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犬・わんこ物語・小説コミュの「不思議な朝」七番

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                【不思議な朝】

お日様が顔を出し、野鳥達のさえずりが朝の訪れを告げている。
人間達は昨日の疲れがまだ残っているのか、大きな背伸びを繰り返し、やっとベットから起き上がって、目覚めのコーヒーでも飲もうとフロントの前に集まって来た。
「おはようございます。今日もいい天気でよかったですね〜」
「いや〜昨日は食事の時飲み過ぎましてね、部屋に戻ってちょっと横になったらそのまま寝てしまったんですよ。しかし、あんなに寝ても、まだ眠むたいのは何故でしょうね。寝すぎかなぁ〜・・・でも、今日も一日、おもっきり遊びますよ」
ウィペットのあんちゃんとイタグレのもみじちゃんのパパは、三杯目のコーヒーを飲みながら頭の中で今日のスケジュールを立てている。

「トントントントン」階段を威勢良く駆け上がる音が聞こえ、みんなが振り向くと、タオルを肩にかけ、白髪交じりのモジャモジャ頭をかきながら「いやいや、みなさんお揃いで・・・おはようございます。」と大男が入って来た。
シェパードのひげ爺のお父さんだ。
顔のしわといい、態度といい、人間と犬なのに、何でこんなに似ているのだろう?

そういえば、どこかのコンテストで飼い主さんとわんこの「そっくりさん募集」なんてあったけど、この二人なら、きっと優勝出来るんじゃないかな?
誰もが心の中で、そう思っているに違いない。
だが、可愛い子なら「ママと似ているわよね」と言っても喜ばれるだけで支障はないのだが「ひげ爺とそっくりですよね」と言った場合、返ってくる言葉は想像出来ないのである。
これは「口に出しては失礼ではないか?」と、気を使わなければならない。
現に、うちのお母ちゃんもシャンプーをして、おリボンを付けて可愛くなった私を見て「ママとそっくり」なんて言われた時には「あのお客様に何かサービスして」と大喜びですが、忙しくてブラッシングも出来ず、庭で遊んで泥んこになっている私の姿に「似てますねぇ〜」と言われると心なしか不機嫌のような気がする。
お母ちゃんも「プイ」顔になるくらいなら綺麗にしてくれれば良いのだが、シャンプー嫌いの私にとっては汚くても、その方が嬉しいのである。
ひげ爺のお父さんは「今から、ひとっ風呂浴びてきますよ。わたしゃ温泉が三度の飯より好きで、ここに来たらふやける位入ってるんですよ」と嬉しそうに鼻歌を歌いながら大浴場へと歩いて行った。
こんな光景は毎日のように見ているのだが、いつもと違う事が一つあった。
それは、一匹もわんこが見えないのである。

しばらくして、トイプードルのアトムくん、シンバくん、ティモンくん、レオくんのママが「お宅のわんちゃんはお散歩に行かないんですか?うちは珍しく、まだ寝ているんですよ。もっとも、パパもまだ布団の中ですけどね」と、お母ちゃんと同じく砂糖を5本も入れて、甘い甘いコーヒーを美味しそうに飲んでいる。
「うちの子もまだ寝ているんですよ。いつもならワンワン・ワンワン、お散歩に連れて行け〜って吠えるのですが、今日は起こしても全然ピクリともしないんですよ」と、ボーダーコリーのアスカちゃんのパパも、いつもと違う事を不思議そうに話している。

すると、トム君のパパも「そういえば、おかしいと思いませんか?今の時間でわんこを一匹も見かけないなんて、ここに来て初めてではないですか?」と、象牙のパイプにブランドのライターで火を付けている。
この、会話を聞いていた私のお父ちゃんも「おかしい??そういえば、チコもコロもロクもクロも夜中に寝床を移動したり、水を飲んだりおしっこしたりバタバタうるさいのに、夕べは何か静かだったなぁ〜・・・・部屋にいる気配がしなかったような気がするなぁ〜・・・・・それに、いつもなら朝一番にフロントに来て、他のわんことワンワン・キャンキャンと一時のバトルを楽しむはずなのですが、誰も起きてこない?・・・
まぁ〜ポチは母親にで寝ぼすけさんだから別としても、まだ寝ているのは珍しいなぁ〜」と首をひねっている。

