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創作ストーリー『流転恐怖』コミュの流転恐怖 第四十話『猿夢 オーバーラン』

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( ´∀`)「前回までのあらすじ。正月になったので、俺は姉さんと従兄妹の天乃と共にじいちゃんの家を目指した。大雪で電車は止まり、徒歩でじいちゃん家を目指すも結局は毎年恒例の遭難をしてしまうのだった。
山小屋に避難した俺たちは仕事探しの旅にでていたGOROさんと再会し、四人はそこで眠らないようにと部屋の四隅を回ることに。だが、あまりの寒さゆえに天乃の連れていたくねくねは凍りつき、GOROさんは途中で眠り込んで猿がどうとか、電車がなんだとかうなされるだけで一向に目覚める気配はない。果たしてGOROさんの運命やいかに!」


「って、裏で動いているストーリーのあらすじ言わないでよ! ……って、私は誰にツッコミいれてるのよ……」

 ソアラは暗闇に向かって、大声でツッコミを入れる。だが、そこにはまだ眠っているメリーさんとメルしかおらず、ツッコミをいれるべき相手はいるわけもなかった。

「あー……。眠さでぼーっとしてるのかしら? 変な幻聴が聞こえた気がするわ」

 そう呟きながら軽く首を振る。けれども、その程度では徹夜同然の強烈な睡魔はとれるわけもなかった。気を抜けば、そのまま眠りにおちてしまいそうである。

 時計を見れば、そろそろ家人も目覚め始めくらいの時間だ。ソアラは眠気覚ましの意味も含めて、顔を洗いにむかった。

「うーん……、冷たい水で顔洗っても、まだ頭がぼーっとするわ……」

 ぼんやりとした調子で食事の用意がされたテーブルにつく。座るまでにあくびを二回、座ってからもあくびを一回と眠気はとどまるところを知らない。

「ふわぁ…… おはよー……」

 眠たげなソアラ以上に、寝ぼけた様子でパジャマ姿のメリーがテーブルへやってくる。まさに起きたばかりですといわんばかりに、髪は乱れ気味で目はとろんとしている。おまけに拳骨でも丸呑みできそうなほど口を大きくあけた大あくびまでしていた。

 本当に眠い身のソアラにとっては、これ以上ないくらいにイライラとさせるのに十分であった。もっとも彼女は常日頃から不機嫌な様子をみせているので、メリーがそれに気づくわけもなかったが。

「ふわぁっ! あと五分寝るつもりが気づいたら三十分も経ってて驚いちゃったよ」

「いつも同じこと言ってない?」

「んー、でも昨日はそれで二十五分で、一昨日は二十分だったから……。なぁーんだ、ちゃんと記録更新してるよ」

「悪い方に更新してるだけじゃないの! うあっ、大声出したら頭に響いてくる……」

 ソアラは両手で頭を抱えて痛みをこらえる。メリーはその様子に戸惑いつつ、心配そうに「どうしたの、ソアラちゃん?」と声をかけた。

「……変な夢をみたのよ」

 自分の困っているところを見せるのは嫌いだし、無駄に人に頼るのも好まない。そんな意地っ張りな性格のソアラであったが、眠気のせいか、それとも十分に追い込まれてしまったためか、今回は渋々とだが話したのだった。

「猿……夢……?」

「確か都市伝説にそんなのがいたはずよ」

「ソアラちゃんの交友関係でなんとかならないの?」

「交通関係の都市伝説は横のつながりが広いから、知り合い伝いでなんとかしてもらえたかも知れないけどね。でも夢系の都市伝説は文字通り、住む世界が違うから。都市伝説認定委員会さえもカシマさんのコミュニティ経由で連絡とってるようなものらしいわ」

 都市伝説は独自のコミュニティを持っていることが多い。メリーさんはメリーさん同士で集まっているし、首なしライダーはチームを作って所属している。同じ都市伝説同士というわけでもなく、てけてけ、とことこは同じコミュニティに集まっているし、交通関係の都市伝説などは都市伝説の区別なく、地域ごとにコミュニティを結成している。

 そんな都市伝説達の中で一大コミュニティとして知られるのがカシマさんのグループである。彼らのコミュニティはただ規模が大きいだけではなく、様々な時間、空間に存在する仲間が多くいることが一番の特徴だ。

 一般的なコミュニティでは似た環境の者同士との繋がりは深い分、それ以外の者とはほとんど交流がない。だが、カシマ一族は様々な都市伝説と関わる者を多く排出しており、ほぼ全てのコミュニティに一族の誰かが関わりを持っている。

