ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

25夜物語コミュの6.猫

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
メビウス 属



「予知能力」とか 「神の啓示」とか、つまりそういうことらしいのだが
その力がどうやら僕に備わっているらしい

初めて知ったのは、角の家が危ないって聞こえた夜
その日は用心してその家に近寄らなかったが、夜更け過ぎ小火騒ぎ・・・
友達が災難に巻き込まれ大騒ぎだった

またある日、国道沿いの三丁目には寄るな という
そこは大好きな彼女がいるところなんだが
ひたすら遠回りをしたり誘われても断ったりしていた

その日、その通りで事故があった
薬品を積んでいたトラックが横転し
刺激臭を発する液体が道路に撒き散らされて
大好きな彼女も目や鼻をやられたらしく、しばらく真っ赤な目をしていた

僕のこの能力をどうにかするつもりはないのかって?
あんまり考えたことないな
それに伝えられるかどうかも怪しい
信用してくれるかどうかより、僕の言葉が通じるかどうかって事さ

だって僕らはいわゆる猫属なのだから




メビウス 表

                  
ある日
偶然にも僕の声が聞こえるヒトに出会った

僕の頭を撫でて
「おはよーねこちゃん」とか
「ただいま、元気だった?ねこちゃん」
とかそんな他愛ないかかわりだったけど

「今日は傘を持って行きなさい」って伝えたら
怪訝な顔をして
「あら?こんなに良いお天気なのに?せっかく教えてくれたけど今日は降らないわよ」

そう、まず僕の声が聞こえること
そしてその言葉を信じてもらえること

僕は知ってる

彼女はその日急な出張を命じられ、遠出をした
帰り道、バス停にたどり着いた頃、突然のスコール
バスが来るまでのほんの5分の間にすっかりびしょぬれ・・・





メビウス ヒト


私はこのところの不思議な現象を素直に受け入れることにした
猫の声が聞こえるのです 
誰にも言いませんけどね
今朝のこと
「タクシーに乗ってはだめ」私の足にまとわり付いたおなじみののらちゃんの声



                          
タクシー?またどこかへ出張かしら?
会社について仕事に追われてすっかり忘れていたが
あと少しで退社時間、と言うときに上司が血相変えて事務所に飛び込んできた
なんでも、受注されたシステムに欠陥が見つかったとの事
大至急修正かけてくれ、だって
どうにかこうにか修正が完了したのは終電が行ってしまった後だった
上司はスタッフにタクシーチケットを渡していた
私はいつかの傘のことを思い出していた
「あ、私友人のところに泊まりますから」
私はそう言って、近くのビジネスホテルに向かった
嘘をついたことに少し心が痛んだけど
信じてくれる人なんかいないもの、きっと・・・
朝、私はホテルで目覚め、いつものようにテレビニュースを漫然と聞いていた
突然、画面に同僚たちの顔写真が・・・
なんでも高速道路で衝突事故があったらしい、タクシーとトラックの追突・・・



メビウス 裏


俺は疲れているのかもしれない
ありえないことが このところ起こっている
猫の話していることが聞こえ、なお且つ その話のとおりのことが起こっている
火事に気をつけろ、とか、トラックに注意しろ、とか・・・
これはきっと、幻覚幻聴思い込み刷り込みトラウマ既視感、そういった類のことに決まってる、さ・・・

だから俺は今朝の忠告を無視した
俺の足元に擦り寄ってきて、「タクシーに乗るな」と言った猫の顔を忘れようと努めた

会社の帰り、俺は迷わずタクシーに乗った
誰かに挑戦するような気持ちもあったのかもしれない
今までの現象は単なる偶然に過ぎないのだ、という証明にしたかった


                          

だが、俺は今見ている
俺の体に取りすがって泣いている妻や子や両親の姿を
無言で一礼して出て行く白衣姿の、医師
包帯で包まれた俺の最後の顔

そう、タクシーは事故にあい俺は巻き添えを食らった・・・
今更悔いても遅い
俺はもう家族とは別の世界に来てしまった
ありえないと思っていたことが現実のことになっていたのだ
説明できない力があることを受け容れたときには、
すでに俺は現世(うつしよ)のものではなかった





メビウス  環


俺は冥界とやらにいるらしい
家族への思いは殊の外強かったようで
いつまでも現世への想いを断ち切れないでいた

ある日、再生のチャンスが巡ってきた
家族とは思い通りの縁になれる訳ではなさそうだが
それでも構わないと思った
どんな境遇でもいい、俺は再生の日を待った

ある日俺は誰かの胎内に宿った
再生は現実になるのだ
ひたすら生まれ出ずる日を待てばよい

「お腹の赤ちゃん、いかがですか?」
妻の声だ!
俺が妻の子に?妻はいつ?
俺はいったい誰の子なんだろう?

まあ、余計な詮索はやめよう
「赤ちゃん、早く出ておいで」
子供の声だ
どんな縁でも構わないと、確かに言ったが・・・俺はいったい?
まあ、良いさ、家族と関われることだけを願っていたじゃないか
ひたすら出産のときを待った

母胎が慌ただしくなった
俺は暗い産道をもがき、体全体で日の光を感じた
ついに俺は再生し、妻と縁あるものとして復活した
嬉しさと感激の産声

miaow miaow miaow
!!!






2004 横浜雑アート出品作品

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

25夜物語 更新情報

25夜物語のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング