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めさのマイミク拡張エリアコミュの悪魔ぶって被災地を襲撃してみた・2日目編

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 東北の奴らはおめでてえ奴が多くって眩暈(めまい)がしたぜ!

朝、早起きをして野外調理セットを準備し、仲間と自分のお弁当を作っていたら、テントのそばを犬の散歩をしている初老の人間が通りがかりやがった。
政府の犬に「そこの川辺で勝手にテント張ってる不審な悪魔がいます」なんてチクられたら厄介だからな。
俺様自ら牽制し、呪いの声をかけてやった。

「おはようございまーす!」

すると犬の飼い主、いい笑顔で「おはようございます」と返してきやがる。
じいさんは俺たちの川付き一戸建て、要するにテントに目を走らせた。

「避難されて来たんですか?」
「いえ、ボランティアで来ました」
「へえ! どちらから!?」
「横浜です」
「へえ!」

一瞬にしてじいさんの目が丸くなる。

「うち、すぐそこだから! なんか足りない物あったら言ってください! 家、すぐそこだから! なんか必要な物ありませんか?」

オメーはばかか!
手助けしに来たのに、逆に助けられたらカッコ悪いだろ!?
いや俺は悪魔だから助けに来たんじゃなくて、えっと、ゴミどもを片付けに来ただけだけどな!
だいたい、俺がボランティアを語った泥棒とかだったらどうする!?
少しは悪魔を疑え!

そんな説教を、俺は遠慮なくじいさんにかましてやったぞ。
こんな具合にな!

「いえいえ、お気遣いありがとうございます。必要な物はあらかじめ用意してあるんで、大丈夫ですよ。ありがとうございます、ホントに」

ふふん。
少々言いすぎちまったが、まあいいだろう。

それにしても、現地の民Yも、そのおふくろさんもお人好しすぎて心配になる。
Yのおふくろさんは「テント張る場所が見つからなかったときのために」と俺たち3人分の布団を用意してくれていたそうだし、夜は風呂を貸してくれ、ケータイまで充電させてくれた。
何度も言うが、ボランティアを語る悪者だって少なからずいるのだ。
俺にいたっては悪者どころか悪魔だし、少しはアレだ。
自分がいい奴だからって、他人もそうだと思って油断すんなよな!
ばかー!

さて、朝っぱらから悪魔の怒りを爆発させたところで、出発の時間だ。
仲間たちにお弁当を持たせ、テントを後にする。

ボランティアセンターの受け付け開始時刻は朝の9時からだったが、俺たちは8時30分に到着するようにした。
受け付け開始と同時に手続きを済ませ、第一陣でさっさと出発すれば、それだけ現地で作業をたくさんできると踏んだのだ。
この判断はまさに大正解で、俺たちは速攻で現場に急行できることができた。
受け付けを待つ列の、最前列に並べたからだ。

仲間の1人は、昨日訪れた本間夫妻のご自宅に、今日も行くのだそうだ。

現地の方々は「ここもあんまり報道されてなくってねえ。こんなに酷のにねえ」と嘆いておられたので、少しでも広めるべく俺も書く。
久之浜の被害も相当だ。

そんな久之浜にある本間邸に行くための手続きを、仲間は昨日のうちからボランティアセンターで済ませてあった。
ボランティア員が希望を出せば、連日同じ現場でお手伝いすることができる仕組みができているのだ。

また、もう1人の仲間は他の被害も目に焼きつけたいらしく、昨日とはまた別の現場を望むとのこと。

俺はといえば、昨日の本間さん家でもいいし、他の現場でもよかった。
どうせ俺は男だし悪魔なので、昨日と同じく、なるべくキツそうな作業をチョイスすることにする。

こうして俺は、本間さんに「また来ました。今日もよろしくお願いします」と頭を下げることになる。
1番最初に「こんな現場がありますよ」と過酷そうな作業が案内されて、挙手したらたまたま本間夫妻のご自宅だったのだ。
これも何かのご縁だろう。

かつて知ったるお家だ。
俺は他のボランティア員の皆さんに、「1階部分の畳をはがすと足場がなくなるので要注意です」とか「水道は使っても大丈夫だそうです」など、情報を周知する。

さて。
俺は昨日、家の中でしっちゃかめっちゃかになっていた家具やら家電やらをあらかた運び出してしまっていたので、今回は庭でゴミの仕分けを担当することにした。
一時は産業廃棄物を扱う会社でお世話になったこともあるので、その経験は今回、大いに役立つであろう。

土嚢袋(どのうぶくろ)と呼ばれる頑丈な袋に、それぞれガラスを入れ、あるいは陶器を入れ、他の袋には細かい木片を入れ、区分けして置いてゆく。
電化製品、鉄類、プラスチック、全て分けた。
この辺りの処理場の事情が解らないので、仕分けは細かくするに限る。

