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≪祥247の小説置き場≫コミュの『思い出前夜』

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更新しなくてすみません・・・。
まだ大学生なので許してください・・・。

進級発表が終わったら必ず「if...」を書きます。

とうわけで今回は・・・

Yahoo!の小説コーナーに投稿した作品です☆


テーマは思い出。
次数制限にも苦しみました・・・。
今回は1話完結の短編になります。


作品に関するエピソードについてはこちらをご覧ください。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=589523563&owner_id=6257402




それでは本編へ!



***************



「さあいこうぜ!!」
人は自分の人生の中で主人公を演じる。でも本当に主人公になれる人間というのは
この世に何人いるのだろうか。もしかしたら、今この瞬間の主人公は自分なのかもしれ
ない。観客の間の通路を駆け抜ける。世界の中心がここにあるような気がした。
ロイター板を強く踏み込み、大きくジャンプする。そのまま前方宙返りで舞台に上がる。
後ろから和也と薫がついてくる。最後に先輩の高松さんが舞台に上がると、袖から他の部
員が出てきた。俺は主人公から主役格へとランクダウン。しかしそんなことは気にならな
かった。ここのみんなとこうして舞台に立てる喜び。単純に誇りに思えた。
「本日は忙しい中お集まり頂き、ありがとうございます。今から8分間と大変短い時間で
はございますが、私たち体操部の発表を見ていただきたいと思います。みなさんにとって
私たちの発表が少しでも学校選びの役に立てれば嬉しく思います。ではごゆっくりご覧く
ださい。」部長の笹本美由が丁寧な挨拶をする。俺はミユの左側をキープする。俺より1
個上の3年生。なのにすごく幼い顔をしている。身長も150センチくらいしかないはず
だ。
「最後の舞台、楽しんでやろうぜ。」俺はミユにささやく。先輩だからって敬語を使う必
要なんてない。俺たちは付き合ってるんだ。
「う、うん。」緊張した様子でミユは頷いた。いや。こいつのポーカーフェイスを見破れ
るのは、俺と先輩のカッシーくらいだと思う。部員からカッシーと呼ばれている柏原葉月
は本当にいい先輩で、人に対する気遣いができる人だ。
「まぁそのうち楽しくなるでしょ。」そういって俺はミユの頭をくしゃくしゃにした。
そういう俺も緊張していないわけじゃない。でもこの感覚は嫌いじゃない。むしろ好きだ。
記憶に残るものって楽しいこともそうだけど、怖かったり、緊張したり、そういう五感を
揺さぶられる経験というのも残りやすいのだと思う。
俺は舞台の裏を通って反対側の自分の立ち位置についた。正面にはミユがいる。
ふとミユと付き合うことになった時のことを思い出した。恥ずかしい話だが、物凄く赤面
したのを覚えている。技に入る直前に目を閉じる。自分だけの儀式だ。目を閉じると、不
思議と記憶が蘇ってくる。ミユに告白したときのことだ。

