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Short Story by Musicコミュの小説【真夏の果実】

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小説【真夏の果実】  (参考楽曲 by サザンオールスターズ)

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 海から吹きつける冷たい突風に、俺は思わず首をすくめた。視線を右へ流すと荒れ狂った海にサーファーが列をなして浮かんでるのが見えた。夏場は俺もサーフィンしてたけど、この寒さで海はないだろ。友達の名言として、夏は海、冬は雪山じゃなきゃ可愛い子はつかまえられないって相場が決まってるのに。
 と言いつつ、せっかくの週末なのに一人で地元に残ってる俺はどうかしている。しかもクソ寒い中、わざわざ海岸まで一人でくるなんて正気の沙汰じゃない。
 海の家も一つも残ってないし、ビキニの女の子もいない。海も空も青じゃなくて灰色だし、夏の面影なんてかけらもないここに、俺はいったい何を求めてきたんだろう。

 この辺はとんびの被害がすごい。ピーヒョロロロと爽やかに鳴いてたかと思うと、空から豪速で降りてきて、人の手の中の食べ物を一瞬で奪っていくのだ。夏場は餌に困らなかったやつらも、冬は翼を広げて旋回してるだけでなんだか不気味だった。
 見た目ほどかわいくないとんびに下手に抵抗して怪我する人も多いけど、彼女と出会えたのもそんなとんびのおかげだった。

 その日は7月の終わりにはよくある、風もなくて、特に暑い日だった。バイト先の海の家の錆と埃にまみれた大型扇風機の前で涼んでいたところに若い女の子の声がした。
「すみません、この子怪我しちゃって。ここで手当てしてもらうこと出来ますか?」
 友達の女の子に連れられてきた彼女は、血が出てる右手の指の付け根をぎゅっと押さえて、顔面蒼白だった。
 本当はライフガードのところに行くべきなんだけど、俺がバイトしている、よくいえば古き良き海の家へ迷い込んできて、家族か年配客しかいない店の中が一気に色めき立ったのを憶えてる。
 薄いピンク色のビキニに包まれた丸いものが二つ・・・まるで大きな桃、薄皮をはがして歯を立てたら、みずみずしくて甘い果汁が溢れてくる・・・絵をいつの間にか頭に浮かべた俺は、刺激が強すぎてめまいがしそうだった。

・・・・続く。

コメント(1)

 ライフガードのところへ連れて行き、仕事に戻った俺は、カキ氷の機械ををガリガリと回しながら、彼女のことを考えていた。
 地元じゃ見ない顔だ。東京の子だろうか。むろん、地元でこのビーチにいるのは、ナンパ目的か、バイトかって決まってるんだけど。
 休憩時間になって、店の軒下で海に沸く人たちを見ていたら、ビーチパラソルの影に見えたビキニ姿にドキッとした。 あの子が飲み物を取ろうと体をひねったから顔が見えたのだ。
 怪我したせいで海に入れなくなった彼女の寂しそうな背中を見つめていたら、不意に肩を叩かれて振り返った。
 バイト仲間の友達が、にやにや笑ってイチゴ色のカキ氷を俺に差し出した。
「あぁ、サンキュ」
 そう言って受け取り、スプーンを氷に突き刺そうとすると、
「バカ、お前じゃねーよ」
 ソイツは、顎で彼女の方をしゃくった。
「行ってこいよ」
「そ、そんなんじゃねーよ」
「かっこつけんなって!ほら!」
 強く背中を押され、俺はおずおずと彼女に近づいていかざるを得なくなった。

・・・続く。

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