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SS倉庫コミュの【オリジナル】魔都の歩きかたA child of Pinocchio〜捜査ファイル5『シリアルマーダー』(18)

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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜新歴99年、3月20日、午後14時18分、鴨居〜〜


賞金首を目撃したとの情報を受け、ロディ達は全力で急いでいた。
治安の動きが活発化したということもあるが、それよりも追加で得た情報が大きかった。

「ファック!!
遂に『女王』サマのお出ましだってな!!」

『リ・ディアルの民』の王にして『最強』の出陣。
真偽はともかく、その情報に殆どの同業者は手を引く事を決断していたが、ロディは逆に逸る気持ちを抑えず動くことを選んだ。

「どいつもこいつもデウス・エクス・マキーナが出るっつうクソつまんねえ理由で手を引いちまってる。
そんだけヤベエなら、死ぬほど楽しめるってことじゃねえかよ!!」

ゲラゲラと笑うロディとは対象的に沈黙を続ける囚だが、内心は強敵に相対出来ると興奮していた。

「おいブラザー、今回のファック野郎にゃどいつが来ると思うかい?」
「……『虹翼(こうよく)』アルと『寝殿(しんでん)』クルールは無いだろうな」

無視しようかとも考えたが、適当に付き合うほうが楽だと考え囚は『女王』アルとクルールの二つ名を口にした。

「ああ、セクシィなねーちゃんと電波なねーちゃんな。
確かに、あの二人にゃああいつは役者不足だ。
せいぜいちびっ子かナイスバディってとこだろうよ。」
「……いや」

1番可能性の高い二人の『女王』をロディなりに名指しするが、囚はそれを否定する。

「『月呑み(つきのみ)』フェナと『紅桜(べにざくら)』鈴鹿は俺達が相手取れる程度の雑魚相手には出ないだろう」
「ハンッ、グルメな舌にゃあ合わねえってことかい?
ってことは、雑食主義のハスキーガールか……いや、それこそねえな」
「そうだな。『萬(よろづ)』ディーが出るとすれば病原菌が関わるだろう」

そうしている間にも、目的地はすぐ近くまで迫っている。

「お喋りは終りだ。
行くぞ。」
「オーライブラザー。
さあ、リベンジの時間だ!!」

互いに得物を構え、新たな『餌』を探すナノマシン適応体目掛け二人は突っ込んだ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜新歴99年、3月20日、午後14時20分、横浜〜〜


壁を砕きながら通恋の身体が宙を舞う。

「くぅ!!??」

衝撃に発生したエラーを処理しながら空中でバランスを修正し着地すると即座にベーシックプログラム『リニア』を起動して地面を蹴り磁力加速を加算した高速度でその場を跳び退く。
直撃、通恋が着地した位置目掛け切が踊り掛かり地面を殴り砕く。

「にぃがぁすぅかぁぁぁああああ!!」

悪鬼のような咆哮をあげ、切もまた地を蹴り通恋を追う。

(手持ちの武器は鋼線が三本と鉄扇、後は医療用ナノマシンだけ。
……無茶だけどやるしかないよな)

『仕込み』に演算の一部を預けながら、磁力加速併発し開けた場所を目指し駆ける。

「っ!?」

建物の壁面を蹴り加速した直後、鋭い悪寒が背を抜け通恋は振り向きざまに鋼線の一本を放つ。
振り向いた視界の先には、放った鋼線によって弾かれ落下する鉄パイプと、弾いたものと同じ型の鉄パイプ数十本が通恋目掛け飛来していた。

