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【詩】を書く人。コミュの物語詩 2

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【概要】

・物語のような詩の投稿
・小説とは違う童謡のようなストーリ・ポエム
・フィクション、ノンフィクション問わず
・画像(写真を撮る方)・絵画(絵を描く方)の画像等も自由

ふと思いついた物語の書留めでも構わないので
ストーリー性のある詩の投稿はこちらでお願いします


♯1

http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=11711557&comm_id=328624

コメント(244)

「僕さえ消えれば…」
―少年は頭を抱えて泣いた

少年1人が消えさえすれば
世界は護られるだなんて
どこの誰が決めたのですか

少年に残された生もあと僅か
漸く呼び覚まされた少女
少年はいつか少女に言った
「君はガラクタなんかじゃないんだよ」

女が迷走し
男が迷走し
少女が迷走し
少年が迷走していった

死期を悟った少年は
迷路から飛び出して
父や少女との思い出を
振り返っては泣いていた

もはや誰もが
<宿命>からは逃れられない
少年という名の供物が
新しい供物を呼び込むのだ
それは少年の未来の姿

家族で一緒に
夢を描きたかったのに
それはもう叶わない
神さえ<宿命>には勝てない

少年の痛みは少女の痛み
少女の痛みは少年の痛み
男の痛みは女の痛み
女の痛みは男の痛み

どこからやり直していけば
幸せな4人家族になれたのかな

<宿命>のない
犠牲の出ない世界に
どうしたら辿り着けたのかな
男は狂いそうだった
永遠を誓った女が
目の前で命を落としたのだ
そう
<宿命>に飲み込まれて

男は足を地につける事すら
出来ないほど動揺していた

女の死体はみるみる醜く腐り
男の腕の中で温度を失っていった
その瞬間
男の中に蘇った記憶があった

それは少年時代の男が
男の父を死なせた記憶だった
この記憶すら
<宿命>が思い出させたのだろうか

男は罪悪感で潰されそうになった
そんな男の前に現れたのは
少年時代の男の親友だった

親友は親切そうに男を労わった
だがそれが男への罠だという事は
この当時の男は気づいていなかった
男は約束を反故にはしなかった
若くして散っていく
息子である少年との約束

この世に神なんていない
この世にあるのは<宿命>だけ

10歳で散りゆく少年を囲んで
家族は哀しみに包まれていた
少年の命は余りに脆かった

誰もが少年に
チャンスを与えたかった
しかし少年は聞こえないふりをして
小さな声で何かを呟いた

<アリガトウ>

少年は自分の命が
ゆっくりと燃え尽きていくのを
静かに眺めていた

夜な夜な剣を眺めながら寝た
それは少年を貫くことになる剣

少年はもはや
一刻も早い死だけを
静かに望んでいた
なのにまた今日も朝が来た

少年が本当に死ぬとは
少女は信じられなかった
少女の頭は混乱していた

一方少年の側は
覚悟はできていた
かつて少女と見た夢は褪せて
少年の世界は閉じようとしていた

<宿命>には誰も抗えない
誰も助けてやれない
誰も逃げられない
計算すら許されない

少年はその死を以て
一躍有名になろうとしていた

だがこの「谷」では単に
大昔から続いていた
慣習の一つに過ぎなかった

少年はその死を以て
「谷」から称えられるのだ
少女と男に哀しみだけを残して
♪
_真夜中にこっそり_

横にならべた
 仲良したちに
怒ったパラちゃん
みんなに
たずねたけれど
 だあれも おくち
 結んで応えない。
作業台には
 刃こぼれした
 切れないナイフ
  投げ落ちて
 手足ばらばら
  アルマジロ

だれがやったか
 “せいの”で
 こたえなさい。

「はい、ここに居る
  毛ものたちが
  静かな夜中
 団結して
 こっそりやりました」

   **
「じゃあ、
今から僕のこの目から
目を離さないで下さいね?」

強いられるままに見続けるその眼、
近付く、
逸らすことのできない目、命令と、引力
あ、
塞いだ唇、
口移しで流し込まれたのは、
とろけるような、
それでいて痺れるような、、、
クスリ

