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春江一也コミュの【ネタばれあり】上海クライシス ― 読書感想文

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「上海日本総領事館員自殺事件」をヒントに書き下ろされた「上海クライシス」。

皆様の読後感はいかがだったでしょうか?

コメント(1)


本書を純粋に物語として楽しみたい人は、以下を無視されることを強くお勧めします。


















Amazonでは概ね高評価の「上海クライシス」。

http://www.amazon.co.jp/%E4%B8%8A%E6%B5%B7%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%82%B9-%E6%98%A5%E6%B1%9F-%E4%B8%80%E4%B9%9F/dp/4797671602


著者は、ノンキャリの若手外交官が任地で特別な背景を持つ半端じゃない美女と恋に落ち、外交官としての自らの立場と恋の狭間に立って苦悩の限りを尽くすというプロットがお好きのようで、それが「プラハの春」や「ベルリンの秋」では物語としてとても良い方向にいっていたと思います。

しかし・・・、です。“蓄え”を使い果たしたのか。いかんせん彼は中国を知りません。

経歴においても、これまでの著作と「上海クライシス」における決定的な違いが明白です。

Wikipediaによる著者・春江一也氏の略歴は以下の通りです。

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春江一也(はるえ・かずや/1936年10月9日-)は、東京都生まれの作家。外交官時代の体験談を生かした小説を執筆している。

略歴
1962年、外務省に入省。68年、駐チェコスロバキア大使館在勤中「プラハの春」に遭遇し、ソ連軍侵攻の第一報を打電する。
その後駐東ドイツ大使館、在ベルリン総領事館、在ダバオ総領事館等に勤務。
2000年、定年退官。同年、日比友好と相互理解推進の功績により、ダバオ市議会より名誉市民称号を贈られる。
引用:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%A5%E6%B1%9F%E4%B8%80%E4%B9%9F
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2005年に発覚した在上海日本総領事館員の自殺事件にヒントを得たという本書は、実際に後輩たち(チャイナスクール出身者を含む)から取材したであろう中国の事情と、比較的偏った視点の書物から得た知識、旅の経験と地図からの空想、また“東側(この点では彼は専門家であると信じます)”の文法に則って読み取ったであろう中国共産党の序列とパワーバランスから思い描いた妄想、そして、中国に対するステレオタイプ的な見方が歪に入り混じった駄作であると言わざるを得ません。

私も、SFに“科学”は求めません。インディ・ジョーンズに“史実”やら“考古学”は求めません。娯楽映画だからです。

しかし、本書は中国について、彼ら(中国人)が外国人に開示するとは到底考えにくい、ごく限られた人間しか知らない特別な事柄のいくつかを実に正確に描写しています。
であるにも関わらず、89年の天安門事件で戦車が学生を轢き殺したとか、法輪功が健全な組織であるとか、そういった単純な一般通念を擁護しています。

すべてがフィクションなら、作家の想像の産物であれば何があってもいい。

しかし、本書はそうではありません。一部で描写されている事柄が、通常では知りえない事実であることこそが本書をフィクションの枠組みから逸脱させており、問題なのです。

加えて、本書を構成する基本要素である新疆ウィグル自治区の少数民族の論理に対する認識は、著者はただの観光客であると言わざるを得ません。

北京五輪も終わった今になって結果論的にではありませんが、胡錦濤国家主席が北京オリンピックの開会式で「中国共産党の発展的解散」を宣言するというのは、中国に対する無知の極みであり、本書の駄作ぶりを象徴して余りある結末です。

そのあたりのバランスの悪さにものすごく疲れるというのが、私にとっての「上海クライシス」の読後感です。

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