ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

パイロットコミュの飛行機雲 特別編 ハイジャック アフリカの赤い星 第5部

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
機内では週刊誌新聞などあらゆる読み物を隅から隅まで読む、目が疲れると寝る。用があると手を上げる、三食昼寝付である。機内温度もだんだん下がり始めたようだ。何時間かたって目がさめた。隣のお嬢さんも席を替わってご両親のところへ行ったようだ。後ろのオバサンが夜多くの電灯の光を見たという。かなり大きな町らしい。“Fasten your seatbelt hold your hand behind your head.”のアナウンスがありスチュワーデスが紙箱入りの朝食を運んでくる。いくらか寝た顔だ。時々?がんばれよ!“と声をかける。箱の上に ”International air port Dubai ”の文字が印刷されている。早速機内の地図を広げ位置を確認する。「ある」確認ができて実に嬉しい。しかし昨夜見た地形や太陽の方向から判断してドバイとはどうも納得できない。もしかしたらインチキかもと一応は疑ってみる。
時折周ってくる週刊誌も一度見たものが多くなり全く希望のない生活である。乗客も皆我慢しているのだろう。皆ちゃんと手を上げて用を済ませている。時折中には要領のよい老人もいる。まるでプロレスのバトン・タッチのインチキを見るようだ。乗客の多数は中老年が多いのも客室内が静かな理由だろう。一人いる女の子「四歳」も実に静かで時々あやしにくるスチュワーデスとも大きな声も出さず遊んでいる。自分の娘と比較して雲泥の差である。自分の娘ならオヤジ同様一つや二つポカッとやられているだろう。 
                        
