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創作ストーリー『流転恐怖』コミュの流転恐怖 第四十四話 『深山奇譚 〜天都朱鞠〜』

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じいちゃんが行方不明になったらしい。

( ´∀`)「どうせ死んでないだろうけど、あえて言わせてもらおう。いぃやっほうぅぅーーー!」

 電話口でばあちゃんからこの話を聞いたときの俺の第一声はこれだった。不謹慎というなかれ。こんな悪態つけるほどの仲ということだ。ついでにいうと、見つからなくても困らない程度の仲でもある。

 電話口で拳を振り上げ喜ぶ騒ぎに、メリーさんが茶の間から上半身だけ扉から出して、様子を伺ってくる。

メリー「どうしたの?」

( ´∀`)「去年の冬にじいちゃんが山にいったまま、戻ってきてないんだってさ」

メリー「ふ〜ん、なんか大変みたいだね」

 そう言って、特に関心もみせないでクッキーをくわえて部屋に戻る。が、すぐに勢いよく戻ってきた。

メリー「って、なんで喜んでるの?! まず死んでないとは思うけど、半年も行方不明なんでしょ! もう少し慌てるとかしないの? むしろ、なんで半年もほっておいたの?!」

( ´∀`)「ばあちゃんとしても、いないならいないで平和だからな。でも、そろそろ収穫の時期だし、そろそろ人手が欲しくなってきた…… もとい、心配になってきたからじいちゃんを探す気になったらしいぜ」

メリー「なんていうか、あのおじいさんと長年、連れ添ってきたおばあさんだけのことはあるね」

 そう言って、メリーさんは呆れとも苦笑ともとれない微妙な表情を見せる。

メリー「それでおばあさんは行方不明の報告に電話してきたの?」

( ´∀`)「いや、じいちゃんの探索を俺に頼んできた」

メリー「やっぱり、そういう話になるんだね」

 ある程度、予想はしていたのだろう。メリーさんはため息をつく。

メリー「もう仕方ないなぁ。」

( ´∀`)「なんでついてくる気まんまんなんだよ、都市伝説と書いて役立たず」

メリー「むぅ! 私、都市伝説だよ? メリーさんだよ? そりゃあ、怖い場所は無理だけど……」

( ´∀`)「一番大事なところがダメじゃねぇか」

メリー「そ、それでも移動には便利なんだからね。ほら、私って電話かければ都市伝説奥義の瞬間移動が使えるし。おじいさん見つけたら安全に帰れるよ。もうタイプライターなんて呼ばせないんだからね!」

 ふふん! と勝ち誇った顔をみせるメリーさんであった。これからはタイプライターではなくルーラと呼べばいいのだろうか?

( ´∀`)「そうか、そりゃすごいな。でもダメだ」

メリー「なんで!?」

( ´∀`)「山は女は入っちゃダメなんだよ。山の神様は嫉妬深い女神様だから、女が入ってくると災いがあるって言われてるんだよ。あ、でも女の神様だからか子供には優しいんだったな。メリーさんなら余裕で……」

メリー「残念! いやぁ、女の子は無理なんだね! そういうことじゃ仕方ないよね、うん! もう残念だなぁ!」

 余裕で子供と判断されるんじゃね? と言い切るより先に彼女は話をぶった切ってしまう。最近、無駄に勘が良くなってきて、からかう前に逃げるようになってしまった。全く残念な話だ。面倒はないけど。

( ´∀`)「どっちにしても山の中だと携帯電話は使えないから意味ないけどな。それじゃあ、週末にでもいってくるよ。お土産に冬虫夏草でもとってくるから、おとなしく待ってるんだぞ」

メリー「とーちゅーかそー?」

( ´∀`)「虫から生えてる栄養たっぷりのキノコだ」

メリー「いらないよ、そんなの!」

 冬虫夏草を簡潔に説明するも速攻で拒否される。しかし、この程度の反発は想定内だ。見た目のキモさという欠点よりも、冬虫夏草の素晴らしさを知らしめれば、きっと分かってくれる。分かってくれなくても、それはそれで面白いので構わない。

 だからこそ俺はその熱い衝動に任せ、構わず冬虫夏草を推し進めるのだ。

( ´∀`)「別に遠慮しなくたっていいんだぜ? 虫の体からキノコがうにょ〜んって生えてるって凄いキモいじゃん。栄養もあるみたいだし、キモいしさ。あととにかくキモくね? メリーさんもキモいと思うだろ? ぶっちゃけ、そんなキモいの俺は欲しくないけど、お土産だから我慢して採ってくるぜ!」

メリー「キモいならとってこないでよ!」

( ´∀`)「おっと、ここまで推しても反発されるとは思いもしなかったぜ。どっかのテレビ局みたいにサブリミナル失敗か」

メリー「何をサブリミナルしたかったの……」

 生命の神秘、冬虫夏草の採集計画はあっさりと却下されてしまうのだった。まあ、そもそも日本で採れるか知らないけど。

( ´∀`)「じゃあ、お土産は『六甲の惜しい水』だな。言っておくけど、考え直すなら今のうちだぞ。あとで冬虫夏草がいいっていっても知らないぜ?」

メリー「なんで冬虫夏草と『六甲の惜しい水』の二択なの?! そもそも田舎って六甲と関係ないでしょ。普通に地元でとれた名産品にしようよ」

( ´∀`)「名産品? あそこの名産品っていうと藁人形の怨太君 惨号だろ? あれなら冬虫夏草の方が…… いや互角だな。やれやれ、どっちも触りたくないけど、お土産だし仕方ないなぁ」

メリー「藁人形が名産品って何? もう、わざとだよね! わざと変な名産品選んでるよね?」

( ´∀`)「んなことねぇーよ。あそこは水がいいから上質な米が出来るんだぜ。そうして日本酒や米菓といった二次加工品も人気でてるんだよ。ついでに残った藁で職人が趣味で作った藁人形が一部のマニアに人気があるんだよ」

メリー「今、明らかに藁人形よりお土産向きのあったよね? むしろ藁人形のこと、ついでとかいってたよね? ついでの趣味で作ってない方にしようよ」

( ´∀`)「米菓か? いや、やっぱりここは都市伝説らしく、冬虫夏草をだな……」

メリー「そもそも冬虫夏草持った都市伝説なんていないよ! むぅ、私が食べたいのはソフトおせんべい! ソフトおせんべい! チョコレートを挟んだソフトおせんべいがいいの!」

 メリーさんは半ば、駄々っ子のように喚きたてる。いつもはお姉さんぶっているが、根っこのところは子どもである。

( ´∀`)「そんなどこにでも手に入るようなものよりさ、ここは冬虫夏草を藁人形で挟んだものでどうだ? きっと誰も持ってないぜ、オンリーワンだぜ?」

メリー「それ、誰も持ってないじゃなくて誰も欲しくないだけだよ!」

( ´∀`)「おぉぅ! 予想外の抵抗だな、おい」

 結局、その場はメリーさんに押し切られ、お土産はソフトおせんべいに決まってしまった。さらば、冬虫夏草……

 とでも言うと思ったか


――そして、週末。俺はじいちゃん探索を口実に冬虫夏草探索のために一人で田舎に行った

 じいちゃん家から歩いて数十分のところに深緑に囲まれた山がある。かつてはマタギや炭焼きがいたらしいが時代と共に減ってゆき、今はもう手付かずの密林になって、野生の獣も溢れているそうだ。

 そんな場所だから立ち入る者もなく、そもそもここは神聖な山らしく、山への畏れのない者には様々な怪異が襲いかかると伝えられているため、余計に立ち入る者がいない。

 おかげで立ち入った物見遊山の若者が入り口で肥料になったとか、業者が不法投棄に行って肥料になったとか、山の妖怪が肥料になったとか。そんな噂ばかりがたっている。

 噂の真偽はともかく山の中は密林状態なのは間違いなく、娯楽で立ち入るような場所ではなかった。だから俺も山の中に入るようなことはないと思っていた。

( ´∀`)「やれやれだぜ」

 俺はため息一つついて、食料と水が詰まった重いリュックサックを背負い直し、木刀で腰ほどの高さの雑草をかき分け、重い足取りで一歩、一歩踏みしめてゆく。

 じいちゃんのことだから、まず死んではいないだろう。けど、山の霊気でそろそろ妖怪化してるんじゃないかってばあちゃんは心配してたな。俺としては山に入る前から妖怪化してると思うが、まあどっちでもいいか。

 山の中を歩き続けて二時間かそこらは経ったろうか。慣れない山歩きはさすがに疲れるものだ。昼ごはんにはまだ早いが、体は強く休憩を欲していた。

 藪を抜け、開けた一角に入ると、そこには丁度いい平らな岩があった。テーブルというにはやや狭いし低いが、椅子としては高さも十分だ。ここで一休みさせてもらおう。

( ´∀`)「悪いけど、この石に座らせてもらうぜ」

 誰にでもなく断りをいれておく。山のものは全て山の神のもの。だから勝手に使わないほうがいいとかいう話しのためだ。

 ともかく断りをいれたので、ゆっくりと腰をおろす。まずは魔法瓶に入れたポカリスエットを一口飲んで、お楽しみのカロリーメイトを取り出し、さて頂こうと思った時だ。

 ドシンと地響きをたて、俺の隣に巨大な何かが座った。こんなにも近くに来るまで気づかないのはおかしいほどの大きな影が、確かにそこにあった。

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