「じゃあ俺と付き合ってくださいよ。」携帯の送信ボックスを開き、たった今送ったばか
りのメールを確認する。(ホントに送っちまったのか・・・。)電話を閉じ枕の横に放り
投げて、そのままベッドに横になった。そのまま目を閉じる。メールでの告白なんて男ら
しくない。でもこの瞬間に告白せずにはいられなかった。
「「ブーン。ブーン。」」
着信を告げるリズム。相手が誰なのかはわかっている。ミユだ。まさか電話だとは思わな
かった。
「・・・もしもし。」
「・・・本気で言ってるの?」いきなり核心をつかれた。言うまでもない。決まってる。
「本気です。先輩が内部推薦で忙しいのは知っています。でも・・・。」
「今から出てこられる?」俺の言葉なんて初めから存在しなかったかのような対応。俺は
返事につまったけど、とりあえずOKした。まだ20時前だ。お互いの地元の中間の駅で
待ち合わせることにした。
俺が待ち合わせの場所に着くと、ミユはもう来ていた。まるで人形のようだと感じた。
「どうも。」とりあえず声をかけた。自分がリードするなんて考えてはいないけど、先に
声をかけるのは自分の仕事だと思った。
「呼び出してごめんなさい。」ミユはぺこりと頭を下げた。俺との身長差は20センチ以
上ある。一瞬だけだけど、ミユが俺の視界から消えた。
俺は大胆にも両手でミユの頬に触れて上を向かせた。今更メールで告白した事実は消せや
しない。でもここでミユにリードしてもらったら一生同じ場所には立てない気がした。
「女の人と付き合った経験ってほとんどないし、正直どうしていいのか・・・でも先輩の
好みに少しでも近づけるようにしたいです!!だから・・・俺と付き合ってください!」
今思い出しても鳥肌が立つ告白だった。でも不思議とフラれる気はしなかった。いや。こ
れは後になって思っただけだからあてにはならない。頭が真っ白だったのだから。
「私、勉強だけしてたらノイローゼになりそうです。」ミユが話し始めた。何を言ってい
るのかわからなかった。
「それに高校生活も来年で終わりだし・・・好きなことして好きなもの食べて・・・好き
な人と一緒に・・・。私でよければ・・・お願いします。」
最後のほうはほとんど聞こえなかった。でもフィーリングでわかった。さっきまで人形み
たいだったミユが真っ赤になるのを見て、少しいたずら心が芽生えた。もう自分は冷静だ
と思っていた。自惚れかもしれないけど、この時は確かにそう思ったんだ。
「先輩、抱きしめてもいいですか?」大胆不敵。俺はミユにそう言った。俺の予想ではミ
ユは恥ずかしそうに顔を真っ赤にしておどおどすると思ったいた。
「どうぞ〜。」ミユは少し頬を赤らめただけで両手を広げた。
「・・・マジですか?」赤面しておどおどしたのは俺のほうだった。やっぱり先輩。敵わ
ないなと感じた。自分がどんな顔していたのかなんて今でも思い出したくない。
なかなか実行にうつせない俺を見かねたのか、ミユは背伸びして俺にキスをした。このと
きの感触は忘れられないと思う。俺の遅めのファーストキスだったのだから。

「「タン。タン。タン。」」
俺と和也と薫で順番にバク転を決める。何度も練習した技だ。他の連中にはマネできない
だろうという自信があった。高校生活で初めてできた親友たち。
最高の仲間と作り上げる最高の演技。中学までサッカー部にいた俺はなぜか高校で体操部
に魅せられてしまったのだ。高校にサッカー部がなかったのも理由の1つだと思うけど。
多くの体操選手は自分が技をしている姿を想像しているらしい。でも俺は違う。俺が想像
するのは「自分が技をしているときに見える景色」だ。
体育館に寝転がった人ならわかると思うけど、体育館の天井っていうのはなかなか不思議
な作りになっている。ところどころパイプが見えたり、普段は使われていないバスケット
のゴールがたたんであったり。
俺が1番好きなのは照明。体育館全体を少ない電球で照らさなければならないはずだから
なかなか強力なワット数のものを使っていると思う。自分の得意技の後方宙返りをしなが
ら見る照明には不思議な魅力があった。
例えるなら狼男として見る月のような感じだろうか。人間が狼になる瞬間に何を考えるか
なんて俺には想像できないけど、きっとなんでもできる気分なんじゃないかなと思う。
今このステージがどういう状況なのかがどうでもよくなってくる。学校見学にきた中学生
への部活紹介だとか、全国大会の決勝の演技だとか、狼男になるための儀式だとか。今な
ら最高の演技ができるんだ。
ステージもいよいよクライマックス。俺も今できる最高の技、ロンダート+後方宙返り
に挑戦する。薫、和也、俺の順番で技を決める。最後に高松さんの名前もわからないすご
い技が入るんだけど。
薫が技に入る。俺ら3人の中でも技のキレは最高だった。柔軟性があるのだろうけど、も
う少し別のなにかがあるんだと思う。薫はそのまま完璧に技を決めた。
そして和也が舞台に上がる。和也は技の大胆さで勝負するタイプだ。身体能力は3人中1
番だと思う。技に入る和也は頼もしい。見ているこっちがワクワクする。そして俺の番。
再び主役格から主人公へ。俺はどういうタイプの選手なのだろうか。ひとつ言えるのは俺
はどんな物語の主人公にも負けないということ。これが狼男の感覚なのかもしれない。
短い助走から技に入る。世界の中心がここにある。確かにあるんだ。
対角には和也に薫、そしてミユが待っている。今まで見た景色の中で1番だった。

昨日の余韻が残った体育館。「片付け」って言葉の響きは嫌いだけど、今日みたいな日は
結構好きだ。「片付け」の日も青春。そのまま合宿に向かうということもあってみんなの
モチベーションも高い。いつものようにバカ騒ぎをする。話題はいくらでもある。もっと
も話の中心は明日からの合宿に向けられているけれど。
「工藤、ちょっとええかな?」どこの訛りか知らないが独特の発音。カッシーが和也を呼
んでいるんだとすぐにわかった。カッシーは和也に惚れている。本人に確認したわけでは
ないけど、わかる。
「なんすか?」和也が立ち上がる。跳び箱に「体操部最高!!」と書いている最中の出来
事だった。時期が来たんだ。俺はそう確信した。真っ赤な顔からもそれを感じ取れる。
今からカッシーが和也に告白するんだ。あいつはなんて返事するんだろう?気になる。
「ここで覗かないとか男じゃなくね?」薫の意見に俺は同意する。いや。具体的な意思表
示なんてしてない。こういうときは気が合うんだ。それこそ不思議なもんだと思う。
「ちょっと!やめなさいって!」ミユが先輩口調で注意を促す。俺は黙って自分の人差し
指を立て、ミユの唇にあてた。「しーっ」の合図だ。ミユは少し頬を赤らめたが、ついて
きた。こいつも親友の恋愛は気になるらしい。もしかしたらただの好奇心かもしれないけ
れど。呼び出された場所は体育館の裏だった。ベタかもしれないが、今日はうちの部員以
外は校内にいないから人は全くいない。俺らは3人でしゃがみこみ、2人の言葉に耳を傾
けた。2人の姿を確認しようとミユが背伸びする。見つかったらまずいのもあるけど、そ
の姿が可愛かったのでわき腹をつついて静止することにした。ミユは一瞬ビクっとなって
頬を膨らませたが大人しくしていた。ここからは2人の言葉だけを楽しもう。カッシーの
赤くなった顔を見られないのは残念だが、見つかったらどうしようもない。
「どうしたんすか?いきなり。」和也の声が震えていた。俺たちは小説に出てくる登場人
物のような純粋な心は持ち合わせていない。体育館裏に呼び出す顔を赤くした女の子。こ
れから告白が行われるのは明確であった。
「工藤って好きな人とかおるん?」カッシーが切り出した。
「いや。いませんけど・・・。」
「あのな。その・・・工藤。し、下の名前で呼んでええかな?」
「え?下の名前って・・・。別にいいですけど・・・。」
「あのな。それから・・・うちのことも葉月って呼んで欲しいねん。」
「あ。はい。あ、いや、それは・・・やっぱ先輩だし。」
「君塚だってうちのことカッシーとか呼んでるから関係あらへん。ダメ、かな?」
「いや・・・。別にいいっすけど・・・。」そこでカッシーが勝負に出た。
「うちと付き合ってください。」
俺は思わずミユの手を握った。和也はどんな返事をするんだろう?不器用に、だけど一生
懸命になって自分の気持ちを伝えた彼女を。あいつはどう受け止めるんだろうか。
「よろしくお願いします。」和也が返事をした。そして今度はミユが俺の手を握り返して
きた。2人は今どんな顔をしているのだろう。お互いに何も言わない。俺はもう飛び出し
ていきたくて仕方なかった。しばしの沈黙。
「あの・・・俺。」沈黙を破って和也が話し始めた。俺の野次馬根性もしぼんだ。再び俺
は聴覚に全神経を集中した。
「彼女とかいたことってほとんどないんで、正直どうしていいのか・・・でも先輩の好み
に少しでも近づけるようにしたいです!!」俺は自分の顔が火照ったのを感じた。こんな
セリフまで親友と似てるのはどうなのだろう
か。ミユも頬を赤らめたが、イニシアチブを取りたかったのか、俺の頬をつついてきた。
俺はミユの頭をくしゃくしゃにする。主導権を握られるわけにはいかなかった。
「それなら・・・。」今度はカッシーが話し始めた。いくらかいつもの調子を取り戻して
いた。
「うちに1番優しくしてね!」
しばらく動けなかった。大胆とかそんなんじゃなく、心に入り込んで来た言葉。簡単な言
葉なのかもしれないけど、俺は心を動かされた。当然和也も同じ気持ちだろう。
「和也〜!!」薫が我慢しきれずに、2人の下へ飛び出してしまった。
「うわ!なんでお前が出てくるんだよ!!」照れながらもいつものように振舞おうとする
和也。顔は火照ったままだ。
「おめでとう。2人とも!」ミユもねぎらいの言葉を2人にかける。それに2人が照れた
のがなんとなく羨ましくなって、俺はミユの肩を抱き寄せた。
「次が本当のダブルデートってことになるな。」
「うわ。また俺だけ仲間外れですか。」薫が本当に恨めしそうに俺ら4人を恨んだ。
「お前まだ気がついてないわけ?」和也が可笑しそうに言う。
薫も鈍感だ。俺も和也も、ミユとカッシーですら知っているはずだ。後輩の上条昌美がこ
いつに向けている視線が最近違っていることに。