スチュワーデスの一人が日本のリンゴがあると言う。大きなリンゴが・・・・だから日本の救援隊がきているという。時間的に見てソロソロ来てもよい頃だ。機内は22℃位の快適な温度だが救援隊はさぞ大変な事だろう。立場の相違を想像しかえってハイジャックされた自分をよかったと思ってみる。早くリンゴの日本が見たい。救援隊到着の二ュースはたちまち機内に行き渡ったようだ。PCBでもなんでもかまわないと言う気持ちだ。
時折ハイジャッカーが回ってくる。赤シャツが隣りの席にくる。いやになれなれしい。
“Are you a DC-8 captain?“”YES“ ”I will hijack DC―8 next time what do you think ?“ 何をヌケヌケと思ったが ここで怒ってはいかん!!”I don’t care at any time、 but  would you tell me the time when hijack “ 案外スラスラとでた。”I must take a lot of sleep before hijack “ニタリと笑いながら去る。赤シャツは両手に何も持っていなかった。
二十三日、もう朝昼夜の区別がつくようになつた。朝から“PCBのリンゴですよ“とスチュワーデスも笑顔が返って来るようになつた。朝食が済むとスチュワーデスが一片の紙を持ってきて今日は市村嬢の誕生日という寄せ書きである。普通ならば東京で恋人と楽しい夕べを過ごすだろうにと可愛そうになるがこれも人生の人生たる所以である。オメデトウと書き加える。ここで面白い事を思いついた。ハイジャッカーにもお祝いの言葉を書かせてやれ。何かの役に立つ。グット・アイデア早速実行する事にする、殴られてもともとだ。しかし殴られぬ相手を物色する。ころはよしとプロフェッサーの近づくのをまって切り出す“今日はスチュワーデスの一人の誕生日である、われわれは皆書いた。あなたもお祝いの言葉をどうぞ”とペンと日航の絵ハガキをそえて出した、殴る気配はない。しかし
“I am sorry I cannot、thank you.”と一瞬のためらいの後、言い残して行ってしまった。何の事ない彼の右手にはしっかりピストルが握られていた。                                             
よくこの狭い機内で安住できるものである。夜もよく眠れるようになった。多くに乗客は二席を占有しそれでもかなりきゅうくつな格好で寝ている。足がしびれ腰が痛くなる。しかし三日目となると体が座席に合って来たようだ。それでもやはり本調子ではない。下痢か便秘の人が多い。努めて私は複式呼吸や呼吸を止めたりして心臓に負担をかける。毎日46時中ヨガみたいな格好をしているのに何故かヨガの効果が現われなかった。
トイレはもう既にその容量を越えてしまい多分に臭気をはなっている。締め切りの張り紙も出てスチュワーデスが呼ばれて清掃させられている。実によく仕事をしていやな顔一つしない。客室乗務員部ではどんな教育をしているのだろう。自分の家ではと大体の想像はつく。                 
夜、急にあわただしい動きを見せ始めたハイジャッカーたちはわれわれに厳しく上に手をあげるように指示するとともに今回違反する者は討つと宣言した。機外の音も何やら騒々しく荷物のドアを開けるような音が二、三度した。われわれも多分乗客の荷物を救援機に載せ替えている音と想像する者もいたようだ。
大体厳しい後は明るいニュースの発表という既成概念がよくなかった。“Hands up”の時間もかなり長い。次いでライフベストの着用も指示された。さあ一大事である。機内はあわただしくライフベストの着用の仕方酸素マスクの使い方の説明など本来の仕事に立ち返ったようなキビキビした動きを見せている。
目的地は半分くらい海上だとの話も伝わってくる。女の子の傍には酸素ボトルも運ばれてきた。私もこの際だ。一つ一つ席を離れる許可をもらう雰囲気ではない。立ち上がっていろいろと手伝う。もうとっくに小沼機長も高木副操縦士、浦野航空機関士とも客室から姿を消している。ライフベストの着用を手伝い又緊急脱脱出時の席の配分も決まったようだ。私はL5を手伝う事にする。クマ公だ。目と目が合った。
“Where is your seat ?” “L5” “I am captain 、not you.“ またもや ガツンである。
今回はかなり痛い。しかしいかに怒りいきがっても人間の顔には滑稽味があるものだ。判ったよという意味で“にたり!”これがまた相手の癇に障ったらしく “Don’t laugh、put your cigarette in your pocket match also、look at me repeat my order.“ 今度は笑ってはいられない。目もつぶれない。顔をしかめる位痛かった。やがて一難は去った。                                    
機はエンジンをかけると懐かしいフラップのモーターの音がした。いよいよ離陸である。乗客は皆なれぬ物をつけさせられ多分に緊張の面持ちである。やがてエンジン全開に続いての急加速と緊張の度合いが進む。かなり長い時間をかけてゆっくりと機首をもたげたと思うとどこともなく飛び去る思いである。
目的地は皆目見等が付かない。私だけブラインドを開けさせてくれない。フテ寝を決め込む。時計を見る。十一時である。「アンカレッジ時間」途中かなり揺れている。一度ミシッと機体が鳴ると何処かで悲鳴が聞こえた。それもはずかしかったのであろうか二度と聞こえてこなかった。
後席のオバサンが盛んに機外の事を教えてくれる。大きな町のようだ。旋回している。旋回はもう止めたようだ等‥機体の振動も少なくなり機も何度か方向を変えたようだった。三時間位過ぎた頃次第に高度を下げた。とある飛行場に降りたようだ。かなりの急ブレーキである。あまり大きな飛行場ではなさそうである。時計は二時五十分「アンカレッジ時間」を指していた。もう完全にフテ寝である。ママヨとでもいうように何もする意志はない。気違いに刃物、武器に勝つ方法は見つからぬ。    
二〜三時間も経ったろうか。再びエンジン始動後離陸開始である。太陽はもうあがっていて機種方向が判る。機体は大きく旋回している。太陽のあたり方が急に変わっている。機は二~三回回っているらしい。が次第に機首方向を決め一直線に飛びだした。東に向っている。何だか変だ。しかし確かに東に向っている。どう考えても判らない。地図を見る。北緯30度附近、北回帰線附近、朝日やっと判ってきた。
機首方向は西でも朝日は機体の右からさしてくる。やっと謎が解ける。しかし目的地は判らない。赤シャツがくる。何も考えず ”Where is your destination?“ ”Benghazi“ 簡単である案ずるより生むが安しこの情報はすぐ流した。しかし最初の爆発で二名の女性が死んだとの情報がありこのチャンスに確かめてみる事にする。赤シャッは一名だけと答え続いて手榴弾の暴発を防ぐため体で覆い被せるゼスチャーをした。これを聞いて何だか割り切れぬ思いがした。また宮下チーフパーサーがDubaiで病院へ行った事もこの時点で知った。
この頃、私も度胸を決めて他の乗客のようにブラインドを引き上げた。海の上である。完全に地中海を西へ飛び続けている。ずいぶんアチコチ飛んだものである。しかもアラブの国巡りの如くである。 “JALパック アラブ”近い将来 流行るかもしれない。
                              
機が陸地にはいりまた海上に出るような事が続いた後、完全に陸地に入った。道路が目に入る。赤く燃えただれたような山肌だ。緑色はごく少ない。初めてのアフリカ大陸である。
もう直ぐ着陸だ。ハイジャッカー達も次第に動きが激しくなってきた。プロフェッサーは飛行中は絶対姿を見せない。操縦室専門らしい。日本人がマイクを取り上げてなにやら喋っている。“アメリカ、独、日本の帝国主義・・・”例のヤツである。しかし次第に調子を上げ声も一段と大きくなつたようだ。
“この飛行機を爆破します!”                     
私は耳を疑った。ついに最悪の事態が迫ってきた。しかし着陸後と言っている。どこに着陸するのだろう。飛行場はあるのだろうか。客室では乗務員が乗客の荷物の変換も終え乗客は自分の荷物のカバンや土産物を持ってこれから釈放される時の嬉しさと日本に帰ってからの家族団らん等の楽しい思いをめぐらせていたが、しかしハイジャッカーのアナウンスにより自分達が最悪の窮地に追い込まれている事を知った。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

パイロット 更新情報

パイロットのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング