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エルレアジカン椿屋妄想ノベルコミュのASIAN KUNG-FU GENERATION area

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アジカンの曲のタイトルがついた作品をUPしていきます。

’08/01/17  「ブラックアウト」1.2.3  UPしました。(完結)
         デリバリーM嬢の目覚めのお話。

’08/02/03  「Re:Re:」1.2  UPしました。(完結)
         多頭飼いってどうなんですかね。

' 08/02/21 「アフターダーク」1.2.3  UPしました。(完結)
         秘密が明るみに出ちゃったときって・・・

’08/05/23  「君という花」1.2.3  UPしました。(完結)
         ちょっぴりフェティッシュなお話で。

’08/08/28  「アンダースタンド」1.2  UPしました。(完結)
         ・・・単なる思い付き(笑

コメント(13)

ブラックアウト 1


待機室の時計は、午後7時45分。

今日もヒマ・・・

あたりまえか。平日だもんなあ。
せっかく、1週間ぶりに出勤して来たのに。

テーブルの上にあったロイズのナッティ・バーを
1個取り出して、口に放り込む。
そのとき、事務所の方から、かすかにコール音が聞こえた。

「おお!鳴ってるよ!」
隣りで、アキちゃんがちっちゃい声で言う。
「よかった〜・・・今日ゼロコールかと思ったよ」
「誰が行くー?」
いつもののんびりした声で、モモちゃんが言う。
「あたしあたし!」
「・・・アキ、マニキュア途中じゃん」
「すぐ終わるもーん」

ドアをノックする音がして、マネージャーが顔を出した。
「エリちゃん、ご指名」
「やり〜!」
あたしは、ラッキー!!と思いながら、即座に立ち上がる。

「え〜いいな〜ずる〜い」
「ごめんなさいねぇ〜おほほほっ。」
「エリちゃん、がんばってきてー」
「ありがとっ。」

横から、商売道具の入った大きなバッグをつかんで立ち上がる。
「じゃ、行ってくるねー。」
「またねー。」

事務所に寄ると、マネージャーが小さなメモをくれた。
「ホテル・オーシャンの307ね。90分Sコース」
「了解ですっ」
「あ、お客様、カンナミ様だから」
「え?!・・・」

あたしは、心の中で、「やったー!!!」って叫んだ。
火曜日を狙って出勤したかいがあった。

「あの、いつもの方ですよね?」
「そう。上顧客だからね。くれぐれも、失礼のないようにね」
「わかりました!」

洗面所に入って、いつもよりちょっぴり念入りにメイクを直して、
ていねいに歯みがきをしてから、事務所を出た。

平日でヒマだと思ってたのに、外に出ると、結構な人通りだった。
人波をすり抜けるように、ゆるやかな坂道を登っていく。

(2週間ぶりだなあ・・・)
この前、カンナミさんとプレイしたときのことを思い出して、
ひとりでちょっとだけ赤面した。

・・・バカ。


ホテル街に入ると、人通りは少なくなった。

初めの頃は、こんなところを1人で歩くのは恥ずかしかったけど、
人間、慣れって恐ろしいもので、すぐに何とも思わなくなった。
大体、周りの人は、思ったほど人のこと見てないし、
このあたりだったら、あたしみたいな女が1人で歩いてたら
「ああ〜フーゾクの子ね」
で、終わり。
割り切ってしまえば、実にお気楽なものだ。


真っ白な建物、ホテルオーシャン。
307号は、たぶん、1番豪華で料金も高いお部屋だ。
チャイムを鳴らす。

「はい」
中から返事が聞こえた。
「こんばんは。エンジェルダストです」

静かにドアが開く。
カンナミさんが、優しく笑って立っていた。

「エリちゃん、よく来たね。入って。」
「失礼します」

あたしも、にっこり微笑んで、部屋に入った。
仕事用の笑顔ではなく、ちょっぴり本気モード。

「すみません、お電話をお借りします」
「ああ、そこだよ」
事務所の番号をpush。

マネージャーが出る。
「あ、エリです。今から入りますので。」
電話を切って、腕時計で時間を確認。
8時15分。
あたしは、ベッドに座っているカンナミさんの足元に正座して、深くお辞儀する。
「今日は、ご指名いただいて、ありがとうございます。
ご調教、よろしくお願い致します。」
マニュアル通りにご挨拶する。
「はい」
返事が聞こえてから、顔を上げる。

「これ、確認してくれるかな?」
白い封筒を渡される。
「失礼しますね」
中をのぞく。
数えてみると、基本料金より1万円多かった。
「ごめんなさい。1枚多いです。」
「あ、それは、エリちゃんにチップ。・・・お店には内緒ね」
「え?・・・いいんですか?」
カンナミさんは、笑ってうなずく。
「ありがとうございます」
丁寧にお辞儀をする。

「お道具は、どうしましょうか?」
「そうだね、1通りはあるんだけど…衣装は、何かあるかな?」

あたしは、バッグから、中に入っている衣装を全部出した。
安っぽいものばっかりだ。

ナイロンサテンのメイド服やポリス服(ウケる)、
革でなくて合皮のボンデージ、真っ赤なレースのベビードール、などなど。

後は自前の薄いブルーのと、もっと淡い感じのピンクのベビードールが2枚。

カンナミさんは、その、ピンクの方を手に取った。

「これに着替えてもらおうかな…エリちゃんに、似合いそうだ」
「わかりました。」
「シャワー、ゆっくり使っていいからね」
「ご一緒しなくていいですか?」
「いや、先に済ませたから。」
「そうですか」
ブラックアウト 2


あたしは、バスルームに1人で入る。
時間をロスしないように、手早く済ませて、
裸にベビードール1枚の姿で出て行く。

「お待たせしました」
「ああ…可愛いね」

そんなことを言われて、少し恥ずかしい。

「道具チェック、するかい?」

あたしがうなずくと、アルミ製のアタッシュケースが開かれた。
ドキドキして中を見る。

「アナルはNGだったね」
「はい…申しわけありません」
「他に、怖いのある?」
「これ…」
赤い蝋燭を指差した。

「未経験なんです」
「そうか…わかったよ」
カンナミさんは、優しくうなずいた。

「じゃ、まず、これをつけようかな」

ケースから、黒革製の手枷が取り出された。
慣れた手つきで嵌められて、後ろ手に拘束される。
初めてのお客様だったらちょっと緊張する瞬間だけど、
カンナミさんがお相手だと、不思議と怖くなかった。

「アイマスク、怖い?」
「・・・大丈夫です・・・」

視界が遮られた。

本当は、お店からは、危険防止のためになるべくお断りするように、と
言われているけれど、黙っていた。

理由は1つ。
あたしが、そうして欲しかったから。

「はい、あーんして」
大きく口を開けると、柔らかい感触の棒を咬まされた。
表面がウエットスーツのような生地で包まれていて、
革製のものよりも口当たりは痛くない。
でも、その分、声は漏れにくくなっている。

ほんのちょっぴりだけ窮屈な、絶妙な強さで固定された。

「・・・さあ、もう逃げられないよ。エリちゃん」

カンナミさんの優しい声に、体の奥がきゅんとなる。
恥ずかしくて、うつむいた。

今まで、いろんなお客様の相手をしたけれど、
カンナミさんは、その中の誰とも違っていた。
プライベートで付き合った相手にも、こんな感情を抱いたことはない。
仕事だと割り切っていたつもりだったのに、
あたし、ひょっとして本当にMかも・・・
と、思い始めたのは、カンナミさんに出会ってからのことだ。

「…じゃ、これから、僕がいいって言うまで、ちゃんとまっすぐ立ってるんだよ。
ふらふらしたり、勝手に座ったりしちゃだめだ。わかった?」

あたしは、うなずく。
少しだけ間があって、カンナミさんの指先が、すっと首筋に触れた。
体が、びくっと震えた。

「あれ…もう動いちゃったな」

すかさず、左側のお尻に平手がとんだ。
ぱん、と渇いた音が響く。

あたしは、よろけた体をあわてて立て直す。
また、指先が触れてくる。
首から胸へ下りて、ベビードールの前がはだけられ、乳房が露わにされる。
敏感なところを狙ったように、絶妙なタッチで触れられる。
指先が胸から脚まで下りていく間に、あたしは、10回の平手打ちを受けた。

両脚の間に指先が触れる。
「…脚を開きなさい」
静かな声が響く。
言われた通りにすると、柔らかい肉の間に指が滑り込んで来て、
奥の方を探った。

「んっ…」
口枷の奥から切ない声が漏れて、体が大きく揺らいだ。
でも、もう叩かれなかった。

「エリちゃん、ここ…どうしてこんなになってるのかな?」

カンナミさんは、落ち着いた声でそう言いながら、責めるように指を動かした。
あたしは、左右に首を振って耐える。
ブラックアウト 3


もう、限界。・・・

そう思ったとき、指の動きがぴたっと止まった。

どうしていいのかわからず、ものすごく不安な気持ちになる。

「エリちゃん・・・もっと気持ちよくなりたいかな?」
また、落ち着いた声が響く。
「それとも、もうやめようか?」

あたしは、また、うつむく。
心の中では決まっている答えを、はっきり表すことができない。

「気持ちよくなりたかったら、自分で動いてごらん」

そんな・・・

「いやだったら、やめるよ」

・・・やめないで。
心の中でそう思ったとき、腰が勝手に動いていた。
長い指に、敏感な部分を夢中で擦り付ける。

「ああ・・・いやらしいね」

カンナミさんの低い声が、あたしを追い詰める。

「逝っていいんだよ。恥ずかしい格好でね」

そんなこと言わないで。
でも、自分で自分の動きを止めることができない。

呼吸が苦しくなる。

いままで、どんな相手とでも、こんな風になることはなかった。
カンナミさんと出会って、あたしは、確実に変わっている。
もう、戻れないかもしれない。・・・

やがて、あたしは、体をけいれんさせて倒れこんだ。


カンナミさんが、あたしを受け止めてくれた。
背中で繋がれていた手枷のフックを外して、抱きしめてくれる。

「可愛かったよ・・・いいもの見せてもらったな」

そのままベッドへ連れて行かれ、あお向けに寝かされると、
今度は、手すりに両手を別々に繋がれた。

「エリちゃん、脚、開いて」
恥ずかしかったけど、ゆっくり両脚を広げた。
「膝立てて、よく見えるようにしてごらん」
言われた通りにする。
恥ずかしいところに、顔が近づく気配がした。

「・・・まだ、治まってないみたいだね」

長い指が、あたしの中にするりと入ってくる。
内側を擦りあげるように、ゆっくりと往復される。

あたしは、声にならない声を上げて、逃れようともがく。
また、限界の寸前で、指が抜かれた。
泣きそうになる。

口枷が外される。

「エリちゃん・・・話があるんだけど」
「はい」
と、言ったつもりだったが、くちびるがこわばって
うまく言えなかった。

「僕の、専属になる気はないかな?」
「え?・・・」
「初めて会ったときから思ってたけど、エリちゃんは、すごい素質持ってるよ。
 僕が育ててみたいんだ」

また、指が侵入してきた。

「あっ・・・」
「今は、本番はNGだったね」

また、ゆっくり、焦らすように往復される。

「・・・どうかな?指だけじゃ済まなくなるけど」

頭がおかしくなりそうだ。
これ以上焦らされていたら、あたしは、きっと、・・・


「お願い、・・・します・・・」
言葉にならない声で、あたしは、そう言った。

「そうか。うれしいよ」

指の動きが早くなった。
意識が遠くなる。

もう、どうなってもいい。
あたしが、あたしでなくなっていく。
生まれて初めて味わうような感覚に、そのまま身をまかせた。

暗闇に、堕ちる。

Blackout・・・・・


                      fin.
Re:Re: 1


視線の先に、のけぞった白い喉がある。

切なく乱れた呼吸。
喉の両側を包む黒い髪が、しなやかで複雑なリズムで揺れている。

体の振動が、いっそう激しくなる。
首がうなだれる。
喉は見えなくなり、代わりに、柔らかそうな唇が視界に入る。
さっきから、ずっと半開きのまま。
吐息なのか、言葉なのか、判別し難い音を漏らし続ける。

