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全国解離性障害友の会コミュの[ 急性ストレス反応(Acute Stress Disorder)] 〜 心的外傷と解離を中心に 〜

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[ 急性ストレス反応(Acute Stress Disorder)]
  〜 心的外傷と解離を中心に 〜

< はじめに >
 急性ストレス反応は、外的要因があり、それによって、うつ、不安反応、解離などの症候が引き起こされることをいう。ここで、外的要因とは、外傷的なストレスであり、身体に対する侵襲(侵入し襲撃すること)や生命の危機が自分にふりかかったり、それが他人にふりかかっているのを間近に体験したりするという出来事である。

A. 急性ストレスとは
 心的外傷に対する急性反応(Acute Stress Disorder、以下ASD)の中核は、解離症状であると考えられている。一番最初に起こる反応は否認であり、「何かの間違いだ」「こんなことが自分に起こるはずがない」と事実から目をそむける。そして、心的外傷となる出来事からうまく逃げられないでいると解離症状が起こってくるのである。Spiegelによると、非現実感と記憶の変容(外観や様子などが変わること)がみられ、感情麻痺、無関心、健忘、体外離脱体験などの症状が出現するという。体外離脱体験とは、外傷的な体験をしている自分自身から自分が離れ、「体験している自分」と「観察している自分」とに分かれてしまう体験のことである。
 こうした特有の反応も、外傷的な出来事が終わると、すぐに治まっていくこともあるし、1、2日もしくは2〜4週間のうちに治まっていくことが多い。しかし、それが長く続くと侵入的な再体験、回避、過覚醒を中心とした生理学的変化を伴う精神障害が現れ、いわゆる外傷後ストレス障害(Posttraumatic stress disorder、以下PTSDと略)となる。ちなみにPTSDは、ASDとともに「深刻なストレス反応、そして適応障害」の分類のもとにおかれている。DSM-IVの基準では、ASDはPTSDとの鑑別の必要上、発症が外傷から4週間以内で継続期間も4週間以内であるという定義がなされている。下記には、ASDの診断基準を掲げている。

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308.3 急性ストレス障害 Acute Stress Disorderの診断基準
 A. 患者は以下の2つがともに認められる外傷性の出来事に暴露(直接さらされること・さらすこと)されたことがある。
  (1)実際にまたは危うく死ぬまたは重傷を負うような出来事を、1度または数度、または自分の身体の保全に迫る危険を、患者が体験し、目撃し、または直面した。
  (2)患者の反応は強い恐怖、無力感または戦慄(恐ろしさのあまり、ふるえおののくこと)に関するものである。

 B. 苦痛な出来事を体験している間、または、その後に、以下の解離症状の3つ(またはそれ以上)がある。
  (1)麻痺した。孤立した。または感情反応がないという主観的感覚
  (2)自分の周囲に対する注意の減弱(例:“ぼうっとしている”)
  (3)現実感消失
  (4)離人症
  (5)解離性健忘(すなわち、外傷の重要な側面の想起「思い出すこと・前にあったことを思い浮かべること」不能)

 C. 外傷的な出来事は、少なくとも以下の1つの形で再体験され続けている:反復する心像、思考、夢、錯覚、フラッシュバックのエピソード、またはもとの体験を再体験するする感覚、または外傷的な出来事を想起させるものに暴露された時の苦痛。

 D. 外傷を想起させる刺激(例:思考、感情、会話、活動、場所、人物)の著しい回避

 E. 強い不安症状または、覚醒(中枢神経系の興奮が増大し注意が喚起された意識の状態)亢進(感情・脈はく・病状などが)たかぶり進むこと)(例:睡眠障害、易刺激性、集中困難、過度の警戒心、過剰な驚愕反応、運動性不安)

 F. その障害は、臨床的に著しい苦痛または、社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。または外傷的な体験を家族に話すことで必要な助けを得たり、人的支援を動員するなど、必要な課題を遂行する能力を障害している。

 G. その障害は、最低2日間、最大4週間持続し、外傷的出来事の4週間以内に起こっている。

 H. 障害が物質(例:乱用薬物、投薬)または一般身体疾患の直接的な生理学的作用によるものでなく、短期精神病性障害ではうまく説明されず、すでに存在していた第1軸または第2軸の障害の単なる悪化でもない。

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B. 力動的な理解
 上記の解離は、人間が自分の対処能力を超える苦痛にさらされたときに、事態を変えることができなければ自分を変えて、自分(自分の精神)を守るという防衛機制である。外傷的な出来事の際に、身を守って生き延びることができるという一面がある。これは外傷体験への適応を意味する。一方、それらの症状が社会生活ばかりでなく日常生活も邪魔するというデメリットが生じるようだと、適応の破綻と考えられる。こうした二面性を持っていることを忘れてはならない。

C. 生物学的な理解
 大脳生理学的レベルないし脳内の神経伝達物質の異常として解明されつつある。
 一つは、中脳の青斑核を中心とするノルアドレナリン系による脳のアラーム・システム(危機的状況を伝える神経伝達機構)が活動亢進を起こした状態であるという仮説である。外傷性ストレス障害においては、この系の慢性的な障害が起きていることが報告されている。一方、アラーム・システムに拮抗(力に優劣がなく互いに張り合うこと)する行動抑制系 behavioral inhibition system(BIS)と呼ばれるものの失調が、外傷性ストレス障害における驚愕反応を起こすと推測されている。van der Kolkらは、外傷によるセロトニンの機能の低下と外傷性ストレス障害のフラッシュバック関連の可能性を指摘している。
 さらに、さまざまなストレスにおいて脳内麻薬物質(エンドルフィンその他)が分泌されることがわかっている。van der Kolkらはまた、外傷性ストレス障害の患者が外傷的な状況に再び身をさらしたり自傷行為に及んだりするのは、内因性麻薬物質が関与していると推察している。

D. 治療
 1. 精神療法的アプローチ
   初期の治療の原則は、安全な治療環境を提供することである。次に、安全な中で、外傷体験を自我へと自我へと統合できるようにと試みることである。具体的な手段としては、除反応、脱感作、催眠などである。除反応 abreaction とは、十分に意識化されずにいる外傷体験を、その情動を表現、解放しつつ想起することである。安全な治療環境を与えられたうえで、徐々に体験を想起し、それにまつわる情動を扱えるだけ表現、解放していく。しかし、カタルシス(抑圧された感情や体験を言葉や行動として外部に表出して、心の緊張を解消すること)を起こすことには慎重でなければならない。ゆっくり話し、本人がそれから離脱していくことが大事である。
  脱感作療法としては、その外傷の起きた場所に立ち戻ったり、それに関する写真や記事をみせたりなどの試みや、イメージ療法など、外傷の起きた状況をイメージにより再体験することを繰り返すことで、それに対する反応を軽減する方法がある。
  その他の具体的な治療的介入としては、患者に対する教育(外傷性の障害の持つ性質や治療計画について説明を行う)ないしはリラクゼーションの具体的な方法を指示する、などがある。

 2. 薬物療法
   外傷性ストレス障害のための薬物療法は、心理的アプローチの補助として、あるいは対症療法として行われる。
  急性期ないしはフラッシュバックにおける症状、ないしは不眠を軽減するためには少量の benzodiazepine(clonazepamなど)が有効な場合が多い。短時間型の benzodiazepine は、断薬により離脱症状を引き起こし、症状を悪化させるためにあまりすすめられない。急性期に解離症状が頻発している状態では、主として自傷行為を抑えるために、抗精神薬をはじめ、個々の患者に有効な薬物を選択する必要があろう。
  慢性期の外傷性ストレス障害に対して種々の抗うつ薬が有効であるとの報告がある。三環系抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)である。過覚醒、焦燥感などに対して、carbamazepin、sodium valproate などが有効であるとの報告もある。そのほか過覚醒や驚愕反応に対するβ遮断薬(propranolol)や中枢α2刺激薬(clonidine)などが用いられる場合もある。
  ただ、SSRIにしろ、抗精神病薬にしろ、即効性ではないから、それを考えて治療者ー患者関係を良いものにして、本人に治療への期待を持ってもらうようにすべきである。すなわち、どの薬物を用いる場合にも、信頼に基づく治療関係が成立していることが前提となることはいうまでもない。

< まとめ >
 心的外傷となるような体験をしたとき、どのような治療をしたとしても体験の記憶そのものは消えない。したがって、心的外傷の治療は、心的外傷の記憶をなくすことではなく、そのような体験があっても、そこからまた生きられる、自分自身が対処できるという確かな感じを得ることであると考えられる。

参照文献:新現代精神医学文庫「解離性障害」より転載

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