Youtubeやニコニコ動画にアップされている帝国陸軍の動画を紹介します。
写真などと併せて日本陸軍の全容に触れられればと考えています。そのため、歴史・組織・教育・訓練、そしてそれらの時代背景をメインにしたいと思います。
兵器全般については姉妹コミュのこちらをどうぞ↓
「大日本帝国陸海軍資料館」
http://
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日本陸軍という名称は存在せず、大日本帝国陸軍、帝国陸軍が正式な名称です。
このトピックでは「帝国陸軍」の名称と使用します。
帝国陸軍の起源は、明治維新後の1871年（明治4年）に薩摩・長州・土佐から徴集され組織された天皇直属の御親兵です。明治政府は、この兵力を背景にして廃藩置県を断行。御親兵はその後、近衛と改称されました。
その時点では士族が将兵の中心でしたが、将来は徴兵制による軍備を目標としていた。この創成期の帝国陸軍では大村益次郎が兵部省兵部大輔として主に兵制の基礎を構築し、士族による軍制から徴兵制度による国民兵制への移行を目指していました。この近代的な兵制改革を提唱したことから、大村は帝国陸軍建設の中心人物と評されるようになります。
この後、1872年（明治5年）2月の兵部省改組により、陸軍省が正式に発足しましたが、大村が暗殺されるとその後を山県有朋が承継し、1874年（明治7年）1月に徴兵令を発布、同年4月に東京鎮台に初の徴兵による兵卒が入営しました。
※（左）1872年（明治5年）頃の近衛兵
※（中）日本陸軍の父・大村益次郎
※（右）兵部少輔時代の山県有朋
このトピックでは「帝国陸軍」の名称と使用します。
帝国陸軍の起源は、明治維新後の1871年（明治4年）に薩摩・長州・土佐から徴集され組織された天皇直属の御親兵です。明治政府は、この兵力を背景にして廃藩置県を断行。御親兵はその後、近衛と改称されました。
その時点では士族が将兵の中心でしたが、将来は徴兵制による軍備を目標としていた。この創成期の帝国陸軍では大村益次郎が兵部省兵部大輔として主に兵制の基礎を構築し、士族による軍制から徴兵制度による国民兵制への移行を目指していました。この近代的な兵制改革を提唱したことから、大村は帝国陸軍建設の中心人物と評されるようになります。
この後、1872年（明治5年）2月の兵部省改組により、陸軍省が正式に発足しましたが、大村が暗殺されるとその後を山県有朋が承継し、1874年（明治7年）1月に徴兵令を発布、同年4月に東京鎮台に初の徴兵による兵卒が入営しました。
※（左）1872年（明治5年）頃の近衛兵
※（中）日本陸軍の父・大村益次郎
※（右）兵部少輔時代の山県有朋
1871年、兵部省は東京・大阪の2個鎮台を置き、遅れて鎮西鎮台、東北鎮台を設置しました。陸軍省と改まった後の1873年（明治6年）には全国を6個の軍管（東京・仙台・名古屋・大阪・広島・熊本）に分けて、それぞれに1個ずつの鎮台を置きます。
陸軍は当初、専ら国内の治安維持や叛乱勢力の鎮圧などを担いました。明治政府に不満な士族（旧武士階級）の反政府運動が続いたからです。
明治政府は武士階級を廃止して士族を創設しますが、秩禄処分により俸禄（家禄）制度は撤廃され、廃刀令の施行など身分的特権も廃された士族には不満が溜りました。また明治政府内で紛糾が起こり、明治六年政変で西郷隆盛、江藤新平、板垣退助らが下野すると士族層に影響を与え、反政府運動は内乱へと向かいます。
1877年（明治10年）には旧薩摩藩の士族が中心になり西郷隆盛を大将に擁立して、日本国内では最大規模の内戦となる西南戦争が勃発しますが、そこに至る流れを動画で見たいと思います。キーワードは「不平士族」「秩禄処分」「西南戦争」です。
陸軍は当初、専ら国内の治安維持や叛乱勢力の鎮圧などを担いました。明治政府に不満な士族（旧武士階級）の反政府運動が続いたからです。
明治政府は武士階級を廃止して士族を創設しますが、秩禄処分により俸禄（家禄）制度は撤廃され、廃刀令の施行など身分的特権も廃された士族には不満が溜りました。また明治政府内で紛糾が起こり、明治六年政変で西郷隆盛、江藤新平、板垣退助らが下野すると士族層に影響を与え、反政府運動は内乱へと向かいます。