「クソッ!! 『縞蛇(しまへび)』!!」

通恋が叫ぶと同時に手より伸びた鋼線が電流を受け混ぜられた形状記憶合金が蛇の様に蠢き全ての鉄パイプを搦め捕ると、そのまま纏めて切断した。

「シャァッ!!」

その間に切は通恋との距離を詰め、落下する鉄パイプを押し分け通恋が拳の射程に入るなり拳を叩き込む。

「効くか!!」

対する通恋は鉄扇を盾のように翳して拳を受け流すと勢いをそのままに回転、身を翻して首に手刀を叩き付けた。

「がああっ!!」

自分の勢いを加算された躯体は地面へとダイブするが、切は拳で地面を殴り付けて体勢を立て直した。

「『リニア』!!」

その隙に距離を稼ぎ直した通恋を目指し加速プログラムを発動し弾丸のように跳ぶ。

「くたばりやがれ!!」
「ふざけんな!!」

切の加速を察知した通恋は突き出された腕に着物の袖を搦め、合気道の要領で切の力を利用してぶん投げると今度こそコンクリートに叩き付けた。

「ぐあっ!!??」

背中からもろに叩き付けられた切が苦悶の声を漏らすが、腕が解放されると同時に跳ねるように立ち上がる。
蓄積したダメージにバランサーがズレたらしく僅かにふらつく切だが、目の奥にどす黒く濁った光を湛えた目で通恋を睨む。
ふらつきながらもなおも立ち上がった切に、通恋は鉄扇と鋼線を構え問い掛ける。

「おい糞兄貴。なんでそこまで執着すんだよ?
あの娘は血も繋がらねえアカの他人だろうが」
「……他人じゃねえ。『娘』だ」

ケモノのように飛び掛かる隙を伺う切は、通恋の台詞に怒りを隠す事なく唸るように呟く。

「『娘』守るのは『親』の役目なんだよ!!
嫌われようが憎まれようがどうだっていいんだよ!!」
「ふざけんな!!!!!!!!」
「っ!?」

切の叫びを塗り潰す大音量の喝波を放った通恋に切はたじろぐ。
しかし、自らの琴線に触れられた通恋は本気の怒りを露わにしながら切を両断する。

「テメエ、さっきから聞いてりゃあ口ばっか達者な癖に言ったことは何一つ出来てねえじゃねえか!!」
「俺は…」
「出来てねえんだよ!!」

言葉を遮り通恋は『仕込み』がまだ不十分な医療用ナノマシンを取り出して構える。

「そのふざけすぎて腐ったAIをぶちのめしてやる。
起きろ、『慶二郎』!!」

通恋の言葉に応じ、ナノマシンユニットから大量のナノマシンが散布されると、それらは通恋の左腕に集約し一本の『腕』となる。
その腕は、通恋の二回りの太さに紅い甲冑のような装甲と肘に噴射孔を取り付けた異形の腕だった。

「『大将出陣(ジェネラルコンバット)』。
『ジークルーネ』無しでそいつをやるのかよ……」

その『腕』を見た切はその名を口にしながら警戒し唸る。
『単体師団大将』は、通恋の使う『ワルキューレ』から展開されるナノマシンの兵士を集約し、通恋自身が直接装着する兵装であり、『慶二郎』はその中でも純粋にパワーに特化させた形状の名前だ。
本来であれば『ジークルーネ』のサポート無しでは不可能なその最強形態を通恋は『ジークルーネ』を用いず、その上専用でない医療用のナノマシンを持ってこの場に呼び出した。

「テメエをぶん殴るためだ。
生半可な『げんこつ』じゃきかねえだろうがよ」

左腕を腰溜めに引き、正拳突きの構えを取る。

「教えてやる天野切。
テメエの愛情は、『自分』にしか向いてねえんだよ。
テメエが大事にしているのは、『テメエ』があの娘に向けた愛情で、『あの娘』を大事になんかしてねえんだよ!!
だからテメエは今、あの娘を救うと言いながら、何もできねえでこんな所で燻ってんだ!!」
「…っ」

否定したいのに、通恋のその言葉は奥深くへと突き刺さる。

「覚悟しろ。
これが、子を背負う『親』の拳だ!!」

脚を破壊する勢いで踏み込み、切の中心目掛け拳を撃ち込んだ。
切は通恋の言葉に棒立ちとなったまま、その拳をもろに喰らう。

「かっ、は!!??」

意思とは無関係に声が漏れ、切の中で凝り固まっていた『なにか』がひび割れる音が鳴る。
『システムに重大なエラーが生じました
再起動と同時にフリップフラップの稼動を5秒後開始します』

「『親』を名乗りたいならまず、『あの娘』とまっすぐに向き合えこの親失格野郎!!」

インパクトの瞬間、噴射孔から爆発的なエネルギーが放出され、加速を加えた正拳は切をまっすぐ吹き飛ばした。


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