男の言葉が途中で遮られる。

頬を叩かれた薙が、意向返しとばかりに男の首を吊り上げたのだ。

「……がっ…あ゙っ!?」

気道を押さえられ呼吸を遮られた男の顔がみるみるうちに紅く染まっていく。
部屋の外で控えていた護衛の者が救出に動こうと扉を蹴破りなだれ込むが、薙は先じて言い放つ。

「動くと首を折るよ」

笑顔のまま冷たく、ぞっとする声で言い放つその言葉と気迫に薙は本気だと知らされ護衛達は動きを止める。

「そうそう。
少し痛い目を見せるだけで殺したりなんかしないんだから、もうちょっと大人しくしといてよね。
…それで、下賎な人形だっけ? いい呼び方だね。 まったくその通りだ。
……でも、ただ椅子に座るためだけに生きて来た君には言われたくない台詞だよ」

そう言うと手を離し男を解放する。

「ゲホッ、ゴフッ…」

顔が紫色になるまで締め上げられた男は激しくえずき、必死に酸素を取り込もうとむせ返るを見ながら薙は愉快そうに言う。

「あの娘は餌だよ。
【P0】を本気にさせるね。
だから、殺すのはその後。
…ああ。 でも、殺さなければ好きにしていいよ。
殴るなり蹴るなり犯すなりお好きにどうぞ。
まあ、一つ忠告をするならば手を出せば奪回に来た【P0】は必ず報復するだろうけどね。
それこそ、生きることこそが不幸だと思うぐらい徹底的に苦しめるだろうね。
じゃあ支度があるので失礼するよ」

言いたいことを一方的に言い捨てると、退室しようと背を向けた薙に護衛の者達は一斉に銃口が向けた。

「……おやおや」

自分に牙を剥くようけしかけたとはいえまったく堪えようとしないその態度に心底呆れ、同時に愉快になる。
口にはしないが、動けば撃つのは分かっている。
が、薙の周囲には従僕である堅固な防御シールドを展開する『アイン』と『ツヴァイ』が既に起動状態にある。
弾道ミサイルですら無傷で防ぐシールドは人間が扱える火器程度では破れはしない。
護衛の者達も、それを理解している故に迂闊には動けずにいるのだ。
もっとも、薙は最初から皆殺しにつもりだったのでどう殺そうかと思案しているだけなのだが、その思考は突然センサーに関知された巨大な機影に遮られる。

「……おやおや。
まさか、7に次いで0より先に君と戦うことになるとはね。 8」

直後、超高速で部屋へと突撃した物体は倒壊し粉塵を撒き散らしながら合成音にて薙へと宣告する。

『…ターゲット確認。 交戦開始』

直後、背に巨大な推進装置を装備した人類最強の兵器『EXIS』が全身の重火器を掃射した。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜新歴99年、4月1日、午後15時45分、東京・丸ノ内〜〜


15メートルを越える巨体が空を舞った。

『…サイドブースト噴射。 姿勢制御』

EXISの命令に肩に増設されたブースターから爆発的なエネルギーが吐き出され、200tを越える巨体が慣性を打ち消し着地する。

『…敵、顕在。 継戦』

脚部のガトリングガン6門を牽制に撃ち背部に装備しているミサイルポッドを展開、『ヴリュンヒルデ』を稼働させ弾幕を抜けようと迫る薙へとロックする。

『…Fire』

放たれた7発のミサイルは解放されると同時に山なりの軌道を描き黒い尾をたなびかせ薙へと向かうが、4発は薙の指の間から放たれたレールガンに貫かれ爆散、残る3発は旋回が間に合わず地を穿ちクレーターを作った。

