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アルベール・カミュが好き。コミュの 連載小説第8回(短いです)

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まるで、エジプト王家の谷発掘のような様相を呈してきた。
 缶詰の発見は、まず倉庫の捜索から入ることが普通だ。奇跡的に盗掘から逃れた品が放置されている可能性もある。なぜかといえば、疫病のお蔭だ。ばたばたと倒れる人間が多い場所には誰も近寄らない。
 このモールの外、木にぶら下がった死体が殆ど全ての木に見られたことから推し量ると、このスーパーは、徹底的に荒される前に、近くから人間が逃走した可能性もあった。
 死人が、生きている人間の数倍になり、人の数が減ってからは、人間がいくら集団でまとまり行動しても、食料を全て持ち運びながら移動することは出来ず、また、持ち運んでいるのが判ると、他の集団から攻撃されることもあるので、一番は、他人に見つかりにくい秘密の場所に確保するのが、正しい方法であることは間違いなかった。
 ただし、秘密の場所はそれを知っている人間が存在して意味があるのだが、秘密の場所を明かさずこの世から消えてしまうと、話がややこしい。まるでエジプトの遺跡になってしまう。
  僕でも、盗掘を免れた奇跡の食料を発見することは、何度も体験している。
 とりあえず地下に降りてみる。
 地下駐車場の搬入口を確認する。
 そこから、食料品のルートをさぐり、その中間地点にあるだろう食料倉庫を一応チェックする。
 電気の通わない冷凍庫は、ただ異臭がするだけで、お腹を満たすような食料はないので、チェックしない。
 ただ、ごく普通の論理的思考で、食料を探すと失敗することがある。人間、パニックになると、何を考えて行動するのか説明がつかないことが多い。 
 とんでもない所に食料品を隠すことがあるのだ。
 野生のリスと同様、隠した所すら、忘れてしまうような場所にである。
 守衛室を見つけ、マスターキーを発見した時には、驚いた。マスターキーなど、絶対にないのが当たり前で、残っていることが奇跡に近い。
 人類の死滅は目の前なのかもしれない。
 自分が死滅の最後の一人になるというような考え方は不可能だったが、しかし、最後の一〇〇人になるかもしれないと言うのであれば、そうなのかもしれなかった。
 あたりには、人間が生きていた証が消え去っていた。
 

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