1877年（明治10年）には旧薩摩藩の士族が中心になり西郷隆盛を大将に擁立して、日本国内では最大規模の内戦となる西南戦争が勃発しますが、そこに至る流れを動画で見たいと思います。キーワードは「不平士族」「秩禄処分」「西南戦争」です。
西南戦争は日本最後の内戦となり、士族（武士）という軍事専門職の存在を消滅させて終焉しました。士族を中心にした西郷軍に、徴兵を主体とした政府軍が勝利したことで、士族出身の兵士も農民出身の兵士も戦闘力に違いはないことが実証され、徴兵制による国民皆兵体制が定着します。
一方で、兵力と火力に勝っていながら、鎮台兵は戦術的戦闘ではしばしば西郷軍の士族兵に敗北し、両軍の死傷者数は結果的に大差ありませんでした。それでも勝利をおさめたのは、留学などで近代軍事学を習得した将校により、軍の運用、戦術、戦略が西郷軍よりも優れていたこと、圧倒的な海軍力で兵士や物資の補給を優位に進められたことなどが挙げられます。
次にアップする動画は全11話の大作で、軍事的にも西南戦争の詳細を知ることが出来そうです。
帝国陸軍の歴史の中で、西南戦争は重要な意味を持っていると考えていますので、長いですが紹介します。
一方で、兵力と火力に勝っていながら、鎮台兵は戦術的戦闘ではしばしば西郷軍の士族兵に敗北し、両軍の死傷者数は結果的に大差ありませんでした。それでも勝利をおさめたのは、留学などで近代軍事学を習得した将校により、軍の運用、戦術、戦略が西郷軍よりも優れていたこと、圧倒的な海軍力で兵士や物資の補給を優位に進められたことなどが挙げられます。
次にアップする動画は全11話の大作で、軍事的にも西南戦争の詳細を知ることが出来そうです。
帝国陸軍の歴史の中で、西南戦争は重要な意味を持っていると考えていますので、長いですが紹介します。
西南戦争による官軍死者は6,403人、西郷軍死者は6,765人に達しました。大きな犠牲を払いながらも、7ヶ月間に及ぶ激戦は官軍の勝利に終わりました。勝因としては最高統帥部の政略・戦略の妙、陸海軍の協調、兵站整備の諸条件の適切な運用にあったとされます。
西南戦争は、誕生間もない日本陸軍にまたとない戦訓を与え、問題点もあらわにしました。すなわち戦闘訓練の未熟、将兵の精神教育の不徹底、指揮官の指揮能力の不十分、徴兵組織の不備、動員体制の欠陥などです。
特に兵士の戦意、士気の問題から、徴兵兵士に対する精神教育を重視する傾向が強まりました。西郷軍の士気が高かったのは西郷隆盛が総大将であったからだと考えた明治政府は、天皇を大日本帝国陸軍・海軍の大元帥に就かせて軍の士気高揚を図ろうとします。
その矢先に起きたのが竹橋事件でした。
竹橋事件（たけばしじけん）は、1878年（明治11年）8月23日に、竹橋付近（現・東京都千代田区北の丸公園）に駐屯していた帝国陸軍の近衛兵部隊が起こした武装反乱事件で、竹橋騒動、竹橋の暴動とも呼ばれます。
動機は、西南戦争における財政の削減、行賞についての不平でした。かねてより、士官に比べ兵士（当時の名称だと「兵卒」）の恩賞が極めて少ない事に不満を抱いていた一部の兵士が、増給の強請を企てたのが発端で将校下士官も巻き込み、259名の近衛兵が山砲2門を引出して蜂起するという大事件となります。
この事件の影響は大きく、日本軍の思想統一を図る軍人勅諭発案や、軍内部の秩序を維持する憲兵創設のきっかけとなりました。また近衛兵以外の皇居警備組織として門部（後の皇宮警察）を設置するきっかけとなりました。
近年では、事件の背景に自由民権思想の影響があったとも言われます。
※（左）事件の発端となった近衛砲兵大隊の将校ら
※（右）旧近衛鎮台砲兵之墓 東京・青山墓地（2種（イ)11号29側）
西南戦争は、誕生間もない日本陸軍にまたとない戦訓を与え、問題点もあらわにしました。すなわち戦闘訓練の未熟、将兵の精神教育の不徹底、指揮官の指揮能力の不十分、徴兵組織の不備、動員体制の欠陥などです。