ああプリンス、
もう手遅れだ、と、嫌になるほどに気が付く
少年は信じるしかなかった
少女との約束を
父との約束を
それは獣と呼ばれる人の祈り

心が晴れるかどうかは
少年がどれだけ
信じていられるかで決まるのだ

この世界は崇高なんかじゃない
わざわざ護りや生け贄を欲する
呪われた世界なのだ

間もなくやってくる命の終わり
約束の刻 
自分ではどうしようもない<宿命>

少年の目には
とっくに枯れたはずの涙が
溜まり始めていた
それは獣と呼ばれた少年の嘆き

少年は夢を見る
そうして魘されて飛び起きる
朝の冷たい霧に触れて 
幸せの意味を見失う
少年の余命は<宿命>に握られている

見上げると月が浮かんでいた
それはまるで少女の笑顔のようだった

獣と呼ばれた人間も
獣と呼ばれた少年も
この先どうなるかは分からない

絶え間なく続いてきた
<宿命>との闘い
その闘いには敗れたけれど

少年との約束は
未来に絶望するためじゃない

ここは、小さくて大きな世界です。

ワタシという小さな心の世界

でもそれは、広く大きな世界

今日も明日も過去も未來もない

自由な世界です

だから何でも叶うし

何も叶わない

そんな世界なんです

『野晒死(のざらし)』


ある暑い日に私は行き倒れました 

喉がとても渇き カラカラになり まるで血液すら全て蒸発してしまったかのように私の水分は全て無くなり 意識も蒸発して 私は倒れました

バタリと前のめりに 何の意味も無く 死ぬることすら 気づかずに 

まるで機工の油が切れるように ギシギシという 音を立てて 手足が重くなって

私の身体は動かなくなり 当たり前のように

私の身体は 砂煙の舞う地面に落ちたのです

私の身体は生身であるが故に 腐り 朽ち果てるはずでしたが

その前に私を見つけた野犬によって食われはじめました

柔らかい首の肉から咀嚼され 腕 太もも ふくらはぎ わき腹

まるで解体されるように私の肉は動物達によって細かくされていきます

私の肉片は私という存在から離れ 動物達の身体の一部となり

そしてそれにすらなれなかったものは強烈な臭気を放つ

一つの糞と成り果てました

私の身体がまるで部品売りされるように離されていくのを

私はクリアな意識で観察していました

痛みはありません 身体はもちろん動きません

だから私は死んでいるのです

ですが私は私だということを知っていて

私は私が少しずつ私では無くなっていくのを一番手前で観覧しているのです

そして動物達はメインの肉であるロース スペアリブ モツにハツにレバーを食べつくすと一番食べづらい部位である頭部にかぶりつき始めました

その頃には私の身体はグズグズと柔らかくなりはじめ 肉質が熟成されていたのであっさりと頭蓋骨から頭皮がトロリと剥がれ落ちました

もちろん痛みはありません

ただ頭がスースーするくらいなのです

動物達はさすがに分厚い頭骨を噛み砕くのは苦労していましたが少しずつヒビを入れていってやがてバキリという音を立ててフタが開きました

そしてその中にあった『私』であるはずの部位を時には舐めとりながら

時にはかぶりつきながらあっという間に平らげられてしまいました

ですが私は私に気づいています

すでに私の身体はバラバラの骨となりはてて かつての形すら 保っておりません

動物達もすっかりと私に飽きて どこかへと去っていき

その場に居るのはかつて私であった物と 私 だけです

私は死にました

私は野晒しになっています

私はここにいます

強い風にあちこちに動かされ ほこりと砂に塗れ

硬かった骨もまるで土と少しずつ同化していきます

ですが私はここにいます

私はここにいるのです

やがて骨も土塊になりはてて 私だったものは なくなりました 

そしていつのまにか 私も無くなりました 

はたして 私は いつ死んだのでありましょうか?