家のご主人が軽トラックをお持ちだったので、その荷台にゴミを乗せ、他のボランティア員と共に降ろし場まで運んでいただく。
ところがこの日は近所の回収場がお休みのため、遠くの収集場まで行かなくてはならないらしく、運び出しは難儀した。
なので、俺はなるべくスペース確保を心がけ、物が溢れないようゴミの置き方を工夫することに。

ここで、俺の経験が少し役に立った。
悪魔の破壊能力だ。

運び出された家具をそのままトラックに載せると、荷台はあっという間にいっぱいになる。
したがってこれは解体するのが望ましい。
しかし、バールなどを用いて家具を壊すとなると、かなりの体力を消耗してしまう。

一生懸命にバールを振るい、テレビ台を壊しているおっちゃんに俺は声をかけた。

「こうすると楽ちんですよ」

ふはははは!
見よ!
これが悪魔の力だ!

俺はテレビ台を持ち上げると、角の部分がアスファルトに激突するよう、地面に叩きつける。
だいたいの家具はたったこれだけで、一瞬にしてバラバラすることができるのだ。

ハンマーでガラスを叩き、少しずつ割っているおっちゃんも手伝った。

「そうやって割ると時間がかかるし、何より破片が目に入っちゃって危ないですよ。なので、僕はこうやってます」

ガラスの上に布をかぶせ、その上からかかとで踏みつける。
薄い靴でそれをやるのは危険だが、ブーツとか安全靴とか登山靴ならば余裕だ。
大きなガラスはあっという間に細かくなった。

手が空いたときは家の中に入り、手伝えることがないかを探す。
中年男性のボランティア員が、「押入れの中にスノコが斜めに入ってて、それが引っかかってどうしても取れない」と困っていた。

そういう荒っぽい仕事は悪魔に任せよ!

俺は器用な軌道の小さな蹴りを押入れの中に放ち、スノコだけを割って引きずり出す。
つま先までしっかり保護されている登山靴を履いていて、本当によかった。

しかし、個人的な特殊能力を最も役立てたのは俺ではなく、ある青年だった。
彼は一眼レフを持参しており、休憩中は破壊された町並みを撮影するなどしていたのだが、今時珍しくカメラはデジタルではなく、フィルムを使うといったこだわりよう。
聞けば昔から趣味で写真を撮っているのだそうだ。
この青年が間違いなく、本日のベストいい仕事賞ナンバー1に輝いたと思う。

洪水でしっちゃかめっちゃかになった家の中には、海水に濡れたアルバムも何点かあった。
開けばそこには本間夫妻やそのご家族の思い出がたくさんつまっている。

青年は写真の1枚1枚を丁寧に取り出し、まるで現像するかのように水で洗って、干してゆく。

「応急処置にしかなりませんけどね」

そうはにかむ彼の目は真剣だ。

写真は洗濯物を干すかのように洗濯ばさみで吊るされてゆくのだが、画が写っている面同士を触れさせてしまうとくっついてしまうようだ。
彼は、写真同士が触れる場合は裏面と裏面が触れるよう、裏表を意識していた。
写真の中には大昔の白黒の物もあって、ある国で撮ったのだと本間さんは言う。
文化的に重要度が高いと判断した青年は、「これ僕1度持ち帰ってもいいですか? 完璧に復元して、また持ってきますから」と実に頼もしい。

これ以降、ゴミの中からクリップや洗濯ばさみなど、写真を干すのに役立ちそうな物を見つけたら青年に渡してゆくことにする。

ご自宅の中から出てくるのは、当たり前だが写真だけではない。
泥だらけではあるが、非常に綺麗な食器も多かった。
この食器が、ちょっとだけ困った事態に発展するきっかけとなる。

本間家のご夫人が、女性ボランティア員に「もしよろしければ差し上げます」とおっしゃった。
そのボランティア員が「いいんですか?」と喜んでいる傍ら、別の男性ボランティア員が未確認情報を口にしてしまったのだ。

「そういう食器とかって、ボランティアセンターに持ち帰ると、仮設住宅に住んでる人たちに届けてくれるらしいよ」

どう考えてもガセネタだ!
人手不足すぎてそんなルートが確立しているとは、とても思えねえ!
現実的に考えれば解るだろう。
どうして届けられる物が食器だけなのだ。
仮設住宅へ品物が届けられるというのなら、必要な物は食器だけでなく、あれもこれもとリストアップされているのが当たり前じゃねえか?
だいたい、初回で受けた職員さんからの説明の中に「ご自宅の方が要らないとおっしゃる物がありましたら、仮設住宅にお届けしますのでボランティアセンターまでお持ち帰りください」の一言がなかったことも、流通ルートなどないことを証明していやがる。
だいたい、もし仮設住宅に食器が届けられるとするならば、その食器は運ばれる前にボランティアセンターで洗浄せねばなるまい。
その仕事を、誰がやるというのだ。
そんな人員いたように見えたか?

