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関西作家志望者集う会コミュの万八たぬき(宮川町歌舞練場)

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iphone用にしては、ちょっと長かった。歌舞練場に行きたくなるでしょうか(笑)

         万八たぬき(宮川町歌舞練場)

                           森山東

 春の夜。
 久しぶりに意識を失いそうになるくらい酔ってしまった。宮川町のお茶屋に向かって、ふらふらと歩く。京町家がひしめく宮川筋には、血のように赤い提灯が家々の軒下にぶら下がっている。
 なじみのお茶屋の玄関戸を開けようとする。開かない。固い。あれっと思い、力を込める。ふっと手前に開いた。ああ、開き戸に変えたんだな。
 暗い店の中に、ぽっと灯りが点った。鮮やかな緋の着物をまとった舞妓が私に微笑む。
「おこしやす。おにいさん、長いことどすなあ」
「長いことって、昨日、京おどり、行ったじゃないか。あんたに券買わされて」
「はあ、そうどしたなあ、おおきに。そやけど、券まだあるんどす。もういっぺん見に来ておくれやす」
 丸顔の舞妓は、ねだるような目で私を見る。どきりとする。
「ああ、ああ、考えておく」
「そんなこと言わんと。あ、面白い話ひとつおすえ。あのね、うちが祇園祭の出番で、笛吹いていましたやろ。あのとき、うちの笛に合わせて、とんとん、とんとん、って太鼓の音が聞こえてきたんどす。舞台で太鼓叩いたはる人おへんから、誰が太鼓叩いていたんやろと思って、あとでねえさんに聞いたら、『それは万八たぬきさんや』って教えてくれはったんどす」
「万八たぬき?」
「へえ、宮川町歌舞練場の中に祠があって、そこに祀ってあるんどす。京おどりが始まる前に、芸舞妓はみな、そこで拝むんどす」
 そういって舞妓はニコリとほほ笑むと、再び、京おどりの券を差し出した。
 気がつくと、私は歌舞練場の客席に座っている。
 舞台では、舞妓が一人懸命に笛を吹いている。
 それに合わせるように、とんとん、とんとん、と太鼓の音がかすかに聞こえてくる。
 私は立ち上がった。音のする方向へ歩いて行く。ロビーを出て、中庭に出る。
 古い祠がある。そこから、とんとん、とんとん。私は祠を覗き込む。何か見える。必死になる。祠を抱え込んで、強引に顔を突っ込む。
 その時だった。恐ろしい声がした。
「おい、おい、あんた、何やってる」
 朦朧とした意識の中で、男の顔を見上げる。夜空を背景に、一人の警官が呆れたような顔で私を見下ろしている。
「さっき、近所の人から通報があった。酔っ払いが祠に向かって、話しかけながら、暴れているって。あんた、飲み過ぎやで。ちょっと署で酔いをさまそか」
 私は唖然として、あたりを見回す。お茶屋も歌舞練場もない。祠だけが立っている。必死に弁解する。
「いえ、ここに、た、狸がいるんです。万八たぬき・・・」
 警官は首を振りながら、「後は任すわ」と後ろにいる小柄な婦警さんに声かける。
 婦警さんは、私に歩み寄り、耳元に口を寄せる。丸顔の頬が近づく。
「ほんまにいるんどすえ」

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