「まさか、通常兵器で僕を倒せるなんて考えているわけないよね?
もしそうだとした……お仕置きだね」

距離30まで接近した刹那、薙が磁力加速を加えた踏み込みを行い端からは消えたように見える動きでEXISの懐へと潜り込み、

「飛べ」

200tを越える巨体を殴り飛ばした。

『…損害軽微。 再迎撃』

通常なら有り得ないとパニックになるだろうが、EXISは慌てる事なく弾幕を張って追撃を封じる。

「おっと」

迎撃までのラグが予想より短かったため自立判断で展開した『アイン』が薙の進路を塞ぎEXISの狙い通り追撃にしくじる。

「ふうん。
斥力で吹き飛ばしたのに気付いてたんだ」

拳が当たる直前に薙は斥力を生じさせあたかも本当に殴り飛ばしたように見せ掛けたのだが、EXISは薙のからくりを見抜いていた。

「流石【P8】。 最強の名は伊達じゃないね」

ぱちぱちと拍手を送る薙にEXISは端的な返事を返す。

『…想定済み』

その答えに薙は笑みを深くした。

「成程。
僕対策は完璧ってことか」
『…否』

薙の言葉をEXISは否定する。

『想定、全【OP】』
「……へえ」

途端、薙の笑みは喜悦の色を含んだ。

「僕だけでなく、確実に勝てる0や4まで想定しているんだ」
『…敗北、拒否』
「負けるのは嫌なんだ。
意外と負けず嫌いなんだね」

くすくすと笑う薙にEXISは言う。

『…存在肯定。 勝利』

その答えを聞き、何故か薙は笑みから喜悦が消えた。

「……面白くない答えだね」
『……』

EXISは薙の雰囲気が変化したことに気付き、戦闘再開かと先じて弾幕を張る。

「私意行為のためでなく、ただ存在理由のためだけに結果を出そうと努力するなんて、君はなんて生温い生き方をしているんだ」

弾幕をシールドで防ぎながら薙はゆっくりとEXISに向かい歩を進める。

この時、EXISは半ば混乱していた。

(【P1】は、何を言っているの?)

EXISはずっと”最強”を求め続けて来た。

優しくて大好きな姉だった【P2】が、『魔女戦争』で人間が放ったICBMを止めようとして核の炎に消えた。

元気で明るくて自慢の弟だった【P9】が、人間の命令に無理を重ねすぎて暴走しこの世から消えた。

お母さんのように大きかった【Mother'S:ガイア】が、人間を救おうと不器用な兄の【P0】と対立してどこにもいなくなった。

EXISは、【P8】『エリス』はそれが表現出来ないほど悲しくて、そんなことをさせた人間が言葉にならないほど怖かった。

−−だから”最強”を求めた。

”最強”の自分がいれば、誰も無理なんかしなくていいんだからみんなを失わなくてすむ。

”最強”の自分が頑張れば、誰も頑張らなくていいんだからみんなが笑ってくれる。

そう思ったから、【P8】は『エリス』を捨てて『EXIS』になった。

−−だけど、違った。

”最強”になっても、不器用な【P0】はずっと悲しそうに私を見て、そのまま自分の下から去った。

”最強”の自分がいるのに、みんな自分を戦わせないようにって無理をして、戦っている。


−−EXIS(エリス)は人間が怖い。


みんなが無理をするのは、その先に人間がいるから。

みんな、怖い人間のために無理をするから。

みんな、人間のせいで無理をするから。

みんな、いなくなってしまうのがこわ……

「何をぼうっとしているんだい?」
『!?』

弾幕をものともせず、薙がEXISのすぐ前まで迫っていた。

『…っ!!』

咄嗟に左腕にマウントした肉厚の刃を『対艦カトラス』を展開して薙へと振り下ろす。

加減はしない。

頭部さえ破壊しなければ【OP】は死なないのだ。

だから……

「……手加減なんて、遊んでいるの?」
『!!??』

今度こそ、EXISは驚愕に思考を停止した。

振り下ろしたカトラスの質量プラスEXISのフルパワーを加えた斬撃は、直撃すればドレッドノート級戦艦すら両断する威力を発揮する。

−−だが、

「なら、手加減なんて出来なくしてあげるよ」

薙は、振り下ろされたカトラスをなんのトリックも使わず片手で受け止めていた。


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