「結局のところ、財政政策によって、流動性制約家計が消費を増やしたとしても、それがマクロ的な景気刺激につながると考える理屈は存在しない。財政政策のマクロ的な景気刺激効果を考える上で見落としてはならないのは、財政政策の再分配効果の側面である。例えば、Carlstrom and Fuerst(1998)は、不完全資本市場のもとで、投資機会のない経済主体から投資機会のある経済主体への富の移転はマクロ的な景気刺激効果をもつことを理論的に証明している。こうした見方は、近年、我が国で活発に議論されている構造改革の議論と密接に関連している。つまり、財政政策が、衰退産業や規制によって保護されている非効率な産業から、優れた投資機会を持つ産業への富の移転効果を持つものであれば、そのネットの効果は理論的にはプラス(乗数が 1 を上回る)が期待されるというものである。」