特に兵士の戦意、士気の問題から、徴兵兵士に対する精神教育を重視する傾向が強まりました。西郷軍の士気が高かったのは西郷隆盛が総大将であったからだと考えた明治政府は、天皇を大日本帝国陸軍・海軍の大元帥に就かせて軍の士気高揚を図ろうとします。
その矢先に起きたのが竹橋事件でした。
竹橋事件（たけばしじけん）は、1878年（明治11年）8月23日に、竹橋付近（現・東京都千代田区北の丸公園）に駐屯していた帝国陸軍の近衛兵部隊が起こした武装反乱事件で、竹橋騒動、竹橋の暴動とも呼ばれます。
動機は、西南戦争における財政の削減、行賞についての不平でした。かねてより、士官に比べ兵士（当時の名称だと「兵卒」）の恩賞が極めて少ない事に不満を抱いていた一部の兵士が、増給の強請を企てたのが発端で将校下士官も巻き込み、259名の近衛兵が山砲2門を引出して蜂起するという大事件となります。
この事件の影響は大きく、日本軍の思想統一を図る軍人勅諭発案や、軍内部の秩序を維持する憲兵創設のきっかけとなりました。また近衛兵以外の皇居警備組織として門部（後の皇宮警察）を設置するきっかけとなりました。
近年では、事件の背景に自由民権思想の影響があったとも言われます。
※（左）事件の発端となった近衛砲兵大隊の将校ら
※（右）旧近衛鎮台砲兵之墓 東京・青山墓地（2種（イ)11号29側）
前回、「自由民権思想の影響」と記述しました。自由民権思想とは「人間は本来自由であり、平等に政治に参加する権利を持っているとする政治思想」で、明治初期の日本では、憲法制定や国会開設のための政治運動ならびに社会運動である自由民権運動の理論的支柱となりました。
竹橋事件が起きた頃は自由民権運動が日本中で盛んになる時期でした。上からの命令に黙々と従うのではなく、自らの権利を守るための行動を起こすべきだという意見が力を持ったのでしょう。また「演説」や「議論」といった言葉が流行となり、パフォーマンスが過激さを増して行動が暴力的になるケースも少なくなかったと思われます。
こうした風潮は政府や指導者層を批判することにつながりますから、当然、国家権力からの弾圧は激しくなっていきます。そして陸軍は国家権力を守る強力な組織の一つとして整備が進められていきます。
自由民権運動について解説する動画は多いですが、出来るだけ簡潔で短い動画を紹介したいと思います。帝国陸軍の性格と特徴を知る参考になると思います。
※（左）演説会の光景
※（右）現東京都中央区銀座にあった明治会堂での演説の様子
竹橋事件が起きた頃は自由民権運動が日本中で盛んになる時期でした。上からの命令に黙々と従うのではなく、自らの権利を守るための行動を起こすべきだという意見が力を持ったのでしょう。また「演説」や「議論」といった言葉が流行となり、パフォーマンスが過激さを増して行動が暴力的になるケースも少なくなかったと思われます。
こうした風潮は政府や指導者層を批判することにつながりますから、当然、国家権力からの弾圧は激しくなっていきます。そして陸軍は国家権力を守る強力な組織の一つとして整備が進められていきます。
自由民権運動について解説する動画は多いですが、出来るだけ簡潔で短い動画を紹介したいと思います。帝国陸軍の性格と特徴を知る参考になると思います。
※（左）演説会の光景
※（右）現東京都中央区銀座にあった明治会堂での演説の様子
明治初期の帝国陸軍では規律上の問題案件や、自由民権運動の高まりとともに政治に関与する軍人の諸事件等が起きていました。そのため、軍人の規律を守らせる対策が、政府の喫緊の課題でした。
竹橋事件の後、陸軍卿山県有朋は「軍人訓戒」を配布し、軍人道徳の確立を図ります。しかしその内容は、旧来の封建武士道における君主と武士の関係を天皇と軍人に置き換えただけであり、効果的ではありませんでした。
1879年（明治12年）に東京招魂社を「靖国神社」に改称の上、別格官幣社とします。管轄は、内務省が人事を所管し、帝国陸軍（陸軍省）と同海軍（海軍省）が祭事を統括しました。天皇を頂点とした国家体制のために殉じた軍人、軍属等の戦没者を「英霊」として祀る靖国神社の整備により、戦死後の名誉のあり方が確立され、士気を向上させることとなります。