8時組と9時組の朝食もわんこ無しで無事?終わり、チェックアウトの時間が近づいて来た。
ポチは眠い目をこすりながら布団から這い出た。
「ふぁ〜〜あぁ〜眠いなぁ〜・・あっ、そうだ!ポポちゃんのパパとママの事なんとかしなくちゃ、お母ちゃん起きているかな?」と一人でブツブツ言いながら、枕元を見た。
「いない?お母ちゃんがいない?」
寝ぼすけのお母ちゃんが私より先に起きるなんて、おかしい??
ふと見ると、こたつの一部が盛り上がっている。お母ちゃんだ!!
また、お母ちゃんの得意な瞬間移動か??・・まさか・・つまり、夜中にトイレに起き、布団に戻らずこたつに寝てしまうのだ。困ったもんです。
さて、この問題はおいて置いて、私は早速ペロペロ攻撃を始めた。
 このペロペロ攻撃を受けると、誰でも参ってしまう。
特に今日は、お母ちゃんが一番弱い「おめめペロペロ攻撃」にしよう。
「うわぁ〜〜〜やめてくれ〜〜・・わぁった、わぁったから、ポーちゃんやめて!!許して!!」寝たふりをしようとしているようだが、さすがに我慢できない。
「何?ポーちゃん。ご飯?おしっこ?うんち?コーヒー?」
いつもの寝起きの悪さを充分に発揮しながら、ライオンのような大きなあくびをしたお母ちゃんは、夕べの飲みかけのコーヒーを一気に飲みほし不機嫌な顔をしていた。
「お母ちゃん。まだ眠たいのは分かるけど、ポポちゃんのパパとママの事で相談があるんだけど、いいかなぁ〜」と私は遠慮がちに聞いた。
「あ〜〜、ポポちゃんのパパとママが喧嘩して大変だって事でしょ」
「えっ、何で知っているの?」
「だって、昨日相談があったの・・・う〜ん。相談があったというより、いつもと様子が違うからこっちから聞いたんだけどね。たまたま、夜中にお風呂に入っていたら、ポポちゃんのママも眠れないからって入って来てね。ポポちゃん何か言っていた?」
「うん、昨日、ポポちゃんの事でパパとママがもめているって、泣いていたの。鼻水たらして」
「鼻水は余計だけど、可哀想だったね。でも、もう、大丈夫だよ。お母ちゃんが良いアドバイスしておいたから」
「えっ、解決したの?なぁ〜んだ。心配して損しちゃった。パパとママが離婚したらどっちが引き取るのかなぁ〜って」
「あはははは・・・・話はそんな事にまでなっちゃったんだ。離婚なんて、あんなに仲が良いのに、する訳ないでしょ」
「あははははって、わんこはわんこなりに一所懸命考えたのに!!」
「ごめんごめん。笑ったお母ちゃんが悪かったよ。もう、機嫌直して、そのプイ顔やめてよ、お母ちゃんポーちゃんのその顔に弱いんだから・・・・ね」
「じゃ〜どうしてパパとママが喧嘩していたか教えて」
「う〜〜ん。あんまり話したくないけど、ポーちゃんとお母ちゃんの仲だから、まっいっか、教えてあげる」
お母ちゃんは少し真剣な顔をして話はじめた。