仕組まれた<宿命>に塗れて
僅かながらの希望に
耳を澄ませた少女は
泣きながら微笑んでいた

「10歳」
それが少年との別れの年齢
「10歳」
それが少年を手にかける年齢

少女は手首に注射を挿した
病弱な少女の為に青年が処方した
寝る前の薬が入った注射

少年の存在意義
少女の存在意義
そして
<宿命>の存在意義

少女は少年を救いたかった
だが少年は死だけを望んだ
それが少年の最後の願い
それが少年の最期の願い

怖くて逃げ出したくて泣いて
少女はまた手首に注射を挿す
もしかしたらという期待を込めて

少年の存在意義
少女の存在意義
そして
<宿命>の存在意義


少女は誰よりも
少年を愛していた
だがある日
少女は逃げ出してしまった

そうして少女は壊れた
少女は少年の死を恐れるガラクタだった
その夜は雨が降っていた

好きな人が出来ました。でも振られてしまいました。
ありふれた日常のヒトコマです。
でも、毎日のように好きな人に会いに行きます。
友達以上恋人未満って不思議です。
私の誕生日に『触っていいですよ』と謎のプレゼント?
やっぱり不思議です。
女心は複雑だというけれと、男心も複雑です。
振られてから始まる恋物語です。
『ありふれた誰かの物語』




今日もベッドで目を覚ます

慣れた手つきで目覚ましを止める

中ニの時に買ってもらった物だ

付き合いはもう十年。 どんな友達よりも長く付き合ってる

「ああ、面倒くせえ」

この言葉はいつからだ?

少なくともあの目覚ましよりも昔だ

昨日脱ぎ捨てたズボンを履く。

爺ちゃんみたいにシワシワな裾を手で伸ばす

中古屋で買った数千円のブラウン管テレビには薄っすらと淡雪のように埃がおちてる。

後で掃除するかと言い続けた嘘も期限が過ぎて忘れた。

六畳一間の自室は付き合いたての面倒臭い女のように一週間前よりかは変化してるんだろう

だがどうでもいいことだからそれには気づかない

『なんでわからないの?』

曖昧な笑みも口先だけの『ゴメン』も必要無いだけ遥かにマシだ

でも心は何かイラついてる。

アパートの扉を閉めて、錆びつき始めた鍵穴に鍵を通す。

同時に心の扉も施錠する。

今日は晴れてる。

『面倒くせえ』

同じように仕事に向かう。


そんな俺でも彼女ができた。

化粧っ気のない地味な女

でも文句をあまり言わないだけ、俺にはお得だ。

テンプレのような休日のデート

どこかで聞いたような『口説き文句』と羽のように軽い『愛してる』

そして他の女と変わりゃしない穴の感触

それでも家事に炊事に性処理。

それだけで済むのだからしょうがねえ

しこたま飲んで起きた朝、隣の女はすでに起きてる

ナメコと豆腐の味噌汁の香りがする

俺の嫌いなネギは入ってない。

まあ悪くはねえと心で呟き、外には『ありがとう』と気を使う

『よかった』と笑う女。

毎度毎時、緊張気味の俺の顔の筋肉も少し緩む

『まあ、悪くねえ』

本音を内と外に溢して、悪くねえ溜息をついた。

そういえば『面倒くせえ』って最近言ってねえ



広くなった部屋に立つ。

女の荷物はとうに無くなった。

携帯を握りしめる。

慣れて油断して忘れた頃にやってくる錆付き

鍵受け取り『さよなら』と言われたファミレス

去りゆく背中

昔の女に言われた分からず屋と言う言葉

だから女は俺から離れた

二度と取り戻せない一方通行のそれ

同じように携帯のアドレスも消して電子のゴミ箱に投げ捨てる。

他人の部屋みたいにどこにあるかもわからない小物を自室の中で探しつづける

別れてもまた引き合うこの言葉が独りになった俺から溢れた。

『ああ、面倒くせえ』


>>[201] 叙景詩で、大作感があって素晴らしい。
『僕の中の地球』

海がしょっぱいのは

涙で出来てるからかなぁ

風が冷たいのは

寂しい寂しいって言ってるからかなぁ

僕の中には僕専用の地球があるんだ

そこの海は甘いんだ

だって誰も泣かないから

風は優しいんだ

だってみんな優しいから

みんなもおいでよ

僕の中の地球は

誰でも大歓迎さ

ほら

君もおいでよ


【林檎の花の咲く小路】


言葉少なに
あれは林檎の樹です
と教えてくれたのはあなたでした

いまならわかります
言葉であらわせることが
すべてじゃないということを

言葉にできないことの方が
ずっとずっと
たくさんあるんですもの

かつて
無口なあなたが指さしたあの樹にほら
可憐な花が咲きはじめました


http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
私は剣を持ったことがなかった
あの日村が襲われるまでは
最初に剣を向けたのは無謀な相手
私は代償をとられ生かされた
2度目の時は人助け
斬った感触が忘れられず私は助けたんだとしばらく自分に言い聞かせた。

時が経ち
罪悪感も薄れた
苦しみもない
ただ苦しむ人のためだけに振るおうと心に誓い
今日も私は剣を振るう。
泣いて転んでべそかいて
森の中を走り抜ける少女
久々に会った少年は
まるで囚人のようだった

構わず少女は少年を抱き締めた
きっと助けて見せるからと呟いて
でもどこかでは分かっていたんだ
少年は助からないということ

少年は少女を愛し
少女は少年を愛していた
傍目にも分かり易い
幼くて純粋な恋だった

二人で"研究所"に
閉じ込められていた日々
窓から眺める月だけが
慰めだったあの頃

綺麗な石を拾って集めて
今は一人となった少年も少女も
互いの為に御守りにしてる
それは本当の自分への道

「馬鹿じゃないの?」
と発言したのは
成人になる日を控えた女性

でもその女性の言葉でさえ
少年と少女との深い絆は
壊す事が出来ないのであった
僕たちは今から始まる大レース

皆んなは完全犯罪に加担している連中かな

僕たちを愛する連中はめっきり

見かけなくなったけれど

僕たちは滅茶苦茶愛されて

生きてます

連中は疲れ気味

今がチャンスだぜ

明日があるさ明日がある
男は探していたものがあった
酷く顔色が悪かった
探し物が見つからないまま
何時しか大人になった男

子どもの頃の親友の事を忘れ
探し物の事を忘れ
夏の海に頭から飛び込み
一人きりで浮かんでいた

男には秘密があった
自分についている嘘があった
しかし目隠しをして
何でもない振りをしていた

そんな男を愛した女がいた
それは奇跡だった
女を射止めた男は有頂天になった
男の目隠しはますます分厚くなった

そしてあの日の銃声
そしてあの日の銃声

何度も打ち明けようとした
だけど口ごもったまま月日は流れた
銃による傷痕を
男は知らんぷりをして通した

銃弾は意外と深くまで達していた
男はただただ耳を塞いだ
そこには一人の少年がいた
そこには一人の少女もいた

銃弾が撃ち抜いたのは
少年の側だった
その日少年は死ぬことに決めた
空を見上げると、雲がポッカリと浮かんでいる。

 その下部の薄紫色から、上部に掛けて徐々に色が白く抜けていく見事なグラデーションは、僕の目を釘付けにした。

 程なく不意に沸き起こった感情に押し出されて、声にならない嗚咽と涙が溢れた。

 この津波のような感情のうねりは、自分ではコントロール出来ない物だという事を、僕は知っている。

 もはやどんな物でも、きっかけになってしまうらしい。


 例えば、安っぽい感動ドキュメント番組、子殺しや親殺しのニュース、コンビニで弁当を買う老人、薄汚れた捨て猫、家の玄関横に放置したままの三輪車、妻が書いた献立予定メモ、小さかった頃の娘から貰った手紙。

 そして、ポッカリと浮かんだ美しい雲。

 今の僕には、どんな物を見ても、この感情の津波のきっかけになってしまう。


 そんな事をぼんやり考えながら、視線を雲から地面へ下ろしてゆく。もう既に感情の津波は勢いを弱め、僕の心には少しづつ凪が訪れて始めていた。

「さて、作業を再開するか」

   僕は両手にべっとり付いた血を妻の穿いているスカートで拭い、妻の足首を掴み、庭に掘った穴へと勢い良く引きずり込んだ。

二人このまま
どこまでも行こうと
男は女の手を取り
少女は少年の手を取った

だけど
眠れなかったあの夜に
全てが変わってしまった
全てが変わってしまった

<宿命>に連なる者たち
男と女と少年と少女
死んで逝く者と生きていく者

眠れなかったあの夜
光る月を眺めてた
その柔らかな光
そしてきらめく星たち

少年を貫いた銃弾
崩れ落ちたその小さな身体
先に待っている未来が
何よりも辛くて泣き腫らして

少年を撃ち抜いた男は
それを見て
激しい自己嫌悪に陥った

眠れなかったあの夜より
前の世界に
とんでいく事が出来たなら
過去の幸せを取り戻せるなら

だけどそれは無理な話
それは<宿命>が許さない
私の目を潰し一年病院にいれた人を

私の顔を剃刀で八回切った人を

私の顔を机に八回叩きつけた人を

彼女は今も私を潰し悪優と云っている

多重人格の迷惑な彼女


#道

いつからここに居たんだろう?
なぜ僕らは歩き始めたんだろう?
いつの間にかここに存在していた


歩き始めた意味を考える者
歩くことを楽しむ者
辛く険しい道を歩く者
文句を言いながらダラダラと歩く者
…様々だ

その先に何が待っているのか
一人一人行き先が違うから
未来のことは誰にも分からない


思ったより早く道がなくなるかもしれないし
永遠に見える道を歩き続けることもある

時には人の道を破壊する者だっている


ただ僕たちにできるのは
道を歩くこと
道を選ぶこと
新しい道を作ること

スタート地点は皆違う
ゴールは同じ

僕たちは毎日毎日選んだ道を歩く
ただただ歩く

ただただ歩く

飽和した悪魔と死神
男はたちまち
我が子に背を向けて走り出した
女との思い出が
心の中で噴き出したのだ

子どもは果たして
神から授かった子どもか
<宿命>から授かった子どもか

振り返るとそこには
男のかつての親友がいた
親友は子どもたちを引き取り
男を睨んで去った

優しくて陽気な親友は
もうどこにもいなかった
男にはそれがツラかった 
太陽を見上げて眩んだ 

親友もまた女を愛していたと
男が知るのは
もう少し後の話となる
子どもたちが10歳になった時となる

我が子を捨てた男は
田舎に小さな庵を作って
生きるために生きていた
いつしか涙が零れていた
木の葉のうた


湖があった
湖にうかぶ木の葉をひろった
みなしご木の葉
少女だった
木の葉と 空をみつめ
哀しいものを食べて暮らした
木の葉はよく笑った
まふゆの空はさびしい
クリィム色
冬はいつおわるのだろう
ぼくは木の葉をポケットに入れた
ふたりでみつめた湖の蒼さ
遠い 遠い 昔のはなし。


指田悠志
Aさん:宇宙人と宇宙を愛したいひとに



一人旅のつもりだった
かれは宇宙空間を旅している宇宙人だった
この 宇宙から来たひとは
地球のことばを話せなかった
かれの声は地球人には聞こえない
喉の構造が違っていたのだ

地球のとある草原に降り立ったかれは
さまざまな文明をそこにみた
中でも至るところにある
コンビニエンス・ストアに注目
その内のひとつの店に目星をつけ
地球人と 親交を深めようと思って
宇宙共通の言葉をかけ
ほほえんだつもりだったが
(いつもならどの星でもこの態度を示せば歓迎された)
背丈は2mを優に超していたし
見かけも凄かったし
ことばは通じないし 異臭がして 気味悪がられて
驚いた店員に110番通報されてしまった

地球は宇宙でも僻地の
田舎星だったからということもあった

宇宙人としては 悪気はなかったのだが
何にせよ
かれの〈地球のことば〉は
聞こえないし わからない
それゆえ やってきた警官が
職務質問したところで
要領を得ず 結局誤解され
不審者として留置場につながれてしまった

その頃宇宙船が降り立った草原に
ひとがやってきて
かれの食糧は持ち去られ
機体はバラバラに解体されてしまっていた

もうふるさとには帰れないことを
かれはまだ知らない

とりあえず名前がわからないので
仮の名前をつけられた
かれの名は

「Aさん」

この時点では
かれはどこかの国のひとのように思われていた
見かけはおそらくコスプレだろうと
判断されたのだった

Aさんはその何とも形容しがたい
ルックスだったために
留置場で虐待されたらしい
何のかぶりものをしているのだと
卑しい男たちにみだりにからだを触られもした

地球は友愛にみちた
蒼くうつくしい星だと 聞かされていた
蒼くうつくしい星
Aさんの失望の深さは いかほどだったろう
月日が経ち
まったく縁もゆかりもない
かれのあずかり知らぬところで決定が下された
かれの身柄は入国管理局に送られ
かれは拘置されたまま
結局 自由になれなかった