視線を少しだけ下に移す。
麻縄で絞られた乳房。その脇の二の腕。
どこまで食い込むのを許してしまうのだろうか。
ふとそんなことを思わせる、そんな際限のない柔らかさ。

唇からこぼれる音。ボリュームが上がる。
触れ合っている部分が前後にこすれる。摩擦が大きくなる。

一瞬、上がる小さな悲鳴。

不自由な体が、崩れ落ちてくる。
喘ぐような息とともに、静かに揺れる。
下から腕を回して、抱きしめる。

背中で拘束された両手を軽く握る。
指先が冷えてきていた。

同じ体勢のままで、麻縄を解き始める。
胸の上で、顔が動く。

淋しそうな瞳が、こちらを見ている。

まだ、解かないで欲しいのか。


でも、それを決める権利は、おまえにはない。




駅前のロータリーで車を停める。

「じゃ、気をつけて」
「はい。ありがとうございました」
「・・・茜は、火曜日が都合がいいんだったな」
「金曜日でも」
「そうか・・・でも、金曜は、俺がだめなんだ」
「そうですか・・・ごめんなさい」
「いや、いいんだ。こっちこそ」
「じゃ、帰ります」
「ああ・・・また、連絡するよ」
「お気をつけて」

車から降りた茜は、会釈をすると、すぐに駅に向かって歩き出した。

いつものことだ。

俺も、見送ったりせずに、すぐに車を発進させる。

いつもなら。

今日は違った。

茜に、口では説明できないような、何とも言えない
違和感を覚えたからだ。

後姿を目で追った。

1度も振り向かない。

やがて、人波に紛れて、コンコースに吸い込まれて行き、
見えなくなった。

俺は、ゆっくりと車を発進させた。
自分の気持ちをひきずっているみたいに。






シャワーを終えて部屋に戻り、煙草に火を点けた。
もう、夜はすっかり更けている。

いつもの習慣で、PCをもう1度チェックする。

茜から、メールが届いていた。
いつもとは少し違った気持ちで、クリックする。



幸弥様

今日は、ご調教どうもありがとうございました。
お会いできてうれしかったです。

突然ですが、茜からお願いがあります。

本当は、今日お会いしたときに、直接お願いするつもりだったのですが、
勇気がなくて、お話できませんでした。
ごめんなさい。どうかお許しください。


ご調教は、今日で最後にしていただきたく思います。
茜は、もう、幸弥様にお会いしない方がいいと思います。

もちろん、幸弥様のご責任ではありません。
すべて、茜が悪いのです。
単なる茜のわがままです。

幸弥様は、茜の初めてのご主人様で、本当に、たくさん、
いろいろなことを教えていただきました。
そのことには、心から感謝しております。

でも、もう、幸弥様とご一緒することはできません。
本当にごめんなさい。

短い間でしたが、可愛がっていただいて、ありがとうございました。
幸弥様に教えていただいたことは、ずっとずっと忘れません。
どうぞ、お元気でお過ごしくださいませ。




読み終えて、煙草の灰が落ちそうなのに気付いた。
呆然とする自分を少しずつ受け止めて行く。

少し迷ったあと、返信をした。

茜は、今飼っている奴隷の中でも際立つ素質を持っており、
できれば手放したくない、ということ。
どうしても、と言うなら、明確な理由を教えて欲しい、ということ。
この2つだけを簡潔に記した。

返事が返ってくるかどうか、少し心配だった。

返信が来たのは、30分ほど後だった。


Re:Re: 2




理由は、単なる茜のわがままです。
そうとしか、言いようがありません。

茜は、幸弥様の8番目の奴隷として、ご調教を受けさせていただきました。

でも、日が経つにつれて、だんだんと、他の7人の方々に対する
やきもちが、茜の中で大きくなっていってしまいました。

8番目だということは初めからわかっていたことです。
でも、どうしようもありませんでした。

幸弥様や他の方々を恨んだりするつもりはありません。
ただ、茜は、茜1人だけを見つめてくださる主様を
探そうと思います。

幸弥様は、他の皆さんを一生懸命可愛がってさしあげて下さい。
わがままを言って本当に申しわけありません。
そして、本当にありがとうございました。

お元気で。




返信しようかどうしようか迷った。
だが、一体何を書けばいいのだろう。
何も思い浮かばなかった。

ふと、茜からのメールのタイトルに目をやった。
いつもとは違って、そこには、俺の名は記されていなかった。

返信に対する返信。単なる事実。

・・・もう茜からは、主とは呼ばれない。

英字と記号の羅列が、単純な現実を俺に理解させようとしていた。

傍らの灰皿の上で、いつのまにか、煙草がすっかり灰になっていた。

茜のことを思う。
本当に素晴らしい素質を持っていた。

だが、彼女1人のために他の奴隷たちを放り出すことはできない。絶対に。

おまえは悪くない。
そう言ってやりたかった。
だが、俺が悪かった、と言えばいいのかどうかはわからなかった。

マウスに手を添えて、1行下のタイトルをクリックする。
茜の言葉は瞬時にディスプレイから消え去って、全く別のものに入れ替わった。

>
突然のメール失礼致します。
少し前から、幸弥様のサイトを拝見するようになり、ぜひ1度ご調教をお願いしたいという気持ちを押さえきれなくなりました…


これからも、何度となくこんなことが繰り返されていくのだろう。

頭の中に染み着いていた茜の言葉は、夜の静けさの中へとこぼれ落ちて行く。
まるで誰にも見せることのない涙のように。


    fin.
アフターダーク 1


車が停まった。

どこにでもありそうな、ごくありふれたマンションの前。
私は、マネージャーの後を付いて行く。

入り口はオートロックになっている。
マネージャーがパネルを操作してこちらの名を告げると、ドアが開いた。

エレベーターに乗って12階まで上がる間、どちらも、一言も話さなかった。
いつも、大抵そうだ。

指定された部屋の前。
マネージャーは、チャイムを鳴らして、返事を聞かずにドアを開ける。
ドアロックはされていない。
部屋に上がったところで、私は、黒いサテンの布で目隠しをされる。
それから、革製の手枷を着けられて、後ろ手に拘束される。

