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末っ子といらない子と時々怪談コミュの【004】バス停の女の子

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「バス停にいる女の子が見えなかったらこの峠は入らない方がいい。」





この峠を紹介してくれたM先輩はそう言っていた・・・





今から10数年前、僕らはバイクに夢中だった。

バイクさえあれば怖いモンなんてない。

ホンキでそお思いかけていた・・・





皮のツナギの上にチーム名をプリントした薄手のトレーナーを着て峠を攻める。

当時僕らはそんな遊びに夢中になっていた。


その峠を知ったのは、「ミステリーツアー」と称して色んな心霊スポットを一緒に回っていたM先輩からだった。

当時の僕らはうっすらと見える白い人影や古びたトンネルの中から聞こえる声とかそういったものに慣れてしまい、特にそういったものを怖いと思わなくなっていた。


その峠は都会から1時間くらいカッ飛んでやっとたどり着く様な所にあった。


普段はあまり行かないが、普段走っている峠から近いので、普段走っている峠で取り締まりや事故があったりすると大体その峠に走りに行っていた。


夏休み前位の週末だったと思う。


普段走っている峠が事故で走れなくなっていたので、その峠に行く事にした。


メンツは自分、M、R、Oの4人。

それぞれ夜の峠にも慣れ、コーナー等で時々見える人影にドキッとする事がなくなったと自負するメンバーである。

パァーーーーーン・パパァーーーーーンと心地よく吹けあがる2サイクルの排気音を聞きながらその峠を目指した。

遮断機の付いていない踏み切りを勢いよく通過し、その峠の入り口に辿り着いた。


右に左に、次々と現れるコーナーを曲がりながら、古びたバスの停留所を通り過ぎた。


(あれ?今日は居ないな・・・)


普段はそこにいるデニムのオーバーオールに白いトレーナーっぽい格好の人影がない。


続いて登りの直線の後の左コーナー。


(あれ?ここにも居ない・・・)


コーナーミラーの脇に普段は見える人影っぽいものが見えない。


違和感を感じて少しペースを落とす。


他のメンツもほぼ同時にペースを落とした様だった。


Mが隣に並んできたので、ヘルメットのシールドを上げ、

「なんか変ぢゃない?」

とMに聞こえる様に叫んだ。

「やっぱり?」

Mはそう答えてきた。



Mと少し話した結果、街灯のあるところで一旦止まろうという事になった。

RとOにもその事を伝え、結構先の方にある休憩所みたいな所で一旦休憩しようということになった。



コロコロと先頭が入れ替わりながら4台で休憩所を目指して走っていた。



若いという事もあり、最初は抑え気味のペースで走っていたのに、いつの間にかバトルっぽくなっていた。

徐々にペースが上がっていく。

ペースが上がって行くにつれて、バイクの調子が下っていく。


(おかしい・・・)


そお思いながら走っていると、やはり他のメンツに置いていかれ始めている。


一人だけ遅れ始めたことに気がついたMが俺のペースに合わせる様にペースを落としてくれた。


Mが横にならび、ヘルメットのシールドを上げ、

「カブッたぁ?」

そお聞いてきた。

「っぽい。」

そお答えるとMが

「ストール(エンストの事)したら悲惨だから付き合ってやるよ。」

そお言ってつるんで走ってくれた。





(確かにこの先にあるトンネルの中ではストールしたくないな・・・)





そお思いながら次々と表れるコーナーを走り抜けた。

RとOの姿はとっくに見えなくなっている。

この静か過ぎる山の中を調子を崩したバイクで走るのは心細いな・・・


なんて考えていた。





あれっ???