入国管理局とは罪人ではない
入国者を拘束するための
牢獄のようなところと言えば大体の察しはつく
Aさんは何故自分がこんなところに
入れられているのか
わけがわからなくなっていた

また 地球には星の食べものは一つもない
(船内に自家生産できる食糧があったのだが
 先述の通り 地球人に持ち去られてしまっていた)
それだけではなく
星にはないウイルスに感染したり
気候風土になじめず
経験したことのない身体の変調を
きたしたりして
いろんなことがみな裏目に出
Aさんはしだいに衰弱していった

独りぐったりしているかれを見
驚いた局員によって
救急搬送された
CTやMRIを通してみて初めて
かれが地球上の生きものではないことが
明らかになった

地球人類には
かれの肉体に治療を行うほどの科学力はない
だがこのとき医師たちの
眼の色が変わったに違いない
こんな珍しい実験材料は他にないからだ

結果的には 治療は行われなかった
それどころか
科学者の研究のためのサンプルとなり
Aさんのからだは
生体実験の対象として扱われることになった

「宇宙人に人権はない」
極秘事項として秘密裏に発せられた
防衛大臣によるこの一言が
言わば錦の御旗のようにまかり通って
どんな横車をも可能にさせたのだった

Aさんは禁じられている薬物を
興味本位に投与されたり
激しい電気ショックを与えられたり
ほとんど拷問のような実験に
明け暮れたりした末
からだはぼろぼろになり
精神はずたずたにされ
やがて全身を痙攣させながら死んでしまった

その後かれはなきがらを解剖され
そして縫い合わされ
いまは研究室の巨大なガラス容器のなかにいる
容器には 名前もなく
ただ�爍銑瓩箸世院.泪献奪�で記されている

名もなき宇宙人の ふるさと
「φ(宇宙共通語で「地球」と言う意味)」では
行方知れずのかれのために
いまも捜索活動が続いている
名もなき宇宙人にも親も友だちもいて
毎日 かれの身を案じては
星空を見上げている。


指田悠志
あと十日、十日後が期限だ
少年は指折り数えた
妹との別れが近づいていた
彼の命も同時に尽きるのだ
「もしもし かめよ かめさんよ」


もしもし かめよ かめさんよ
どうして そんなに のろいのか

のんびり のろまな かめでいい
これでも うさぎに 勝ったじゃないか

のんびり のろまな かめでいい
あんまりいそいで ごっつんこしちゃうじゃないか

のんびり のろまな かめでいい
かめば かめほど あじがでる
って いうじゃないか

のんびり のろまな かめがいい
千年 万年 生きるんだもの
のんびり のろまな かめがいい
赤過ぎる口紅と
赤過ぎるマニキュアは
吐き気がする程
嫌いだった

己の魂に
値札を貼る様な
紅く艶やかな雌の記号が
たまらなく
気持ち悪かった

今日
小指に乗せた色は
少女趣味なパールピンク

面倒な己自身へ
半歩だけ歩み寄って

ひとつ
彩りの増えた世界へ
そっと足を踏み入れる、
男は驚いて逃げ出した
我が子を置き去りにして
妻の死の真相を知り
彼は罪悪感に苛まれたのだ
『特典つき入浴剤』

ここは夢の中

見覚えのある場所…
ボクは
実家にいた

夜なのだろうか
窓の外は暗かった
どうやら
ボクは風呂に入ろうと
浴室を覗いている

浴槽の湯量は
3分の1程度で
蛇口から
チョロチョロと
お湯が流れていた

なぜか
浴槽のお湯が
少し白く濁っていて
不思議に感じた

「もう少し
 待たないと
 風呂に入れないか…」

そこへ
母がやって来た
「気をつけてね
 よく見ないで
 買っちゃったんだけど
 この入浴剤を使うと
 必ず
 手を振る幽霊が
 見えるんですって」

疑問が
一気に押し寄せてきて
ボクの頭は混乱した

「えっ?」

「必ず?」

「なんで?」

入浴剤で幽霊が見える?