 そのため現実世界と夢世界の都市伝説のような、意識的に接触をしたくともできない場合はカシマさんに仲介を頼むと良いとされる。また、その繋がりは都市伝説達の自治組織『都市伝説認定委員会』でも重要視されており、カシマさんのコミュニティを使わせてもらう代わりに、認定委員会には多くのカシマさんを雇用してもらっている。

 今回のソアラのケースなどは都市伝説認定委員会へ仲介を申し立てるのが有効な手段である。あるのだが……

「認定委員会経由だと一ヶ月くらい待たされる上、話の内容がきちんと伝わらないことばかりなのよね。『和紙が欲しい』って頼んだら『脇が臭い』って伝わって、危うく都市伝説同士で抗争勃発になるところだったとか聞くし。まったく、どこの伝言ゲームよ」

「あー、それね。私も聞いたことあるよ。でも、それ都市伝説らしいよ? 実際には伝言を頼まれたカシマさんは全く関係ない人の枕元に立って『脇が臭い』って言ったみたいだよ? 言われた人はもう本当に困惑したみたい、あはは!」

「余計、悪いじゃない! まったく、もう……」

「あ、あうぅ……。ご、ごめんなさい」

 こうして無駄話を続けている間にも睡魔は強烈に襲い来るのに、なんら解決策は見いだせそうになかった。ソアラは眠気に揺れる頭を抱えながら、テーブルに突っ伏す。

 そんなソアラに対して、いまいち緊張感のない寝ぼけ眼でメリーは、うーん、と何か考える素振りをする。

「……そういえば私ね、似たような夢見たような気がする」

「まだ寝ぼけてる?」

「ちゃんと起きてるもん! 確か、あのときは『串刺し』とか、『えぐりだし』って駅名で進んでて……」

 メリーの口から出たのは、確かに猿夢の駅名に出てきそうなえげつないものであった。と、いうことは本当に彼女も猿夢に遭遇したのかも知れない。そして、それでも今、ここにいるということは猿夢から脱出できたということだ。微かな希望が見え隠れする。

「そ、それで! それでどうやって抜けだしたの?!」

「えーとね…… 確か、タバコ?」

「未成年が吸っちゃダメでしょ」

「じゃなくて、パイプ?」

「やっぱり寝ぼけてるの?」

 メリーは何を言いたいのか、まるで要領を得なかった。

「うぅ、都市伝説だもん。朝が弱くたって仕方ないもん……」

「都市伝説のわりに夜も弱いじゃない。昨日も22時くらいにはうつらうつらしてたし」

「ほら、私って生前は病院暮らしだったでしょ? だから、規則正しい生活に慣れちゃって、あはは」

「……悪い方の癖ばかりが残ったのね」

「わ、悪くないもん! 早寝早起きはいいことだよ?」

「早く起きてないじゃないの!」

 ソアラは時計の針をびしっと指差す。さすがにここまでくると言い返す言葉もないのか、メリーは「あうぅ……」とため息らしきものをついて、力なく敗北を認めるのだった。

 そんなこんなを繰り返して、結局、何の進展もないままに再び夜がやってくる。

「徹夜すればいいんだよ。大丈夫、私も手伝うから。一緒に夜明けまで騒いじゃおー!」

「墓場で…… 運動会……?」

「それ違うから……。それにメルはともかく、メリーさんは夜更かしなんてできないじゃないの」

 眠気を堪え続けたせいか、気だるそうにソアラは聞き返す。しかし、対照的に無駄にハイテンションのメリーは、ない胸を張って自信あり気な笑みを浮かべる。

「ふっふっふっ! ちゃんと秘密兵器があるもんねー。いでよ、じゃじゃじゃーん!」

 メリーはそう言って粉タイプのインスタントコーヒーと栄養ドリンクをテーブルに並べる。

「コーヒー一杯飲めば軽く十二時までは目が冴え渡るよ」

「別にそんなの自慢できないでしょうが」

「うぅっ。で、でも…… 夜中の二時になったら幽霊さんも都市伝説も営業終了だよ?」

「十二時じゃ営業時間まで二時間足りないし、四時になったら営業再開じゃない。ナポレオンでも睡眠時間が一時間足りないわよ」

「あうぅ……。それじゃあ、コーヒー増やす? 多分、四杯も飲めば徹夜できるんじゃないかな?」

「黒船……来航?」

 

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