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昆虫記 〜 ファーブルの生涯コミュのカミキリムシ

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riccaさんにつられまして「カミキリムシ」の章を読み直してみました。
以下は、その粗筋と細々した感想です。


・冬に備えての暖房用の焚き木の仕込みにかこつけて、ファーブルはわざと虫の食った木を別にしておいてもらう。
そんなものをなぜ欲しがるのかと、木こりはいぶかしがりながらもそのとおりにしてくれる。


>ファーブル先生の奇妙な注文と、それに首をかしげつつ沿うてくれる人というひとこまは「昆虫記」に何度か登場します。
その都度思うのは、彼は周囲の人々から変わり者と見なされながら、一応の敬意を払われてもいたということです。…勲章をもらった立派な先生みたいだし、身なりもしっかりしてる。あの人がぜひとも必要というなら、よく分からないけれどもそのとおりにしようじゃないかー
わけのわからないことをしていると非難されるのでも、変に関心を持たれてつきまとわれるのでもない、そんな「ある種の信頼」「一定の好意にもとづく無関心」は、ファーブルの研究には必要不可欠だったでしょう。彼の人徳と、そして幸運を思います。


・この朽木から見出されたカシミヤマカマキリの幼虫は、まるで消化器官しか持たないかのような奇妙な存在だ。せまいトンネルの中でしか歩くことができず、目はなく耳なく鼻もなく、ひたすら木の中をかじり消化しながら、三年もの間トンネルを掘り進む。彼らの感じる世界とは、一体どのようなものであろうか。


>そしてこの食べる(排泄する)ことしか知らぬはずの虫に、先の見通しをきちんと立てられることが明らかになります。実験により成虫には、あえて木から抜け出る能力がないことが確かめられたから。
どんなにみにくい幼虫より立派に見え、たくましい大あごを持っていても、だめ。ことは腕力や道具の問題ではなく、それを解決できる知恵ー 正しくは本能ー をさずけられているかどうか、の問題。

いよいよサナギになり、あとは羽化して出て行くばかりとなる時、薄皮一枚破るだけで外へ出られる場所へ部屋を掘り、これまで体内に蓄えた分泌物と木くずで防壁を作り、そして頭はきちんと出口に向けておく。これらはことごとく、生ける腸のごとくだった幼虫の知恵。
この知恵は、一体どこから来るのか。本能のせいだ、と言ったところで不思議さに変わりはない。それはわれわれがカミキリムシの幼虫になってみれない限り、永遠に知りえない秘密なのだ。


・ローマ人の食通は、カシの木につくはだかの虫に舌鼓を打ったそうだ。謝肉祭の最終日に、ぜひとも試してみようじゃないか。
こうしてファーブル先生は捕まえたカミキリムシの幼虫を串焼きにし、わずかに塩をふりかけただけの簡単な調理で、家族と友人ふたりにふるまった。
みなは一致して、肉は汁気が多く、やわらかくて美味しいと言う。ただ皮だけは堅くてどうしようもないと。

結局、ファーブル先生は「食べられる」ということで満足し、この新しくて古い料理を追求しようとはしなかった。


>ここで登場するふたりの友人、ジュリアンとマリユス・ギーグ。ジュリアンは学校の先生、マリユスは盲目の建具屋さんです。ともに心栄えのする立派な人物として、ファーブルの賞賛を受けています。
ファーブルの実験道具などを作ったマリユスは、ファーブル没後なお存命であり、セリニャンに彼の銅像が建てられた時に行われたインタビューに答えています(ドゥランジュ「ファーブル伝」)。セリニャンにファーブルがやってきてからというもの、ほぼ40年親しく交わったマリユスは、先生の大親友でした。

ファーブルは彼ら友人を相手に、どんなことでも楽しく語り合う「サロン」を開きました。「われわれはわれわれ三人で村のアテネを、憎むべき政治談議を除けて何でも話す村塾をこしらえる。」(昆虫記10巻)こんな時のファーブルがどんなに生き生きと輝いて見えたかは、晩年となってからの弟子ルグロ博士が丁寧に描写しています。
天は先生に、書く才能と話す才能の二物を与えたのです。

なお、ここでの料理のやり方は実はいまひとつで、「皮がカリカリになるまで唐揚げにすればよかった」(奥本大三郎氏)とのこと。


・幼虫が変じてサナギとなったばかりの時、カミキリムシは見事な白さと造形の美を見せる。「白亜よりも、象牙よりももっと美しい色をしている… たたまれた肢は聖なる姿勢のように胸の上で十字に組まれた腕を思い起こさせる。運命の歩みにたいして神秘的な諦めを現すには、これ以上にすぐれたものはわれわれの絵描きも見出してはいない。」


>本文には写真も載っていますが、本当にまるで腕を胸に組んだ聖母像のように見えます。



狩人蜂に代表される、荒々しい習性を持つ者も多い「昆虫記」の大スター達に比べると、このカミキリムシはいかにも地味ながら、ちゃんと語るべき秘密を秘めています。
作中の「犬やハエの目で世界を見、脳で考えるとしたら、世界はどのように変わるのか」という想像は、まともに考えるとぞっとしてしまって、そこから先へは行けないのですが…



出典:「完訳ファーブル昆虫記」4巻「かみきりむし」10巻「ひろむねうすばかみきりーコッスス」

コメント(2)

>riccaさん

この幼虫の串焼きについて書いていたのは、ローマの博物学者(軍人・行政官でもありました)プリニウスだそうです。
かのヴェスヴィオス火山の噴火の際、近くで観察しようとして熱波に襲われ、死亡した人ですね。

彼の書いたものは量は膨大ながらホントに玉石混交で、まじめな事柄と空想とが混ざってしまっており、うかつに信用すると大怪我するとのこと。ファーブル先生も彼について「あきれるほど多くの伝え聞きを、検証もせずに無邪気に信じた」という意味のことを、非難しているのか呆れているのか分からない口調で書いていた記憶があります。
だからこの事柄も、きっと半信半疑で試してみたんでしょうね。



昆虫を食料とする可能性については、有名なファーブル研究家の奥本大三郎氏も書いておられました。

「(アラビア・アフリカの砂漠地帯で大発生する移動相のバッタを)もっとどんどんつかまえて乾燥させ、粉にしてハンバーグなどにすれば、アフリカなどの食糧問題を解決する役にたつのではないかと思われます。…やがて世界じゅうの国が、食料としての昆虫の研究に真剣になるときがくるかもしれません。」(集英社文庫「ファーブル昆虫記5」)

ファーブル自身は、この料理はいつまで経っても物好きな人が気紛れに食するものにしかならないだろうと考えたようで、これ以上調理方法等を追求したりしなかったのですが、昆虫を食べる習慣のあるところだったら、もっと広がりを見せたかもしれません。



返信ありがとうございました。
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