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長距離「鳩レース」が好きだ!コミュの短編小説「初夢」

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 GOサインは出た!
今朝6時に放鳩された!
晴れ、北西の風、現在15℃。
一週間前まで続いたフェーン現象の暑さはもう無い!
最高の日だ!
まず当日帰還があるだろう。

20xx年、5月20日。
第xx回「ナホトカ・インターナショナル・レース」の幕は切って落とされた。
例年の事であるがNHKラジオにより、日本海航行中の船と、操業中の漁船等に、主催の「日本鳩レース協会」と後援の「外務省」から、の「協力のお願い」も放送された。
「休んだり水を飲むために、鳩が船に舞い降りる事があると思います。 
静かに水を飲ませ休ませてやって下さい。 
取らまえず、静かに見守ってやって下さい。」
と言うものだ。

 私の愛鳩達15羽(当鳩舎作9羽と委託鳩2鳩舎6羽)も、すでに日本海上。
もう300kmくらいは飛んできている事だろう。
ナホトカ〜富山間は780kmだ。
海上700kmをひとっ飛びに。
先ず当日帰還はあるだろう。
900km地帯までは入るだろう 。
東京周辺くらいまでまず入るかもしれない。

 今日はこの外に、3つのレースの放鳩連絡があった。
ゴールデン・クロス・レースも今日予定されている。
これについては後で述べるとして・・・
 
 振り返れば、あれは19xx年の事だった。
ゴルバチョフ書記長の初来日を機に、一気に盛り上がった日ソ友好親善ムードに乗り、「日ソ平和条約」が締結された年の事だった。
日本鳩界もこの平和条約締結を記念して親善国際レースを実行したのだった。
それからxx年、私も60とx歳になってしまった。
会社も昨年定年となり、退職して早一年。
ようやく鳩と共にの悠々自適が生活のリズムになって毎日を楽しんでいる。
長年の夢が叶い、ポカポカの初夏の日差しを受け、鳩舎で鳩を見ながら、コックリコックリと舟を漕いでるこの頃だ。

 あと5年後には北方領土(クナシリ、エトロフ他)も返還される予定だ。
25年後の期限付きと言う約束で平和条約が締結されたのだった。
先日も鳩レース協会の常任理事会で、北方領土返還記念の「日ソ親善エトロフ国際レース」をどうか?
と言う提案が出された、と3年前に就任した常任理事の友人のB君が言っていた。

 脱線してしまった。 前に戻そう。
この「ナホトカ・インターナショナル・レース」も回を重ねてxx回。
今参加国は「日本」「ソ連」「韓国」「北朝鮮」「中国」と5ヶ国となり、参加羽数もスタート時の
1,234羽から飛躍的に伸びて、今回の参加羽数は、
41,810羽を数えるほどになった。
今では最も歴史のある『東日本CHレース』と肩を並べ、そしてそれをも凌駕するまでに成長した。
このうち日本の参加羽数は24,698羽、日本以外では地元ソ連の5,963羽、中国の4,989羽と続いている。
日本の参加羽数が断然多く、力の入れようが判るのだ。

 日本列島の弧に対し、ナホトカは支点となり、日本のどの地点も大体700km〜1000kmに収まってしまう。
距離によるハンディキャップが少ないために、1970年〜80年代の、連盟や連合会の細分化、はたまたレースの細分化に繋がらず、お祭り的なインターナショナル・レースとして、レースマン全員が「鳩協」「日伝」の2大協会に固執せずに、揃って参加のし易いものだった。

 因みにナホトカ〜東京は990km、大阪は930km、
名古屋920km・札幌690km・仙台850km・新潟760km・
金沢770km・広島940km・高知1050km・福岡1070km・
鹿児島1260kmなど
 参考までにナホトカ〜ピョンヤン(平常)間は730km、ナホトカ〜ソウル(京城)は770km、ナホトカ〜北京は1410kmくらいだ。

