ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

SS倉庫コミュの【オリジナル】魔都の歩きかたA child of Pinocchio〜捜査ファイル5『シリアルマーダー』1

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜新歴99年、3月20、午後23時30分、横浜〜〜


闇の中、異業のケモノが咆哮を鳴り響かせていた。
その、ケモノというにもあまりにも異形なケモノは己を呪う。
己の甘さを。甘さ故に失なわせた愛しきヒトを想い、絶望と憎悪を糧に咆哮とする。

許さない。なにもかも許さないと。

憎悪は殺意へと、絶望は妄執へと変貌し、ケモノは世界が与えた呪いを受け入れた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜新歴99年、3月19日、午後12時17分、八王子、PCサービスセンター・地下〜〜


「……やっぱり重いな」

新しい駆体へと交換が終わり、初期起動と動作確認を続けながら【P0】天野切はそう呟いた。

「仕方ないよ。
新型が待てないって我儘を通すとしたら、それしか駆体は無かったんだから」

切の独白に、やれやれと言いながら【P4】リシルが答える。
しかし、リシルの答えに切は僅かに眉をしかめる。

「しょうがねえだろ。
自業自得とはいえ何日もクゥをほっぽらかしてんだ。
帰れるんなら一秒でも速く帰るのが親の役目なんだよ」
「まったくもう。
だからって、よりにもよってそんなロートルを引っ張り出させる神経は理解できないよ」
「うるせえ」

指を握り開きしながらリシルの呆れ気味なぼやきに切はそう毒づいた。

詳細は省くが、一日前天野切は死んで生き返った。

その際に前の駆体は完全に使い物にならなくなったため、切は新しい身体を使う事となってしまったのだ。
だが、切は一刻も早く家に帰りたいと駄々をこね、リシルが用意しようと調整を始めた駆体ではなく切の1番最初の駆体を引っ張り出させ、それに二つのジェネレーターと精神プログラムの納まるメインユニットを組み込んだのだ。

旧型を引っ張り出させた理由は、以前の切の体格と同じ駆体が無かった事。

腕や足ならば自宅にも前の駆体の予備があったが、切の胴体サイズは通常生産の規格には無く特注の生産をするしか無い。
調整中の新型もサイズは同じなのだが、手や足と違い躯体の経験値が無いため数日単位で慣らしが必要となる。
故に、切は同じサイズでかつ経験値が豊富にあるためさほど慣らしを必要としない旧型を引っ張り出させたのだ。

その躯体を選んだのには他にも理由はある。

それは、ジェネレーターの問題だった。

通常【Pナンバー】のジェネレーターは楕円の卵形一個なのだが、切はジェネレーターを二つ持っていて、それぞれが心臓と胃の形を模した特殊な形状をしていた。
そのため、両方を搭載出来る駆体は心臓を模した『ユーピテル』及び胃を模した『ダグザ』の並列起動テスト用に改修してあった以前の駆体しかなかったのだ。

「しかし驚いたぜ」
「何がだい?」
「この駆体だよ。
てっきり廃棄してたと思ってたが、まだ残していたんだな」

懐かしむように切は自分の手を見る。

「まあね。
本当なら兄さんのその身体、『人型アーキタイプ』は博物館にでも寄贈してもおかしく無いんだよ。
まあ、無茶苦茶改造してあるし博物館なんてまだ予定にも無いからここで埃を被ってたんだけどね」

切の最初の駆体。

すなわち、この『人型アーキタイプ』は現在の【Pナンバー】に使われる全ての駆体のベースとなった駆体だ。
当時、まだ『リ・ディアル』の存在すら知らなかった時代、切は姿勢制御のAIや大容量燃料電池のエネルギー制御等の問題から廃棄が決定しようとしていたこの駆体を極秘裏に入手し、自分の駆体として完成させた。

完成させたその理由は、復讐だった。

自分の存在に気付き、自我の成立までを手助けしてくれた恩人『天野霧花』を殺した者達を、自分の手で殺したいと切は身体を求めたのだ。
今更思えば、自分はなんて浅はかな考えだったんだと思う。
復讐の虚しさ、無意味さに知らず気付こうともしないでただ感情に任せ行動していた自分は子供だったのだと、穴があったら今すぐマントル層ぐらいまで掘り沈めて埋めたくなるぐらいだ。

「リシル、駆体はどのぐらいかかりそうなんだ?」

保管されていたこの駆体は、世代で言えば6世代は前になる。
外側は最新のナノファイバーカーボンを使用しているため、外見こそ以前のままだが現在の動きを優先した流体関節とは違う稼動範囲を優先した球体関節やチタンセラミックの骨格素材等技術も古く、古さからやはり所々ガタが来ているのは切にも解っている。
そのため、この駆体では『ユーピテル』の稼動出力もあまり上げられず、磁場精製する『マグネット・リフレクション』は辛うじて数回使えるが、激しいGの掛かる『リニア・ラン』はもとより、切がもっとも使用する『スタン・ボルト』はまともには使えない。
戦闘自体は最悪ベーシックプログラムでなんとでもするが、荒事も少なくない生活を鑑みれば新しい躯体が完成次第取り替えねばならない程度の自覚はあった。

「そうだね……新規のパーツの調整とかもあるから一月貰えれば仕上がるよ」
「解った」

リシルいわく、駆体自体は完成しているらしい。
だが、その前に検査した切の使用可能スペックは最新型でも役不足だと判明したため、リシルは急遽改修を始めたのだ。
切は別に構わないと思ったのだが、リシルにしてみれば気に食わないことらしい。

「どうせなら、EXISと殴り合えるぐらいまで強化したい」

というのがリシルの弁だ。
実際、多段変形する最強の戦車と人型の【Pナンバー】では結果は明らかだと切は思うのだが、リシルは切なら勝てると考えてるらしい。

「まあ、少しくらいなら遅くなって構わないから、俺よかクラウスを頼むぜ」

そう言うと切は一つだけ閉じられたカプセルに視線を向ける。
そのカプセルの中には【P3】クラウスが全裸で浮かんでいた。
切が死んで生き返った事件の際、クラウスもまたその場におり切ほどではないが全身の循環剤にもなっていた液体ナノマシンをほとんど失い、そのために生じた熱暴走と駆体の摩耗からシステムを制御する基板や回路も半分が焼け付くほどの生死に関わるレベルの重傷を負っていた。

だが、何故か精神プログラムだけには一切損傷が見受けられず、逆に不審に思ったリシルは念のためにとクラウスの完全なオーバーホールさせたのだ。

「任せてよ。
クラウスからも強化プランは預かってるんだ。
会長の権限使いまくって、250%満足する強化してあげるよ」

そう笑うリシルだが、切はその笑いに闇のようなモノを感じ不安になる。

「……まあ、ほどほどにな…っと、そうだ。」

帰ろうと踵返そうとした切だったが、視界の端に茶色い土饅頭みたいな物体を見つけ、手にとった。
それは、数時間前まで切の精神プログラムが納められていた愛玩用のマシンユニットだ。
当然、今は中身が空となっている。
切はしばし考えるとリシルに聞いた。

「リシル、これ、貰っていいか?」
「ん?…地域税込み2680円払ってくれれば構わないよ。でもなんで?」

マシンユニットの時には散々文句を言われただけに、意地の悪さを隠そうともせずに定価を示してそう尋ねる。

「クゥへの土産だよ。
それと、中古品を定価で売る気か?」
「需要と供給の問題だよ。
それでも一応、我がアイラーヴァタ社ではパーツ以外での数少ない人気商品だからね。
ただでは譲れないよ」
「中身は秋葉原で仕立てるから800円にしろ」
「冗談。
せめて2000円だね」
「秋葉原で傷あり1500円で見た事あるぞ」
「それ、上海産のバッタモノだね。
いい事教えてくれたから1900円までまけてあげるよ」
「システムユニットにアクティブサーチ機能付けるならそれでいいぞ」
「さりげに5000円もするパーツ付けさせようとするとかしたたか過ぎだよ。
純正パーツプラスアタッチメントの目覚まし機能追加で1850円」
「だったら……」

半ば意地で続いたこのある意味壮絶な値引き交渉は1時間にもおよび、結局、基本システムだけ付けての1500円という大赤字にでリシルは折れたのだった。


コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

SS倉庫 更新情報

SS倉庫のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。