ジュリーとの新しい思い出コミュの１９８４年・パート１（どん底）

　８３年大ヒットに恵まれなかったジュリー。８４年１月のラジオ番組で
「『背中まで４５分』は井上陽水にだまされた（苦笑）。『晴れのちＢＬ
ＵＥＢＯＹ』は近田晴夫にだまされた（笑）」などと言って、新曲『どん
底』にかける意気込みを語っていた。しかし、『どん底』って。ボクは初
め明星のヤンソンの来月の新曲の欄で「どん底／沢田研二」と書いてあっ
て、びっくりした。ひらがな交じりのタイトルで、しかも、なんか「どん」
って響きがジュリーの歌の世界に合わないような気がしていた。

　この新曲は２月に発売。テレビでは夜ヒットで初披露となった。夜ヒット
の名物として冒頭に歌手から歌手へのメドレーのリレーがあるんだけれど、
ジュリーは２回だけ出なかったことがある。それは８５年の復帰出演の時と
この『どん底』の披露の時だ。
　冒頭ジュリーがいないのは別のスタジオで最終調整をしているからと司会
の井上順さんが説明。
「今日のジュリーはホントすごい！」
　とあおる吉村真理さん。
　そして、しめの歌で重いギターサウンドの前奏が流れ、テレビカメラにデカ
デカと映ったのは、マリリンモンロー！　宇宙服のような衣装にモンローが浮
かび上がり、角度によってまた別のモンローのショットが出るというもの。こ
れにはボクも興奮した。こんな格好で歌って、かっこよく見えるのは、世界中
どこを探してもジュリーだけだと思った。
　しかし、この歌はあまりヒットしなかった。
　同じ頃、ヒットしていたマッチの『一番野郎』に「てっぺんか、どん底か」
って歌詞があり、マッチサイドで少しはジュリーを意識してるのかなと思った
が、そんなことが全く話題にならないほどジュリーの『どん底』は売れなかっ
た。あんだけ衣装が派手なのに‥‥‥。
　ボクがジュリーの熱狂的なファンだと知る友人からは「ジュリーって今、ホ
ントにどん底だね！」とよく言われて、悔しい思いをした。

　近田晴夫さんも明星のヤンソンの評論コーナーで「ジュリーも井上大輔さん
もあんなに若々しいのにどうして二人が組むとこんなになってしまうんだろう」
と憂いていた。

　この２月の段階で、作詞家の三浦徳子の紹介だったと思うが、新田一郎が
加瀬邦彦さんに会い、『渡り鳥はぐれ鳥』を聞かせている。「いいじゃない。
でも、もう次の曲『どん底』って決まってるからさ」などと言われていたと
いう。
　そして、その曲はこの年の第２弾シングルとなる‥‥‥。

　この年のジュリーは役者としても多忙だった。大河ドラマ『山河燃ゆ』の
チャーリー田宮役で出演。クールな軍服姿などで登場し、最後は「アンラッキ
ーだぜ」と呟いて死ぬ役で、チャーリー田宮の人生が狂い始めて自暴自棄に
なってからは面白く演じることが出来たとジュリーは語っている。

　映画では『ときめきに死す』が公開。初日舞台挨拶は勿論満員だったものの、
この映画の空気感と同じように劇場の中は連日ひんやりしていたもよう。ただ、
この映画はかなりの傑作で、ＴＶのゴールデンタイムで放送された時にはかな
りの高視聴率だったようだ。

　

　それから問題作『ＭＩＳＨＩＭＡ』に出演し、カンヌ映画祭にも出席したジ
ュリー。この『ＭＩＳＨＩＭＡ』は三島由紀夫のご遺族の意向で、いまだに日
本では未公開（海賊版はあるが）。ボクが惜しかったなと思うのは、この『Ｍ
ＩＳＨＩＭＡ』の撮影がなければ、ジュリーは当時人気絶頂だった薬師丸ひろ
子の映画『メインテーマ』に出演したかもしれないこと。チューリップの財津
さんがやった役、あれはジュリーを想定した役だったらしい。
　ジュリーと薬師丸ひろ子―――。
　この二人の大スターの共演を見られなかったのは残念だった。

　http://www.youtube.com/watch?v=jORQ1PW7qFE&feature=related
　夜ヒット『どん底』

　http://www.youtube.com/watch?v=dVqXtrftMxs&feature=related
　レッツゴーヤング『渡り鳥はぐれ鳥』

　http://www.youtube.com/watch?v=55cbeysuvX8&feature=related
　夜ヒット『渡り鳥はぐれ鳥』

　
　ノンポリシーツアー『渡り鳥はぐれ鳥』（メガロポリス歌謡祭）