「実はね、ポポちゃんのパパがアメリカに行く事になったのね」
「ア、 アメリカ!外国の?外人さんがいる??あの遠いとこの??日本語が通じないあの大きな国の?」
「そんなに驚く事ないじゃない・・・まぁ〜ポーちゃんは行った事ないからしょうがないけど遠いって言えば遠いかな?でも、飛行機に乗れば近いけどね」
「でも、何で?」
「パパのお仕事が上司に認められて、今度、大きな企画があるからアメリカの支店に行ってくれって、会社命令なんだって、行けばすごい出世らしいのね・・・そこで問題になったのがポポちゃんをどうしよう?って事になったのよ」
「なんで?なんでよ〜、一緒に連れてってあげないの?分かんないなぁ〜・・パパ優しそうな顔しているけど、案外冷たいとこあるんだよね」
「そーじゃないよ、ポーちゃん。パパはポポちゃんが大好きだから置いて行くって言っているの。わんこをね、海外に連れて行く事って大変なのよ。飛行機に乗る時にも、親と別々に乗らなきゃいけないし、人間は座席があって座りながら行く事が出来るけど、わんこは荷物扱いだから、檻の中に入れらちゃうんだよ。ポーちゃんだって何時間もお父ちゃんとお母ちゃんと離れていられないでしょ。今だってトイレに行くのにも着いて来るんだから無理でしょう」
「うん。絶対やだ!!一人で檻の中なんて」
「それだけじゃないの、飛行場に着いてからもすぐパパとママの元へは行けなくて、検査のため何日間も預けないとダメなの」
「え〜!!そんなことされたらポーちゃん気が狂っちゃうよ」
「そうでしょ〜。だからポポちゃんのパパもそんなことは出来ないから、実家に預けようかな?ってママに相談した訳よ」
「でも、実家には小さい子供がいてママが嫌なんでしょ?前に階段から落とされたって言ってたもんね。その時は2〜3段だったから怪我はしなかったけど、打ち所が悪かったら死んじゃう子もいるもんね」
「そう、そうなのよ。それが問題なのよ。おじいちゃんも、おばあちゃんも優しくていいんだけれど、お孫さんがねぇ〜・・・今、遊び盛りだし、ポポちゃんチワワだから、前みたく落されたりしたら大変な事になると思うよ。それに子供は抱っこしたがるから、それも心配だよね」
「チワワじゃなくても、子供に抱っこされるのは嫌だよ。抱っこの仕方が何か違うのよね。落とされるような気がして、不安で不安で・・身体固まっちゃう!!」
「まっ、そんな事で二人が話し合った結果、ママが日本に残ってパパだけアメリカに行く事にしたんだって・・・・新婚さんだから離れ離れに暮らすのは寂しいかも知れないけど、二年も三年も行く訳ではないから、パパには我慢してもらって、帰って来たらママに沢山尽くしてもらうのが一番良い方法かな?って、決めたらしいのね。お母ちゃんも、その方がいいと思うんだ。飛行機に乗って、気圧の関係で着いた途端亡くなってしまったわんこもいるし、ストレスで入院したわんこもいるからね」
「うん。飛行機は怖いよ。ポーちゃん大嫌いだよ!!あれは二度と乗りたくないね」
「あれ?ポーちゃん飛行機なんか乗ったことあったっけ?」
「やだなぁ〜お母ちゃん忘れちゃったの、去年お父ちゃんと一緒に乗ったでしょう」
「去年?・・・・あっあれぇ〜あはははは・・ポーちゃんあれは確かに飛行機の形はしていたけど、同じ所をグルグル回る遊園地の飛行機だからアメリカまでは何時までたってもいけないよ」
「そっかぁ〜・・・そう言えばちっちゃい飛行機だったもんね」
「そんな問題じゃなくて・・・」
と、朝から「ペチャクチャ・ペチャクチャ」やっていると、
「おーい。お客様がお帰りだよ。早くしないと御挨拶できないぞぉ〜」とお父ちゃんの声が聞こえてきた。
「おはよう・・・昨日はど〜も」とか「いや〜眠い」とか「おなかすいたぁ〜」とか、それぞれのわんこ達はパパやママに連れられて挨拶をしている。
ふと見ると、ポポちゃんのパパとママが仲良くコーヒーを飲みながら話をしていた
「昨日はごめんね。私ポポのことになると駄目なのよね」
「いや、僕もポポの事になると・・・・・・やっぱり、君がお嫁さんでよかった」
「私も、優しいだんな様で幸せ!!」
と、熱々の会話である。
昨日、ポポちゃんの話を聞いて心配していたわんこ達は
「なぁ〜んだ。昨日の話と全然違うじゃ〜。どっから見てもラブラブだよ」
「うん。ポポちゃんもパパに抱かれて、あんなに嬉しそうにしているところを見ると、離婚話はないようね」
と、安心したようだ。
それぞれの親達は会計を済ませ荷物を運び終えたら、フロントの前に戻ってきて、コーヒーを飲みながらまたわんこ話に華を咲かせる。
これがうちのお客様の楽しみ方の一つなのだ。
わんこもそうだが、人間も一日一緒にいると仲良くなるのも早い。
お互い携帯番号を教えあったり、メールアドレスを教えあったり、次の予約を一緒にしている人もいる。
「楽しかったわね。また、会いましょう〜ポピーくん。ココアちゃん」
「じゃあね。舞香ちゃん、元気でね」
「うん。桃ちゃん、また遊ぼうね」
そんな、さよならの挨拶がチラホラ聞こえてきた時、
「ね、花ちゃん、い〜い。よく聞いて・・・・・」と花ちゃんの一時預かりのフリーゼくんのママの声が聞こえた。

【続く】

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