しかも手を振っている?

母は何を言っているんだ?

浴槽のお湯が
白く濁っていたのは
この入浴剤だったのか…

「私、
 さっき見ちゃったのよ」

「ええっ?
 見ちゃったって?
 なんで
 そんなものを
 買ってきちゃったの?」

ボクの頭は
さらに混乱した

怖い気持ちはひとまず置いて
そのような入浴剤を
買ってきたことに
疑問を感じた

「だって
 よく見えなかったんだもの」

歳をとると
小さい字が読めなくなる…
しょうがないことだ…

違う、違う
そうじゃない
なんで
幽霊がついてくる入浴剤が
売っているんだ?

幽霊は苦手だ
見たことはないけれど
考えただけで
トイレに行けなくなる

慌てて辺りを見回した
「ボクにも見えるのか?
 どこにいる?
 見えないで欲しい…」

浴室の窓…

脱衣所…

廊下…

天井…

「いない…」

少し安心した

幽霊なんて
今まで見たことがないので
やはりボクには
見えないようだ

安心して
ほっとした次の瞬間

「ん?」

浴室の壁だったところに
なぜか大きな窓があった

そして
その大きな窓の向こうで
手を上げている女性が
立っていた

ボクが気づいたことを知ると
その女性は
笑顔で元気に手を振り出した

「私はここにいますよ」
と言っているかのように

しかも
その女性の横には
男性がいて
苦笑いしながら
片手で頭をかきながら
頭をペコペコと下げていた

「どうもすいません
 私も来ちゃいました」
と言っているかのようだった

ボクは
初めて幽霊を見ていた
しかも2人…

立ち尽くすしかなかった

動けない…

だけど
なぜだろう?

怖くない…?

女性の幽霊…
白い着物を着ていて
髪は胸あたりまで長く
笑顔が魅力的…
明るく元気に
大きく手を振っている

なぜだろう?
それを見ていると
ボクも手を振り返したくなる

冷静になって
考えてみよう

ボクは
風呂に入りたい

でも
幽霊がいるのに
風呂になんて入れない

裸を見られるのが
恥ずかしいか?

いや、相手は幽霊だ

女性の前で裸になると
軽犯罪で捕まるか?

いや、相手は幽霊なのだ

怖いのか?

いや、まったく怖くない
幽霊なのに
まったく怖くないのだ

気を許すと
幽霊に
手を振り返して
しまいそうになる

じゃあ
風呂に入れるか?

なんか嫌だ

何が問題なのかが
わからない

今も
目の前にある
大きな窓の向こうで
女性の幽霊が
笑顔で元気に手を振っている

その女性の横には
男性がいて
苦笑いしながら
片手で頭をかきながら
頭をペコペコと下げている

この状況で
風呂になんて
入れない

ところで
あの男性はなんだ?

床に落ちていた入浴剤の袋を
拾い上げて
説明書きを読んだ

「こちらは
 特典つき入浴剤です
 この入浴剤を使用すると
 必ず女性の幽霊が現れます
 幸運な方には
 男性の幽霊も現れます
 幽霊との入浴を
 お楽しみください」

楽しめるか!

男性はオマケか!


