チーム・黒船コミュの笑い屋　第２話〜バイト説明〜

人影は逆光でよく見えなかったが、近づくにつれハッキリしてきた

ズボンのすそが短い・・・逆光でもラメがキラキラと輝いている。まるで後光がさしているようだ

後光が差すような人物では無いな、どじょうひげ・・・


「研修おわりましたね！そういえばきみ、名前は？」

うっかりしていた、普通のバイトなら履歴書でも出すところだろうが、怪しいバイトと聞いて何も出してなかったな

ナメヌマも何も持っていくものは無いって言ってたし、でも名前すら告げるの忘れてた

「北斗・・・」

「ケンシロウ君かい！？、それじゃ、胸に七つの傷が？早速見せて！」

い・・・いや、ケンシロウじゃないし、七つの傷なんかあるわけないじゃないか、何言ってんだ、ドジョウ

「傷も無いし、ケンシロウじゃありません！太郎です！」

「っぷ！太郎！じゃあ、浦島？」

太郎で浦島って・・・安直だ

やっぱりドジョウだ、相手にしてられないな

「まあ、ケンシロウ君、笑い屋のほうの研修は終わったようだね、先ほど連絡があったよ、プロの話だとなかなか筋がいいそうじゃないか、やっぱりナメヌマ君の紹介だな。
早速事務所に戻って仕事の説明をしよう」

すっかり陽がくれようとしてるのに、これから仕事の説明かよ・・・

もう、帰りたいな

「あと、今日の研修の日当渡すからね」

研修の日当もらえるのか、ついていくしかないな・・・

太郎はしぶしぶとドジョウ髭の後についていき事務所に戻った


あれ？戸が緑色だったっけかな？

中に入ると先ほどとはまったく違う部屋だ、電話のオペレータが数人いて、巨大なスクリーンがいくつもあり、最初の部屋とはまったく違う

「驚いた？さっきの部屋は受付用でね、こっちが本部だよ。なんせいくつもバイトあつかってるもんだから私一人じゃ足りないからね

じゃあ早速、研修費の4万円渡しとくね」

研修費で4万！？

ただ笑ってただけなのに、なんておいしい研修なんだ・・・それとも、俺よっぽど筋がいいのか？

「あ、バイト代のほうはね、出来高制だから、まだなんとも言えないけど、君は筋がいいからねぇ、楽しみにね」

やっぱり、筋か　俺、笑いのプロになろうかな・・・ひょっとしたら一生食って行けたりしてなぁ


「さて、バイトの説明に移るね、えー今日から一番近い日の笑い屋のバイトはね」

ドジョウ髭を触りながらノートパソコンをカタカタとやっている、ちょっと覗くと画面の傍らにはソリティアが・・・年中やってんのか、このおっさん・・・

「お！丁度明後日にあるよ、都合はいいね？」

勝手に都合決めんなよ、おっさん・・・　でも、予定も無いけど

「いいですよ」

「やっぱり思ったとおりだな、さすがナメヌマ君の紹介だ」

そこはナメヌマ関係ないだろ

「明後日にこの紙に書いてある時刻にその地図の場所に行って、あとはこの写真の人の横で笑うだけだよ、簡単でしょ？」


手渡された紙を見ると場所が・・・


ニューヨーク？？？


「ちょっ！明後日にこの場所って、海外ですか！？」


「うん、うちはグローバルなバイト屋だからね、あ、ちょっと君！ケンシロウ君にチケット渡しといて」

どじょうがそうゆうと、事務のおねーちゃんらしき人がチケットを差し出してきた。

「これ、明日の飛行機じゃないっすか！まあ、パスポートは三年前に取ったのが期限切れてないけど・・・」

「お？パスポートある？じゃあ、それ使ってね　おーい！パスポート作らなくていいってさ！」

さっきのおねーちゃんに向かってどじょうが叫んだ・・・てか、偽造パスポートまで作れるのか？この会社は・・・

本当に怪しすぎだ、まだ、今なら引き返せるかな・・・でも、研修費で4万だし、バイト代すげーのかも


結局、金の誘惑には勝てず、引き受けることにした


「俺、英語あんまり出来ないですよ？」

「え？笑えるでしょ？　だから大丈夫」

ほんとに大丈夫なのかな・・・

「じゃあ、明日の飛行機乗り遅れないでね、あとこれ、こっちとどこからでも繋がるホットライン携帯ね」

「は・・・はい」


もう、後戻り出来無そうだな

必要経費とか言って２０００ドルも受け取っちゃったし・・・

久しぶりの海外だし、まあ、いっか

重い足取りで家に帰り旅行準備に取り掛かることにした

「それにしても、海外なんて、聞いてないぞ、ナメヌマめー！　そんなこと今更言ってもしょうがないか・・・」

そのとき、バイト屋から受け取った携帯が鳴った