神社名の「靖国」は、「春秋左氏伝」第6巻僖公23年秋条の「吾以靖國也（吾以つて国を靖んずるなり）」を典拠として明治天皇が命名したもの。また「社号改称・社格制定ノ祭文」には、「赤き直き真心を以て家を忘れ身を擲（なげう）ちて各（おの）も各も死亡（みまかり）にし其（その）高き勲功に依りて大皇国をば安国と知食（しろしめ）すが故に靖国神社と改称（あらためとなえ）」とあります。
※（左）靖国神社本殿（明治初期）
※（右）別格官幣 靖國神社全図（明治39年）
竹橋事件の後、陸軍卿山県有朋は「軍人訓戒」を配布し、軍人道徳の確立を図ります。しかしその内容は、旧来の封建武士道における君主と武士の関係を天皇と軍人に置き換えただけであり、効果的ではありませんでした。
1879年（明治12年）に東京招魂社を「靖国神社」に改称の上、別格官幣社とします。管轄は、内務省が人事を所管し、帝国陸軍（陸軍省）と同海軍（海軍省）が祭事を統括しました。天皇を頂点とした国家体制のために殉じた軍人、軍属等の戦没者を「英霊」として祀る靖国神社の整備により、戦死後の名誉のあり方が確立され、士気を向上させることとなります。
神社名の「靖国」は、「春秋左氏伝」第6巻僖公23年秋条の「吾以靖國也（吾以つて国を靖んずるなり）」を典拠として明治天皇が命名したもの。また「社号改称・社格制定ノ祭文」には、「赤き直き真心を以て家を忘れ身を擲（なげう）ちて各（おの）も各も死亡（みまかり）にし其（その）高き勲功に依りて大皇国をば安国と知食（しろしめ）すが故に靖国神社と改称（あらためとなえ）」とあります。
※（左）靖国神社本殿（明治初期）
※（右）別格官幣 靖國神社全図（明治39年）
1881年（明治14年）1月に憲兵が陸軍兵科の一つとして設けられ、東京憲兵本部が設置。12月には陸軍刑法が定められました。前述した靖国神社とともに、陸軍軍人の処遇・賞罰をめぐる諸制度の整備が進められます。
1882年（明治15年）1月4日、明治天皇は陸海軍軍人に「軍人勅諭」を下賜しました。軍人勅諭の正式名称は「陸海軍軍人に賜はりたる敕諭」といいます。
山縣有朋の指示で西周らが起草したものであり、忠節・礼儀・武勇・信義・質素の5つを軍人が守るべき徳目とし、軍人は政治に関与しないように明示していました。漢文が一般的だった当時の勅語としては珍しく、平仮名交じりの平易な和文調になっています。
帝国陸軍では将兵は全文暗誦できることが当然とされました。一方、帝国海軍では「御勅諭の精神を覚えておけばよい。御勅諭全文より諸例則（関連法規や訓令）等を覚えよ」とされることが多く、全文暗誦を求められることは多くなかったと言われます。
戦記作家の伊藤桂一は、軍人勅諭について次のように述べています。
「・・『軍人勅諭』は荘重なリズムをもつ文体で、内部に純粋な国家意識が流れているし、軍隊を離れて、一種の叙事詩的な文学性をさえ感じるのである。興隆してゆく民族や軍隊の反映が『軍人勅諭』にはある」 伊藤桂一「兵隊たちの陸軍史」新潮文庫（2008）
※軍人勅諭謹解（1934年発行）
1882年（明治15年）1月4日、明治天皇は陸海軍軍人に「軍人勅諭」を下賜しました。軍人勅諭の正式名称は「陸海軍軍人に賜はりたる敕諭」といいます。
山縣有朋の指示で西周らが起草したものであり、忠節・礼儀・武勇・信義・質素の5つを軍人が守るべき徳目とし、軍人は政治に関与しないように明示していました。漢文が一般的だった当時の勅語としては珍しく、平仮名交じりの平易な和文調になっています。
帝国陸軍では将兵は全文暗誦できることが当然とされました。一方、帝国海軍では「御勅諭の精神を覚えておけばよい。御勅諭全文より諸例則（関連法規や訓令）等を覚えよ」とされることが多く、全文暗誦を求められることは多くなかったと言われます。
戦記作家の伊藤桂一は、軍人勅諭について次のように述べています。
「・・『軍人勅諭』は荘重なリズムをもつ文体で、内部に純粋な国家意識が流れているし、軍隊を離れて、一種の叙事詩的な文学性をさえ感じるのである。興隆してゆく民族や軍隊の反映が『軍人勅諭』にはある」 伊藤桂一「兵隊たちの陸軍史」新潮文庫（2008）
※軍人勅諭謹解（1934年発行）