本当に俺とMのバイクの音しか聞こえない・・・


普段なら虫の音が結構聞こえるハズなのに・・・


ご「なんか静かすぎないか?」

M「・・・・・・」

ご「おい、Mっ!」

M「あぁ、悪ぃシカトしてた。」

ご「・・・・・・」

M「俺もそお思ってたんだよね。なんか気味悪くね?」

ご「単車の調子も悪いしな。」

M「ははっw」

等と話していたら、また連続コーナーがやってきた。



最後の少しキツめの右の登りコーナーを抜けるとありえない光景が広がっていた。


登りきった所にある薄気味悪いトンネルの入り口の側壁にウィリーしながら吸い込まれるように突っ込んでいくR。


もの凄い違和感を感じた。


だって、アイツラに追いつけるハズが無いもん。




バンッって音が聞こえた。





思わず右後ろを走っていたMの方を振り返った。

Mも俺の方を見ている。





この間数秒。





すると、




キュキュゥゥゥゥ・・・ゴシャーーーーーーーーーン




とOがすっコケた音がした。


そうこうしているうちに、トンネルの入り口に着いた。

取りあえず、エンジンはかけたままにしておき、Rの様子を見に行く。

Rはぐったりしている。

Rを道の脇まで引き摺ってきて寝かせると、俺のバイクを後ろ向きにして止めた。

万が一、車なんかが来てもライトの光の気づいて脇によけているRが轢かれない様にする為だ。

Mが衝突の衝撃でフッ飛んだRのバイクのタンクを拾ってきた。

その後、グチャグチャになったRのバイクをMと二人で端に寄せる。

その時、ある事に気が付いた。





Oがいない・・・





「俺、ちっとO見てくるわ。」

そう言ってMがトンネルの中へ入って行く。

Mがトンネルの途中で止まった。

ブレーキランプの輝度が落ち、車体が傾くのが分かった。

トンネルの途中でバイクを止めたようだった。

MがOをバイクの後ろに乗せて戻ってきた。

取りあえずOをRの横に降ろす。

Oは左腕が折れている様だった。

掌が体の外側に向いていてプランプランしている。


「とりあえず、コイツ(O)の単車動きそうだから一緒に取りに行こうぜ。」


Mが親指でOを指しながら俺にそお言った。

正直、トンネルの中には入りたくなかったのだが、仕方がない。

俺は黙ってMの後ろに乗った。


トンネルの中は予想していた通り、夏だっていうのに妙に涼しい。

まぁ、トンネルの中は光が遮断されているから涼しくて当然か・・・

なんて事を考えながらOのバイクが倒れている所へと向かった。

Oのバイクは以外と軽症で済んでいた。

俺はOのバイクを引き起こすと折れたクラッチレバーを何とか握りセルスターターを押した。





キュルキュルキュル・・・・・・・





予想通りエンジンはかからない。


ご「やっぱかかんねぇ〜や」

M「やっぱな。俺が押してくからお前跨っとけよ。」

ご「ん。OK。」

俺がOの単車に跨るとMが単車のタンデムステップ(2人乗りするときに後ろに乗る人が足を置くステップ)に足をかけて押し始めた。




バラララララ・・・・





Oの単車の音がトンネルの中で反響する。





(おかしい・・・静か過ぎる・・・)





この時もそお感じた。


Oの単車は転倒した際の衝撃でハンドル周りにダメージを受けていた様だ。

ガクガクとハンドルが左右にとられる。

予想していた事だったので、Mもゆっくりと走ってくれていた。

無事トンネルを抜け、RとOの元へ。

Oの単車を俺の単車と反対向きに止めてライトを付けておく。





「んぢゃ、ちっと救急車呼んでくるわ。」





そお言ってMは最初に目指していた休憩所にある公衆電話に向かった。


(当時はポケベルが主流で携帯なんてモンは持っていなかった。)





パァーーーーーーンパァーーーーーン





景気よくカッ飛んで行くMの排気音が聞こえてくる。

(おかしい・・・静か過ぎる・・・)

鳥の声やら虫の鳴き声とかそおいったものが一切聞こえてこない。


しばらくすると俺の単車のエンジンが止まりそうになってきた。





バラ…バラララ…





アイドリングしているだけなのに、排気音が全然安定していない。

それと同時にOの単車もバッテリーが弱ってきたのか、道路を照らしていたライトが弱弱しくなってきた。

俺の単車がストール(エンスト)するのと同時にOの単車のライトも消えた。

俺の単車はバッテリーレス仕様といって、バッテリーを積んでいなかった為、エンジンが切れるとライトも同時に消えてしまう。





辺りは暗闇に包まれた。





普段なら、車の走り屋とかも時々見かけるハズなのに、この時に限って誰も通らない。





Mは当分戻ってこないだろう。





もの凄く長い時間Mを待っていた気がする。


やがてパーーーーーーンパァーーーーーーーーーン


と単車が近づいてくる音がした。

Mの単車とは音が違う…


そんな事を考えていた。

でも、おかしい。

景気良くエンジンが回っている音はするのだけど、一向に音が近づいてこない。





キュキューーーーーゴシャ





どっかでコケた音が聞こえた。

静かな峠での出来事。

その後、Mは戻ってくる事もなく、救急車も来なかった。

5:00頃だろうか、夜が明けてきて回りが少し明るくなってきた。





トンネルの入り口には「死亡事故多発!注意!」という看板が…








無かった。








周りを見渡すと、ガードレールの脇に花束が…








無い?









と、いうことは、いわくつきのトンネルって訳でもないのか…

結局、Mは戻ってくることなく、通りがかった軽トラのおじいちゃんに麓の病院までRとOを運んでもらった。

後日分かったことだが、Mも同じ病院に運びこまれていた。

トンネルを抜けて少し行ったところで対向車と事故したらしい。


でも…


そんな音、聞こえなかったよ?

景気良く飛ばして遠ざかっていく音は聞こえたんだけど…



お見舞いに来た先輩が一言。





「バス停に女の子がいない日に走ったんだろう。」





詳しく聞いてみると、


先輩もそのまた先輩にこの場所を教わり、同じような経験をしたことがあるらしい。


人影が見えて事故っていうのなら分かるケド、人影が見えないと事故がおきるなんて…



その後もその峠にはしばしば行きましたが、「バス停にいる女の子」が見えない日は走らずに帰る様にしました。

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