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荒野に生きるチームコミュの吉良 Change the worlD vol.57

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【第56話】http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=29907646


 遠くに漁船が見える。崖下の砂浜は白く輝き、波の音だけが二人を包む。

「ね、お兄ちゃん。ぎーちゃんは、何をするつもりだと思う?」

 儀一郎。一郎のクローンとして造られ、その体を奪われた。脳は今なお、ラフノールとかいう薬の治験‥‥人体実験に使われているという。
 気の毒だと思わなくもない。義一郎のことも気にはなる。だが、脳だけの存在を救うことなどできないだろうし、義一郎に義理はない。
 儀一郎がどうなったのか、希美は理解できていないのだろう。吉良は一郎と置き換えて話すことにした。

「多分。希美の病気を治すために、会社を追われるわけにはいかなかったのだろう。きっと今頃、希美を治す研究をしているんだ」

 本当にそうだったら、そして治せたら、どんなにいいだろうか。だが、希美の病気は遺伝子レベルのものだ。いくら高度な技術を持つ奥平製薬とて、治療法の確立など不可能だろう。
 だから一郎は、希美を諦め、希美のクローンを作ろうとしている。ES細胞の段階でテロメア長の復元ができれば、育ってしまった希美と違って、ゼロからの治療ができるということか。書斎にあった専門書を貪り読み、吉良はある程度の理解をしていた。

「クローンなどいくら造ろうが、それは希美ではない。それは自身のクローンでよくわかっているだろうに」
「何?クーロンて。お茶?」
「それは烏龍茶だ」

 希美には、希望を与えたい。可能性は、もはやひとかけらもないのか。吉良は作った笑顔の裏で、怒りにも似た焦燥感に背筋を震わせた。

 城に戻ると、イーノが二人を出迎える。イーノは吉良の元に寄ると、耳打ちした。

「本当か」
「はい、吉良様。こちらへ」

 吉良は希美の車椅子を由美子に預け、イーノの後を追った。

 希望が、見えた気がした。

【第58話】http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=29907738

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