陸軍軍人の処遇・賞罰をめぐる諸制度の整備とともに、各種軍学校の充実発展にも意欲が注がれます。
1877年（明治10年）に陸軍士官学校が陸軍幼年学校と合併。1887年（明治20年）6月、陸軍士官学校官制と陸軍幼年学校官制が再制定のうえで士官候補制度が設けられ、第1期生は翌年1888年（明治21年）11月に陸軍士官学校に入学しました。また、陸軍幼年学校は1897年（明治30年）に再設置されます。
これらの学校以外にも、1886年（明治19年）から1889年（明治22年）にかけて、陸軍砲兵射的学校、陸軍軍医学校、陸軍獣医学校、陸軍経理学校、陸軍乗馬学校、陸軍砲工学校等が整備されました。
この時期に新設された軍学校の一つが「陸軍大学校」です。
西南戦争という実戦を経て、参謀将校の養成機関を日本国内に設ける必要性が認識されたのです。陸軍大学校が設置されたのは1882年（明治15年）11月のことで、翌1883年（明治16年）4月に、参謀本部構内の旧本部跡を仮の校舎として開校しました。
1869年（明治2年）9月に、明治天皇が臨席した集議院での会議で「兵式は陸軍は仏式、海軍は英式を可とすること」とされて以来、帝国陸軍はフランス式の兵制を採用してきました。創設当初の陸大もフランス式で、その教育内容は、数学・化学・物理といった自然科学の比重が大きく、参謀教育に必須の戦術・戦略・戦史については質量ともに手薄で、参謀養成機関というより「陸軍士官学校高等科」と言えるものでした。
こうした中、1870年（明治3年）から3年間プロイセン王国に留学した桂太郎を中心に、普仏戦争（1870年 - 71年）の経過に鑑み、ドイツ式（プロイセン式）の兵制を採用すべし、という主張が現れます。明治十四年の政変で政界の中心となった伊藤博文も強固なドイツ派でした。
※（左）桂太郎
※（右）伊藤博文
1877年（明治10年）に陸軍士官学校が陸軍幼年学校と合併。1887年（明治20年）6月、陸軍士官学校官制と陸軍幼年学校官制が再制定のうえで士官候補制度が設けられ、第1期生は翌年1888年（明治21年）11月に陸軍士官学校に入学しました。また、陸軍幼年学校は1897年（明治30年）に再設置されます。
これらの学校以外にも、1886年（明治19年）から1889年（明治22年）にかけて、陸軍砲兵射的学校、陸軍軍医学校、陸軍獣医学校、陸軍経理学校、陸軍乗馬学校、陸軍砲工学校等が整備されました。
この時期に新設された軍学校の一つが「陸軍大学校」です。
西南戦争という実戦を経て、参謀将校の養成機関を日本国内に設ける必要性が認識されたのです。陸軍大学校が設置されたのは1882年（明治15年）11月のことで、翌1883年（明治16年）4月に、参謀本部構内の旧本部跡を仮の校舎として開校しました。
1869年（明治2年）9月に、明治天皇が臨席した集議院での会議で「兵式は陸軍は仏式、海軍は英式を可とすること」とされて以来、帝国陸軍はフランス式の兵制を採用してきました。創設当初の陸大もフランス式で、その教育内容は、数学・化学・物理といった自然科学の比重が大きく、参謀教育に必須の戦術・戦略・戦史については質量ともに手薄で、参謀養成機関というより「陸軍士官学校高等科」と言えるものでした。
こうした中、1870年（明治3年）から3年間プロイセン王国に留学した桂太郎を中心に、普仏戦争（1870年 - 71年）の経過に鑑み、ドイツ式（プロイセン式）の兵制を採用すべし、という主張が現れます。明治十四年の政変で政界の中心となった伊藤博文も強固なドイツ派でした。
※（左）桂太郎
※（右）伊藤博文
1883年（明治16年）12月から1885年（明治18年）1月まで、陸軍卿の大山巌が軍事視察のためヨーロッパに出張。随員には桂太郎大佐（参謀本部管西局長）がいました。
大山は、1871年（明治4年）から3年間フランスとスイスに留学した経験があり、フランス式兵制を支持していました。しかし、桂にドイツ式兵制への移行を進言され、ヨーロッパでドイツ帝国の様子を実見するにつれて、桂の進言を受け入れる方向に考えを改めたと言われます。
