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古 き 良 き 時 代コミュの[古き良き物語]喫茶店の生まれ変わり少女

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 昭和の前半という時代にあって云えば、少女は少女として正しい少女であった。云っている事が上手く文語となりにくいが、それはまさに、見るからに、時代の少女であったのだ。

 理沙という、その少女は、まだ学生の身分であったが、喫茶店に入り浸るのが常だった。そこでは様々な大人と言葉を交わしたが、誰もまだ彼女の疑問を論破出来る者は現れなかった。

 彼女の疑問、人生の課題と云ってもいい。それは、自身が母の生まれ変わりである、正確に云えば、自分は母の生まれ変わりであると、信じて仕舞っているという事だった。

 彼女を産むと同時に母は死に、その最中で、彼女は産声をあげたのだと、父親から聞かされた事があった。その光景は、幼い彼女に深く刻み込まれ、少しづつ少しづつ、自分が母の生まれ変わりであるという概念が、彼女の中で枝葉を広げていったのだった。

 喫茶店のある大人は云った。

 「それじゃあ、きみあ、なにかい、実の父に、父以上の念を持って愛して仕舞っているとでも云うのかい?」

 「いいえ、それはないわね、あくまで父の事は、父として尊敬して、愛しているわ」

 それはある意味、矛盾を論破出来たかに見えた。けれど、

 「けれど、それはね、この生において、私が私の人生を全うするべく為に、好んで、新たに精錬な人格として形成されて来た結果に過ぎないの」

 これは実際良い回答だった。

 彼女が現在の人生を真っ当に歩んでいるという正義があるし、これを大人として否定しようとするならば、下世話な三文小説が如き、親子の憎愛を説かねばならなくなるやも知れない。

 「そんな事は避けたいものだ」上品な大人の社交場たる、この時代の喫茶店のお客たちならば、大抵はそう考えるし、まだ若い女学生に説くような事でもなかった。

 勘定を済まし、彼女は喫茶店を後にする。

 「きょうも成果なし・・・だんだんと容姿まで、寫眞の母さまに似て来てると云うのに・・・」

 彼女はまだ若く、それほどまで、子が親に似るものだという実感にも乏しかったし、口では、「私の人生を全うする」などと云っても、このまま母になって仕舞う事が怖かった。

 だから、生まれ変わりなど存在しないという、確かな論破を欲していた。




 十

コメント(2)

>れどさま

本当に母さまの生まれ変わりでしたら・・・
彼女はさぞ辛いでしょう・・・と、

誤って、我が身に重ねて仕舞いました・・・

成り立ち上もある意味では生まれ変わりで
ありやも知れませぬのデスね・・・><

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