そのまましばらく立っていると、奥の方から誰かがやって来る気配がした。

・・・今日のお客だ。

玄関のチャイムが鳴って、5分したら出てくる。
そういうルールなのだ。

彼は、私の前へやって来た。

「では、よろしくお願い致します」
マネージャーは、そう言って、部屋を出て行った。

ドアがロックされて、ストッパーが掛けられる音がする。
私は、背中に腕を回されて、奥の方に連れて行かれる。

しばらく歩いて、部屋の中に入る気配がした。
立ち止まる。

一瞬間があって、ブラウスのボタンに手が掛かった。
上から、1つずつ外されていく。
全部が外れると、背中に手が回って、ブラジャーのホックも外された。

乳房が露わにされる。
両手で、下から持ち上げるようにして握られた。
そのまま、ゆっくり、確かめるように揉みしだかれる。
指先で、乳首が弄ばれる。

声が漏れた。

彼は、さっきから一言も話していない。
こういうお客は初めてだ。
少し怖かった。

大きな声を上げてしまった。

ふと、彼の手が胸から離れる。
今度は、スカートのホックに手が掛かる。
はじくように外されると、ジッパーが下ろされ、スカートが床に落ちる。

彼がしゃがんだ気配がした。
続けて、ショーツが下ろされた。
ガーターベルトのサスペンダーの留め具が1つ1つ丁寧に外される。
先に、ストッキングを片方ずつ脱がされた。
最後に、背中に手が回って、ガーターベルトのフックが外される。
下半身がすっかりむき出しにされた。

彼が立ち上がる。
もう1度背中に手が回って、手枷のフックが外された。
ブラウスが脱がされる。
ブラジャーも両腕から抜き取られた。
全裸にされると、もう1度後ろ手に拘束された。

体を抱えられて、歩かされる。
ソファに座らされた。
1人掛けのソファのようだった。

彼が離れていった。
相変わらず、一言も話さない。
いったい、どんな人なのだろう。
服を脱がされるときの感じでは、乱暴な人ではないようだった。
でも、少しだけ、不安だ。


彼が戻って来た。
両脚を少し開かされる。
右の腿に、何かが巻き付けられた。
たぶんコットンロープ。
脚を持ち上げられ、肘掛に乗せられて、そのまま固定された。
左脚も、同じようにされる。
敏感な部分が、さらけ出された。

乳首を、何かで挟まれた。
ピンチかと思ったが、それほど痛みはなかった。
カチッという機械音。
両方とも、細かく振動し始める。
私は、思わず声を上げた。

彼の指が、敏感な部分に触れる。
すっかりさらけ出されてしまった部分を確かめるように、
まんべんなくまさぐっていく。
恥ずかしい声が漏れる。
あふれ出る音が聞こえてくるまでに、そう時間はかからなかった。

