ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

虹色文庫コミュの学園らくご領域・第1話

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 いよいよだ…。
 今日から俺は生まれ変わる。このドアを開けたらきっとみんなが温かく迎えてくれる。今までの学校生活で味わうことのなかった『ひとのあたたかさ』…
 それを今日、俺は思う存分に味わうことができるのだ。

 さぁ……いざ行かん……!!



【第1話】

―1――――――――――――――――――――――――――


 俺は騎馬 史郎(キバ シロウ)。
 今日からここ岩朽木高等学校に通うことになった。前の学校ではクラス全員にハブられていたのでこっちから話しかけたり絡んで行ったりするのは苦手な感じだ。
 え?何故ハブられていたかって?
 何を隠そう、俺は極端に霊感が強い。例えばな、ほら…そこの君、水子の霊が憑いているよ。あと…そっちの君は血だらけの女性の霊が憑いている。
 と、まぁこんな感じで霊の存在に気付けてしまう。しかしこれを聞くとみんな気味悪がって俺に近づかなくなってしまう。だから前の学校ではハブられていたんだ。それでもう嫌になって自殺しようとして屋上から飛び降りたら木に引っ掛かって……




 ……ってちょっと待て。


 俺は何をしているんだった?

 そうだよ自己紹介だよ。俺は新しいクラスの教室の教卓の前に立ってクラスみんなに向けて自己紹介をしているのだ。
 その自己紹介で…俺は、俺の何を紹介した?思えば俺は大人しく名前と血液型と生年月日と星座というテンプレートのままに自己紹介していればよかったのではなかったのか?
 そう。俺は意外に喋り出すと止まらないタイプで、人前に出るとベラベラとトークを炸裂させてしまう。それだけならまだ良いが、調子付いてくるとかなーり余計なことを口走ってしまうのである。
 そして今回もやってしまった……。新たな生活において秘密にしておくはずであった霊感のことを、軽々と!あっさりと!!そして確実に述べてしまったぁぁぁぁぁぁぁ!!!



 ……そして気がつくと教室じゅうが凍り付いたように静まり返っており、その全員の目はまるで汚物を見るような…ゴミ屋敷に埋もれた一年前のシチューを見るような…っ!この世の終わりを見ているかのようなぁぁぁやめろぉそんな目で俺を見るなぁぁ!!!!


 そのまま何分が……いや、何時間が経過しただろうか。その無音の時間は酷く長く感じた。そしてその沈黙をお決まりの台詞で破ったのは、担任の白銀(シロガネ)先生だった…。

『……では騎馬くん。一番後ろの窓際の端の席が空いていますので、そこに着席してください。』

 俺は返事をせずにその席へ向かった。もう、俺の学園生活は終りだ……。明日また自殺しよう。



 ――そんな俺に、生きる希望を与えてくれた奴がいた……。

『騎馬くん』

 そいつはそう言いながら俺の右手に自分の左手を乗せた。凄く温かい。


『仲良く……しようね?』

 何だろう…不思議な感覚だ。その声は、俺の凝り固まった心をみるみる目覚めさせた。

 そう……俺の目線の先にいたのは


 白髪で赤目の…黒いマスクをした巨漢!!なんだこの暴走族は!!!!


 そうこれはまさしく、正真正銘の『ヘンな奴』との出会いだった……。この出会いによって俺は、

 こんなヘンな奴がこの世に居ていいのなら、俺だって生きていていいのかも知れない


 そう思わずには居られなかったのであった……。


―2――――――――――――――――――――――――――

 俺は屋上のドアの横に寄り掛かり時間を潰していた。もう教室には俺の居場所はないし。今日はここでずっと時間を潰し、明日からは引きこもりDayの開幕式を執り行う。一人暮らしだが、浮遊霊とコミュニケーションを取っていればそれなりに寂しくないしな。

 と、その時だった。

 上から大量の雨が降ってきて俺の視界を瞬く間にオレンジ色に染めたのである。


 いやまて、これは……

オ レ ン ジ ジ ュ ー ス だ。



「あっはははははは!!」

 上から女の笑い声が……。なんだ?悪霊でも現れたのか!?