注 
緯度・経度はブリタニカ国際地図の、ナホトカ「北緯42°48′、東経32°52′」
その他の都市もこのブリタニカ国際地図のもので計算、km以下を四捨五入

 更に前述の3レースについても語ろう。
まず「ゴールデン・クロス・レース」とは、からだ。
1987年秋季の事であったが、当富山連合会では来年実行されるソウル・オリンピック開催記念日韓親善「釜山ナショナルレース」へ向けて、西コースの訓練とレースを実行した。
この際たまたま福井100kmレース(西コース)と、佐渡200kmレース(北東コース)が、同日同時間の放鳩となった。
相反するコースのレースが、同日同時間の放鳩
これが『クロッシング・レース』の誕生。
方向の違う2つの地点より放鳩し、やはり違う2つの地域に帰る事により、帰還コースがX字に交差(クロス)する、故にクロッシング・レース(クロス・レースでもよい)と言う。
結果は「これは面白い!」と言う事になった訳だ。
つまり、距離の遠近によるハンディと風の方向による有利不利が、それぞれ逆転する。
と言う事だ。
 これは関東の一部を除けば大体みなそうであると思うが、地域により会員の密度の違いからかなり広範囲を一連盟として、距離・地形の有利不利を抱きながらレースを実行している。
このため広範囲な地域、特にこの有利不利が大きくなるほど面白くなると言う事だ。
また、200km〜300km離れている連合会とでも、「対抗レース」ができると言う事だ。
早速次の年に連盟内の高岡・加賀連合会に呼びかけ今度は少し距離を伸ばして西コース「大津200km」と北東コース「佐渡200km」で実行してみた。
大変面白いレースとなったが秋季レースであったと言う事もあったが西コースの参加鳩数と参加鳩舎数が少なく今ひとつレース結果の状況判断が出来にくかった。
もう少し続けてみなければ何とも云えないが、距離の遠近によるハンディは余り無いようではあるが、風の方向によるものと帰還コースでの有利不利が少し残るようだった。
 そこでX年後の199X年から、新潟連盟の協力を得て「日本グランドフェスティバル・レースで行ってみる。
西コース「下関600kmレース」と北東コース「森700kmレース」

それから北西コース『ナホトカ・インターナショナルレース』と、
そして新たに南東コース『鳥島600kmレース』とを加え、合計4つのレースつまりクロッシングレース2つで「Wクロス・レース」で、『ゴールデン・クロスレース』となった訳である。
 いずれも当日帰還ギリギリの中長距離レースで、日本の中心に位置すると言う地理的条件を充分に生かし、非常に楽しめる面白い企画と各地域から大変うらやましがられているところである。

 1988年には、1000kmレースと言う事で、沖縄鳩界から20羽の鳩の委託を受けたのを始め、その後各地から子供さん名義の委託や、共同鳩舎の申し込みが後を絶たない。
現在当連合会では20以上の鳩舎が委託を受け入れ、その委託鳩舎数は30を上回って、受け入れ制限や羽数制限をしているくらいだ。

 鳩舎南側の廊下から若鳩を見ていると、昼食後の満腹感からか少しうとうとしたようだ。
そうこうしている内にもう2時だ。
早ければ「森(北海道)700kmレース」の鳩が帰ってくるかもしれない。
実距離は673.629km。

 さぁ一段高い鳩用応接室でしっかり見て待とう。
2時20分、先ほどからNHKラジオでは、列島リレーニュースを放送している。
その前の2時のニュースでも「ナホトカ・インターナショナル・レース」の事を放送していた。
列島リレーニュースでも今しがた「ゴールデン・クロス(GX)レース」の事を言っている。
 
 アッ! 鳩だ!
北の方向かなり上空に小さな点が2つ。
ぐんぐん高度を下げて近づいてくる。
鳩舎の周りを一回転している。
茶と白っぽい鳩だ。
はてな?
「森の日本GFレース」には「栗」の鳩を出していなかったはずだが・・・

 そうだ! ナホトカの鳩だ!
ナホトカ・インターナショナル・レースの鳩の方が先に来たのだ!
すごく速い!
今まで一番速い!
2時半前に帰るなんて!
もしかしたら・・・
しかし、皆も速いかも知れない。
鳩舎の階段を駆け上がる短い間に、こんなことがチラチラと頭をよぎる。
家の出窓の小屋根に舞い降りた。

栗とシルバーの鳩だ。
やはり「ナホトカ・インターナショナル・レース」の鳩だ。
うすいグリーンのカラーリングをはめている。
レースが重なるので、レースごとに色分けしたカラーリングをはめているのだ。
この3月まで番いにしていた栗胡麻の2才のオスと、シルバーの3才のメスだ。

口笛を吹く。
いつものメロディーだ。
なにかの映画の中で集合の合図に使っていた、あのメロディーだ。
2羽とも成鳩なので、これで直ぐ到着台に下りてくる。
真ん中の鳩舎だ。
2羽とも転げ込むようにトラップをくぐる。
両足にゴム輪を装着している。
ゴム輪を外す。
打刻する。

やはりあの鳩たちだ。
去年迄西コースを飛ばしていたこの2羽の鳩は、昭和40年代からもう40年来飛ばしこんだ「レッド・ライン」の飛び筋だ。
特に西コースと北東コースで両コースともによく飛んでいる「釜山稚内号」や「ノース&ウェスト号」の血筋を引いている2羽だ。
ナホトカインターナショナル・レース」は開催当初から参加しているが、レース中止が3回ある以外は毎回記録している。
しかし今回が最高分速だ。