しばらく弄ばれた後、彼の指が離れた。
小さな物音。

さっきまで指が触れていたところに、今度は冷たいものが触れた。
そのまま、ゆっくりと奥へ埋め込まれていく。

また、小さな機械音。
私の中で、冷たい塊が、ねじれるように動き始めた。
私は、また声を上げる。

彼が立ち上がって、離れて行く。

モーター音に混じって、物音が聞こえる。
漂ってきた香りで、煙草を吸っているのだとわかった。

機械に弄ばれる私の体を、彼は、離れたところから眺めている。
私の意識は、だんだん、遠いところへ連れて行かれる。

体が小刻みに震え始める。
声が大きくなる。
もう、自分ではコントロールできない。

固定されている脚を支点にして、体が波打つ。
一瞬、気が遠くなる。

体の力が抜ける。
でも、与えられている振動が止むことはなかった。

しばらくすると、体が勝手にさっきと同じ反応を始める。
私は、声を上げて、無駄な抵抗をする。

彼は、動かない。気配をまったく感じない。

やがて、さっきよりももっと大きく体が震えた。
筋肉のびくびくとした動き。
止められない。

まだ、振動が与えられ続けている。
体の力を抜くことは許されない。

私は、泣き声を上げ、機械を外してくれるよう哀願する。
アフターダーク 2


彼が、近づいてくる気配がした。
私の前で立ち止まる。

半開きの唇に、指が入ってくる。
人差し指と中指で、舌を挟まれて、力任せに引っ張られる。
悲鳴を上げるが、もう、言葉にはならない。

そのまま、もう一方の手が、両脚の間の器具を掴む。

内側をえぐるようにして、ゆっくりと前後に動かされる。
同じリズムで、私は声を漏らす。

しばらく弄ばれた後、急に、器具の動きが早くなる。
抵抗は許されない。

私の意識はそこに残されたまま、体だけがどこかへ行ってしまう。

だらしなくこぼれる唾液にまみれて、3度目のけいれんが起こる。

舌を挟んでいた指が離れる。

振動がやっと止められる。
体から、機械が取り去られた。

私は、肩で息をする。

彼が、私の前にしゃがみこんだのがわかる。

両脚に巻きつくロープの上から手が添えられる。
外側に力が掛かる。

むき出しの部分に、熱くて柔らかなものが触れる。
私は、また切ない声を漏らす。
大きな声を上げる力は、もう残っていない。

熱いものが、敏感な部分をまんべんなく這っていく。
あふれているものをすくい取るように。
いやがる蕾をあやすように。
そこにあるかたちを確かめるように。

両手が上に移動する。

柔らかなふくらみを絞るように握られる。
こちらでも、手のひらで、そのかたちが確かめられる。
指に沿って変わって行くかたち。
指先が、先端の粒を転がして弄ぶ。

こうやって確かめられているのに、私の体は、
また、勝手にどこかへ行ってしまう。

彼の手のひらの中で、大きく震える。
私が、私のものでなくなっていく。

意識が薄れる。・・・


両脚のロープが解かれて、肘掛から脚が下ろされる。
体のあちこちに、痛みが走る。
頭の中は、もやがかかっているようにぼんやりとしている。

彼の手が、私に触れる。
ソファから立たされ、抱きかかえられるようにして
どこかへ連れて行かれる。

立ち止まると、彼は座ったようだ。
引き寄せられる。
脚を開かされて、導かれるまま、彼に跨るようにして座った。

敏感な部分に、今度は、熱くて硬いものが触れる。

ゆっくりと、貫かれた。

私は、また、切ない泣き声を上げる。
下から突き上げられるたびに、その動きに合わせて声が漏れる。

私の体は、私の言うことを聞いてくれない。
ふらついて、後ろに倒れそうになるたびに、彼の手に引き戻される。

背中で繋がれた両手に、彼の手が重なる。
私は、その手につかまる。
彼の手は、私の手を握り返す。
そのまま引き寄せられ、彼の動きが早くなる。

私の体が、また、どこかに行ってしまう。

彼の腕の中で、揺れる。
小さな叫び声を上げる。

一瞬、意識が途切れる。
そして、彼の肩に体を預けるように倒れこむ。

乱れる呼吸。
体全体が大きく波打つ。

頭の後ろに、彼の手が回る。
結び目が解かれて、目隠しが取られる。
視界が明るくなった。

彼は、私を抱きしめる。
頬と頬が合わさる。

顔を上げて、初めて彼の顔を見た。

次の瞬間、全身が凍りついた。


「・・・あなた・・・」

私を抱いていたのは、夫だった。

「・・・気持ち良かったか?」
そう言って、うっすらと微笑んだ。

「・・・どうして?」
頭の中は混乱していた。
今までとは違う理由で、全身が震えている。

「俺が、何も知らないと思ってたのか」
夫は、私の背中をゆっくりと撫でる。
「馬鹿だな。おまえは」

私は、どうすればいいのかわからず、やっと小さな声で言った。

「ごめんなさい・・・」
アフターダーク 3


夫の手が、私の顎を掴む。
「・・・こんないやらしい顔、初めて見たな」

私は、涙を滲ませる。

「何人ぐらい、客を取った?」

答えられない。

顎から手が離れる。
両手で乳房をわし掴みにされる。
指先が、じわじわと食い込んでくる。
痛みに耐え切れずに、声が漏れる。

「答えろ」

下から、突き上げられる。
胸を掴んで引き寄せられているので、上半身の重みがすべて
両方の乳房にかかっている。
痛みと刺激に、私は泣かされる。

「何人、相手にしたんだ」

夫は、激しい動きとはうらはらな、冷静な声で私を責める。
私は、泣きながら告白する。

「10人ぐらい・・・でも・・・はっきり、覚えてない・・・」

夫の手にいっそう力がこもる。
私は、悲鳴を上げる。

「みんな、俺より良かったのか」
「そんなこと・・・ない・・・」
「どうして、こんなことをしたんだ?」

涙が、頬を伝って流れ落ちてきた。

「あなたに・・・嫌われたくなかったの・・・」
「どうして、俺が嫌うんだ」
「私が・・・こんな風だってわかったら・・・」
「馬鹿だな」

夫は、私を抱きかかえたまま、今度は自分が上になった。
自分の体の重みで、腕が痛い。

「・・・危ない目に遭ったら、どうするつもりだった」

そう言うと、夫は、また、激しく体を動かした。
もう何も言えなかった。
こんな気持ちのまま、体が勝手に反応している。
私は、そういう女なのだ。

夫の動きが一瞬止まった。
熱いほとばしりが私の中に放たれる。

私は、呼吸を乱しながら泣いていた。

夫が、ゆっくりと起き上がる。
顔を見ることができない。

傍らで物音がする。
少しして、ベッドの足元が沈んだ。
いきなり、両脚を大きく開かされる。

「いや!・・・」

夫は、私の敏感な部分を拭うと、顔を近づけてきた。

「・・・まだ、足りないみたいだな。欲しがってる」
「やめて・・・そんなこと・・・言わないで・・・」
「違うだろう」
「え?・・・」
「もっと、言って欲しいんじゃないのか」

私の中に、指が差し込まれる。
内側を巧みに擦るように、出し入れされる。

「あ・・・」
「まだ、足りないんだな」
「いや・・・」

また体が反応してきたのを見計らったように、指がすっと抜かれた。
そのまま、口に押し込まれる。

夫と自分の匂いが混ざり合っている。
舌を指で挟まれ、なすり付けられる。

夫は、冷たい表情で私を見下ろしている。

「俺のことを裏切ったんだ。・・・罰は、受けてもらうぞ」

夫は、目隠しに使われていた布を手に取ると、
真ん中あたりに大き目の結び目を作った。
それから、私の顎を押さえると、その結び目を口の中に押し込んだ。
頭の後ろできつく結ばれて、固定される。
私は、もう、言葉を発することができなくなった。

抱き起こされると、夫の膝の上に、うつぶせに寝かされた。

お尻を、平手で打たれた。

私は、声にならない悲鳴を上げて、体をよじる。
夫の手は、容赦なく、何度も打ち下ろされる。
痛みとしびれがだんだんと増してきて、
私は、逃げられずに、また泣き出した。

「泣いてもだめだ」

腿をつねり上げられた。
サテンの布のすき間から、声が漏れる。

今度は、腿を打たれた。
私の体を、痛みが支配していく。

罰を受けながら、私は思う。
私を打っているのは、器具ではない。
夫も、私と同じ痛みを味わっている。
私のせいで。

私たちは、一緒にいる間、いったい何をしていたのだろう。
体がどんなに近くにいても、心は決して近づいてはいなかった。
1番身近な人に背を向けて、自分から暗い陰に迷い込んでいったのは、私だ。
そして、夫は、その陰から私を引きずり出そうとしている。
お互いに傷を負いながら、この先進んでいくところには、
何があるのだろうか。
まばゆい光が満ちているのか。
それとも、もっともっと暗い闇に向かっていくのか。