「悪霊じゃなーいっすよー」

 また上から聞こえてきた。俺は恐る恐る上を見た。
 そこに座っていたのは、女。それもいたって普通の女子高生のようだ。
 幽霊ではない……らしい。

「な…なんだよ、お前は。」
「君、転校生…っすか?なんか自己紹介で失敗したんすか?」

 え…まだ俺何も言ってねーぞ。なんでわかったんだ…?

「まぁ、人には色々あるんすよ。人生色々っすねー。」
「てかお前か。このオレンジジュースぶっかけやがったのは!」

 畜生、からだじゅうベタベタしやがる。

「いやー…元気づけてあげようかなって思っただけなんすけど、不快にさせたなら申し訳なかったっす…」
「……まぁいいけどよ。とにかくほっといてくれ。俺は誰とも話したくない。」
「けど、本心はそう思ってないっすねー!私が相談に乗って差し上げるっすよ!」
「はぁ?勝手に決めるんじゃねーよ!ほっといてくれっつってんだよ!!」

 ついつい言葉が強くなってしまう。 だがこの女、凹むようすはない。

「あははは。意地っ張りっすね!いいから何があったか話してみるっすよ!思い返すだけでもいいっすけどね!」

 くそ、しつこい。これも自己紹介で自分の霊感のことや自殺未遂したことまで喋ってしまったのが悪かったんだ。それさえやらかさなければ今頃教室で…

「霊感?自殺未遂?」

 この女は唐突にそう言った。俺はぞっとした。

「…なっ……な、なんでっ…」
「霊感が強くて自殺未遂したっすか?」

「なんでわかったんだよ!!」

 いま俺は霊感のことも自殺未遂のことも、心のなかで思っただけで決して口に出して言ったわけではなかった。なのに…この女っ……!!


「私、人の思考を読めるんすよ。」

 ひっ…人の思考が読める!?
じゃあ何だ!いま俺が考えていることが分かるってのか!?

「『…いま…俺……考え…分かる…。』……そうっす!分かるんすよ!ただ、飛び飛びにしか分かんないっすけどね。」

 またヘンな奴!そしてこいつは輪をかけてヘンだ!!ありえない!

「ヘンだヘンだと言わないで欲しいっすよ。私に言わせれば自殺未遂のがキツイ事実っすよ。霊感はともかくとして。」

「やめろ!俺の思考を読むな!この異常者…」



「…………………

  申し訳ないっす。」



 女は漸く思考を読むのを止めた。しかしまだ恐怖は収まらない。ありえないありえないありえない。


「…私は……あなたなら、わかりあえるかなって、思っただけっすよ。調子に乗って申し訳なかったっす。」

 ………わかりあう……?


 そうだ。俺だっていつも自分のことを分かって貰えない。だから苦しんで来たんじゃないか。それはこいつも同じで……ずっと人の思考が読めてしまうことを悩んで来たんじゃないのか……。


「わ…分かって貰えたっすか…?」

「ごめんな…。」

 そいつは笑った。

「いいんすよ。仲良くして欲しいっす。」
「本当にごめんな。異常者なんて、言い過ぎたよ。ごめん。」

 自己嫌悪で、吐き気がした。

「いいんすよ。それが普通の反応っすから。だから、後から気付いてくれただけで凄く嬉しいっす。」

「……俺は、人の思考が読めなさすぎたな。そっちのほうが大問題だな…」

 俺は苦笑した。


「私は、志月 あかり(シヅキ アカリ)っす。」

 そういって彼女は握手を求めて来た。ヘンじゃないといえば嘘だが、いい奴なのは分かったから…

「騎馬 史郎だ。よろしくな。」

 俺はその差し出した手に、応えた。



―3――――――――――――――――――――――――――


 俺たちは屋上で二人で話をしていた。


「ねぇ…、あ。史郎くんって呼ぶっすよ。」

「うん。じゃ俺はあかりって呼ぶ。…で、どうした?」

「史郎くんって部活とか決まったんすか?」

「あー部活か。入ってないよ。ぶっちゃけ帰宅部のつもりだったが…」

「じゃ…じゃあ、『らくご部』に入らないっすか?」

「らくご……落語かぁ。あかりもそこの部員なのか?」

「そーっすよ。人前で堂々と自虐したり秘密を暴露したりできる史郎くんならきっとピッタリっすよ!」

「そっ…そうかな…」

 確かに俺はトークには自信があった。余計なことをベラベラ言ってしまう悲劇的な癖はあるけれど、口自体はよく回る。落語をやることはもしかしたら俺の人生を好転させるチャンスではないだろうか。