2羽は水を飲み、餌を食べるのももどかしくくるくる追いかけっこをしながら、巣房と床を駆け巡る。
遠くナホトカの空で久しぶりの再開をし、1分1秒でも早く帰り巣房で愛を確かめ合いたかったのだろう。
脇目も振らず一生懸命羽ばたいた事だろう。
何か胸が熱くなる。
今更と思うが、目頭がジーンとなる。

「おじいちゃん、おじいちゃん!」

ん・・・
何か聞こえたようだ。
感激に浸り、少しボーッとしていたようだ。
鳩舎入り口のドアを開けてみると、孫の「竜太朗」君が何か叫んでいる。
「おじいちゃん、おじいちゃん、鳩が飛んでるよ」
「今向こうの方から飛んできたよっ!」
5歳になる孫の竜太朗が遊びに来たようだ。

見上げると4、5羽飛んでいる。
今ちょうど屋根に下りるところだ。
今度の鳩たちは、カラーリングをしていないようだ。
それなら「森GFレース」の鳩だ。
打刻2時45分!
これも6時の放鳩なので、けっこう分速が出ているようだ。
また、来ているようだ。
36羽も参加しているので、どんどん帰ってくる。
700kmものレースだが、団子レースかもしれない。
餌をまき口笛を吹き続ける。
14〜5羽は打ったろうか?

一度外に出る。
孫の竜太朗が抱きついてくる。
「おじいちゃん、またレースでしょ、鳩さん皆んな帰ったの?」
動物好きのこの孫は、こう言いながらも、私の口笛を真似て、小さな唇を尖らせる。
鳩舎の屋根には、まだ10羽くらいの鳩がいる。
皆カラーリングを付けていない鳩たちだ。
ナホトカ・インターナショナルの鳩は、あの2羽だけだろうか?
後続はまだ来ない。

やがて、時々アルバイト・ハンドラーを頼む近所の高校生のM君も顔を出したので、彼に打刻を任せる。
彼は私の旅行中など、時々少々の小遣い銭で餌をやってくれたり、掃除をしてくれたりするのだ。
私はいつものように応接室のソファーで鳩の帰りを待つ。
孫をひざの上で抱っこをしながら 。

「竜ちゃんの来るちょっと前にネ、茶と白っぽい鳩さんが帰ったんだョ。
遠くソ連と言う外国から帰って来たんだョ、すごく遠くから帰って来たんだョ!」
「フーン、すごいんだネッ!」
「ネッネッ! 777(アラシ)より、すごいネ!」
「ウン、そうだョ、おじいちゃんの期待していた鳩さんなんだョ!」

「そうだ! 竜ちゃん、好いとこへ来たネ」
「この鳩さんに、良い名前を付けてョ」
「ウーン・・・、そうだネ・・・、ネッネッすごく早かったんでしょ!」
「そしたらネッ、そしたらネッ『ギャラクシー』と、ネッ『ミルキーウェイ』が好いョ!」
「すごく早いんでしょ、宇宙船のように速いかなっ!」
と、孫の竜太朗は、TV番組の宇宙船の名前を言う。

最近よくアニメのTVビデオを見ていて、好きな宇宙探検ものの中の、その宇宙船の名前を言う。

「レース鳩777(アラシ)」も、私がこの前の誕生日のお祝いに買ってやったもので、お気に入りの1本であるらしい。
これを見てからは、動物好きでも、特に鳩が好きになったようでもある。
それまではただ「おじいちゃんちへ行こうよ」だったのが「おじいちゃんちへ、鳩を見に行こうよ」と、母親にねだる様になったとの事である。
 
 私の長男は小さいときから余り動物に興味が無いようであったので、鳩は私一代かな・・・
と諦めていたが、最近この孫が、嫁にやった娘の子供のこの孫が興味を示しだして、跡継ぎの希望が少し出てきたところだ。
折に触れ機嫌を取り、鳩レースの楽しさを吹き込んでいるところなのだ。

「竜ちゃん、そしたらどっちが「ギャラクシー」で、どっちが「ミルキーウェイ」なのかな?」
と手をとって鳩舎の階段を昇り、2羽のいる部屋へ行く。
ちょうど巣房の中で巣皿に出たり入ったりしている2羽に、
「この鳩だよ」と言うと
「栗胡麻のがギャラクシー、シルバーのがミルキーウェイだよ!」
と、生意気に覚えたばかりの羽色の、栗胡麻とかシルバーだなんて。