後ろから、私の中に、夫の指が差し込まれる。
私が隠していたものをすべてえぐり出すように、執拗に動く。
私は、苦痛と喜びのどちらなのかわからない声を上げる。

「一生懸けてお仕置きしてやる。・・・覚悟しろ」

指の動きが激しくなる。

そうだ。あなたとは、まだ何もしていなかった。
これから、始まるのだ。

夫の手で、今までとは違うところへ連れて行かれる。
このまま進んでいくしかない。

私の体が、跳ねる。
暗い陰を後にして、別の世界へ放り出されるように。

                  fin.
君という花 1

彼女は眠っている。

白いシーツの上に静かに横たわっている。

羽根枕の上に、軽くウェーブのかかった髪が広がっている。
少し明るく、ピンクがかったブラウンに染められている。

ごく薄いピンクのトリコットのミニスリップ。
身に着けているのは、それだけだ。

本当は全裸にしようと思っていたのだが、
薄いピンクが彼女にとてもよく似合っていたので、
それだけ残しておいた。

丸い肩から二の腕に向かう曲線。
腿からひざに向かう曲線。
どちらも、見るからに柔らかで、ふと、触れてみたくなる。

両腕のひじから先は、1つに重ねられ、白い包帯が巻かれている。
手の甲までが包帯で覆われて、華奢な指だけがのぞいている。
優しいピンクに塗られた小さめの爪が、とても可愛らしい。

両脚のひざから足首までも、1つに揃えられて、
腕と同じように包帯で巻かれている。
足の爪も、手の爪と同じピンクに塗られている。
そして、同じように小さめだ。

彼女のまぶたが、ほんの少し、ふるえた。
濃いまつげがかすかにゆれる。
深い眠りの底から、少しずつ、戻ってきているようだ。

やがて、少しだけ、彼女が動いた。
大きく息を吐く。
それにつれて、肩が動く。

2、3度まばたきをしてから、彼女は目覚めた。
まぶたがゆっくりと開かれる。

僕は、そっと手を伸ばして、優しく彼女のほほに触れる。
耳の上から、髪の中に指先を差し入れる。

彼女は、ぼんやりと僕の顔を見た。
だんだん意識がはっきりしてくるにつれて、
その視線に複雑な感情が混ざり合ってくる。

疑問。
羞恥。
苦痛。
そして、恐怖。

彼女は、叫び声を上げて、逃げようとした。
たぶん。
だけど、どちらもかなわなかった。

声を上げることも、逃げることも不可能だと気づいた彼女は、
僕を見つめたまま、瞳に涙をにじませた。
その涙は、見る見るうちに広がって、あふれ出した。

僕は、彼女の涙に答えて、静かに微笑んだ。
ここにいるのが、君に隠していた、本当の僕だ。


ついさっきまで、僕はひとり、淡々と作業にいそしんでいた。

深い眠りに落ちた彼女を前にして、まず、
からだ全体をすみずみまで見渡した。

優しい、からだ。
そう表現するのがぴったりな感じだった。

しばらく眺めてから、身に着けているものを脱がせ始めた。
途中で、1枚だけを残すことに決めて、その他のものはすべて、
そっと注意深く剥ぎ取っていった。

柔らかな肌を傷つけないように、手足を包帯で拘束した。
まるで、傷ついたからだの手当てをしている気分になった。

あごを引いて小さな口を開けさせ、柔らかくほぐしたガーゼを噛ませると、
三角巾に使う白い布で、上から鼻と口を覆った。

すべての作業を終えても、彼女はまだ眠っていた。
ところどころ白い布で巻かれているからだは、
ひっそりと静かに、温かく息づいている。

まるで美しい蝶に羽化する前の蛹のように見える。
そうじゃなければ、あと少しで美しく開く花のつぼみ。
今はまだ、静かにそのときを待っている。
君という花 2

そして今。
目覚めた彼女は、怯えた目で僕を見つめたまま、
はらはらと涙をこぼしている。

僕は、そっと彼女の髪をかき上げて、優しく撫でた。
からだがこわばっているのがわかる。

指先で、そっと涙を掬ってみる。
温かかった。

ゆっくり顔を近づけていくと、彼女は途中で
耐え切れなくなって、目を閉じた。
そのまぶたに、くちびるで触れる。
右、左。
交互に、あふれる涙を拭う。

白い包帯に包まれた手を、口元に持ってくる。
華奢な白い指に、くちびるを当てる。

彼女は、また目を開ける。

僕は、彼女の潤んだ瞳をじっと見つめながら、
指の1本1本に、くちびると舌先を這わせた。
ふと、食べてしまいたい衝動に駆られる。

彼女の瞳に浮かんでいるのは、
困惑。か。

腕を伸ばして、背中を撫でる。
素肌の吸い付くような感触と、
トリコットのすべすべした感触が、
交互に手のひらに感じられる。

冬の小鳥のようにふるえている彼女のからだ。

もう一方の手で、滑らかな生地越しに、胸に触れる。
限りなく柔らかなふくらみに手のひらを這わせ、
包み込むようにして、手触りを楽しむ。

彼女は声を上げる。
もちろん、言葉にはなっていない。

拒否。
そして、羞恥。

僕は、そんな彼女の思いを軽やかに無視して、
2つのふくらみに触れ続ける。
もちろん、ある目的を持って。

彼女の呼吸が乱れてくる。
手のひらに伝わる感触に、小さな変化が起こる。

胸のふくらみの先に隠れていたもの。
僕はいつも、さくらんぼの種に似ている、と思う。

cherry seed.