「よし、分かった。入ってみよう。」

 うまくすれば霊感が強いことも話のネタになる。総じて決して悪い話ではなかったので俺はすんなりと受け入れた。



――だが、この選択は完全に間違いであったことに、この時の俺が気付くことはなかった……―――――



◆コメントに続きます◆

コメント(24)

―4――――――――――――――――――――――――――


 あかりには、一時間後に部室へ来いと言われていた。あかりに描いて貰った地図を頼りに俺はその部室にたどり着いた。

 『 ら く ご 部 』

 ドアの貼り紙にはそう書かれていた。ここで間違っていないようだ。
 俺は意を決してドアに手をかけ、思い切り横に引いた。

ガラガラガラ―――――!!

 ドアが威勢のよい音を立てて開く。

『っ失礼しま――――す!!』


 ……一瞬何がなんだか分からなかった。中に一人、ちょこんと椅子に座っている男が……


 そいつは……

 そいつは…………



さっきの黒マスクの暴走族!!


『まっ…ままっまっ…
 間違えましたぁぁぁぁ!!』

 俺は慌ててドアを閉めた。

 何ということだ!あろうことか俺は部屋を間違えて暴走族のたまり場に突っ込んでしまったんだ!!
 俺は、あいつが追って来ないかと後ろをチラッと見てみる。

 ガラガラガラッ!!

 ドアが開き、暴走族が出て来た!!

『うわぁぁぁぁぁぁっ!!』

 やばい、このままじゃあいつにボコボコにされる!!下手したら殺されるっ!!俺はそこから全力疾走!!


「あ!騎馬くん来てたっすか…
…って、慌ててどうしたんすか!?」

「あかり!あかり逃げろ!!暴走族が追ってくる!!」

 後ろを見ると、暴走族が凄い勢いで走ってくる!!

『キィィバァァくぅぅぅぅん!!』

 なんか叫んでる!怖い!!


「あ、ザクロくん!こんちゃっすー!」


 ―――――え゙?


『こんにちは。』

 暴走族が素直に挨拶するなんて……まさかあかり、暴走族のボス!?

「失礼っすね!私もザクロくんも暴走族じゃないっすよ!」

 …………へ?

「ザクロくんはれっきとしたらくご部の部員っす。こう見えておっとりしたいい奴なんすよ。」

「じゃ…じゃあやっぱりさっき俺が行った部屋が落語部?」

『そうだよ。キバくん。』

「そっ…そうか……暴走族のたまり場じゃなかったのか……」

『ボクは檜皮 柘榴(ヒワダ ザクロ)っていうんだ。よろしくね。』

 ……顔と声が全然一致しねぇ……


 俺たちは改めて部室へと向かった。こいつらが今日から仲間になるのか。ヘンな奴らだが、決して悪い奴らじゃないみたいだ。これからどうなるかは分からないが、何だか楽しみだぜ。


ガラガラガラ―――!

 改めて……

『失礼しま――――す!』


「やぁ、騎馬史郎くんだね。ようこそらくご部へ。」

 さっきは檜皮に気を取られすぎて気付かなかったが、中にはメガネの少年がいた。

「俺が部長の女郎花 脇太郎(オミナエシ ワキタロウ)だ。新入部員の騎馬史郎くん、よろしく!」


 こいつが部長か。なんだか今までの奴らと比べてあまりに普通だから拍子抜けだな。

「さぁ、騎馬くん。こっちへ来てこの紐を引っ張りたまえ。」

 部長の前には紐が垂らされており、その上にはサッカーボールより二回りくらい大きい玉が天井から吊されていた。
 ははっ、くす玉か。随分とかわいい歓迎会だな。

「了解だぜ!」

 俺は部長の前まで歩いて行き紐を掴み、思いきり下に引っ張った。

 パカンッ!!

