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SS倉庫コミュの【オリジナル】魔都の歩きかた〜A child of Pinocchio〜#捜査ファイル2『コロシアム』(3)

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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜新歴97年、11月22日、午後18時00分、東京港区、東京タワー〜〜


「では、始めましょうか」

天野切捜索のまず始めに、クラウスはアルと一旦別行動することを願い出て東京タワーに向かった。
現在の東京タワー、その特別展望台だった場所は内装が剥がされ、剥き出しになったコンクリートが広がるだけの廃墟同然のその場所の中心にクラウスは立ち、ネクタイの位置を直して短く呟いた。

「『ゼウス』戦闘起動モード移行」

着用するブラックのスーツに紫電が一瞬走り、そのまま東京タワーを伝いさらにその下に繋がる通信ケーブルまで走り抜ける。
次いで、クラウスの全周を囲うように半透明の光るディスプレイが大量に開いた。
開いたディスプレイのうち、【P1】【P5】【P6】にSoundOnryと表示された3枚のディスプレイ以外は目まぐるしく明滅と展開を繰り返すが、クラウスは目もくれずその画面が固定された3枚のディスプレイに話しかけた。

「お久しぶりです」

すると、【P5】と書かれたディスプレイから焦った声が流れた。

「どういうことなんですかクラウス兄様!?」
「何がです?」
「切兄様が行方不明だなんて、なにかの間違いです!」

【P5】は興奮した声でクラウスを問い詰めるが、【P1】のディスプレイから窘める声が流れた。

「落ち着いて【P5】。
実状の確認が先だよ。
【P3】、説明をお願い出来るかい?」
「はい。
推定5日前、天野切こと【P0】は突如姿を消しました」
「五日前と推定する根拠と、自身の意志で失踪したのでは無い証拠は?」
「【P0】の同居人の証言からの状況を考慮した結果になります。
同時に、【P0】は自宅に『例の』コートを放置していることをアル様が確認しております。
この二点より、【P0】は何者かに強制的に連行、又は拉致されたと推察します」

クラウスの淡々とした説明が場に流れる。
一通りの説明を経て、【P1】は質問を投げかけた。

「そうか。それならば【P0】の他意による連行の可能性も頷けるね。
それで【P3】、僕たちは何をすればいい?」
「はい。
【P1】、貴方には【P7】の監視をお願います」
「…へぇ?」
「なんでですか!?」

クラウスの要求に、【P5】が反発の声を上げた。
興味深そうな【P1】だが、その要求は不可解と思ったのか納得しかねているようだ。

「【P3】、君は【P7】がここに来ていないから彼女が犯人だと考えているのかい?」

【P1】の声は幾分か探りのような響きを含む。
が、クラウスはあっさり否定した。

「いいえ。
強制参加の『コードE』ならばともかく、『コードA』への参加は任意です。
この場にいないことで犯人とは考えていません」
「ならば何故、監視の必要があると?」
「【P7】は【P6】同様高いプログラムの書き換え能力を保持し、【P0】を自由にしたい場合最も有効な手段となります。
【P7】の性格から、彼女単体での犯行と介入の確率は低いですが、協力する可能性は高く万が一も考えられるので今件の【P7】の介入の阻止したいのです」
「確かにあの娘の能力なら、【P0】にも有効だろうね。
いいよ。どうせ暇だったし、捜して見張っとくよ。」
「次いで、【P6】。
貴方には……聞いていますか?」

クラウスの問い掛けに、今まで無言だった【P6】が答えた。

「…zzZZ」

鼾で。

「……」
「……」
「……はっ!?【P6】!!!!!」
「…んあ?」

【P5】の怒鳴り声に、ようやく【P6】は目を覚ましたようだ。

「ごめんごめん。ちょっと考え事してたら寝ちゃった。
で、僕はどうすんの?」
「……相変わらずマイペースですね」
「切兄様の危機なんですよ!!
もっと真剣にやってください!!」

【P5】の声だけでも相当怒りをあらわにしているのが判る剣幕にも、「だからごめんって。」とどこか気の抜ける謝罪を繰り返す【P6】。
そんなやり取りがしばらく続いた後、頃合いを計りクラウスが話を進めるために口を開いた。

「……話を戻してよろしいですか?」
「はいはい。
いつでもどぞ」
「……。
【P6】、【P0】の捜索に貴方の管理している衛星を割けるだけ割いていただきたい」
「それは構わないけど、生き残ってる衛星そのものがそんなに無い上、今請け負った案件もあるし3機ぐらいしか回せないよ?」
「十分です。
旧東京、旧神奈川の両地域を集中的に調べる分には十分です」
「随分断定的だけど確証あるの?」

【P6】のもっともな言い分に、クラウスは首肯した。

「ええ。
先程、『イザナミ』から不審な電力反応を検知していたという情報を受け取りました。
発生箇所は関東の旧丸ノ内周辺、発生時刻は昨日深夜4時頃、観測された電力はおよそ7000万ボルトだそうですので、ほぼ【P0】で間違いないでしょう。
既に【P0】と犯人は移動しているでしょうが、移動するにしても余程の阿呆でない限り【海帝】が根を張り巡らしており足が付きやすい海路を使うとは考えづらいですし、【P0】のメンテナンスの観点から設備の多い関東に潜伏している可能性が高いと推測しています」
「了解。
んじゃ、早速サーチを始めとくよ」
「よろしくお願いします。
そして【P5】、貴女は今件への介入は避けて頂きます」
「え?
な、なんでですか…?」

困惑する【P5】にクラウスは淀みなく理由を口にする。

「貴女は存在上、非常に目立ちます。
今件に於いて重用なのは隠密性故、貴女の協力は……」
「間に合ったようだね。」

クラウスの説明を遮り、【P4】と書かれたディスプレイが展開しリシルの映像が映し出された。

「リシル兄様、今までどこにいらっしゃったんですか!?」
「ちょっと人探しをね。
それにしても、クラウスは随分焦ってるみたいだね?」

協力を断られた上、説明まで遮られた腹いせの混じる【P5】の問いに飄々と返しクラウスに問い掛けるリシル。

「焦ってはいません。
アル様より早急の厳命を承った以上、結果を出す努力をしているだけです」

リシルに対しいつも通りの態度でクラウスは答えると、リシルは含むように笑った。

「そうか。
流石、【OP】司令機にして兄弟一の安楽椅子探偵(アームチェアーディティクティブ)だね。
ハードボイルドな切兄さんとは真逆だ」
「……。
貴方に腹の探り合いは無駄ですね。【P4】、今回の一件に貴方が絡んでいると考えていますが違いますか?」
「兄様!?」

クラウスの単刀直入な言い方に【P5】が批難の声をあげた。
リシルは驚くこともなく静かに問うた。

「唐突だね【P3】。
根拠はある?」
「状況からの推察です」

そう前置きして、クラウスは考えを口にした。

「私が知る【P0】は、他人との繋がりを重んじてはおりますが、同時に他人に対し用心深くもあります。
私は、そんな【P0】が見ず知らずの他人にろくな抵抗もせず捕まったとは考えられません。」
「そうだね。
兄さんは人を信用しようとする癖に信頼することは稀だ」
「茶化すのは止めなさい。
故に、その【P0】が油断したとするならば、本人が信頼に足ると考えていた相手だったと考えます。
そこを加味し【P0】が油断する人物で【P0】を捕獲する手段を持ち得る者を考えれば、犯人は大分絞れます。
次いで、手段にしても私の知る限り周囲に全く被害を出さないピンポイント攻撃を施行出来るのは、【P4】あなたの引力操作『リフレクション・ドロー』及び斥力操作『リフレクション・クラッシュ』だけです。
私を含め、他の【OP】では【P0】を捕らえようとすれば初撃で仕留めようと余程上手くやらない限りあのビル程度は完全に崩落しています。
ついでに言えば、【P5】と貴方以外に私達が自分の意思で【P0】に関わる理由がありません

「……本当に、君は探偵になるべきだと僕は思うよ。
そうさ。僕が切兄さんを捕まえたんだ」

愉快極まりなさそうな満面の笑みで、リシルはクラウスの言葉を肯定した。

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