推薦入試のことで呼ばれたミユを待つ。バスも学校に到着して合宿に対するモチベーショ
ンも高まってきた。俺は一応和也とカッシーに気を使って1人で小説に目を通している。
薫は後輩の昌美と話していた。
(そろそろ気づくかな?)おせっかいだけど、そんなことを考えてしまった。
俺は小説の世界に旅立つ。主人公はもちろん俺。ヒロインをミユにしたかったけど、最後
のほうでヒロインが死んでしまう設定らしく、やめておいた。
目の前にはある道は「帰りの道」でも「行きの道」でもない。たぶん「寄り道」だ。自分
を構成する思い出、経験、仲間たち。笑ったり、怒ったり、泣いたり。これから行く合宿
もいずれ思い出になるんだと思う。未来のことなのに。あっという間に思い出になるんだ
ろう。
いつかは高校生活も終わってしまう。全部思い出になってしまうんだ。今はまだ色鮮やか
すぎて思い出と言えるのかもわからないけど、いずれは褪せてしまうのかもしれない。
「小説でも書こうかな。」そんなことを考えてしまった。いや。口に出した。
思い出はポケットにしまいこみたい。でも俺のポケットは四次元空間にはつながっていな
いんだ。入りきらない分はここに綴ろう。もう2度と忘れないために。
「ジュン!」
後ろから声が聞こえた。振り返るまでもなく誰だかわかった。
「お説教は終わったの?」
「お説教されるようなことしてません。」べーっと舌を出しながらミユは答えた。怒らせ
がいのあるヤツだ。いや。本当に怒ったら俺は立ち直れないかもしれないけれど。
「ミユ!5分後に出発だって!トイレとか今のうちに済ませとき〜!」カッシーが叫ぶ。
「あ。うん!大丈夫!」そういうとミユはカッシーの元へと駆け出していった。
「俺らも行こうぜ。」いつのまにか和也と薫が俺の横に立っていた。
「もう少しでキリがいいところまで読めるんだ。ちょっと待ってくれ。」
「しゃあねぇな。お前の荷物は持って行ってやるよ。」和也が俺の荷物を持ち上げながら
言った。
「あ。ミユの荷物は置いてっていいぞ。」俺はすかさず薫に言った。
「へいへい。やらしいですわね。」薫は変な目で俺も見る。口元は笑ってたので許してや
るかな。
和也と薫がバスに向かって歩く。俺は残りのページに目を落とす。ダメだ。キリがいいと
ころまで読むには時間が足りない。俺は本の間にあるはずのシオリを探した。
どこかで落としてしまったのだろうか。どこにも挟まってなかった。
「チッ。」俺は舌打ちをする。
仕方ないから語呂合わせでページを暗記する。194ページだ。
「ひゃくきゅうじゅうよん・・・。いち、きゅう、よん・・・。」
「ジュン!何してるの!ほら!みんな行っちゃったよ!」ミユが戻ってきてくれた。
「うん。わかってるけど・・・。」
「ほら。いくよ!」ミユがそう言った。なるほどね。
俺は194ページを「いくよ」と覚えて本を閉じた。

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