大山は、ドイツ帝国陸軍大臣のセレンドルフ中将に面会し、陸大への教官派遣を要請しました。諸説ありますが、セレンドルフは、ドイツ帝国参謀総長のモルトケ元帥（大モルトケ）と協議し、クレメンス・ヴィルヘルム・ヤーコプ・メッケル参謀少佐（42歳）を日本に派遣することを決定します。
セレンドルフとメッケルは、プロイセン王国陸軍大学校で教官と学生の関係にあり、メッケルは当時のドイツ帝国参謀本部の中で秀才として知られていました。
メッケルの日本への派遣を知った在日フランス公使館附陸軍武官は、大山の外遊中に陸軍卿代理を務めていた西郷従道に、フランス式兵制を捨てるのかと抗議しますが、西郷はこれを一蹴しました。
ただし、日本の陸軍士官学校がドイツ式の士官候補生制度に移行し、士官候補生1期（一般に陸士1期と呼ばれる）が陸士に入校したのは1888年（明治21年）11月であり、帝国陸軍において数年間、陸士はフランス式、陸大はドイツ式と仏式・独式の教育が併存する結果となります。
※（左）大山巌
※（中）西郷従道
※（右）クレメンス・W・J・メッケル
大山は、1871年（明治4年）から3年間フランスとスイスに留学した経験があり、フランス式兵制を支持していました。しかし、桂にドイツ式兵制への移行を進言され、ヨーロッパでドイツ帝国の様子を実見するにつれて、桂の進言を受け入れる方向に考えを改めたと言われます。
大山は、ドイツ帝国陸軍大臣のセレンドルフ中将に面会し、陸大への教官派遣を要請しました。諸説ありますが、セレンドルフは、ドイツ帝国参謀総長のモルトケ元帥（大モルトケ）と協議し、クレメンス・ヴィルヘルム・ヤーコプ・メッケル参謀少佐（42歳）を日本に派遣することを決定します。
セレンドルフとメッケルは、プロイセン王国陸軍大学校で教官と学生の関係にあり、メッケルは当時のドイツ帝国参謀本部の中で秀才として知られていました。
メッケルの日本への派遣を知った在日フランス公使館附陸軍武官は、大山の外遊中に陸軍卿代理を務めていた西郷従道に、フランス式兵制を捨てるのかと抗議しますが、西郷はこれを一蹴しました。
ただし、日本の陸軍士官学校がドイツ式の士官候補生制度に移行し、士官候補生1期（一般に陸士1期と呼ばれる）が陸士に入校したのは1888年（明治21年）11月であり、帝国陸軍において数年間、陸士はフランス式、陸大はドイツ式と仏式・独式の教育が併存する結果となります。
※（左）大山巌
※（中）西郷従道
※（右）クレメンス・W・J・メッケル
帝国陸軍はメッケルの居館を参謀本部の構内に用意し、月500ドルの俸給を支払いました。
陸大に着任したメッケルは、ドイツ帝国陸軍大学校の教育方法をそのまま取り入れ、陸大の教育課程をドイツ式に改革します。即ち、校内での図上戦術・校外での演習旅行による実戦を想定した教育、理論ではなく戦史に例証を求める教育の再構築です。
また、メッケルは外征経験のない帝国陸軍の将校に兵站の概念・知識が欠落していることを憂い、外征における兵站について熱心に教育したと言われます。
メッケルは参謀本部顧問としての役割も果たしました。
1886年（明治19年）3月に臨時陸軍制度審査委員会（委員長は児玉源太郎歩兵大佐）が設置され、ここでの研究により6鎮台編制から6個師団編制に移行したこと、陸軍中央が陸軍省・参謀本部・教育総監部の3官衙（中央三官衙）に分かれ、参謀本部の組織が確立して統帥権の独立が確立したこと、陸軍の兵制が順を追ってドイツ式に移行したことについては、メッケルの功績が大きいと言われます。
制度改正も行われました。
1887年（明治19年）、全兵科（当時は歩兵、騎兵、砲兵、工兵）の将校の修学期間が3年に統一。ただし、1886年（明治19年）12月2日に「陸軍大学校条例」が改訂されていますが、修学期間についての言及は見当たりません。1887年（明治20年）8月には「陸軍大学校条例」が大幅に改訂され、輜重兵将校に対する受験制限の廃止、修学期間を3年と明記、校長の設置などが定められます。なお、初代校長は児玉源太郎歩兵大佐が任じられました。
1885年（明治18年）3月18日に来日したメッケルは、1888年（明治21年）3月24日に横浜港を出港した船でドイツに帰国しました。滞日期間は3年でした。陸大は、メッケルが3年間で作り上げた教育課程を、1945年（昭和20年）の終焉まで継承します。
メッケルの離日後の1890年（明治23年）、青山に移転した陸軍大学校の正門を入ったところにメッケルのブロンズ胸像が設置され、参謀本部の食堂にはメッケルの肖像画が掲げられました。その後、メッケルのブロンズ胸像は1945年（昭和20年）の敗戦後、行方不明となったと言います。
※メッケルが滞在中の陸軍大学校は和田倉門内にあった
画像は現在の和田倉門内（「大山格のブログ」より）
https://ameblo.jp/itaru-ohyama/entry-12250629666.html
陸大に着任したメッケルは、ドイツ帝国陸軍大学校の教育方法をそのまま取り入れ、陸大の教育課程をドイツ式に改革します。即ち、校内での図上戦術・校外での演習旅行による実戦を想定した教育、理論ではなく戦史に例証を求める教育の再構築です。
また、メッケルは外征経験のない帝国陸軍の将校に兵站の概念・知識が欠落していることを憂い、外征における兵站について熱心に教育したと言われます。
メッケルは参謀本部顧問としての役割も果たしました。
1886年（明治19年）3月に臨時陸軍制度審査委員会（委員長は児玉源太郎歩兵大佐）が設置され、ここでの研究により6鎮台編制から6個師団編制に移行したこと、陸軍中央が陸軍省・参謀本部・教育総監部の3官衙（中央三官衙）に分かれ、参謀本部の組織が確立して統帥権の独立が確立したこと、陸軍の兵制が順を追ってドイツ式に移行したことについては、メッケルの功績が大きいと言われます。
制度改正も行われました。
1887年（明治19年）、全兵科（当時は歩兵、騎兵、砲兵、工兵）の将校の修学期間が3年に統一。ただし、1886年（明治19年）12月2日に「陸軍大学校条例」が改訂されていますが、修学期間についての言及は見当たりません。1887年（明治20年）8月には「陸軍大学校条例」が大幅に改訂され、輜重兵将校に対する受験制限の廃止、修学期間を3年と明記、校長の設置などが定められます。なお、初代校長は児玉源太郎歩兵大佐が任じられました。
1885年（明治18年）3月18日に来日したメッケルは、1888年（明治21年）3月24日に横浜港を出港した船でドイツに帰国しました。滞日期間は3年でした。陸大は、メッケルが3年間で作り上げた教育課程を、1945年（昭和20年）の終焉まで継承します。
メッケルの離日後の1890年（明治23年）、青山に移転した陸軍大学校の正門を入ったところにメッケルのブロンズ胸像が設置され、参謀本部の食堂にはメッケルの肖像画が掲げられました。その後、メッケルのブロンズ胸像は1945年（昭和20年）の敗戦後、行方不明となったと言います。
※メッケルが滞在中の陸軍大学校は和田倉門内にあった
画像は現在の和田倉門内（「大山格のブログ」より）
https://ameblo.jp/itaru-ohyama/entry-12250629666.html
フランス式からドイツ式への移行は、陸軍大学校など教育、戦術の改革に留まりません。帝国陸軍の諸政策全般も1887年（明治20年）ごろからドイツ陸軍式に順次転換されました。
1891年（明治24年）に改正された歩兵操典はドイツ陸軍操典（ドイツ本国で1888年に改正）に範をとったものになります。当時の帝国陸軍は単発式小銃が主流でしたが、連発式小銃に対応したドイツ陸軍操典を導入し、フランス陸式の守勢的主義からドイツ陸軍特有の攻勢主義・短期決戦の用兵思想へと全面的に変革されました。
戦術とともに兵器の進歩も著しく変わりました。1880年（明治13年）に村田経芳少佐が発明した村田銃が採用され逐次改良の上、更新されます。
大阪砲兵工廠でも75mm野・山砲の生産を開始しました。この砲は当初クルップ社製を採用しようとしたが、日本の鉄鉱石産出量は少なくイタリア製の鋼青銅型が採用されました。
※（左）明治24年発行歩兵操典
※（右）十三年式村田銃（上）と二十二年式村田連発銃（下）
1891年（明治24年）に改正された歩兵操典はドイツ陸軍操典（ドイツ本国で1888年に改正）に範をとったものになります。当時の帝国陸軍は単発式小銃が主流でしたが、連発式小銃に対応したドイツ陸軍操典を導入し、フランス陸式の守勢的主義からドイツ陸軍特有の攻勢主義・短期決戦の用兵思想へと全面的に変革されました。
戦術とともに兵器の進歩も著しく変わりました。1880年（明治13年）に村田経芳少佐が発明した村田銃が採用され逐次改良の上、更新されます。
大阪砲兵工廠でも75mm野・山砲の生産を開始しました。この砲は当初クルップ社製を採用しようとしたが、日本の鉄鉱石産出量は少なくイタリア製の鋼青銅型が採用されました。
※（左）明治24年発行歩兵操典
※（右）十三年式村田銃（上）と二十二年式村田連発銃（下）
1885年（明治18年）12月、政府は太政官制を改め内閣制を採用しました。これに伴い陸軍卿は陸軍大臣となり、合わせて陸軍省の改組も行なわれます。
1886年（明治19年）3月、従来、陸軍の中央軍令機構だった参謀本部を陸海軍統合の中央軍令機関としての参謀本部に改めました。1893年（明治26年）、海軍軍令部が独立し、平時は参謀本部と軍令部が並列して天皇に直隷されることとなります。これと同時に戦時大本営条例が制定され、戦時には大本営が設けられ、軍令部長は参謀総長の指揮下に入り戦争指導する体制が設けられました。
1888年（明治21年）5月、それまであった監軍部とは異なる監軍部が設置されます。これは天皇直隷の監軍を置いて陸軍の軍隊練成の斉一を規画することを目的とし、後の教育総監部の前身となりました。この監軍の下には、将校学校監、騎兵監、工兵監、輜重兵監、が置かれました。
この時期、帝国陸軍は様々に改編されますが、鎮台制を廃止して師団制を採用したことは最も大きい改編と言えるでしょう。
1882年（明治15年）、帝国陸軍は朝鮮半島をめぐる時局変化の要求に従い、軍備拡充計画を立案、1884年（明治17年）から十ヵ年計画で整備する計画でした。つまり外征を目的とした近代軍備を整備し、大幅な増強を図ったのです。
1888年（明治21年）5月12日、鎮台制は廃止となり新たに師団制が採用されました。1889年（明治22年）1月には徴兵令の大改正も行なわれ、戦時には平時の3倍の兵員を動員・組織できるように計画を進めます。
これらの改革により、帝国陸軍は統帥、近代兵備、教育訓練等を充実させ外征軍としての実力を備えていきます。
※参謀本部庁舎（1910年頃撮影）
1886年（明治19年）3月、従来、陸軍の中央軍令機構だった参謀本部を陸海軍統合の中央軍令機関としての参謀本部に改めました。1893年（明治26年）、海軍軍令部が独立し、平時は参謀本部と軍令部が並列して天皇に直隷されることとなります。これと同時に戦時大本営条例が制定され、戦時には大本営が設けられ、軍令部長は参謀総長の指揮下に入り戦争指導する体制が設けられました。
1888年（明治21年）5月、それまであった監軍部とは異なる監軍部が設置されます。これは天皇直隷の監軍を置いて陸軍の軍隊練成の斉一を規画することを目的とし、後の教育総監部の前身となりました。この監軍の下には、将校学校監、騎兵監、工兵監、輜重兵監、が置かれました。
この時期、帝国陸軍は様々に改編されますが、鎮台制を廃止して師団制を採用したことは最も大きい改編と言えるでしょう。
1882年（明治15年）、帝国陸軍は朝鮮半島をめぐる時局変化の要求に従い、軍備拡充計画を立案、1884年（明治17年）から十ヵ年計画で整備する計画でした。つまり外征を目的とした近代軍備を整備し、大幅な増強を図ったのです。
1888年（明治21年）5月12日、鎮台制は廃止となり新たに師団制が採用されました。1889年（明治22年）1月には徴兵令の大改正も行なわれ、戦時には平時の3倍の兵員を動員・組織できるように計画を進めます。
これらの改革により、帝国陸軍は統帥、近代兵備、教育訓練等を充実させ外征軍としての実力を備えていきます。
※参謀本部庁舎（1910年頃撮影）
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