そこで
目が覚めた

いい睡眠ではなかった

何かがすっきりしない

ひどく疲れている


ボクは
幽霊を見ることはないだろう
今までも
これからも

夢の中だから
見えただけ

もう見ることはない

この特典つき入浴剤さえなければ…


そう
この特典つき入浴剤さえなければ…


なぜだろう…

ボクの手は
入浴剤を握っている…


あなたは欲しいですか?
目を覚ました姫は 震える指先で
頬を伝う涙を なぞりながら問う
「どうしてここまで来たの」と
囁く声は かすれていた騎士はただ一言「君が呼んだから」と
幼い日の夢のように 微笑んでみせる
けれどその瞳の奥で
かすかな翳りが 揺れていた静かに差し込む 月明かりの下
二人の影が ひとつに重なる「この城を出よう」と 姫は言うけれど
騎士はそっと首を振り
「もう戻れない」と 呟いた茨の根は とうに心へと伸び
救いの祈りさえも 絡め取っていた「あなたが望んだ“終わり”なら
 この腕の中で迎えてほしい」そう言って抱きしめた温もりは
たしかに人のものだったのに
耳元で囁く声だけが
どこか遠く 冷たく響いた姫の胸の奥で 小さな鐘が鳴る
喜びか 不安か わからないまま
ただその音に身を委ねて
瞼を閉じる窓の外では 朝焼けが
ほんの少しだけ 世界を染めてゆく「ねえ、約束して」
姫は最後の勇気を振り絞る
「たとえこの夢が すべて嘘でも
 あなたの手だけは 離さないで」騎士は答えずに
指を絡めたまま そっと唇を寄せる茨の城は 静かに軋み
長い長い夜の終わりを 告げようとしていたけれど その足元で
十三番目の棘が まだ
誰にも気づかれぬまま
わずかに 光を帯びていた
——罪の果実が朽ち果てた時
世界を覆っていた罰の鎖は、静かにほどけていきました。
地の底で眠り続けていた堕天使の胸に、微かな鼓動が灯ります。
同じ頃、黒に染まった花嫁の指先にも、あたたかな光が触れました。目を開けると、そこはもう地の底ではありませんでした。
夕暮れと夜明けのあいだのような、やわらかな空の下。
片方だけの白い羽を持つ青年と、黒いドレスを脱ぎ捨てた少女が、
広い野原の真ん中で、お互いの姿を見つけます。「やっと、来られたね」
震える声でそう言ったのは、かつての花嫁でした。
彼女の瞳には、もう罪の影ではなく、涙に混じった光が揺れています。堕天使は、残された一枚の羽をそっと差し出しました。
「これは、君を守るために残した最後の罪で、最後の願いだよ」
羽は、白と黒が混ざり合うように色を変え、
ふたりの頭上で、やがて一つの輪になって光りました。天使でも、人でも、悪魔でもない。
ただ「君」と「僕」として生きていくための、小さな祝福の輪。誰からも許されなかった恋は、
誰かに許してもらう必要のない、ふたりだけの約束に変わっていきます。「もう、どこにも堕ちなくていいよ」
「うん、これからは一緒に、少しずつ登っていこう」地の底で絡み合っていた誓いの楔は、
今度は指先と指先をそっと結ぶ、細いリボンのようにやわらかくなりました。罪の果実が朽ち果てたあとに残ったのは、
罰ではなく、ふたりで分け合う小さな幸せの種。いつかまた、世界がふたりを試す日が来ても、
今度は堕ちるためではなく、守るために手を取り合っていくのでした。——それは、堕天使と黒い花嫁が
やっと「ひとりの人」として笑い合えるようになった、
静かでささやかなハッピーエンドの物語。
朝がくるたびに 同じ場所でうずくまって
動けないまま 息だけしてた days
抱えこんだ棘が 行き場をなくして
心の内側で 何度も叫んでた
でも あの夜 小さな声で
「ひとりじゃないよ」と歌ってくれた
かすれた lullaby が 胸に残ってる
まだ 終わりじゃないと 教えてくれた
小さな一歩を 踏み出すたびに
転んで 泣いて また戻りそうになるけど
それでも 一歩は 一歩だから
昨日より少しだけ 遠くまで来た
Good morning, my little heart
まだ傷だらけでも かまわない
隠していた弱さを抱きしめたとき
本当の強さが そっと芽を出す
誰かを傷つけて 守っていたプライドを
少しずつほどいて 手放していく
「ごめんね」と「ありがとう」を
ぎこちなく繰り返しながら
I’m still afraid, but I’ll try again
涙の跡が 道しるべになる
過去の自分を 置き去りにしないで
いっしょに連れていく 新しい明日へ
深く息を吸って 空を見上げたら
重くて暗いだけだと思っていた空に
かすかな light が にじんで見えた
それだけで 今日は進める気がした
So I will walk, step by step
もう「完璧じゃない」と責めないで
つまずきながら進む姿の中に
静かな誇りが 確かに息をしてる
Good night, my little heart
また迷っても ここへ戻ればいい
泣き疲れたあとに訪れる silence が
明日へ向かう 力に変わるから
I’ll live my life, as I am
悲しみを抱えたままでも 構わない
何度倒れても そのたび立ち上がる
それを「強さ」と呼んでいい日まで

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