ニュース資料集コミュの人民解放軍が日本に上陸するとき

　　水間氏の言う「解放軍派遣」には実例がある。
　　それが「中越戦争」である。

　　これは、中国がベトナム国内の暴動で華僑が襲われたことを理由に、
　　鄧小平氏が「ベトナムに教訓を与える」と宣言して、人民解放軍を
　　ベトナムに侵攻させた戦争である。

　　この戦争に先立ち、鄧小平氏は同年１月２８日アメリカ、ワシントンで
　　カーター大統領（当時）にベトナム問題についての秘密会談を持ちかけ、
　　アメリカに「精神的支持」を求めたと言われる。

　　２月７日には帰路日本に立ち寄り、「ベトナムを懲罰する必要がある」と発言。
　　８日、北京に帰国。
　　その９日後の２月２７日、２０万以上と言われる中国軍がベトナムに侵攻。

　　しかし、ベトナムの兵は苛烈を極めたベトナム戦争で鍛えられていたため
　　練度も高く、対する中国軍は新兵も多かったために苦戦を余儀なくされる。
　　また、毛沢東時代の「政治第一」主義による訓練不足、前線での指揮系統の
　　乱れ、通信設備の不足や老朽化から同士打ちが頻発した。

　　その結果、３月５日～１６日にかけて中国軍はベトナムから撤退。
　　中国とベトナムの両国がともに「勝利宣言」を出したが、戦術的には
　　中国はベトナムを『懲罰』したとは言い難い。

　　『たかじんのそこまで言って委員会』5/4（日）放送回で、チベット人
　　ペマ・ギャルポ氏はこれを「鄧小平はベトナムに『教訓を与える』と言って、
　　逆に教訓を与えられてしまい、軍との関係において弱くなっちゃった」
　　と面白おかしく言っていたが、これは半分正しく、半分間違っている。

　　たしかに個々の戦闘では勝てなかったのだから、戦術的には敗北と言って良い。
　　鄧小平の軍への影響力も弱まったのかもしれない。
　　しかし、中国は行動をもって『中国は海外同胞の危機を決して見捨てない』という
　　姿勢を示すと同時に、『華僑を迫害したらいつでもその国に攻め込むぞ』という
　　メッセージを世界にアピールすることにも成功した。

　　青木直人氏によれば、現時点で、北朝鮮に中国が進行する可能性はたったひとつ、
　　「北朝鮮国内の華僑を弾圧したとき」だけであろうとのこと。
　　したがって、北朝鮮は自国経済を中国に有利になるように牛耳っている華僑を
　　絶対に弾圧できない。

　　これは中国の戦略的勝利である。
　
　　もう一つの点でも、中国は勝利したとも言えるだろう。
　　この貴重な『教訓』から、現在の中国の軍事力拡大と経済重視が始まったからだ。
　　この路線が現在の中国の国際的地位を重からしめていることは、疑いようもない。

　　したがって、この中国の『成功体験』から見ても、北朝鮮の羅先港50年租借、
　　海南島の原潜基地（http://www.afpbb.com/article/politics/2386283/2891068）、
　　日本のクラスター爆弾廃棄などを見ても、中国の日本海進出の兆しは明確であり、
　　上記の水間氏の想定は極めて現実的である。