 読者はここで玉が爆発したり金盥が落ちてきたりってのを期待するかもしれないが、もちろんそれは悪戯とかではなく普通のくす玉であった。確かに普通のくす玉であった。こいつららくご部部員達も、きっと何も悪気はなかったに違いない。
 だが、俺がこの時味わったシヨックは計り知れない。


 くす玉から垂れ下がった垂れ幕に書かれていたこと。

 それは………







落・
伍・
部・





!!


らく‐ご【落×伍/落後】
[名](スル)
周りから後れること。ついていけなくなること。「―者」



「はっはっは、これから宜しくな!新人落伍者の

 キ・バ・くん☆」


『らっ…らっ……

・・
落語部じゃなくて!

・・
落伍部だったのか!!!
うわぁぁああぁぁあぁぁああ!!!』



―――こうして俺は学園きってな落伍領域に足を踏み入れてしまったのだった。



【学園落伍領域/第1話・完】
続きがメチャメチャ楽しみでするんるん

落伍部の面々もキャラ濃そうですねウッシッシ指でOK
コメントは誤字直せないよなぁー

≫R嬢さん
 高校のとき描いていた漫画が元ネタです。ヒロインは事情により元々とはだいぶ違うキャラになっています。
 柘榴くんは純真無垢です。
ナルホド!そっちの落伍やったんですね!

あかりさんも柘榴くんも女郎花くんもいい人そうなんで落伍部楽しくなりそうやと思いますが……


実に続きが楽しみですリボン
落伍者の落伍ね。

先の展開が読めないですね。

更新が楽しみです。
≫クリーリンさん

そっすー
みんなイイヒト楽しくなるっすー
≫ウッディさん

毎回一話完結みたいな感じを予定してます。

原作のほうは霊感の設定を活用できていなかったのでその辺りふんだんに活用していけたらいいなー。
一話完結、いいですね。


今回は、プロローグという所ですね。

楽しみが増えて嬉しいです。

お互いに頑張りましょうね。
≫うっでぃさん

はい。怪奇探偵も(これ以上)疎かにしないように頑張ります。こっちも頑張ります。頑張りまーす。
楽しみやわ(笑)

とりあえず自分の連載そっちのけで読みあさってます(笑)

読む物がないとき書いてますから大丈夫ですが(笑)

日々読書
≫CIELさん

 リンク集ありがとうございます。漸く本コミュニティで書き手として作品を掲載できたことを嬉しく思います。本来はホラー書きのためギャグ路線には自信がありませんが温かい目で見守ってやってください。
すごいじゃないか。


あと5回くらい失恋したら、もっとすごいキャラが浮かぶと思うよ。
僕も苦手です(笑)

でもがんばりますむふっ

アップは遅いかもだけど許してねわーい(嬉しい顔)
ボクもギャグはニガテです。


1番得意なのは【硬派な男】系の話ですかね。
でびさん
マジ(笑)

てかどうすればプレミアとれますかね冷や汗
≫でびちゃん

失恋は3回しました。
あと3回失恋させました。
これ以上は言えません。

でびさんの描かれる斬新なキャラクターを私は目標とします。
みんなギャグ苦手なのにあんなに面白いのか。自信なくすなぁ。

私はプレミアはイラストコンテストで取りました。
でびさん

誕生日プレゼントはプレミアでいいですよ(笑)
もう一ヶ月経ったのか。
そろそろ続きがんばろう。
IRONYも、こちらも、楽しみに待っていますよ。

是非、宜しくお願いします。

m(__)m
メッサ楽しみですわーい(嬉しい顔)

僕もイベントが終わったら書くつもりなんでお互い頑張りましょうほっとした顔
第2話うpしました。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=40254560&comment_count=0&comm_id=3120569

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

虹色文庫 更新情報

虹色文庫のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング