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野田正彰コミュの熱帯林の山行

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3月31日(金)
今日の視角 
熱帯林の山行

いつ年があけ、雪の冬が終わったのか、分からないほど忙しい日々だった。やっと抜けだし、タイの北西、ミャンマー国境付近のジャングルにたどりついた。メーホンソンの町でシャン族とリス族の2人の男をガイドに雇い、1400メートルの山にあるモン族の村から歩き始めた。

乾期の終わり、インドシナの森は乾ききり、積もった広葉樹の落ち葉は水に濡(ぬ)れた石のようによく滑る。「シュシュメン、シュシュメン」とセミが鳴く。20メートルを超える高木、それを支える巨大な板根。シロアリの塚、何千匹というクモの集合、大きなモグラの穴。トラ、クロクマ、ニシキヘビに出会うこともあると、ガイドのロンは言った。途中、カレン族の小さな集落に寄り、森に詳しいパヤオが同行してくれることになった。

2時間半、真っすぐ沢へ落ちる道を、岩を〓(つか)み、竹を〓み、木の根を〓み、ツタを〓み、土まみれになって降りる。枯れ葉に足を取られると、そのまま谷へころがり落ちそうだ。ようやく渓流に着き、腰まで漬かって左に右に何度か川を渡り、やっと森の仮小屋へ。

3人の男たちは竹を切り、竹筒で茶をわかし、竹筒でご飯をたき、竹筒でスープを作り、竹筒で煮物を作ってくれた。まったく食器を持たず、すべて竹筒を火にかざして料理を作る。野生のバナナの葉を6枚重ね、土の上にテーブルシートが敷かれた。焼き畑で作った米のご飯も、バナナの花を煮こんだ料理もすばらしくおいしい。彼らはこんなに味の深いものを食べている。

カレン族のパヤオは夜の森を灯火なしで歩く。いなくなったかと思うと、闇の向こうに微(かす)かな音がして、山芋を採って現れた。熾(おき)で山芋を焼いて食べる。言葉は通じないけれど、彼らとともに数千年過去への旅をしている想(おも)いになる。生命が蘇(よみがえ)り、採集狩猟の生活をしていた遠い人類の遺伝情報とつながっているのを感じる。

暗闇に草葺(ぶ)きの屋根の緑が浮き上がる。竹をくだいた高床があるだけで、森との仕切りはない。ゲッコー(ヤモリ)が鳴き、「チュルチュルチュル」と夜の鳥が鳴く。私たち4人は熱帯の森に溶け込んでいる。
(※〓は、テヘンに國)

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