小さな種がその存在を主張して、
トリコットの生地を持ち上げ、
僕の手のひらを押し返してくる。

気づいたよ、という返事として、
指先で可愛らしい種をそっとくすぐる。
滑らかな布地の下で、種がふくらむ。

トリコットの布を下にずらして、
2つのふくらみを露わにする。

彼女は、また、声を上げる。

拒否。
羞恥。
そして、哀願。

不自由なからだで、僕の手から逃れようとする。

逃がさない。

むき出しになった2つの種。
指先でそっとつかまえて、転がしてみる。
指の動きに合わせて、彼女の声が大きくなる。
切なげな、泣きそうな声。

彼女のからだが、大きくふるえる。
苦しそうに、肩で息をしている。

僕は、胸から指を離して、彼女の背中側に移動する。

スリップの裾をそっとたくし上げる。
彼女は、小さく悲鳴をあげて、また、逃げようとする。
もちろん、そんなことは許さない。

さっきとは別の、2つのふくらみが、露わになる。
丸くなだらかな、張りのある曲線が美しい。

中心にある境界線に沿って、上から下へと、指を這わせていく。
線がとぎれそうになるあたり。
目では見えない奥の方へ、指先を滑り込ませる。

彼女は、また、言葉にならない声を上げた。
拒否。
羞恥。

僕は、かまわずに、見えないところを探る。
確かめるように指先を動かす。
さっきと同じような目的を持って。

やがて、彼女の上げる声のトーンが、微妙に変化してくる。
拒否と羞恥の比率が変化してくるからだ。
さっきよりも、もっともっと切なくなる。

それにつれて、指先に触れる感触も、段々と変化してくる。
少しずつ、だが確実に潤んで、熱くなっていく。

彼女は、助けを求めている。
だけど、誰も助けてはくれない。
そもそも、そんな必要はない。

さっきよりもいっそう大きなふるえが、彼女を襲う。
僕の指先が締め付けられる。
そして、放たれる。

彼女は、泣き出していた。
今度は肩だけでなく、全身を波打たせて、やっと息をしていた。
薄い布に遮られた呼吸が、ひどく苦しそうだ。

僕は、彼女の顔にそっと手を伸ばして、
白い布を少しだけ下にずらした。
つんととがった可愛らしい鼻がのぞいた。

彼女は、必死で呼吸を繰り返す。
僕は、背中を撫でながら、落ち着くのを待った。

涙で潤んだ瞳が、怯えながら僕を見上げる。

ああ、なんて可愛いんだろう。

僕は、残酷な笑みを浮かべる。

ゆっくりと顔を近づけていく。
白い布の上からくちびるを押し当てて、
彼女のくちびるのかたちを確かめる。

彼女の呼吸が、また、少し乱れる。
君という花 3

僕は、彼女の両脚を包んでいる包帯を、静かに解き始めた。

脚が自由になっても、彼女はもう逃げようとしなかった。
涙をにじませながら、静かにふるえているだけだ。

両脚を開かせると、彼女は固く目を閉じた。
柔らかそうな茂みに顔を埋める。
くちびるで、手前から奥へと探っていく。

彼女の瞳よりも、もっと熱く潤んでいるところを見つける。
舌を差し入れて、あふれてくるものをすくい上げる。
何度か繰り返すと、その動きに合わせるようにして
彼女が切ない声を漏らす。

僕の舌が、ここでも、小さな種を探り当てる。

いや。
種、はちょっと違うな。
芽、かな。

Flower bud.

隠れていた小さな芽に、舌を絡ませる。

彼女は、一瞬、また逃げようとした。
もちろん、許さない。
両脚を押さえつけられ、逃げられなくなると、
その分、声が大きくなった。

僕の舌で探られて、小さな芽がふくらむ。
まるで、今にも花を咲かせそうだ。
それにつれて、彼女の声と、からだのふるえが、
徐々に大きくなっていく。

彼女のからだが、硬くなる。
小さな芽も、硬くなって飛び出してきて、
僕の舌を思いっきり押し返した。

こわばった後で、弛緩した彼女のからだ。
泣きながら、苦しげに呼吸している。
胸が波打つのが、はっきりとわかる。

彼女の両腕に巻きついた包帯を、ゆっくりと解く。
きれいな胸のふくらみの上に、白い波ができていく。
顔を覆っていた白い布を外して、口の中から、
言葉を奪っていた柔らかな塊を取り出した。
彼女は、咳き込みながら、苦しげに口で呼吸した。

1枚だけ残していた、淡いピンクのスリップを取り去る。
僕も、静かに、身に付けているものを脱ぎ捨てた。

彼女とからだを重ねて、深くくちづける。

くちびるが離れると、彼女は、僕の顔をぼんやりと見つめた。
まるで、僕の目を通して、その後ろにある
果てしない空を眺めているみたいだ。

僕は、また、くちびるで、彼女の目に光る雫を拭う。
そのまま、頬や、首筋や、胸に、そして
あらゆるところにくちびるを押し当てていく。

彼女は、また、泣きそうな声を上げる。
遮る物はもう何もないのに、やっぱり、言葉にはならない。

僕は、彼女の潤んだ感触を確かめるように、
深いところへ自分自身を滑り込ませた。
見えない場所を探るように、動き始める。

ベッドの上に広がった包帯が、白いうねりを作って
僕と彼女に絡み付いてくる。

彼女が僕にしがみついてくる。
2人のからだが1つになっていく。
彼女の纏っていた殻は、砕け散って、風に舞っていった。

そうだ。
彼女に与えたかったのは、
苦痛、でも、
恐怖、でもない。

それは、快楽。
いや、強いていうなら、愛情。

こんな風にして、どんどん深みに嵌まっていく。
もう、後戻りできないところまで。

どこまでも。

僕と彼女は1つになって高まっていく。

2人の時間は、やがて終わる。
だけど、また、始まる。
僕はきっと、こんな風にして、また彼女に触れる。
何度でも、何度でも、気の遠くなるくらい、繰り返す。

君の中でひっそりと息づく花がやがて咲く、そのときまで。

                 
                    fin.
アンダースタンド 1

生温かい液体が、両脚の間を伝って、床に流れ落ちていく。

手枷をはめられた両手は天井から吊られていて、動けない。
ほとんど爪先立ちになっている足元に、水たまりができていく。
目隠しをされているので見えないけれど、感触でそれがわかる。

彼は私を拘束したままにして、どこかへ出かけてしまった。
どのくらい時間が経ったのかわからない。
プラスチックの塊を噛まされた、くちびるの端が少し痛い。

首輪のほかには何も身に付けていないのに、
からだが熱く火照ってきたような気がする。
きっと、恥ずかしさが込み上げてきたせいだ。
さっきまでは、肌寒かったのに。

部屋の中は、静かだ。
物音ひとつしない。

背中も、腕も、だんだん痛くなってきた。
いつまで、このまま放っておかれるのだろう。

時間が経つにつれて、両脚に残った液体のあとが冷たくなって、渇いていく。
気持ち悪い。

自分が、人ではなくて、物になったように思えてくる。
ふっと、気が遠くなりかける。

ドアが開く音。
足音がする。
彼が、戻って来た。

「あれ」

こっちに近づいてくる。
私の前にしゃがみこむ気配がする。

「・・・もらしちゃったのか」

今度は、静かに立ち上がったのがわかる。
わたしの顔に手が触れて、目隠しが外される。
恐る恐る目をあけると、彼が私を見つめていた。
優しく、そして、少しだけ意地悪な顔で微笑んでいる。

「我慢できなかった?」

そう言われたとたんに、涙があふれてきた。
私は、うつむいて、泣き出してしまった。
口が塞がれていて、少しだけ苦しい。

温かい手が、私の頭を撫でる。

「わかったわかった。すぐ綺麗にしてあげるから、泣くな」

彼は、いったん部屋を出て行って、トイレットペーパーを
1ロール持ってきた。
もう半分渇いてしまっている私の脚を丁寧に拭うと、
床にできている水たまりを手早く始末した。

両腕を吊っていたロープが外される。
少しふらついてよろけたからだを、彼が受け止めてくれた。

「ほら、おいで」

そのまま私を抱き上げて、バスルームに向かう。

涙はまだ止まらない。
私は、みじめな気持ちで鼻を啜った。

洗面所でいったん下ろされた。
両手が今度は首輪のリングに繋がれる。

「ほら、もう泣くなってば」

また頭を撫でられる。
まるで、子どもか、それとも犬か、猫、みたいに。

彼は着ているものを脱ぎ捨てると、
私を抱えるようにしてバスルームに入った。
シャワーのコックをひねってお湯の温度を確かめると、
そっと私のからだを洗い始めた。

シャワーソープで滑る、彼の手の感触がくすぐったい。
泣きすぎたのと、お湯の熱気で、頭がぼんやりする。

からだを洗い終わってバスルームから出ると、
彼は、バスタオルをわたしに巻きつけて、
端でそっとまぶたを押さえた。
それから、わたしのからだを拭いてくれた。
黙ってされるままになっているしかなかった。

拭き終わると、同じタオルで自分のからだを乱暴に拭って、
またわたしを抱き上げて部屋に戻った。
大きなソファの上にそっと下ろされる。
両手と首輪を繋いでいたフックを外すと、
わたしの顔をのぞきこんできた。

「・・・恥ずかしかったの?」

そう言われると、また涙がにじんできた。

「大丈夫だって。誰も見てなかっただろ?」

だって。
あなたが見たじゃない。

うつむくと、涙がぽろぽろこぼれてきた。

「ほら、よだれ出ちゃうぞ」

口枷で割られた私のくちびるに、彼が、
自分のくちびるを押し当てる。
端の方から、器用に舌を動かして、
私の唾液を舐めとっていく。
アンダースタンド 2

くちびるを探られながらしゃくりあげると、
その拍子に咳き込んでしまった。
プラスチックの塊に歯が当たって痛かった。
胸が苦しい。

彼が私を抱きしめて、背中をさすってくれた。
咳が落ち着くと、口枷が外された。
私は、肩で息をする。
涙が、また、あふれる。

「大丈夫か?」

私は、、彼の肩に頭を押し付けたまま、小さくうなずく。
彼の手が、もう1度静かに背中をさする。

「ちょっと、待ってて」

彼が立ち上がって、どこかに行く。
私は、ソファの背に顔を伏せて、息を整える。

戻って来た彼は、ミネラルウォーターのボトルを持っていた。
ソファに座ると、私を膝の上に抱き上げた。
左腕で私の肩を抱いたまま、器用に蓋を開ける。
ボトルに口をつけると、そのまま、私のくちびるに
自分のくちびるを押し当てた。

彼の口の中で、少しだけ温度の上がった水が、
私の口の中に、ゆっくり流し込まれる。
私は、それを飲み干す。

何度か同じことが繰り返されて、ボトルの中の水は
3/4くらいになった。

彼が私を見つめる。

「もっと飲む?」

私は首を左右に振る。
ボトルが、テーブルに置かれる。

今度は、まぶたにくちびるがそっと押し当てられる。
私は、また、されるままになる。

「・・・ほんとに、泣き虫だな」
「だって・・・」
「もう綺麗になったよ。大丈夫だ」

彼の顔が離れる。
また、私を見つめている。

「・・・もっと、綺麗にしてあげようか?」
「え?・・・」

彼は、私をソファに寝かせると、静かに下に移動した。
不意に両脚が開かされる。
中心に、彼が顔を埋める。

「あっ・・・」

温かくて、柔らかい舌が、私の中を探る。
さっきまで汚れていたところが、その舌で拭われる。

「だめ・・・」

彼は、私の言うことを無視する。
繋がれた両手を伸ばすと、彼の髪に、指が触れる。

何度も、何度も、なぞられて、私のからだが震えだす。
彼は、私を放してくれない。

やがて、気が遠くなった。
一瞬、意識が飛ぶ。
何も考えられなくなる。

そのあと、からだの力が抜けた。

彼が、上の方に移動する。
私の中に、ゆっくり入り込んでくる。
からだの中の深いところが、熱いもので満たされる。

わたしの両腕でできた輪の中に、彼が頭を入れる。
私の頬に、彼の頬が押付けられる。
ふーっと、深く息を吐く。

「汚いのに・・・」
「ん?」
「・・・どうして、そんなことできるの?」

彼が顔をあげる。
きょとんとした顔で、私を見下ろしている。

「どうして、って・・・好きだからだよ」

                          fin.

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