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荒野に生きるチームコミュの吉良 Change the worlD vol.65

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【第64話】http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=30380452


 銃声が、聞こえた、気がした。

 だが、今は振り返る時ではない。吉良は自分に言い聞かせた。
 和服は走るには不向きだが、少女を担いで歩く男たちを音もなくつけるには問題ない。
 リノリウムの床では、ゴム底の靴はかえってキュッキュッという音を立てるし、足袋が一番静かなのだ。

 しばらくして、黒服たちは青いドアを開けた。壁際に身を寄せた吉良の位置からはよく見えないが、黒服は希美を奥にいる人物に渡したようだ。
 ここをどう突破するか。思案しようとした時、目の前で何かがキラリと光った。
 間一髪、扇子を顔の前に差し出し、頭を下げる。扇子は両断された。金属製のワイヤーを、背後から回されたのだ。吉良は体を沈ませ、右足を後方へ蹴り出す。まとわりつく和服に、蹴りも常の鋭さはない。それでも、襲撃者との間合いをとることには成功した。
 両手で和服の裾をはだけさせ、脚を露出。これで闘える。
 30cmほどのかんざしを2本抜きとり、左右に構える。飛んできたワイヤーを左で絡め、胸元に飛び込んで右を一閃。黒服は悶絶した。
 かんざしはチタン合金製で、ワイヤーやナイフ相手には十分役立つ。
 だが、騒ぎを聞きつけ、青いドアを離れて向かってくる黒服たちは、拳銃を構えていた。


「伝説のスパイも、ざまァないねェっ」

 歌穂はさらに、P90で銃撃を加えた。
 P90は5.7mm×28弾を使用しており、小口径ながら高初速で射出され、ケブラーなどは貫通する。さらに弾体の比重が軽く、人体に当たれば体内で暴れ、致死性が著しく高い。高齢のイーノが生きているとは思えないが、念のためだ。

「何ぃッ?」

 だが、イーノは倒れた勢いを利用して立ち上がり、追撃をかわして歌穂の視界から外れた。ポケットからこぼれたのだろう、多数の弾倉を落として。

 歌穂は天井から直接飛び降りる。ロープはあるが、地面に着くギリギリまで、ほとんど自由落下だ。のんびりロープ降下などしていたら、イーノの格好の的だ。
 だが、反撃はなかった。やはり、相応のダメージを与えていたのか。

「これは‥‥」

 イーノが倒れた場所には、千切れた左腕があった。

「うふ。義手を奪ったわ。なら、弾倉の交換も容易じゃないわね」

 義手は精巧なもので、筋電位で自在に動かせる。あの日以来、イーノがこの義手を相棒に生きてきたのを、歌穂は知っていた。

「ルガーP08の装弾数は8プラス1。だけど初弾は薬室に入れていなかったから8発。あいつが今までに撃ったのは6発ね。ん?」

 義手がカチカチと音を立てていた。歌穂は会議場を飛び出す。
 直後、爆発がホテルを揺るがした。

「くそっあの野郎ッ!またトラップかッ」

 会議場を染めた炎に照らされ、歌穂の顔は悪鬼のように見えた。

【第66話】http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=30380556

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