「そうだ! 今度こいつらの子供が生まれたら、竜ちゃんにあげるよ」
「せっかく2羽の名付け親になってくれたんだもの」
「ホント! おじいちゃん!」
「勿論、本当だよ! おじいちゃんは嘘を言わないよ!」
「ワーイ、ワーイ! うれしいナッ、うれしいナッ!」

「そしたら、僕ネッ、僕ネッ! その子に777(アラシ)って名前にするよッ!」
「ねぇ、いいでしょっ、おじいちゃん!」

「ねぇ、ねぇ! ママー、ママー! おじいちゃんが、おじいちゃんが・・・」
と、階段を駆け下りながら、母親に報告をしに行く。

そうこうしている内にも、1羽2羽と森GF.の鳩が帰ってくる。
時々ミドリのナホトカの鳩も、混ざっているようだ。
M君にこれらの鳩だけ時計を打つようにと、ミドリの時計で。

 ひとしきり孫の相手をして遊んでやっていると、西の方から鳥影がよぎる。
アッ、「下関」の鳥かなっ!
今度はすぐ鳩舎の屋根に下りる。
やはりそうだ!
「下関645kmGF.レース」の鳩だ!
赤のカラーリングをしている。
「M君、M君」「下関の鳩が来ているよっ!」
「そこの赤いテープの時計で頼むよ。」
16時05分過ぎ、分速1060mくらいだ。
意外に速い!
北東コースの「森GF」が、分速1300m近く出ていたので、こっちは1000m以下かな?と思っていたのに。

時々電話がかかる。
帰還の状況の連絡がある。
今のところナホトカ・インターナショナル・レースは、ダントツだ!
さあ、あと「鳥島740kmレース」だけだ。
海上500km!
ナホトカの分速から見れば、まず速くても900mくらいか?
これ以上と言う事は無いだろう。
当日帰るか、明日になるか?
難しいところだ!
7時までに帰るかな、どうかな?
M君は夕方の餌をやったり、水を替えたり、大分慣れた様子で、こつこつといつもの作業を続ける。
ソファーの横では遊び疲れたのか、竜君がスヤスヤと寝息を立て始めた。

 「総合第1位、あなたの愛鳩は第XX回ナホトカ・インターナショナル・レースに於いて頭書のように、非常に優秀な成績で帰還し、その分速は過去最高を記録しました。
よってここにその栄誉を讃え、副賞を添えて贈り併せて表彰いたします。」
協会会長賞の受賞だ。
最高の気分だ!
久しぶりに最高の気分だ!

 東京のTホテル菊の間で、協会の表彰式が行われている。
外務大臣やソビエト大使も列席され、今ここで表彰を受けているのだ。
次の受賞は「外務大臣賞」
その次は「ソビエト社会主義共和国連邦外務大臣賞」
目の前の私のテーブルの上には、少し前に表彰を受けたばかりの「鳥島740kmレース」裏日本地区1位と、北西コース・南東コースのクロッシング・レース1位の賞状、カップと副賞などが並んでいる。

 鳥島740kmレースでは、当日帰還は無理かなぁ、と諦め8時の開函規正に行ったが、、鳩会館に電話が有り、鳩舎のチャイムが鳴っている!
と言うので、急いで帰ってみると・・・
居た、居た!
Bの雌の鳩である。
やはり分速の出ないレースは、Bのラインは絶対だ!

地区第1位である。
総合でも静岡のY鳩舎に次いで第2位だ!
日没は18時55分。
大分得をしたようだ。
また名前が呼ばれた。
今度は外務大臣杯の受賞だ。


 「お父さん、お父さん!」
「もう、起きなさいってばぁ!」
「お餅が伸びちゃうってばぁ、早くお雑煮を食べようよっ!」

「ウーン・・・ン、ン・・・」
竜君かな?
「ウーン・・・」
「お父さん、お父さん!」
と娘の声だ。
と共に体を揺すられ、ようやく状況が判ってきた。

あぁあっ!!!
感激の場面だったのに・・・

昭和64年、正月は2日の朝の事だった!
                             お・わ・り 

コメント(1)

10日間も書き写すのに掛かってしまった。

富山連合会機関紙「レースとやま」?38 「昭和63年秋季号」に掲載されたものを転載しました。
少々書き直した部分もあるが、なるべく最初のものを尊重しました。

前のトピック・コメント欄でまとめたものを載せようとしたが、2000字以内と言う事で書き込むことが出来なかった。

ダブるような事になったが、新たにもう一つここに作ってまとめました。

短編小説と言うのもおこがましいものですが、実際レースをやっている皆さん方の目で見てご批評をお願いしたい次第です。

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