手短にそう指摘すると、女性ボランティア員は、

「じゃあ私が洗います」

そうじゃなくて!
だいたいボランティア員が「現地で洗っておきました」と告げたところで、ボランティアセンターでは「じゃあこっちでは洗わないまま運送しますね」ってわけにもいかないじゃんか!
そもそも被災者さんの食器が再利用されるって情報、未確認なままだしね!?

たくさんの食器を持ち帰って、「え!? これどうしたらいいんですか!?」と困惑するボランティアセンター職員さんの表情を想像してほしいもんである。

俺は一応、「洗うまえにボランティアセンターに確認取っておいたほうがいいですよ」と助言を残し、自分の作業へと戻る。

しばらくの時が流れた。
相変わらずせっせと食器を洗う女性ボランティア員の背中が視界に入り、俺様の動きがピタリと止まる。

「あの、ボランティアセンターには確認取れました?」
「まだです」

うっそ。
大量の食器が洗われてしまっているが、これ全部無駄な仕事になるかも知れないぞよ?
我ながら「ぞよ」って久々に聞いたな。

それにしてもこの女性、何か考えでもあるのか、どうやら情報の真偽を確認するつもりはないらしい。

俺はチームリーダーの男性に書面を借りて、ボランティアセンターの電話番号を見る。
携帯電話のボタンをプッシュした。

「もしもし? いま久之浜で作業させてもらっている者なんですが、依頼主さんが食器をくださると申し出てくださいまして、そういった物を仮設住宅で使う、なんて話はあったりしますかねえ?」
「そういうのはないですねー」

ですよねー。

世話の焼ける話である。

「僕が今ボランティアセンターに電話したんですけど、仮設住宅に何か運ばれるなんてことはないそうですよ」
「了解でーす」

了解でーす。
じゃねえ!
物を大事にしてえ気持ちは解らんでもねえが、時間を無駄にしてどうする。

結果、庭と家の間、ちょうどど真ん中に畳が敷かれ、その上を多くの食器が占領することになる。
やたら綺麗になっちゃっているので、誰もがそれをゴミとして処分できない。
なのにその食器たちは、誰にも持って帰られないのである。

男性ボランティア員の1人が「邪魔だなあ」と顔をしかめた。

やはり情報は大切である。

「あのう」

声に振り向くと、ご婦人がおずおずとメモ帳と鉛筆を持っている。
本間さんだ。

「これに、住所とお名前を書いていただけませんか?」

瓦礫の中から見つけたのだろう。
メモ用紙も鉛筆も、汚れていてボロボロだ。
それらを大切そうに、ご婦人は両手で持っている。

「これだけの縁にしたくないんです。せめてハガキぐらいは出させてください」

ボランティア員は、依頼者さんから金銭を受け取ることを禁止されている。
お金を貰ったらそれはボランティアではなくなってしまうし、ただでさえ被害に遭ってしまった方からさらにお金を出させたら負担を増やしてしまうといった観点からだろう。
しかし、礼状まで断ってしまったら奥様の気持ちが報われない。

俺は悪魔だから字の汚さも悪魔的だが、なるべく丁寧に住所氏名を書き記させていただいた。
中には「俺そんなつもりで来たんじゃないからいいよう」と断るボランティア員もいらしたが、結局は奥様の熱意に折れ、全員が住所指名を書き込んだ。

ボランティア活動から2ヶ月後、ご婦人から1通の手紙が魔界に届くことになる。
そこには震災によって大きな絶望感を抱いていたこと、そんな中ボランティア員が来てくれたことを非常に嬉しく想ったことなどが詳細に、丁寧に書かれてあった。

俺は悪魔だからちっともマジで少しも泣いてなんてねえからな!
むしろ笑ったわ!
笑いすぎて涙が出たほどだ!
要するに泣いた。

この日も時間をちょっぴり誤魔化して、多めに作業をし、ボランティアセンターへと引き上げる。

仲間は当初の予定通りこのまま関東へと帰るので、今夜からはソロ活動だ。

俺は急遽予定を変更し、1日多く滞在することにしてある。
したがって明日行く現場は、本来なら行くことのなかった場所ということになる。

俺は翌日「1日延長してよかった」としみじみ想うことになる。
その現場は壊滅的で、本間邸よりもさらに酷い有り様だった。

最終日編に続く。



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